吉田会長の年頭所感 一般社団法人 日本伸銅協会 会長 吉田 政雄 平成

吉田会長の年頭所感
一般社団法人 日本伸銅協会
会長
吉田
政雄
平成27年の新春を迎えまして謹んでお喜び申し上げます。
昨年を振り返ってみますと、米国では景気は堅調な回復が続きましたが、
欧州では景気回復が停滞気味であり、一方で新興国では一部に景気減速が
見られるなど明暗交々の経済状況でありました。
我が国においては、4月の消費税率引き上げによる駆け込み需要の反動
はあるものも、経済政策により、円安基調が進み、デフレ脱却の兆しが見
え始めていると考えられます。
このような状況下、私どもの伸銅品の需要は、品種によるばらつきはある
ものの、近年の低迷から徐々に回復の基調が見え始めております。
板条分野は、自動車や半導体向け需要が輸出を含めて堅調です。黄銅棒も、
住宅関連などの需要に支えられ回復基調にありましたが、消費税引き上げの
影響を受けました。銅管については、ルームエアコンの消費税引き上げ前の
駆け込み需要と夏場に向けた在庫の積み増し、季節性の少ないパッケージエ
アコンの需要等により、前年を上回る生産量を確保しました。
こうしたことにより、平成26暦年の伸銅品生産は、対前年比5%増の8
1万トンを上回る水準となり、3年ぶりに80万トン台に戻す見通しです。
平成27年の我が国経済につきましては、第3次安部内閣が発足し、デフ
レ脱却に向けアベノミクスの一層の効果を上げるべく、補正予算の編成と、
法人税率の引き下げをはじめとする景気刺激策が図られていくものと想起
されます。
また、原発の再稼働を始め、省エネ賦課金制度の見直しなどを含めて、エ
ネルギーのベストミックスの議論が進展することが期待され、エネルギーを
大量に消費する私どもの業界にとっても、これらの環境が好循環につながっ
ていくことを期待している次第です。
伸銅品の需要につきましては、自動車や半導体等を主な需要先とする板条
製品が堅調に推移し、引き続き伸銅品需要を牽引することを期待しておりま
す。黄銅棒につきましては、住宅投資が戻ることに期待し、銅管については、
従来と比べて需要期と不需要期の区別が少なくなり、安定した需要と年間を
通した平準化生産に移れることを望んでいます。
このようなことから平成27暦年としては、本年と同様の81万トンから
心情的にも少しでも微増する需要量を見込んでおります。
然しながら、伸銅業の生産量はリーマンショック以前には年産100万ト
ンの水準を維持していたことを考えますと、回復基調に転じてはいるものの、
依然として厳しい環境にあることには変わりません。
今後為替の影響により日本のユーザー業界の海外からの回帰が期待され
るものの、大きな量は見込めそうにもないものと考えております。
またパソコンやスマートフォンなどに使われる電子部品の機能の変化や
軽薄短小化、中国等の近隣の伸銅業の技術水準向上、銅価高による他素材と
の競合など、複合的に影響してきております。
このような環境下、伸銅協会が取り組むべき中期課題は、成長戦略の筋道
を立て、それを着実に実施に移していくことであります。
伸銅協会では、一昨年度から将来の伸銅品需要の回復に向けた「伸銅品ア
クションプラン」の活動をスタートしており、昨年秋にはセカンドステップ
として、「アクションプラン・フェーズⅡ」を進めております。
具体的には、新規需要や新規用途に繋がる調査や伸銅技術の開発に向けた
ロードマップの検討や、関係団体の皆様にご支援いただきリサイクルの調査
に取り組んできております。
これらの活動を通じ、日本国内の銅産業における需要拡大にもつながるこ
とを期待しております。
ユーザーのニーズにより接しておられる流通業界の皆様、またより専門的
な知識をお持ちのリサイクル業界の皆様の一層のご協力をお願い致したい
と思います。
昨年は自然災害や天災、産業事故が多い年でありました。非鉄金属等の金
属産業においても、重大な事故が多く発生しました。伸銅協会と致しまして
も、関係官庁にご相談させていただきながら対応に努めてまいりました。
安全については、業界内にとどまらず鉄鋼連盟をはじめとした他業界との
情報交換やセミナーを開催し、情報の横展開に努めてまいりました。
また自然災害の発生による影響に対し、サプライチェーンの連鎖の重要性
を深く認識するとともに、伸銅協会としても、経済産業省、経団連へ相談し
ながら、「非常事態における事業継続計画の連携強化について」を公表し、
協会として会員間のさらなる連携強化の推奨を行ってまいりました。
更に、エネルギーコストについても重要な取り組みとして、経済産業省に
「エネルギーコストの上昇に対する対策に関する要望書」を提出しました。
これらの取組みを通して協会としても日本のものつくり基盤強化の一助
となるように取り組んでまいります。
また、伸銅品に関する新たな需要開拓を進める意味においては、基礎とな
る産学の連携による銅の研究開発を活発化し、今後の伸銅業の発展に向けた
取り組みを強化していくことが重要な課題であります。銅に関する産学連携
の研究が一層推進されるよう、「日本銅学会」を今後も支援して参りたいと
思います。
更に、日本銅学会とユーザーを巻き込んだ産官学による共同開発の推進に
よって、世界の技術のトップリーダーを目指すべく伸銅業の技術開発を進め
ていこうと強く決意しております。
日本伸銅協会は、今年もこうした課題の一つ一つに全力で取り組んでまい
ります。そのためには、流通業界及びリサイクル業界を初めとする関係業界
のご理解とご協力を頂くと共に、関係官庁のご支援が必要なことは言うまで
もありません。引き続き皆様方のご指導とご鞭撻を賜りますよう宜しくお願
い申し上げます。
最後に当たりまして、本年のご多幸とご健康をお祈り致しまして、私の新
年のご挨拶とさせて頂きます。
平成27年元旦