第2章 5つの道具による低コスト化設計

特集
匠の道具を使いこなせ! 品質とコストを
両立させるコストバランス法
5 つの道具による低コスト化設計
―時代はコストパフォーマンスの最大化
第 1 章で解説したのは,
「技術者の四科目」
。そ
の四科目とは Q(Quality,品質)
,C(Cost,コス
ト),D(Delivery,期日),Pa(Patent,特許)であ
った。しかし,この四科目はもう古い。いつまで
も四科目にすがっていたのでは,グローバル市場
では勝てない。
それでは,図 2―1 を見てみよう。
一番下に位置する「部品コスト」のカーブに注
目してほしい。今,信頼性を A 方向に上げれば,
第2章
コストは急上昇する。一方, B 方向に下げてい
けば,部品コストも下がるが,その上に位置する
「保守コスト」が上昇し,
「部品コスト+保守コス
ト=トータルコスト」が上昇する。簡単に言えば,
部品コストを下げると,信頼性や寿命が低下し,
部品交換が発生するための交換費用,つまり,保
守コストが上昇することになる。これにピタリと
5 つの道具による
低コスト化設計
―VE,QFD,品質工学,TRIZ,
標準化によるフロントロー
ディング開発
当て嵌まるのが,日本の某自動車メーカーである。
いつになっても社告・リコールが収束しない。む
しろ,増加傾向だ。
そこで,図中のトータルコストが一番凹んだ部
分,つまり「90%ライン」と呼ぶポイントに落と
し込むのを,
「Q と C の両立化」や「Q と C のバ
ランスがとれた設計」と称する。しかし,これが
極めて困難だ。その原因は,いつまでも QCDPa
の四科目で設計しているからである。
筆者の事務所では,隣国の某巨大企業を含むク
ライアント企業にて,Q と C の二科目を一科目と
して指導している。これが,コストパフォーマン
スである。コストパフォーマンスとは,
“制限の
あるコストで最適な性能を発揮すること”,もし
くは“最適な性能を最低限のコストで満たすこ
と”と訳せる。記号では CP と大文字で書くのが
本筋だが,本特集では Cp と書くことにする。
したがって,技術者の四科目である QCDPa は
技術者の三科目となり,CpDPa と表現できる。Q
と C を分離して設計を続けていれば,いつまで経
っても「Q と C の両立は困難」で終わってしまう
であろう。
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機 械 設 計