PDF(977KB)

島根保環研所報
第 55 号 (2013)
資 料
島根県におけるインターフェロンγ遊離試験(QFT)結果(2013 年度)
角森ヨシエ・川上優太・樫本孝史・川瀬 遵・黒崎守人・佐藤浩二
1.目的
従来、結核感染の有無についての判定方法としてツ
ベルクリン反応(ツ反)が実施されてきたが、ツ反は
感度が高い反面、BCG 接種歴や結核菌以外の抗酸菌な
どの影響を受ける。これに対して、結核特異抗原で血
液を刺激し産生されるインターフェロンγ遊離試験
(以下 QFT)は BCG 接種歴や結核菌以外のほとんど
の抗酸菌の影響を受けない。
2005 年に対外診断用キットとしてクォンティフェ
ロン TB-2G が販売開始されて以来、同試験は急速に普
及し、接触者健診ではなくてはならない検査法となっ
ている。
また更に、2009 年には、より感度の高い第三世代で
あるクォンティフェロン TB ゴールドの販売が開始さ
れた。当所において、QFT の検査依頼数は 2012 年度
まで年々増加していたが、今年度は結核患者数の減少
や試薬のリコールのため一時期販売停止となっていた
ことから検査件数は減少し、741 件を実施した(図1)
。
保健所の積極的疫学調査の結果と合わせ、QFT 検査
の陽性率について分析したので、報告する。
1167
1007
1000
798
800
592
昨年度と同様に5%程度の陽性率だった(図2)
。
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
検体数
265
200
0
19
図1
20
21
22
23
24
陽性
87.7%
75.9%
90.8%
判定
保留
陰性
2011年度
2012年度
2013年度
3.2 年代別陽性率
600
400
5.1%
図2 年度別 QFT 陽性率
(2回実施の場合、
接触直後を除く)
741
662
5.9%
9.6%
被検者の年齢が高くなるに従い陽性率が上昇して
いる。19 歳以下(~10 代)37 名中 25 名は同居家族で
あったが、そのうち2名が陽性(陽性率 5.4%)だっ
た(図3)
。
1400
1200
3.結果と考察
3.1 年度別陽性率
25
保健環境科学研究所での QFT 実施数
2.材料と方法
保健所による積極的疫学調査の結果、QFT 検査依頼
のあった 671 件(接触直後の検査 70 件を除く)の検査
結果について、積極的疫学調査の情報と比較した。
2
1
4
8
4
12
3
35 102 121 125 131
88
7
陽性
判定
保留
陰性
図3 年代別 QFT 陽性率
(2回実施の場合、
接触直後を除く)
- 57 -
3.3 接触者区分別の陽性率
3.4 考察
2011 年度に比べ、前年度今年度と QFT 陽性率が低
かったが、同居家族の QFT 陽性率は比較的高かった。
なお、一時的な接触の内訳は待合室で同席、短時間
話をした等について、その他の内訳は患者と長時間バ
スに同乗した人、福祉施設以外の施設入所者および職
員等である(図4)
。
QFT 陽性率が高いのは、同居家族であった。特に若
年層の同居家族は陽性率が高く、発症の可能性も高い
ので速やかな対応が必要である。
過去の感染か最近の感染か判断できないケースが
多いので、患者との接触内容、過去の結核患者との接
触歴など考慮して総合的に判断する必要がある。
初発患者接触者に複数の患者や症状がある人がい
る場合、積極的に検査をする必要があると思われる。
それ以外の対象者については、接触程度が濃厚な者か
ら段階的に検査を実施する事が効果的と思われる。
100%
90%
1
80%
70%
60%
50%
40%
12 85
5
67 39 38 88 273
30%
判定
不可
陽性
2
20%
判定
保留
10%
陰性
0%
図4:区分別 QFT 陽性率
- 58 -