IFRS Developments 第97号

第 97 号 2014 年 12 ⽉
IFRS Developments
IASB が投資企業の連結の例外に
対する改訂を公表
重要ポイント
•
2014 年 12 ⽉、IASB が IFRS 第 10 号、IFRS 第 12 号及び IAS 第 28 号に対する改
訂を公表した。
•
これらの改訂により、投資企業の連結の例外を適⽤する際に⽣じる 3 つの実務上の
問題点が解消される。
•
本改訂は 2016 年 1 ⽉ 1 ⽇以降開始する事業年度から遡及適⽤される。
概要
IASB は 3 つの重要な
実務上の問題点を解
消した
2014 年 12 ⽉ 18 ⽇、国際会計基準審議会(以下、IASB)は「投資企業:連結の例
外の適⽤(IFRS 第 10 号、IFRS 第 12 号及び IAS 第 28 号の改訂)」を公表した。
本改訂により、IFRS 第 10 号「連結財務諸表」に定められる投資企業の例外を適⽤
する際に⽣じていた以下のような問題点が解消されることになる。
•
連結財務諸表の作成の免除:
本改訂により、連結財務諸表の作成の免除は、投資企業がその⼦会社のすべて
を公正価値で測定している場合における、その投資企業の⼦会社である親会社
に対しても適⽤されることが明確化される。
•
投資企業の投資活動に関係するサービスを提供する⼦会社:
本改訂により、⼦会社⾃体が投資企業ではなく、かつ投資企業にサービスを提
供する⼦会社のみが、連結されるということが明確化される。投資企業のその
他のすべての⼦会社は公正価値で測定される。
•
投資企業である関連会社⼜は共同⽀配企業に対する持分を有する⾮投資企業に
よる持分法の適⽤:
IAS 第 28 号「関連会社及び共同⽀配企業に対する投資」の改訂により、投資
者は、持分法を適⽤する際、投資企業である関連会社⼜は共同⽀配企業がその
⼦会社に対する持分に対して適⽤した公正価値測定をそのまま維持することが
できるようになる。
連結財務諸表の作成の免除
IASB は、投資企業の⼦会社である親会社は、投資企業がその⼦会社のすべてを公正価
値で測定している場合にも(かつ、第 4 項(a)のその他のすべての条件も満たされてい
る場合に)、IFRS 第 10 号第 4 項(a)に定められる連結財務諸表の作成の免除を適⽤で
きるということを明確にするよう、IFRS 第 10 号を改訂した。
IASB は、この中間親会社に対する連結財務諸表の作成の免除が規定されているのは、第
4 項(a)の条件を満たす場合には、それぞれの中間親会社が連結財務諸表を作成すること
によるコストがその便益を上回ることとなるためであることに留意した。
また、IASB は、
投資企業が⼦会社に対する持分を公正価値で測定する場合には、IFRS 第 12 号「他の企
業への関与の開⽰」に定められる開⽰が、IFRS 第 7 号「⾦融商品:開⽰」及び IFRS 第
13 号「公正価値測定」に定められる開⽰により補⾜されることになると考えた。したが
って、IASB は、こうした情報の組合せは、投資企業の⼦会社である親会社に対しても連
結財務諸表の作成の免除規定を保持する⼗分な根拠になると判断した。
IASB はまた、(IFRS 第 10 号第 4 項(a)と同じ要件を規定する)IAS 第 28 号第 17 項
も改訂し、投資企業の⼦会社であり、関連会社及び共同⽀配企業に対する持分を有す
る企業に対しても、持分法の適⽤に関する同様の免除規定を認めることにした。
IFRS 第 12 号の派⽣的な改訂
IASB は、IFRS 第 12 号でも派⽣的な改訂を⾏い、IFRS 第 12 号が投資企業にも適⽤さ
れることを明確化した。第 6 項(b)が改訂されたことで、作成する財務諸表においてそ
の⼦会社のすべてを IFRS 第 9 号に従って純損益を通じて公正価値で測定する投資企業
は、IFRS 第 12 号で求められる投資企業に関する開⽰を⾏わなければならないことが
明確となった。
投資企業の投資活動に関係するサービスを提供する⼦会社
IFRS 第 10 号第 31 項により、投資企業は⼦会社に対する投資を IFRS 第 9 号「⾦融商
品」に従って純損益を通じて公正価値で測定しなければならない。IASB は、この規定
に関する例外として、その⼦会社⾃体が投資企業には該当せず、その⼦会社が投資企
業の活動に関係するサービスを提供することで投資企業の延⻑としてその⾏為を⾏う
場合にのみ、投資企業はその⼦会社を連結することを明確にした。それ⾃体が投資企
業であるすべての⼦会社は、純損益を通じて公正価値で測定される。
投資企業である関連会社⼜は共同⽀配企業に対する持分を有する⾮投資
企業による持分法の適⽤
IFRS 解釈指針委員会(以下、委員会)は、⾮投資企業である親会社が、その有する投
資企業である関連会社⼜は共同⽀配企業に対する投資を持分法で会計処理する際に、
どのように処理すべきかを明確にして欲しいとの要請を受けた。投資企業である関連
会社⼜は共同⽀配企業はその⼦会社に対しては公正価値測定を適⽤するが、⾮投資企
業である親会社は、関連会社⼜は共同⽀配企業に対して持分法を適⽤するために、既
に⾏われていた公正価値会計を振り戻したうえで改めて、連結⼿続を適⽤する必要が
あるかどうかについて明確ではなかった。統⼀の会計⽅針を⽤いることを定めた IAS
第 28 号の規定により、投資企業である関連会社及び共同⽀配企業に対して持分法を
適⽤する前に、その⼦会社は関連会社及び共同⽀配企業によって連結されることにな
ると解釈する者もおり、こうした状況はさらに複雑なものとなった。委員会により、
この問題は IASB に付議された。IASB はこの論点を審議するにあたり、投資企業であ
る関連会社⼜は共同⽀配企業の公正価値会計の振戻しを⾏う際の、実務的な実⾏可能
性とその関連コストについて懸念した。
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IASB が投資企業の連結の例外に対する改訂を公表
その結果、IAS 第 28 号は改訂され、企業⾃体が投資企業ではなく、かつ投資企業であ
る関連会社⼜は共同⽀配企業に対する持分を有する企業は、投資企業である関連会社
⼜は共同⽀配企業がその⼦会社に対する持分に適⽤した公正価値測定をそのまま維持
することが可能になった(強制はされない)。
発効⽇及び経過措置
これらの改訂は、2016 年 1 ⽉ 1 ⽇以後開始する事業年度から適⽤される。また早期
適⽤も容認される。
この改訂は、IAS 第 8 号「会計⽅針、会計上の⾒積りの変更及び誤謬」に従って遡及
適⽤しなければならない。ただし、IFRS 第 10 号に対する改訂を初めて適⽤する場合
に、IAS 第 8 号第 28 項(f)により求められる定量的情報は、当初適⽤⽇直前の事業年度
に関してのみ開⽰すればよい。
弊社のコメント
投資企業の例外に関する IFRS 第 10 号及び IAS 第 28 号の改訂は、財務諸表作成者
が当該基準をより⼀貫性をもって適⽤することができるようにする有⽤な明確化で
あるといえる。しかし、我々は、実務においてマルチ・レイヤー(多層)構造を有
する企業グループ内で、投資企業を識別することは、それでもなお困難であると考
えている。したがって、作成者は引き続き⼗分に検討した上で適切な処理⽅法を決
定する必要がある。
IASB が投資企業の連結の例外に対する改訂を公表
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