水銀に関する水俣条約と我が国における水銀対策等の現状及び担保措置

<水銀に関する水俣条約と我が国における水銀対策等の現状及び担保措置案の概要>
条約の関連規定の主な内容
水銀の供給源
・新規の水銀の一次採掘の即時禁止
及び貿易
・既存の水銀の一次採掘の 15 年以内の禁止
(第 3 条)
・一定量を超える水銀等の在庫及び供給源を特定す
我が国における現状
担保措置案の概要【違反した場合の罰則】
・水銀の一次採掘は現在行われていないが、一次採掘を禁止 <新法(案)による措置>
する国内法令はない
・水銀鉱の掘採を禁止(実態なし)
【5 年以下の懲役若しくは 300 万円以下の罰金】
・一定量の水銀等を貯蔵する者に国への報告を義務付け
るよう努める
・この条約に基づき許可される用途等を目的とする
・年間 70 トン程度のリサイクル由来水銀(※)を輸出(2010)
<外国為替及び外国貿易法による措置(政省令改正)>
場合に限り、締約国が同意を与えた時を除くほか、 ・ロッテルダム条約に基づき水銀及び水銀化合物の輸出は、 ○輸出:原則禁止【5 年以下の懲役若しくは 500 万円以下の罰金】
他の締約国への水銀の輸出を禁止
外為法及び輸出貿易管理令に基づき経済産業大臣による ・規制逃れを防ぐため特定の水銀化合物を規制対象に追加
・条約に定める場合を除くほか、非締約国からの水
銀の輸入を禁止
承認の対象
・水銀の輸入はごくわずか(2013 年度の輸入量は実績なし)
※条約発効後も、一定の水銀需要があることを踏まえれば、
可能な限り新たな水銀採掘を抑制する必要あり。我が国か
ら輸出される水銀はリサイクルされたものであり、新たな
水銀採掘の抑制に有効。
・厳格な輸出規制(事前・事後)を実施
1)事前に最終使用者・最終用途が確認できるものに限り承認
2)条約上許可されない用途や金採掘目的の輸出は全面禁止
3)事後報告の実施
○輸入
・非締約国からの輸入については、条約上許可されない供給源からのものである場合は承認しない【5 年以下の
懲役若しくは 500 万円以下の罰金】
水銀添加製品
(第 4 条)
・附属書に掲げる水銀添加製品の段階的な製造・輸 ・水銀フリー製品への転換及び水銀添加製品中の水銀含有量
出入の禁止
・製造・輸出入が禁止される水銀添加製品が組み立
てられた製品に組み込まれることの防止
の低減に関する規制及び産業界の取組が進められている
が、附属書 A の水銀添加製品の製造・輸出入を禁止する国
内法令はない(一部例外を除く)
○特定水銀使用製品(条約附属書 A に掲げられた一定以上の水銀を含む蛍光灯、ボタン電池等)の製造の原則
禁止【3 年以下の懲役若しくは 100 万円以下の罰金】
※対象製品の検討に当たっては、製造・流通実態等も踏まえ、条約以上の水銀含有量基準の深掘り・規制時期の
・新用途の水銀添加製品の製造及び商業的流通の抑
制
<新法(案)による措置>
・水銀添加製品の組立製品への組み込み防止措置を規定する
国内法令はない(一部例外を除く)
・新用途の水銀添加製品の製造及び商業的流通の抑制を規定
前倒しも検討。
○特定水銀使用製品の組立製品への組み込みの禁止【3 年以下の懲役若しくは 100 万円以下の罰金】
○新用途の水銀使用製品の製造及び商業的流通の抑制
・人の健康の保護・生活環境の保全に寄与する場合を除き、新用途水銀使用製品の製造・販売をしてはならな
する国内法令はない
い基本原則を規定
・事業者は新用途水銀使用製品の利用に係る人の健康・生活環境の保全上の便益について自ら評価・届出【30
万円以下の罰金】
、国は必要に応じ、新用途水銀使用製品の製造等に関して勧告
(参考)水銀使用製品の適正な回収のための努力義務(※条約担保ではない、我が国独自の措置)
・国:市町村に対し必要な技術的助言その他の措置を講ずる
・市町村:廃水銀使用製品の適正な回収に必要な措置を講ずる
・事業者:水銀使用の表示等の消費者による分別排出に資する情報を提供する
<外国為替及び外国貿易法等による措置>
○特定の水銀使用製品の輸出入規制(他の製品に組み込まれた水銀使用製品の輸出入を含む)
水銀等を使用
する製造工程
・附属書に掲げる製造工程における水銀等の使用禁
止又は制限のための措置
(第 5 条)
・対象製造工程での水銀使用は現在では確認されていない
<新法(案)による措置>
・公共用水域等への水銀の放出防止の観点から水質汚濁防止 ・条約附属書 B に掲げられた製造工程における水銀等の使用を禁止(実態なし)
【3 年以下の懲役若しくは 100 万円
法に基づく規制。附属書 B の製造工程における水銀等使用
以下の罰金】
制限を規定する国内法令はない
零細及び小規
模な金の採掘
・零細及び小規模な金の採掘の削減(可能な場合に ・国内における水銀アマルガム法による小規模人力金採掘は
は廃止)
存在しないが、削減等を規定する国内法令はない
(第 7 条)
1
<新法(案)による措置>
・水銀等を使用する方法による金の採取の禁止(実態なし)
【3 年以下の懲役若しくは 100 万円以下の罰金】
<水銀に関する水俣条約と我が国における水銀対策等の現状及び担保措置案の概要>
大気への排出
(第 8 条)
・附属書に掲げる発生源(注)からの水銀の大気へ ・大気汚染防止法に基づく「有害大気汚染物質」に該当する
の排出を規制するための措置をとること
・排出に関する目録の作成・維持
注:石炭火力発電所、石炭燃焼ボイラー、非鉄金属
製造に用いられる製錬及び焙焼の工程、廃棄物の
<大気汚染防止法改正(案)による措置>
可能性がある物質に水銀を指定し、事業者に排出状況の把
○水銀排出施設の設置の届出
握と排出抑制を求めているが、排出基準等が規定されてお
・一定の水銀排出施設(新規・既存)の設置・構造等変更をしようとする者に対し、都道府県知事に届出を義
らず、条約の求める措置を担保するための措置としては不
十分
務付け【3 月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金】
○排出基準の遵守義務
焼却設備、セメントクリンカーの製造施設
・水銀排出施設の排出口の水銀濃度の排出基準を設定
・水銀排出施設(新規・既存)から水銀等を大気中に排出する者に対し、排出基準の遵守を義務付け
・排出基準違反に対し必要に応じ改善勧告等及び改善命令等【1年以下の懲役又は 100 万円以下の罰金】
・水銀排出者に対し、水銀濃度の測定・記録・保存を義務付け【30 万円以下の罰金】
○要排出抑制施設の設置者の自主的取組
・届出対象外であっても水銀等の排出量が相当程度である施設については、責務として、排出抑制のため自主
的取組を求める
<新法(案)による措置>
○排出に関する目録を新法に基づく計画において規定
土壌・水への
放出
(第 9 条)
・関係する発生源からの水銀等の放出を規制するた ・現在、水域及び土壌への重大な水銀の放出は確認されてい <水質汚濁防止法で担保済み>
めの措置
・関係する発生源からの放出に関する目録の作成及 ・水質汚濁防止法上の特定施設の指定及び排水基準の設定等
び維持
水銀の環境上
適正な暫定的
ない
により規制
○放出に関する目録を新法に基づく計画において規定
・廃棄物以外の水銀及び水銀化合物の暫定的保管を ・水銀の取扱いや保管に関する、毒劇法、水質汚濁防止法(貯
環境上適正な方法で行う
保管
<新法(案)による措置>
蔵施設規制)等による規制はあるが、条約の求める措置を
規定する国内法令はない
<新法(案)による措置>
・国は、水銀等の貯蔵に係る環境汚染を防止するための技術指針を定め、必要に応じ、事業者に対して環境汚
染防止のための措置を勧告
(第 10 条)
・一定量の水銀等を貯蔵する者は、定期的に、貯蔵状況等を国に報告【30 万円以下の罰金】
水銀廃棄物
・水銀廃棄物を環境上適正な方法で管理
(第 11 条)
・水銀廃棄物の回収、再生利用、回収利用、直接再 ・特定有害廃棄物等輸出入等規制法によりバーゼル条約に対
利用を条約上許可された用途等に限定
・廃棄物処理法による廃棄物管理がなされている
<廃棄物処理法による措置:廃棄物処理法上の廃棄物>
応
<新法(案)による措置:廃棄物処理法上の廃棄物でないもの>
・水銀廃棄物が、特定の場合を除くほか、国境を越 ・国内法(廃棄物処理法)上の廃棄物と条約上の廃棄物の定
えて輸送されないこと
・廃金属水銀等について新たに処理基準等を定める(政省令改正)
義が異なる
・国は、水銀含有再生資源(※)の管理に係る環境汚染を防止するための技術指針を定め、必要に応じ、事業
者に対して環境汚染防止のための措置を勧告
・水銀含有再生資源を管理する者は、定期的に、管理状況等を国に報告【30 万円以下の罰金】
※「廃棄物処理法上の廃棄物」は新法の対象外。非鉄金属製錬由来のスラッジ等の水銀を含有する再生利用目的
の有用物が対象(新法ではこれを「水銀含有再生資源」と定義)
汚染された場
所(第 12 条)
実施計画
(第 20 条)
・水銀等により汚染された場所を特定し、及び評価 ・土壌汚染対策法及び水質汚濁防止法に基づく汚染された場
するための適当な戦略の策定に努める
所の特定、評価の仕組みがある
・ 締約国は、条約義務履行のための実施計画を作
成、実施することができる。
<土壌汚染対策法及び水質汚濁防止法で担保済み>
<新法(案)による措置>
-
・国は「水銀等による環境汚染の防止に関する計画」を中央環境審議会等の意見を聴いて策定。水銀対策の全
体像や将来像を包括的に示す。
2