第2回漁船保険検討WG検討資料(PDF:1350KB)

資 料
第2回漁船保険検討WG検討資料
平成27年1月
【目 次】
(課題1)組織統合一元化における再保険のあり方
現行制度の概要(再保険)
・・・ 2
検討課題 組織統合一元化後の責任分担はどのようにあるべきか ・・・ 4
(課題2)組織統合一元化における異常保険料のあり方
現行制度の概要(異常保険料)
・・・ 12
論点1 組織統合一元化を踏まえた異常保険料率設定のあり方
・・・ 13
論点2 東日本大震災等を踏まえた異常保険料国庫負担のあり方
・・・ 18
検討課題① 異常保険料を全額国庫負担することが妥当か
・・・ 19
検討課題➁ どこまでの災害を異常災害とみなすべきか
・・・ 24
検討課題③ 100トン以上漁船にも保険料国庫負担すべきか
・・・ 32
(課題1)
組織統合一元化における
再保険のあり方
1
現行制度の概要①(再保険の仕組み)
○ 漁船保険では、制度の安定化を図るため、県段階等の漁船保険組合が漁業者から保険契約を引き受け、地域での危険
分散を担い、漁船保険中央会が再保険することにより全国的な危険分散を実施(国が直接再保険する特殊保険及び漁船乗
組員給与保険を除く) 。
○ さらに、異常災害による巨額の損失に対応するため、国が再々保険を実施し、特別会計で経理。
普通保険
漁船船主責任保険
漁船積荷保険
特殊保険
漁船乗組員給与保険
国
再
々
保
険
料
保
険
料
国
庫
負
担
再
々
保
険
金
再々保険関係
再
保
険
料
漁 船 保 険 中 央 会 ( 全 国 1 団 体)
再
保
険
料
漁
漁
再保険関係
船
保
険
料
再
保
険
金
保
険
保険関係
組
合
(
4
5
保
険
料
保
険
金
業
再
保
険
金
再保険関係
組
保険関係
合
漁船保険団体は、平成
29年度を目途に一元
化を目指すこととして
いる
)
保
険
金
者
2
現行制度の概要②(責任分担の仕組み)
1 中央会又は国による再保険
保険契約ごと
保険金の支払額
①普通保険
組合(1割又は2割) : 中央会(9割又は8割)
組
合
の
支
払
責
任
中央会又は国
の支払責任
②漁船船主責任保険・漁船積荷保険
組合(1割) : 中央会(9割)
③特殊保険・漁船乗組員給与保険
組合(1割) : 国(9割)
責任分担割合
2 国による再々保険
普通保険、漁船船主責任保険及び漁船積荷保険に係る漁船保険中央会の再保険責任に対する再保険
契約年度ごと
保険種類ごと
(例)国の支払責任が発生
再保険金の合計額
再
保
険
金
の
合
計
額
国の責任部分
超過損害ライン
中央会の
保有純再保険料
(再保険料
-純再々保険料)
中央会責任部分
(中央会責任総
再保険金額)
A保険
B保険
C保険
再々保険(国の支払責任部分)の発動ライン
区
分
普 通 保 険
積 荷 保 険
漁船船主責任保険
超過損害ライン (例)普通保険
1.05
同一年度内において、中央会の普通保険の保有
1.20
純再保険料の合計額の1.05倍を超える保険金の
1.29
支払が生じた場合に国の再々保険が発動。
3
検討課題
○漁船保険団体が組織統合一元化することを踏まえ、漁船保険団体と国の責任
分担のあり方を、現行の三段階の再保険関係を前提とした責任分担からどの
ように改めるべきか。
4
組織統合一元化による再保険制度への影響
○漁船保険団体においては、平成29年度を目途に、全国45の漁船保険組合と漁船保険中央会を統合し、全国一元
組織を設立することを予定。
○この場合、漁船保険、漁船船主責任保険(基本損害)、漁船積荷保険において、現行の3段階方式の再保険関係が
2段階となることになる。
現行
組織統合後(イメージ)
国
再保険関係
再保険金
再保険料
再々保険金
再々保険料
再々保険関係
国
漁船保険中央会
再保険金
再保険料
再保険関係
組
織
統
合
日本漁船保険組合(仮称)
45漁船保険組合
漁業者
保険金
保険料
漁業者
保険金
保険料
保険関係
保険関係
5
現行の責任分担の仕組み①
(漁船保険組合と漁船保険中央会の責任分担の考え方)
○現在、全国各地の漁船保険組合は、その保険金支払責任の一定割合について、必ず漁船保険中央会の再保険に付すこと
としている。
○逆に言えば、漁船保険組合は、保険金の支払が発生した場合には、常に保険金の一定割合を負担する。
○保険事故について常に保険金の支払責任を負うことから、契約に当たってはその者の保険金額等を適切に査定することに
つながり、引受時の審査が甘くならないようにしている。
漁船保険組合と漁船保険中央会の責任分担
保険契約ごと
保険金の支払額
組
合
の
支
払
責
任
①普通保険
組合(1割又は2割) : 中央会(9割又は8割)
中央会又は国
の支払責任
②漁船船主責任保険・漁船積荷保険
組合(1割) : 中央会(9割)
③特殊保険・漁船乗組員給与保険
組合(1割) : 国(9割)
責任分担割合
・ 責任分担割合が1割の漁船保険組合※における
保険金の支払責任額の例
1千万円の保険金支払い→100万円の責任
5千万円の保険金支払い→500万円の責任
(残りは、中央会又は国が負担する。)
※ 責任分担割合は、漁船保険組合ごとの経営状況等を踏まえ、各組
合ごとに1割又は2割で設定。
仮に組合の支払責任が有限とした場合
組
合
の
支
払
責
任
中央会又は国の支払責任
← この責任額を超えるような保険
契約については、(事故が発生して
も一定額までしか支払責任を負わな
いため)引受時の審査が甘くなる可
能性
6
現行の責任分担の仕組み②
(漁船保険中央会と国の責任分担の考え方)
○現在、漁船保険中央会は、漁船保険組合の責任部分以外の部分のうち、一定の額までは保険金の全額について責任を負
うこととしている。
○国は、その一定の額を超えた場合に、超えた部分を全額負担することとしている。
○漁船保険団体による負担を基本としつつ、事故が多発した場合や大規模な災害が発生した場合など、漁船保険中央会の
負担能力を超えるような場合には、国が責任を負うという考え方をとっている。
漁船保険中央会と国の責任分担
契約年度ごと
保険種類ごと
(例)国の支払責任が発生
再
保
険
金
の
合
計
額
国の責任部分
超過損害ライン
中央会の
保有純再保険料
(再保険料
-純再々保険料)
中央会責任部分
(中央会責任総
再保険金額)
A保険
通常の場合には、漁船保険中央会が再保
険金の全額を負担
漁船保険中央会は、その年度に保有する再保険料
の総額(=再保険金の支払財源)に一定の率を乗じ
て得た額までは、全額の支払責任を負う。
B保険
C保険
事故が多発したような場合や大規模災害が発生した
場合などには、国がそのような部分について責任を
負う。
7
組織統合一元化後の責任分担のあり方
○漁船保険団体における責任ある引受審査と国による大災害発生時等の危険負担は、漁船保険団体が組織統合一元化した
後であっても引き続き必要。
○このことを踏まえれば、組織統合一元化後は、一元化組織が、現在漁船保険組合と漁船保険中央会が負っている責任部分
について、責任負担することが妥当ではないか。
現行
保険金の支払額
保険金の支払額
組
合
の
支
払
責
任
組織統合一元化後
国の支払責任
漁船保険中央会の支払責任
国の支払責任
統合一元化組織の支払責任
超
過
責任分担割合
損
害
漁船保険組合による責任
ある引受審査の確保
ラ
イ
ン
国による大災害等への対応
団体による責任ある
引受審査の確保
国による大災害等への対応
※具体的な責任分担のライン設定については、漁船
保険団体及び国の収支状況を踏まえ設定。
8
(参考資料)他制度における再保険の仕組み
○地震保険においても、3段階の再保険の仕組みを設けているが、再々保険の主体は損害保険会社と政府となっている。
○責任分担の仕組みとして、地震の規模の大小によって、政府の責任負担額に差を設けている。
地震保険における再保険の仕組み
地震保険における責任分担のあり方
3%
99.5%
68%
0.5%
29%
出典:(社)日本損害保険協会資料、日本地震再保険会社
・損害保険会社は、その引き受けた地震保険契約の全
責任を日本地震再保険会社に再保険。
・日本地震再保険会社は、損害保険会社及び政府に対
しそれぞれの限度額に応じて再々保険、残余の責任
額を負担。
出典:財務省、(社)日本損害保険協会
・地震の規模の大きさによって、
小規模な地震については民間が全額を、
中規模な地震については政府と民間が半々で、
大規模な地震については政府が大部分を、
責任負担することとしている。
9
(参考資料)国の再々保険金の支払実績
東日本大震災以前についてみると、
○国の支払責任は、過去10年間で3回発生。
○特別会計における保有積立金は、21年度末時点で約110億円(震災時の保険金支払によって平成26年度時点で
321億円の赤字が存在)。
○大災害発生時の再々保険金支払に対応するためには、積立金が必要であるが、その必要額については、どの程度
の大災害を想定するかという問題があり、単純に決定することは出来ない。
※ 民間保険においては、保険金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうかの基準として用いられるソルベ
ンシー・マージン比率を1つの指標としている。
国による再保険金の支払状況
391億
億円
震災による事故の一部
(21年度中に責任が開始し震災によって事故
が生じた保険関係は21年度分として支払)
→ これによる漁業者への保険金支
払の総額は約172億円
大型漁船の全損事故が複数発生
→ これによる漁業者への保険金支払(漁
船保険組合から漁業者への支払)の
総額は約194億円
7.6億
3.3億
年度
10年で3回
10
(課題2)
組織統合一元化における異常保険
料のあり方
11
現行制度の概要(異常保険料)
○普通損害保険の純保険料率は、通常保険料率と異常保険料率に区分され、それぞれの保険料に対して国庫負担を
実施(100トン未満漁船に対し、通常保険料の一部、異常保険料の全額)。
○異常保険料率は、台風など異常な天然現象に係る危険率(支払保険金/保険金額)のうち標準的な危険率を超える
もの(異常危険率)を基礎として地区毎に設定。
○異常保険料の国庫負担は、事故が不可抗力に近く漁船所有者の瑕疵によるものではない中、異常な天然現象に対
して危険率が高い零細な中小漁船所有者を支援するために実施。
保険料率体系
異常危険の考え方
通常保険料率
通常起こりえる事故に対する保険料を算出する率
保険料の一部国庫負担
純保険料率
○ 経済的基盤が弱小な中小漁船所有者の負担軽減のため。
○ 中小漁船の集団的加入促進のため。
保険金の支払いに充当
する保険料を算出する率
異常保険料率
異常な天然現象による事故のうち特に危険率の高い事故に対す
る保険料を算出する率
保険料の全額国庫負担
上記の通常保険料率に係る国庫負担理由のほか、
○ 事故が不可抗力に近く漁船所有者の瑕疵によるものではない。
○ 異常な天然現象に対して危険率が高い零細な中小漁船所有
者を支援するため。
異常保険料率の設定要件
①統計上、発生確率が稀
②集団的に被災
<事故発生の原因>
台風その他の
異常な天然現象
1 台風
2 風浪
3 低気圧
4 突風 等
5 流氷または結氷
6 その他の気象条件
7 潤滑油系統
8 冷却水系統
9 その他の機関故障
10 浮流物
11 操船上
12 操機上
13 てん絡
14 その他
異常危険
標準危険率
通常危険
12
論点1
組織統合一元化を踏まえた異常保険
料率の設定のあり方
13
異常な天然現象による事故の地域性
○異常な天然現象による事故による危険率は、三宅島噴火などの漁業者の不可抗力である大規模災害によって危険率が
高くなり、地域ごとに大きく異なる。
○このため、異常保険料率は、各漁船保険組合ごと(地域ごと)に設定することとしている。現在適用している異常保険料率
は、東日本大震災に伴う津波による漁船被害の影響により、岩手県、宮城県などに高く設定されている。
地域ごと、年度ごとの異常な天然現象による事故の発生状況(無動力・5トン未満漁船)
岩手
茨城
東京
岩手 H22
香川
55.61%
6.00
8.50
H23
29.47%
(単位:%)
トン数区分
8.00
5.50
天災危険率
(%)
平成26年度異常保険料率の設定状況
5トン未満の
動力漁船
漁船保険組合
7.50
5.00
日
7.00
4.50
道
6.50
4.00
振
無動力漁船
勝
0.02
南
0.02
動 力 漁 船
5トン以上
20トン未満
青
森
県
0.05
0.22
岩
手
県
3.15
1.81
6.00
3.50
宮
城
県
2.87
2.43
5.50
3.00
福
島
県
2.09
1.33
5.00
茨
城
県
0.41
0.30
千
葉
県
0.05
0.07
東
京
都
0.27
0.09
1.50
新
潟
県
0.01
1.00
富
山
県
0.04
鹿 児 島 県
0.01
2.50
4.50
2.00
20トン以上
50トン未満
50トン以上
100トン未満
0.50
0.59
4.00
0.50
0.00
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
年度
* 10年間の危険率において、震災を含む最高値は岩手県、最低値は香川県、震災前の最高値は東京都、最低値は茨城県。
14
料率設定に関する検討課題
○異常保険料率は、異常な天然現象によって不可抗力に生じる被害が地域的に発生することから、各組合ごと(概ね都道府
県単位)に定めている。
○このことについて、組織統合一元化により漁船保険団体は全国で1組合になる。
○この場合、異常保険料率はどのように設定すべきか。
現
組織統合一元化後
行
組織統合一元化を踏まえた
異常保険料の料率設定の考え方の検討
事故の地域性を踏まえて、各組
合ごとに設定
組合が全国で1つとなること
を踏まえ、どのように異常保
険料率を設定すべきか。
※現在、異常保険料率が設定されている地区
15
危険率の地域性
○台風、風浪(津波を含む)、低気圧、突風による災害は、災害の種類により発生頻度に地域性の差異が見られるも
のと見られないものがある。
○台風は、九州地方での危険率が高い傾向。九州地方は台風の経路となることが多く、また台風のエネルギーが海
から上陸したときに最も強いという性質等の影響が考えられる。
○風浪(津波を含む)は、東日本大震災の被災地が著しく高くなり、九州北部や瀬戸内海での危険率が低い傾向。
○低気圧は、冬期の大陸性低気圧の影響が強い北海道、東北、北陸、山陰の危険率が顕著に高い。
○突風は、異常災害の中で最も危険率が低く、あまり地域性に差異が見られない傾向。
現行料率の算定期間(H4~H23)における災害原因別・組合別危険率(無動力・5トン未満動力)のランク
危険率の高さ
台風
風浪(津波を含む)
低気圧
(単位:%)
突風
1位
東京
0.337
岩手
3.297
鳥取
0.172
熊本
0.017
2位
沖縄
0.335
宮城
3.020
小樽湾
0.166
福島
0.015
3位
鹿児島
0.253
福島
2.262
道南
0.165
福井
0.014
4位
京都
0.156
南後志
1.205
岩手
0.133
広島
0.0098
5位
宮崎
0.153
茨城
0.530
宮城
0.132
香川
0.0095
全国平均
0.06
0.29
0.04
0.006
16
地域性を考慮した料率設定の考え方
○給付反対給付均衡の原則など保険の考え方からすれば、事故の危険性の高い環境については、それに応じた高い
保険料率を設定することが基本。
○地震保険及び火災保険など他制度においても、各都道府県ごとに異なった保険料率を設定。
○これらを踏まえれば、組織統合一元化後においても、異常な天然現象による被害の地域性を考慮して、異常保険料
率は各県程度の単位で地域ごとに設定することが妥当ではないか。
地震保険料率の地域区分
火災保険料率の地域区分
○ 火災保険は、火災や自然災害等による建物等の損害を補塡
○ 地震保険は、地震・噴火またはこれらによ
る津波による損害を補塡
○ 建物所在地の気候や地理的条件によって、火災や自然災害
による罹災頻度や損害の程度が異なる
○ 保険料率は将来的な地震発生に伴う損害
の危険(地震リスク)に基づき算出
○ 地震リスクが異なる地域別に1等地から3
等地で区分
○保険料率(木造の場合)
○ このため、保険料率は都道府県別に区分し設定
(保険金額1千円につき)
1等地 1.06円
2等地 1.65円
3等地 3.26円
地域間の料率較差
建物所在地 A
最大
地域間の較差 約2.60倍 ※
建物所在地 B
最小
※契約者が最多の木造住宅等の場合
出典:(独)損害保険料率算定機構ホームページ 17
論点2
東日本大震災等を踏まえた異常保険
料国庫負担のあり方
18
検討を要する課題①
○異常な事故といえども、引き続き、異常保険料について国が全額負担すること
が妥当か。
19
東日本大震災時における国の対応①
○東日本大震災によって、漁業経営の生産基盤である漁船が壊滅的に被災。
○漁船保険の保険金支払によって、漁業経営の再建に寄与。
○特に、国による迅速かつ確実な再保険金の支払いが実施されたことによって、確実に保険金が支払われることが漁
業者に明らかになり、多くの漁業者の再建意欲の維持にも貢献したとの声。
○保険金等が活用され、約1.8万隻が復旧(平成26年10月時点)。
被災漁船に対する保険金支払
漁船の復旧状況
保険金等※により約1.8万隻が復旧
生産基盤である漁船が壊滅的に被災
【主な漁船の内訳】
○ 東日本大震災に伴う津波等によって、
2.9万隻の漁船が被災
岩手県 8,753隻
○ 約1.6万隻が漁船の復旧が不可能な全
損事故となるなど壊滅的に被害
宮城県 6,692隻
46%
9,195隻
24年3月末
保険金の支払によって、多くの漁業者が再建意欲を得たとの声
国による迅速かつ確実な再保険金の支払によって、漁業者に対する
確実な保険金支払を実施
(震災発生1年以内に約90%を支払完了。平成26年12月で約99%)
漁船の撤去等に対する保険金
327隻
※漁船保険以外の措置として、漁船保険
漁業経営の再建に寄与
【支払保険金の内訳】
漁船の損害に対する保険金
福島県
約491億円
約57億円
77%
15,308隻
未加入者も含む被災漁業者のために漁
業協同組合等が行う漁船の建造、中古
船の導入等への支援を実施
(23年度~26年度予算額 計490億円)
25年3月末
89%
17,713隻
26年10月末
(平成27年度末までに2万隻の復旧を目途)
20
東日本大震災時における国の対応②
○漁業者への支払保険金約549億円のうち、国が約399億円を負担(平成26年12月時点)。
○当時の国の特別会計における積立金(約110億円)では支払不可能であったことから、一般会計からの繰入
れ(要返還)によってこの財源を確保。
※国の特別会計における支払財源の不足時には、漁業共済も含め従来から、一般会計からの繰入れ(要返還)で対応。
○結果的に、一般会計への返済義務のある額として国の特別会計において約321億円の赤字が存在(平成26年度
時点)。
震災に対する保険金支払分担
国の再々保険金の支払
被災漁船への支払保険金 549億円
国の保有積立金 110
単位:億円
再々保険料収入 1
再々保険金支払 399
(今後の保険金支払見込み 34)
国 399億円
一般会計からの繰入れ 322
漁船保険組合
約321億円の返済義務が残
存(平成26年度時点)
94億円 ※
漁船保険中央会 56億円 ※
※ 漁船保険組合及び漁船保険中央会は、震災の事故の他に、
通常発生する事故に対する保険金支払を負担
21
100トン未満漁船における異常保険料率の引上げ①
○保険料率は過去一定年間の危険率を基に保険の原則に則り決定されるため、震災による多額の保険金支払いに
よって保険料率も大幅に引上げ。
○しかしながら、100トン未満漁船については、震災被害の大部分は「異常な事故」であることから、引上げられたのは
主に異常保険料率。
○異常保険料は、事故が不可抗力に近く漁船所有者の瑕疵によるものではない中、異常な天然現象に対して危険率
が高い零細な中小漁船所有者を支援するために全額国庫負担を実施していることから、震災に伴う漁業者負担の
増加は、ほぼ求めずに済んだ。
H26 料率改定前後の対比
通常保険料率
○漁船普通保険 :
異常保険料率
1.46% → 1.52%
○漁船普通保険
0.01% →1.13%
○漁船船主責任保険 : 0.011% → 据 置
○漁船積荷保険 :
0.209% → 0.256%
異常保険料の国庫負担額
震災前
震災後
約0.8億円
約20億円
22
100トン未満漁船における異常保険料率の引上げ②
○保険の原則に則り、事故が発生した地域の漁船所有者に、高い保険料率が設定される仕組みとなっているため、東
日本大震災のような巨大災害が発生した場合には、この事故によって保険料率が異常に引き上げられる。
○東日本大震災以降、最初に保険料率が見直された平成26年4月には、被災3県の保険料率(異常保険料率と通常
保険料率)は約2.65倍の引上げ。
○しかし、異常保険料については、全額国庫負担としていることから、実質、被災漁業者の負担を削減している。よって、
異常保険料の国庫負担は、巨大災害による被災者を支援する役割を担う制度。
被災3県の保険料率の引き上げ
H26料率改定前
1.81%
H26料率改定後
4.80%
通常料率 1.78%
通常料率 1.86%
異常料率 0.03%
異常料率 2.94%
異常保険料全額国庫負担がなければ、
更に、1,575千円の負担増となる。
純保険料と漁業者負担額の比較
仮に、岩手県所属、4.9トン、FRP船質、保険金額50,000千円、近海等漁業(Ⅰ)の漁船で試算した場合
純 保 険 料
H26料率改定前
920,000円
漁業者負担額
558,150円
H26料率改定後
2,520,000円
増
減
+1,600,000円
576,450円
+18,300円
23
検討を要する課題②
○造船技術の発達等、制度創設当時からの状況の変化を踏まえ、
どこまでの災害を異常災害とみなすべきか。
24
制度創設時の考え方
○昭和34年、戦後最大の被害を生じた伊勢湾台風により、愛知県等において集団的に多くの漁船が壊滅的に被害。
○昭和35年、漁船損害補償法の一部改正によって、全国共通の料率から漁船保険組合毎に異常保険料率を設定す
る考え方を導入。
○異常危険は、台風その他の異常な天然現象に係る事故のうち出現頻度が低いもの(経常的な天然現象を除く)を想
定。
伊勢湾台風による漁船被害
(昭和34年9月26日)
・ 高潮、強風、河川の氾濫により甚大な被害。特に愛知県では高
潮により短時間のうちに大規模な浸水が発生。
制度創設時からの考え方
○ 昭和35年から、異常危険によって生じる地域間の危険率を区別し
て異常料率として漁船保険組合ごとに設定
【昭和35年以前】
・ 多数の漁船が壊滅的な被害。
【昭和35年以降】
異常料率
(組合ごと)
自然災害による戦後最大の犠牲者
犠牲者5,098人 床上浸水16万棟、床下浸水21万棟
通常料率
(組合共通)
通常料率
(組合共通)
異常危険とは
・台風その他の異常な天然現象に係る事故で、平常年に比して異常
に危険率が高く、出現頻度が小さいもの
(出典:消防白書、防災科学技術研究所)
・経常的な濃霧など通常の状態としての天然現象や漁船の耐風波性
を超えない天然現象に係る事故は含まない
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異常危険の考え方
○普通保険の保険金支払の事由は、原因別に浮流物、機関故障等の他、台風、風浪など14に区分されている。
○このうち、異常危険とみなされるのは、台風その他の異常な天然現象、具体的には台風、風浪(津波を含む)、低
気圧、突風等の天然災害により生じた事故のうち、漁船が不可抗力的に集団被災するような、統計的にその発
生確率が異常と考えられるもの。
例えば、台風による被害であっても、例年被害が少なく発生する部分もあるので、その範囲をどの程度にとる
か統計上の手法により算定し、その通常に起こり得ると考えられる程度の危険率を超える部分を異常部分と見
ることとしている。
○異常危険率が、漁船保険組合ごとに定めることとされているのは、台風等の地域性が考慮されたため。
○また、異常危険率はトン数区分ごとに定めているが、漁業等の種類や船質まで細分化して定めないこととされた
のは、台風等の危険率は同一トン数間における船質、設備等により左右される度合いは比較的少ないと考えら
れたため。
○異常保険料の国庫負担は100トン未満の漁船に限定しているが、これは、
① 小型漁船所有者は、大型漁船所有者に比べ経営基盤が脆弱であること、
② 100トン以上の漁船は100トン未満の漁船と比較して、耐波性、耐久性が高く、操業水域が広域であり地域性
が低く、異常な天然現象で集団的に被災する可能性が低いこと
を踏まえたもの。
ただし、東日本大震災では100トン以上の漁船も集団的に被災。
26
危険率の推移
○台風、風浪等の危険率は、昭和50年頃までは全体として減少傾向。
○台風、風浪については、数年毎に危険率が高くなる傾向があるが、突風については顕著な差はみられない。
○一方で、東日本大震災のように、これまで想定していなかったような未曾有の巨大災害による事故も発生。
普通保険における災害原因別の危険率の推移(無動力・5トン未満動力漁船)
0.80
0.70
0.60
伊勢湾台風 (昭和34年9月26~27日)
チリ津波 (昭和35年5月23日)
第二室戸台風 (昭和36年9月15~17日)
台風
風浪(津波)
風浪(津波)
低気圧
突風
4原因の計
平成16年
台風の上陸数が
過去最大
0.50
0.40
0.30
東日本大震災
4.3%
昭和40、41年
台風の上陸、接近が多い
北海道南西沖地震
(平成5年7月12日)
爆弾低気圧
(平成18年10月
4~9日)
0.20
0.10
0.00
参考:気象情報は気象庁HPより( 統計期間:昭和26年~平成25年)
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事故率の推移
○台風、風浪等の事故率(事故件数/引受隻数)は、全体としては年を経て減少傾向。
○特に風浪(津波含む)によるものは減少傾向が顕著であったが、これまで想定していなかった未曾有の巨大災害であ
る東日本大震災が発生したため事故率は一気に上昇した。
○台風、低気圧については、数年ごとに事故率が高くなる傾向があるが、突風については顕著な差はみられない。
普通保険における事故率の推移(無動力・5トン未満動力漁船)
9.00
%
8.00
台風
風浪(津波)
風浪(津波)
7.00
低気圧
突風
6.00
4原因の計
近似曲線
対数 (4原因の計)
5.00
4.00
3.00
2.00
y = -1.071ln(x) + 5.7784
R² = 0.3464
1.00
0.00
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過去に発生した主な異常災害によって設定された料率
○過去の異常な天然現象による事故については、伊勢湾台風(S34)、チリ地震津波(S35)、第二室戸台風(S36)によ
る事故が非常に高い料率(危険率)になっている。
○このほか、北海道南西沖(奥尻沖)地震(H5)による津波被害についても、高い料率(危険率)になっている。
○これらを踏まえたとしても、東日本大震災(H23)による津波被害は非常に高い料率(危険率)になっている。
※ 料率改正は原則3年ごとに実施。料率算定期間は料率改正年の前々年の3月31日以前の20年間。
S44改正以降、1%を超えた異常保険料率(無動力・5トン未満動力漁船)
伊勢湾台風(S34)
●三重県(無動力)S44改正(2.58%)
チリ地震津波(S35)
●道南(無動力)S44改正(11.35%)
第二室戸台風(S36)
●高知県(無動力)S44改正(4.67%)、 ●大阪府(無動力)S44改正(1.30%)
北海道南西沖地震(H5)
東日本大震災(H23)
●南後志 H8改正(1.19%)、H11改正(1.08%)、H14改正(1.22%)、H17改正(1.28%)
●岩手県 H26改正(3.15%)、 ●宮城県 H26改正(2.87%)、 ●福島県 H26改正(2.09%)
※平成26年度改正より料率算定期間を10年間→20年間に改正。改正前の10年間で換算した場合は記載した料率の約2倍になる。
その他
●北見(原因:高潮等)(5トン未満動力)S44改正(1.49%) 、(無動力)S44改正(1.23%) 、
●沖縄県(原因:台風、風浪) S50改正(1.52%)
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異常危険の考え方
○漁船が不可抗力的に集団的に被災するような自然災害を異常危険とみなすという考え方に沿えば、北海道南西
沖地震や東日本大震災の津波や伊勢湾台風クラスの、出現頻度は低いものの危険率の高い事故は、引き続き異
常危険とみなすことが必要ではないか。
○一方で、これまで、漁船の建造技術や漁港整備等が進んだことなどにより自然災害に対し漁船が被害を受ける可
能性が低下してきていることから、これまで異常危険とみなしていた危険の中で比較的危険率が低くなったものも
あることを踏まえ、異常危険の対象について検討することも必要ではないか。
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(参考資料)民間損害保険における異常危険
○民間損害保険会社においては、異常災害による損害の塡補に充てるための準備金(異常危険準備金)を保有するこ
とが義務づけられている。
○この異常危険準備金は、地震災害リスクに対しては関東大震災、風水害リスクに対しては伊勢湾台風クラスが発生
した時の推定支払保険金まで積み立てることとされている。
○このことを踏まえれば、民間損害保険においては、伊勢湾台風クラスの大規模災害については異常危険とされてい
る。
「保険業法施行規則」(平成八年二月二十九日大蔵省令第五号)
(損害保険会社の責任準備金)
第七十条 損害保険会社は、毎決算期において、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる金額を責任準備金として積み立てなければ
ならない。ただし、自動車損害賠償保障法第五条 (責任保険の契約の締結強制)の自動車損害賠償責任保険の契約及び地震保険に関する
法律第二条第二項 (定義)に規定する地震保険契約に係る責任準備金(第四項において「自賠責保険契約等に係る責任準備金」という。)の積
立てについては、この限りでない。
一
普通責任準備金 略
二
異常危険準備金 異常災害による損害の塡補に充てるため、収入保険料を基礎として計算した金額(収入保険料以外の金額を基礎とす
ることが合理的と認められる保険契約の種類として金融庁長官が定めるものにあっては、金融庁長官が別に定めると
ころにより計算した金額)
○ 異常危険準備金は、船舶保険においては、事業年度における保険料収入の8割を超える保険金支払いがある場合に取り崩して支払に充てる
ことができることとなっている。
○ また、準備金の積立ては、地震災害リスクに対しては関東大震災が再来したときの推定支払保険金まで、風水害リスクに対しては伊勢湾台風
※に相当する規模の台風が発生した時の推定支払保険金までとし、積立額がこれを下回る場合は計画的に積み増すとされている。(金融庁告
示)
※大規模災害が増加していることを踏まえ、「平成3年の台風19号規模」から「伊勢湾台風規模」に引き上げ(平成17年)
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検討を要する課題③
○現在、異常保険料の国庫負担は、100トン未満漁船についてのみ実施。
○東日本大震災による100トン以上漁船の被災状況を踏まえ、100トン以上漁船
も対象にすべきか。
32
100トン未満に国庫負担している背景
○100トン未満の漁船所有者は、経営基盤が脆弱で、また、100トン以上の漁船に比べ危険率も高い。
○異常保険料の国庫負担は、100トン未満の漁船所有者の負担軽減と、集団的な加入を得て保険事業として安定性を
確保する観点から実施しているもの。
○100トン以上の漁船所有者は、100トン未満の漁船所有者と比較して経営が安定しており、100トン以上の漁船の危
険率が100トン未満漁船の危険率より低いこと、100トン以上漁船は民間保険会社と競合関係にあり、民業圧迫とな
らないよう配慮する必要があること等から、100トン以上に新たに国庫負担を設けることは難しいのではないか。
天然現象による危険率
100トン未満と100トン以上の経営状況
○経営体当たりの漁労売上総利益(総トン数別)
○台風、風波(津波)、低気圧、突風等による危険率
(百万円)
(%)
150
総トン数500t以上
(1隻当たり平均307t)
3.0
2.5
120
2.0
90
総トン数100~200t
(1隻当たり平均39t)
60
総トン数50~100t
(1隻当たり平均21t)
総トン数200~500t
(1隻当たり平均96t)
総トン数20~50t
(1隻当たり平均13t)
30
100t未満漁船
100t以上漁船
総トン数10~20t
(1隻当たり平均15t)
0
H20
H21
H22
H23
H24
(年度)
注1:経営体当たり使用する動力船の合計トン数で区分
注2:漁労売上総利益=漁獲物の販売金額 - 漁労売上原価(労務費、油費、餌代等)
注3:「漁業経営調査報告」により作成
(年度)
※ 平成23年度の100トン以上漁船の危険率は、分損事故の保険金請求が修繕
終了後に行われるため比較的遅れて危険率が高くなっているもの
※ 平成14年、18年、21年の100トン以上漁船の危険率は、集団的な事故では
なく大型漁船の全損事故が発生したことによるもの
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(参考資料①)100トン以上漁船の概況
○漁船保険加入隻数約18万隻のうち100トン以上漁船加入隻数は858隻(0.5%)。
○漁船保険加入の100トン以上漁船の操業形態は、かつお・まぐろ漁業335隻、まき網漁業184隻、官公庁船88隻、い
か釣り漁業91隻など。
漁船保険加入隻数
100トン以上漁船の操業形態
100トン以上漁船加入隻数 858隻 (0.5%)
漁船保険加入隻数
約18万隻
漁業種類
隻 数
か つ お ・ ま ぐろ 漁 業
335
ま
業
184
官 公 庁 ( 調 査 船 な ど)
88
い か 釣 り 漁 業
91
底 び き 網 漁 業
84
近
76
き
海
網
等
漁
漁
業
出典:平成24年度漁船保険統計表(H25年3月)より作成
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(参考資料②)100トン以上漁船の保険加入状況
○100トン以上の登録漁船984隻のうち漁船保険の加入は858隻(加入率87.2%)となっている。漁船保険未加入の
126隻(12.8%)は民間保険に加入又は未操業の漁船。
○民間保険会社は、漁船について、契約規模が大きく、事故率の低い100トン以上漁船を主たるターゲットとしており、
100トン未満漁船については採算の採れる市場とみなしていない。
○漁船保険に加入する100トン以上漁船のうち42隻は、漁船保険で付保する保険金額を低く抑え、漁船価額の大部分
(約9割)を民間保険に契約。
100トン以上漁船984隻
漁船保険加入
858隻
126隻
(12.8%)
(87.2%)
42 隻
漁船保険と民間保険の併用加入
( 漁船保険:民間保険 =12:88 )
※ データは25年3月末時点
民間保険加入*
又は未操業漁船
*民間保険の加入実態は、漁業団
体から聞き取り(漁業団体は、漁船
保険又は民間保険の保険契約の
上、操業を行うよう指導)
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