1 あるべき税制研究会(28回)議事録 5月8日、第28回あるべき税制委員

あるべき税制研究会(28回)議事録
5月8日、第28回あるべき税制委員会が開催されました。今回は、「企業会計制度のコ
ンバージェンスと税制の関係」と題し、日本経団連
阿部本部長から説明の上、意見交換
を行いました。
阿部さんの説明は次の通りです。
1、国際会計基準審議会( IASB )のこれまでの審議状況は、2002 年に IASB と米国
FASB との間でコンバージェンスに向けた基本合意が出来、2005 年に EU 域内において IFRS
が統一基準として義務付け開始、2005 年に EC と米国 SEC の間で、2009 年から IFRS と米国
基準を相互承認する旨を確認、2007 年に IASB と日本 ASBJ の間で「東京合意」、2007 年 SEC
が米国に上場する海外企業に対し IFRS の使用を容認、2008 年に米国 SEC が一定の米国国内
企業に IFRS 使用容認と 2014 年からの義務付けの方向性を示すところまできた。
2、IASB と ASBJ の東京合意(2007 年 8 月 8 日)の内容は、2008 年までの短期コンバージ
ェンスプロジェクトの完了(EC による同等性評価の対象項目となっている会計基準に関し、
差異を解消する。この結果、IFRS と日本基準の重要なコンバージェンスは達成される)と
その他のコンバージェンスプロジェクトの目標期日(2011 年 6 月 30 日)の設定である。
米国 SEC は 2008 年 11 月14日、IFRS の採用に関するロードマップ案を公表、2014 年から
の段階的適用を念頭に、
IFRS の使用を義務付けるかどうかを 2011 年に決定するとしている。
一部の米国大企業については、2009 年 12 月期以降から選択適用を認めるとしている。
3、我が国の企業会計は、いわゆる三位一体(会社法、金取法、税法)の関係にあり、国
際コンバージェンスに向けた動きが今後税法にどのような影響を及ぼすのかという点が最
大の課題である。
これまでの、会計基準のコンバージェンスと税制改正(例)としては、以下のとおり。
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4、主要国における税制と企業会計の関係は以下の表のとおりである。
日
本
アメリカ
EU加盟国
イギリス
ド イ
フランス
ツ
税と会
・税会一致
・税会分離
計との
・ドイツ、フランスは税会一致
・会計は連結・個別分離
関係
税
制
・確定決算主
・税務計算は内
義
・損金経理要
・申告調整方式
・確定決算主義
・確定
国歳入法で規
・損金経理要件
決 算
定
あり
主義
件あり
・損金
経 理
要 件
あり
会
計
連結・個別と
米国会計基準
連結:IFRS
連結:IFRS
連結:IFRS
も日本会計基
個別
個別
個別
準
:IFRS と英国
: DRS ルール(ド
: PCG(年次決算
会計基準の選
イツ一般会計原
報告書作成のため
択
則)
の個別会計基準)
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5、連結先行論、連単分離
連結先行論、連単分離については、我が国企業アンケートでは、連結と個別で会計基準
が異なっても構わないという意見が多い。そこで、連結先行ということが考えられている。
金融庁企業会計審議会の「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告案)」
の概要(2009 年 1 月 28 日)では、「EU 域内又は米国で上場ないし公募資金調達する企業又
は一定規模以上の企業の連結財務諸表(個別財務諸表は対象としない。連単分離)を対象
として進めること、その開始時期は 2010 年 3 月期の年度の財務諸表からとすること、将来
の強制適用については、米国の動向等をふまえつつ、2012 年を目途に強制適用を判断する
こと、判断から十分な準備期間(少なくとも 3 年)を確保し上場企業の連結財務諸表を移
行すること。
」となっている。
この中間報告案に対し経団連としては、国際的整合性の観点から金商法上の個別財務諸
表開示は抜本的に簡素化すべき。IFRS 適用が巨額の追加コスト発生に繋がらないよう、監
査法人等のコスト効率化が必要であること等のコメントを予定している。
以下議論の概要
・企業会計と税務会計が分離することの是非についての議論を深める必要がある
・わが国の現行体制は、米国というより欧州諸国に例をとったので、欧州大陸諸国の動向
を踏まえて判断すべきではないか
・いずれは、米国のような企業会計と税務会計の分離の方向にいかざるを得ないのではな
いか。
次回は、6月15日、森信より、「租税特別措置と租税歳出の議論」について報告し、議論
を行う予定です。
文責
森信茂樹
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