経営戦略論:第1回 事業戦略と利益の源泉 - So-net

新製品アイデアの生まれる場所
• テクノロジー・プッシュ(プロダクト・アウト)
– メーカーの研究技術開発でシーズ(種)を育て、そ
れを市場に問う
– 研究開発→製品開発→販売
– 顧客無視の売れない製品を作り出す危険性あり
経営戦略論:第10回
新製品を創り出す
• デマンド・プル(マーケット・イン)
宮崎正也
– 市場ニーズを調査して、それに合致する製品を
開発する
– 市場調査→製品開発→販売
2
デマンド・プルの限界点
リード・ユーザー法(LU法)
• 製品の評価「よい」「悪い」「満足」「不満」は、実際に
使用してみないとできない…
「使用による学習」プロセスを開発活動に取り込む
– !はっと驚くような製品(イノベーション)は生まれ
ない
• 市場調査の問題点
(Ogawa & Piller, 2006)
– 調査対象が全体の消費者をうまく代表しているか
– 調査時に示される新商品の説明に現実感が薄い
– 人々の実際の購買行動の把握や販売数量・利益
の正確な予測までは不可能
– テスト販売を行えば予測精度は上がるが高コスト
– 消費者になじみ深い既存カテゴリー製品の開発
には利用できるが、新規の製品開発には不向き
– ユーザーの不満の顕在化→新しいニーズ
→新製品への新機能の付加
• リード・ユーザー:
新製品をいち早く購入する先端的なユーザー
• リード・ユーザーは、製品をいち早く徹底的に使うヘ
ビー・ユーザーであるため、既存製品への不満(=
新しいニーズ)を多く知っている、また、知識も豊富
– 企業の外側にいる「尖った」リード・ユーザーを企業内の
製品開発組織に参加させることが重要
• ピラミッド・ネットワーキング:リード・ユーザーを探索
4
ユーザー起動法(UD法)
UD法が効果的な状況
• 集合的顧客コミットメントの活用
– 顧客から提案された新製品アイデアについて、メーカー
と顧客コミュニティーが共同して、開発・設計を洗練して
いき、最低生産可能数量(利益の出せる量)を超える注文
が集まった時点で、実際に生産・販売を開始する
• 無印良品ネットコミュニティー
商品化までの流れ
壁棚
持ち運びできるあかり 体にフィットするソファ
5
7
• ①その製品の機能を引き出すにあたってユーザーの使用環
境との適合性が重要な場合
• ②消費者の当該製品に関する使用経験が豊富で製品入手
時の状態を容易に想像できる場合
• ③当該企業ブランドに対する顧客コミュニティーが形成され
ていてユーザーの自主的な活動が活発に行われている場合
• ④製品化にあたって早期に大量販売の実現が求められるよ
うな巨額の固定費(開発費・金型代など)が必要とされない場合
• ⑤市場セグメントが相対的に小さくて異質で顧客が分散して
存在しているため、メーカーが個々の顧客からニーズ情報を
聞き出すのが大変な場合
8
1
LU法とUD法のアプローチ比較
LU法:リード・ユーザー法
• 起点(メーカー起点)
– メーカーからユーザーに接触
• 開発時の調査対象単位
– 個々のリード・ユーザー
• 需要顕在化の時期
– 開発と生産が終了した後の
販売活動によって初めて製
品の需要量が分かる
• ユーザーの見つけやすさ
– 将来トレンドを反映するリード
・ユーザーを発見して協力を
得るのは簡単ではない
ユーザー・イノベーション
UD法:ユーザー起動法
• 起点(ユーザー起点)
• 新製品を開発するイノベーターの役割を製品
を購入する立場にあるユーザーが担う現象
– ユーザーからアイデア提案
– ex. 科学機器、エレクトロニクス製品の製造装置
など、ユーザー自身が開発
• 開発時の調査対象単位
– 顧客コミュニティー(集団)
• 需要顕在化の時期
– 製品案への投票や購入予約
により,生産・販売に先立っ
て部分的な需要量が分かる
• ユーザーの見つけやすさ
– 新製品アイデアをもつユーザ
ー自身がネット上で存在をア
ピール,他ユーザーの支持
ユーザーが実施
ユーザー・ニーズ
の識別
技術的な開発
問題解決
メーカーが実施
プロトタイプ試作
製品化
9
ユーザーが開発を担う理由
10
メーカーとユーザーの関係
• ユーザーが粘着度の高い情報をもつから
• ソフト製品の場合(メーカー必要なし)
– 移転に費用のかかる情報(情報粘着性の高い情報)
をもつ人・企業がイノベーションの担い手になる
• 「情報粘着性」:
イノベーション・プロセスでの問題解決に必要となる情報に
ついて、その情報を必要とする人にとって利用可能なかた
ちにして移転するためにかかる費用の大きさのこと
• 例)心臓外科医が自ら人工心臓を開発・商品化
– (米テルモハート社長兼CEO野尻知里氏)
• 例)大手ハウスメーカーから住宅を購入して不満
自ら建築家と施主を仲介する注文住宅ビジネスを立ち上げ
– (ウィークエンドホームズ社長森本剛氏)
– 開発・普及・保守・消費すべてを顧客コミュニ
ティーの力だけで可能
ウェブ上でコスト負担なしですべて製造販売
• ハード製品の場合(メーカーの関与必要)
– 開発と初期の普及段階は顧客コミュニティー内の
力で行えるが、規模の経済性が大きくはたらく量
産と全般的な普及・販売活動は、メーカーの力で
行う
リード・ユーザー
顧客コミュニティー
(新製品開発)
メーカー
(大量生産・大量販売)
一般大衆
ユーザー
11
12
社外イノベーションの発掘と取り込み
メーカーの果たす役割(収益源)
• P&Gの「コネクト&ディベロップ」戦略
• ①ユーザーが開発した製品の製造
– 「P&Gのイノベーションの半分を外部調達する」と
いう目標(…単なるアウトソーシングではない!)
– 世界中から有望なアイデアを発掘し、社内に取り
込んだうえで、自社のR&D・製造・マーケティン
グ・購買に関する能力によって改良を施すことで、
優れた製品をより安く・より迅速に開発・市場投入
して、利益につなげる
– テクノロジー・アントレプレナーやサプライヤー・
ネットワークを活用して外部と共創する
– 競合企業とも協力
– ユーザーのアイデアを探し出して量産化
– ユーザー・イノベーションの見極め能力の蓄積
• ②ユーザーへのツールキット、プラットフォー
ム製品の提供
– ユーザー自身の開発設計活動を支援する
• ③補完的な製品/サービスの提供
– ユーザー・イノベーションに付随する補完製品を
供給して利益をあげる
• ダスター(ユニ・チャーム),ゴミ袋(クロロックス)
(von Hippel, 2005)
13
(Huston & Skkab, 2006) 14
2