第3章 2つの道具による低コスト化設計

特集
匠の道具を使いこなせ! 品質とコストを
両立させるコストバランス法
開発手法の導入は,正しい指導者選び
が決め手になる
読者諸氏は,内視鏡手術や,それに使う器具を
ご存知だろうか。たとえば,胃がんや胆のう摘出
手術は,従来から開腹手術によって行われている
が,患部が手の届き難い部位にある場合には,大
きな開口部が必要であった。開口部が大きいほど,
患者の回復も遅れる。もちろん,体表に残る傷跡
も大きくなる。
一方,内視鏡そのものは,本来は検査器具であ
り,それを使った手術は長い間医学界から無視さ
れていた。しかし,その「長い間」に内視鏡の性
第3章
能は実は大きく進歩していた。たとえば,先端に
は電気メスや高解像度のカメラが装着され,術中
に鮮明な画像が医師たちに提供されるなど,今や
外科的手術の代表的手段とまで言われている。開
腹手術が唯一無二だったのは今や昔だ。
では,話を低コスト手法の観点に移そう。
2 つの道具による
低コスト化設計
—‌モンテカルロシミュレーシ
ョン,コストバランス法に
よるトータルコストデザイ
ン
有効な手段とはいえ,今となってはまどろっこ
しい「VE」
,
「QFD」
,
「品質工学」
,
「TRIZ」
,「標
準化」が,多くの日本企業から破棄された。その
大きな要因の一つが,大企業の開発部や,OB の
中にいる「オタク」の存在である。彼らは,VE,
QFD,品質工学,TRIZ といったそれぞれの手法
を金科玉条とし,
• すべては○○手法で決定
• 世界の製造業は○○手法を中心に回転
• ○○手法だけが開発に必須
とばかりに,企業内の生産や開発現場,そして,
若手技術者を困惑させている。
さらに,もう一つの際立った特徴がある。それ
は,講習会やホームページで,○○手法の長所し
か説明しない場合や,
「オレが!オレが!」とば
かりに,○○手法では,自分が第一人者であるこ
とを声高に主張するなどといった事象である。そ
の結果,難解な言葉や,同業者を名指しで非難す
る言葉が氾濫することになる。彼らの目的は名声
と金銭であり,手法は自ずと「管理者の,管理者
による,管理者のための手法」に変貌する。これ
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機 械 設 計