求められるのは、ユーザーの 疑問や悩みを解決するコンテンツ

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Feature
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特集・ネイティブアドの効果と可能性
求められるのは、ユーザーの
疑問や悩みを解決するコンテンツ
ネイティブアドは、ユーザーの興味・関心や悩みに寄り添い、その解決策となるコンテンツをいかに紡ぎ出すか
という視点が欠かせない。検索エンジン集客に深い知見を持つF a b e r C o m p a n yの古澤暢央会長と、
同社と共にコンテンツマーケティング技術の研究を行う豊橋技術科学大学の吉田光男助教に、
ユーザー視点に立ったコンテンツづくりの考え方を聞いた。
ればいけない、という問題意識から始
すが、それに応えるはずのページやコ
“織田信長”
“謀反”
“本能寺”の語が頻
まったものです。共同研究では、既存
ンテンツが追い付いていないのが現状
出することは容易に想像できます。し
のあらゆる W e b ページを集めてきて、
です。逆に言えば、企業にとってチャ
かし、これらの重要なワードが抜け漏
どのようなキーワードが言及され、ど
ンスは大きいとも言えます。
れし、トピックの説明としては片手落
ういったトピックが触れられているの
古澤 最近では、例えば G o o g l e の
ちになっているケースもよく見かけま
かについて、長年にわたって研究を続
場合、
「富士山の高さ」と検索すると、
すが、それを未然に防ぐツールも開発
けてきた自然言語処理の技術を応用し、
G o o g l e が質問の意図を理解して答え
しています。
分析しています。さらに、特定のペー
を提示します。かつては、ただ W e b
吉田 企業が、人の役に立つコンテン
ジについて、ユーザーが情報収集段階
サイトのリンク一覧を提示していただ
ツを作ろうと思った時に、娯楽のコン
から購買に至るまでの間に、どのよう
けでしたが、現在は、ユーザーの質問
テンツを作るのか、あるいは新しい知
なキーワードを使ってたどりついてい
に対してG o o g l eが直接に答えてくれ
識を与えるコンテンツを作るのか、と
るのかを推定することに取り組んでい
るようになっているのです。
いうことを考えると、やはり知識を与
重要なのはユーザーを観察し
ニーズを理解すること
ンドユーザーの情報収集初期からコン
容させたかというと、そうではない場
ます。それにより、コンテンツ制作側
吉田 検索エンジンがユーザーの質問
えるコンテンツを作る方が、ユーザー
バージョンに至るまでの一連の検索ク
合が大多数だと感じます。その結果、
である企業に対し、ユーザーのアクセ
にすべて答えてしまうようになると、
にとっても長期的に有用であると感じ
エリと検索行動を分析し、それぞれの
何の目的で作ったのか分からないよう
スを促すようなキーワードやトピック
自社のサイトに訪問してもらえなく
ます。
― コンテンツマーケティングに取
段階や悩みに応じたコンテンツを用意
なコンテンツが、ネット上にたくさん
を盛り込んだ、魅力的なコンテンツを
なってしまいますから、そうなった場
古澤 今後、企業が発信するコンテン
合の次の策を考えておく必要があるで
ツやネイティブアドは、その商品を買
り組む企業が増え、どのような変化を
しておくことでユーザーから発見され
量産されているような状況です。
作るための提案が可能になると考えて
感じていますか。
やすくなること、さらには情報提供を
吉田 話題を喚起するのが目的で、サ
います。
しょう。S E O だけでは、通用しない
うであろう潜在顧客に対し、ユーザー
古澤 コンテンツマーケティングやイ
通じた教育啓蒙を行ったり、ユーザー
イトのテーマなどとはまったく関係の
古澤 コンテンツマーケティングで最
可能性もあります。ユーザーに疑問が
の態度段階に応じたあらゆる意図や疑
ンバウンドマーケティングといった手
とのコミュニケーションを図ることが
ない、例えば、ただ面白おかしいだけ
も大事なのは、エンドユーザーを理解
発生してから、購買に至るまでの過程
問にしっかりと答えられるコンテンツ
法がここ1、2年注目されています。私
目的のはずです。また、S E O 観点か
の写真などのコンテンツについては、
することです。エンドユーザーにどの
について仮説を立てても、最初の段階
になっているかどうかが、これまで以
の専門領域である S E O の観点で言え
ら少し離れますが、
“面白いコンテン
検索エンジンに表示されづらくなって
ようなニーズや悩みが発生して、自社
でうまく解決されてしまうと、もう次
上に重要になってきます。そうした技
ば、サイトページをとにかく多く作れ
ツ”を作ることばかりに捕らわれてい
きています。ネット上で拡散され、バ
のサイトにたどり着いているのかを行
に進まない。そのため、検索エンジン
術を開発していければと考えています。
ばよい・検索流入クエリのバリエー
るケースを見かけます。確かに、一時
ズを起こすようなコンテンツは、検索
動観察し、企業の W e b 担当者やマー
で対応できる以上のより高度なコンテ
ションを増やせばよいという発想が根
的にはバズが起きて話題になりますが、
エンジン経由ではなくて、ソーシャル
ケティング担当者と一緒になってエン
ンツが求められているのです。
本にあるように感じます。本来は、エ
実態としてユーザーの態度や行動を変
メディアから経由されるものがほとん
ドユーザーを理解するところからス
どだと思われます。
タートしなくてはいけません。ユー
― それぞれの考える「よいコンテ
古澤 業界では、
「低品質コンテンツ」
ザーのニーズを調査した上で、それに
ンツ」とは?
という言葉も存在しています。他サイ
応えていくページやコンテンツをつく
古澤 コンテンツを読んだ後、ユー
トから少しずつコピー& ペーストして
ることが、コンテンツマーケティング
ザーが信頼して次のアクションを決め
リライトを施してみたり、どこにでも
の本質であると言えます。
られるものがよいコンテンツだと考
えます。そのためには検索するエンド
あるような一般的なことしか書かれて
いないページを意味します。検索エン
ジンは、そうした低品質なコンテンツ
検索エンジンを超える
より高度なコンテンツづくり
持つ、独自のコンテンツマーケティング技術を確立し、企業とユーザーの関係性の強化を目指している。
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宣伝会議 2014.12
古澤暢央 氏
(ふるさわ・のぶお)2005年10月Faber Company
(旧セルフデザイン・ホールディングス)設立。
ユーザーの課題や悩み、知りたいこと
「職人+テクノロジーの融合(属人的スキルを重視
を解決できる文章の「型」を形成する
職人育成と技術開発に日々取り組んでいる。
しつつテクノロジーをも併せ持つ)」をテーマとし、
ことが必要です。共同研究では、企業
を見抜く力を持ってきているので、コ
左が古澤氏、右が吉田氏。共同研究では、「情報分類・情報評価・自然言語処理などのテクノロジー」を併せ
Faber Company
代表取締役会長CEO
ンテンツを投入する側である企業も、
― ユーザーの検索行動に変化はあ
のコンテンツが、ユーザーの検索の意
よりエンドユーザーの悩みや課題を解
りますか。
図や知りたいことを解決できるような
決する実質のあるコンテンツを作って
吉田 現在は、検索エンジンに「ダイ
文章の書き方や論理構成になっている
いく必要があるでしょう。
エットのために何をしたらよいか」と
のかどうか、確認できるようなツール
吉田 8 月からスタートした F a b e r
いった直接的に質問を打ち込んで答え
を作っていきたいと考えています。ま
C o m p a n y さんとのコンテンツマー
を求めようとするユーザーの検索行動
た、あるトピックが語られる時に頻出
ケティング技術の共同研究も、今後は、
も多く見られるようになりました。検
する単語や特徴的に使われる単語とい
ユーザーのニーズに応えるようなきち
索エンジンも、そうしたニーズにうま
うものがあります。例えば歴史上の人
年より現職。Webのコンテンツに注目し、自然言
んとしたコンテンツを作っていかなけ
く応えてあげたいと考えています。で
物である「明智光秀」について語る時、
んでいる。
豊橋技術科学大学
情報・知能工学系
助教
吉田光男
氏
(よしだ・みつお)筑波大学大学院システム情報工
学研究科博士後期課程修了。博士 (工学)。2014
語処理を応用したWeb工学に関する研究に取り組
2014.12 宣伝会議
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