GPSを活用した音声ガイダンスに依るより安全な除雪作業について 松本 弘行*1 2.十和田管内の冬期間の状況 1.はじめに 十和田事業所は、東北自動車道の安代IC~碇ヶ関I 2.1 雪氷対策期間及び降雪状況 Cの岩手、秋田、青森の3県にまたがり、66.1km 十和田事業所の雪氷対策期間としては、毎年11月上旬 の雪氷対策作業を担当している。十和田管内は、図-1 から4月下旬までの約6ヶ月間である。十和田管内の年 のように奥羽山脈を太平洋側から日本海側へ北上しなが 間降雪量は、図-2に示すとおり約8m前後である。雪 ら横過する路線であるため、極めて急峻な山岳地帯と白 の降り方は深々と降り積もる時もあれば、ゲリラ的な豪 神山地の裾野を通過する平面線形・縦断線形とも厳しい 雪が続く時もあり、年々によって異なる。 区間である。また、標高も花輪盆地の前後が300~4 00mと高いことから、冬季の気象条件が厳しく、地吹 雪による視程障害や吹き溜まりなど雪氷障害が各所で数 多く発生し、冬季の交通の難所となっている。そのため、 冬季の雪氷作業においては、時間・場所で目まぐるしく 変化する気象、路面状況へ対応しなければならず、非常 に管理の難しい路線となっている。 十和田管内では、除雪した雪が橋梁及びカルバートボ ックスの交差道路等へ飛雪しない様に、飛雪防止柵、投 排雪禁止標識や注意喚起旗を設置して、除雪オペレータ 図-2 ーへ注意喚起を図り、構造物の手前から速度を落とし、 十和田管内降雪量 投雪部の飛雪防止している。しかし、夜間や視界不良時 には見えずらい場合もあり、連続する除雪作業の中では、 2.2 高速道路の除雪作業 疲労による注意力散漫等、ヒューマンエラーを起こしう 十和田事業所の除雪作業は梯団除雪(写真-1)といい、 る状況にあるのが現状である。 複数の除雪機械がそれぞれ役目を取り決め、グループで そこで、GPS車両位置管理システムの車載端末装置 除雪作業することである。編成は大型除雪車2台で構成 を除雪車に取付け、カルバートボックス・橋梁・トンネ され、1台目は追越車線の除雪を先行して行い、2台目 ルの手前から音声ガイダンスを流すことにより、除雪オ は遮断機付きの除雪車(写真-2)で、走行車線を除雪 ペレーターへ注意喚起を行った。この取組みが安全な除 する。遮断機付き除雪車とは、走行車線の除雪作業を除 雪作業に役立つため、ここに報告するものである。 雪しながら、追越車線にお客様車両を進入させないよう 図-1 十和田管内路線状況図 *1 ㈱ネクスコ・メンテナンス東北 十和田事業所 にする、除雪車両本体から右サイドに突き出した装置 付車である。初冬期、終冬期の除雪は、黒路面を維持 できるように実施し、厳冬期は路面積雪量3~5cm 以上にならないように除雪を行っている。 図-4 除雪作業回数 3.これまでの経緯 写真-1 梯団除雪状況 雪氷作業において、安全作業を徹底するために、目 印として投排雪禁止区間、飛雪注意箇所に注意喚起旗 (写真-3)で注意を促している。しかし、誤った作 業を起こして交差道路等へ飛雪する可能性がある。こ れは、除雪オペレーターの高齢化による注意力低下や、 世代交代による経験の少ないオペレーターが地域性や 注意箇所を把握しきれていないことが、ヒューマンエ ラーへ繋がっていると少なからず考えられる。そこで、 ヒューマンエラー対策はもちろんのこと、雪氷作業技 術の継承も図り、経験の少ないオペレーターでも注意 箇所を把握できるよう、平成25年度から車載端末装 写真-2 遮断機付き除雪車状況 置を除雪車に設置し、作業を実施した。 図-3、図-4に示すとおり期間中の除雪作業日数は 平均99日、除雪回数は年間で平均1055回実施し ている。また、厳冬期(12月~2月)に関しては、 ほぼ毎日除雪を行っており、月277回実施している。 写真-3 注意喚起旗設置状況 4.オペレーターの現況 十和田管内のオペレーターは図-5のように経験年 数5年未満50%、5年以上10年未満13%、10 年以上20年未満8%、20年以上29%で5年未満 が過半数を占めている。年代別で見てみると、50代、 図-3 除雪作業日数 60代が過半数を占めている。このことから高齢者及 び、経験年数の少ないオペレーターが多いことが分か る。 5-2 音声ガイダンス 音声案内は、各施設の始まりから100m手前で音 声ガイダンスが流れるようになっている。現地にて、 時速80km/h走行で微調整を行い、タイミングを確 認し、最も最適だと思われる距離で設定を行っている。 時間に表わすと約5秒前に事前案内される。ガイダン ス内容は下表(表-1)に示す通り、橋梁部・カルバ ートボックス部・トンネル部と場所によって異なる。 巡回車については、音声ではなく警報音(ピンポン 音)となっている。 図-5 表-1 雪氷作業経験年数 作業車 除雪車 (2号車) ロータリー 車 5-3 図-6 オペレーター年代別 5.車載端末装置の概要 5-1 ディスプレイ表示 今回設置した車載端末装置は、写真-4のように上 下区分、キロポスト、施設名称が一目で分かるように なっている。キロポスト数値は10mごと、100m ごとと画面タッチ一つで切り替えることが出来る。施 設名称は、IC・SA・PAはもちろんのこと、本線 橋梁・跨道橋・カルバートボックス・トンネル名が表 示される。設置した車両は、投排雪に関わる梯団除雪 の2号車4台と、ロータリー車1台、試験用に巡回車 1台に取り付けた。平成26年度も、除雪車(1号車 含み)9台、散布車5台、ロータリー車3台の計17 台に追加設置する。 写真-4 ディスプレイ表示状況 音声ガイダンスの内容 音声案内 橋梁部です。注意をしてください。 ボックスです。注意をしてください。 トンネルに入ります。接触に注意して ください。 橋梁部です。注意をしてください。 ボックスです。注意をしてください。 トンネルに入ります。シュートに注意 してください。 音声再生データ 音声再生データは、エクセルにて作成しているため、 簡易に修正することができる。入力項目は、施設名 称・道路名・上下線区分・開始KP値・終了KP値・ ガイダンス内容の6項目(表-2)となっている。こ れらの入力及び修正を行ったら、車載端末装置にUS Bメモリにて取り込んで完了となる。(写真-5) 表-2 音声再生データ これらから除雪作業において、キロポスト表示や音 声案内は、夜間や視界不良時などでは、オペレーター への有効性が確認できた。また、図-9、図-10か ら、どの年代でも良い評価を得られたので、今後の世 代交代に大きな役割を果たすことが期待できる。 写真-5 車載端末装置 6.結果 車載端末装置設置後の作業状況において、20代~ 50代6名のオペレーターからアンケートを取ったと 図-9 年代別アンケート結果1 ころ、図-7、図-8から分かるように非常に効果が あることが確認できる。 図-10 7.今後の課題 図-7 年代別アンケート結果2 作業上における課題等を下記に述べる。 アンケートその1 ① 衛星を測位して正確な位置情報が出るまで、ある 程度の時間を要する。 ② トンネル部等の衛星が、測位が出来ない箇所は、 パルス検知による情報を得ているが、部分的に動作 しない場合があった。 ③ 回送時は音声案内を停止したい。 8.おわりに 今回の車載端末装置による効果は、視界不良時でも 作業場所が正確に分かるため、速度も投排雪禁止箇所 図-8 アンケートその2 の事前に、これまで以上にスムーズに落とすことがで き、注意喚起及び飛雪防止を図ることが出来た。また、 詳細な意見としては、下記のとおり挙がっている。 キロポスト表示により、故障車等を発見した際は、正 ① 作業している場所(キロポスト)が分かって良い。 確な場所を管制センターや防災対策室に、即時に通報 ② 視界不良時に位置が確実に把握でき、事故車等の 出来るようになった。更に、システム上においては不 異常時も正確な場所を報告できる。 具合等が発生しているが、これから改善していき、目 ③ 音声で流れるところが非常に良い。 視・聴覚・指差呼称による確認を徹底させ、これから ④ 他の管内の応援に有効である。 もより安全な作業に努めて行く考えである。
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