小笠原・伊豆諸島周辺海域における外国漁船への対応について

小笠原・伊豆諸島周辺海域における外国漁船への対応について
平成26年12月25日
総
務
局
産
業
労
働
局
本年9月以降、小笠原諸島の周辺海域において中国漁船とみられる船舶が多数
確認され、10月30日には小笠原諸島から伊豆諸島にかけて最多の212隻が
確認された。
都の領域である小笠原・伊豆諸島周辺海域での中国漁船の違法操業により、基
幹産業である漁業に影響を及ぼすなど、島民に大きな不安を与えた。
都はこれまで、知事自身による再三にわたる中国政府への要請をはじめ、違法
操業の取締り強化や必要な法整備を国に強く要望してきたほか、国と連携して都
の漁業調査指導船による監視活動を行うとともに、国や小笠原村との連絡会議を
立ち上げ、情報の共有化、連携の強化を図ってきた。
また、国においては、大型巡視船等を投入した特別な体制による取締りや、法
改正による罰則の強化、外交ルートでの申入れを行ってきた。
11月末には中国漁船はほぼ姿を消したものの、再び小笠原諸島周辺海域に向
かう恐れがあり、今後も予断を許さない状況にある。島民の方々の安全・安心な
生活を確保するため、国や小笠原村などと緊密な連携を図りながら、対応を進め
ていく。
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違法操業による影響等
中国漁船の違法操業による影響は、地元の漁業をはじめ、島民生活や観光面、
環境面などに現れている。
《漁業》
・多数の中国漁船による違法操業や航行の妨害により、小笠原諸島周辺海域で操
業が制約されたことに加え、サンゴ資源の減少、漁場の荒廃が懸念されている。
《島民生活》
・中国漁船の船員による不法上陸に対する島民の不安感が増大した。
・定期船や観光船が航行中に外国漁船により進路妨害を受け、迂回航行を強いら
れた。
1
《観光・環境》
・冬から春にかけてシーズンとなる、ホエールウォッチングへの風評被害が懸念
された。
・中国漁船が棄てたとみられるごみや網などの漁具が海岸に漂着し、海岸周辺の
環境の悪化が懸念されている。
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これまでの都の対応
○ 国への要請
・10月10日、海上保安庁長官、水産庁長官宛ての知事名の要望書を提出
<要望内容>
漁業者の安心・安全な操業を確保するとともに、貴重な水産資源を有する我が
国の排他的経済水域の権益を守るため、小笠原諸島周辺海域における外国漁船に
よる違法操業の取締り体制を一層強化すること。
○ 内閣総理大臣への要請
・11月6日、知事が内閣官房長官に直接面会し、内閣総理大臣宛ての知事名の
要望書を提出。政府として、より実効性ある対策を強く要請した。
<要望内容>
・都民の安全で安心な生活を一刻も早く取り戻すとともに、貴重な水産資源を有
する我が国の排他的経済水域の権益を守るため、伊豆諸島、小笠原諸島周辺海域
における外国漁船に対する違法操業の取締り体制を一層強化するとともに、必要
な法整備も含め、政府としてより実効性のある対策を講じること。
○ 中国政府への要請
・11月6日、知事が中国大使館に要請するなど、中国政府に対し、再三にわた
り、厳しく違法操業を取り締まるよう強く要請した。中国政府からは、全力を挙
げて対応する旨、回答を得た。
○ 漁業調査指導船による監視
・海上保安庁等と連携し、都の漁業調査指導船による監視を実施
(漁業調査指導船が外国船を確認した場合には、海上保安庁へ通報)
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○ 「小笠原諸島及び伊豆諸島周辺海域における外国漁船の違法操業に関する連
絡会議」の開催
国や小笠原村など関係機関との更なる情報共有と連絡の強化を図るため、開催
参加機関:小笠原村、外務省、海上保安庁、水産庁、都(総務局、産業労働局)
、
警視庁
・11月13日 第一回連絡会議を開催
海上保安庁及び水産庁から、違法操業船の取締り等に関しての取組状況、外務
省から、中国への外交ルートでの対応状況などについて報告
小笠原村から、漁業に対する被害や観光業への影響の懸念、島民の不安の高ま
りなどについて報告
・11月26日 第二回連絡会議を開催
海上保安庁から、取締り体制の強化、水産庁から、法改正による罰金等の引き
上げ、外務省から、ホームページでの情報発信、警視庁から、現地への警察官派
遣などについて報告
小笠原村から、各省庁、国会議員への要望活動などについて報告
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今後の都の対応
11月末には中国漁船はほぼ姿を消したものの、再び小笠原諸島周辺海域に向
かう恐れがあるなど、島民生活や漁場等への影響が懸念されている。島民の方々
の安全・安心な生活を確保するため、都では関係機関と連携しながら、状況に応
じて必要な対策を講じていく。
○
○
○
状況に応じて、国や中国政府に対し、違法操業の取締り強化など要請
海上保安庁等と連携し、都の漁業調査指導船「興洋」による監視を継続
中国漁船が違法操業を行っていた海域を中心に漁場への影響を調査
漁業調査指導船を活用した試験操業を12月から開始した。小笠原における
漁獲の主要魚種となっている、ハマダイなどの漁獲量や魚体サイズ等のデータ
を収集していく。こうした調査と漁業者の漁獲状況等も踏まえ、国と連携し漁
場への影響を分析していくなど、貴重な水産資源の保全に向けた取組を強化し
ていく。
○ 国や小笠原村など関係機関と引き続き情報共有・連携の強化(連絡会議の開
催等)
3
都の漁業調査指導船「興洋」
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【参 考】
◇ 中国漁船の視認状況
小笠原・伊豆諸島周辺海域内における中国漁船とみられる船舶の視認数は、
10月30日の212隻をピークに、11月27日には0隻となり、12月23
日現在も視認数は0隻である。
※海上保安庁発表による
4月13日
4隻 11月
7日
191隻 11月26日
4隻
7月30日
2隻 11月
8日
192隻 11月27日
0隻
9月15日
17隻 11月10日
141隻 11月28日
0隻
9月23日
25隻 11月12日
117隻 11月29日
3隻
10月 1日
42隻 11月13日
145隻 12月
1日
1隻
10月13日
46隻 11月14日
116隻 12月
2日
0隻
10月14日
31隻 11月15日
57隻 12月
7日
1隻
10月20日
24隻 11月16日
58隻 12月17日
1隻
10月21日
51隻 11月17日
70隻 12月18日
1隻
10月23日
113隻 11月19日
44隻 12月19日
3隻
10月26日
102隻 11月20日
47隻 12月21日
2隻
10月30日
212隻 11月22日
33隻 12月23日
0隻
11月 3日
205隻 11月24日
8隻
◇海上保安庁巡視船による中国人船長の逮捕実績(平成 26 年 10 月 5 日以降)
日 付
場
所
位
置
違反内容
10月 5日
父島南
約 10km
領海内
領海内操業
10月16日
嫁島西南西
約 61 ㎞
EEZ※内
立入検査忌避
10月23日
父島西南西
約 57 ㎞
EEZ内
立入検査忌避
10月27日
北之島北西
約 40km
EEZ内
立入検査忌避
10月30日
北之島北北西
約 34km
EEZ内
無許可操業
11月13日
父島北西
約 54 ㎞
EEZ内
立入検査忌避
11月18日
母島東
約 46km
EEZ内
立入検査忌避
11月21日
嫁島南西
約 15km
領海内(夜間)
領海内操業
11月23日
嫁島南
約 9km
領海内(夜間)
領海内操業
12月21日
鳥島北北西
約 6km
領海内(夜間)
領海内操業
※EEZ:排他的経済水域
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◇違法操業等に対する罰則の強化
外国漁船の違法操業に対する抑止効果を最大限に高めるため、罰金の上限を大
幅に引き上げる法律が11月19日に成立し、12月7日に施行された。
《罰金についての改正内容》
根拠法令
違反内容
罰則
【領海内】
外国人漁業規制法※1
【EEZ】
漁業主権法※2
領海内操業
3年以下の懲役又は 400 万円以下の罰金
↓
3年以下の懲役又は 3,000 万円以下の罰金
立入検査の忌避
6年以下の懲役又は 30 万円以下の罰金
↓
6年以下の懲役又は 300 万円以下の罰金
我が国EEZ内における
無許可操業及び禁止海域
内操業
1,000 万円以下の罰金
↓
3,000 万円以下の罰金
立入検査の忌避
30 万円以下の罰金
↓
300 万円以下の罰金
※1:外国人漁業の規制に関する法律
※2:排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する
法律
《担保金についての改正内容》
○無許可操業及び禁止海域内操業に対する担保金の基準額:3,000 万円
○立入検査の忌避に対する担保金の基準額:300 万円
○違法に採捕されたサンゴに対する加算金:600 万円/kg
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◇各計画での取組について
都では島しょ地域での振興等を図るため、「小笠原諸島振興開発計画」、「東京
都離島振興計画」を策定している。各計画では以下の取組を実施することとして
おり、今後の外国漁船への対応を念頭に置きながら、効率的・効果的な事業執行
を図っていく。
《小笠原諸島振興開発計画》計画期間:平成26年度~平成30年度
試験研究や漁業資源の調査等を行うとともに、漁業技術の改善・普及に努め、生産性の
向上及び持続可能な漁業経営の安定化を目指し、水産業の振興に努める。
漁船漁業については、水深 500m以上の深海魚場や新たな漁場を探索し、未利用資源や
漁場の開発による漁船漁業の多様化、メカジキの回遊経路や餌料環境等を調査・解析し、
漁業者に情報発信をしていく。
小笠原諸島における海岸漂着物対策推進計画に基づき、関係者間の連携により事業を実
施していくとともに、おおむね3年程度の実績を踏まえ、社会環境の変化に対応した計画
内容の見直し等を行っていく。
海岸漂着物への対策は、関係する主体が役割分担の下相互に協力し、継続的に適正な処
理を実施するため、関係機関と調整していく。
国境離島としての役割を発揮するため、領土保全や海洋資源確保をはじめ、密入国・密
輸の防止など我が国の安全確保のための港湾施設の活用について検討する。
振興開発の推進に当たっては、行政機関、住民、関係団体、NPO等の多様な主体が連
携・協力し、それぞれの特性や役割を生かした地域の主体的な取組を推進する。
《東京都離島振興計画》計画期間:平成25年度~平成34年度
国や関係県との連携による、科学的知見に基づいた水産資源管理や、漁場整備等による
水産資源の増殖など、持続可能な水産業の展開を図っていく。
海岸漂着物対策の地域計画を策定した上で、海岸管理者や地元住民等と連携し、相互協
力できる役割分担の下、海岸漂着ごみの適正な処理を実施していく。
総合地方行政機関である支庁が、町村等との役割分担を明確にした上で、各島に共通す
る課題について積極的にコーディネートを行い、支庁と町村等とが一丸となって解決に取
り組んでいく体制を強化していく。
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