第6章 財政政策の基本構造 10月17日(金) 1 限目 前回の復習 公的部門の役割 1.歳出 ① 公共サービス : 教育、医療、福祉など ② 公共投資 道路、港湾、空港など : 2.歳入 個人所得税、 消費税、 物品税、 関税、 法人税、 固定資産税、 etc 2 前回の復習 政府財政収支 = 租税収入(歳入) - 財政支出(歳出) 政府財政支出 > 0 ⇒ 財政黒字 政府財政支出 < 0 ⇒ 財政赤字 ⇒ 財政支出をまかなうためには財源が必要 国債の発行 (=財政赤字) 3 前回の復習 ① 減税 所得減税、投資減税、住宅ローン減税など ② 財政支出拡大 公共事業、定額給付金、エコポイント制度など ③ ビルトイン・スタビライザー 累進課税制度、法人税、失業保険など 4 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス 乗数効果の大きさは課税体系に影響を受ける! 投資(I) や政府支出(G) の増加 ⇒ 所得 (Y) の増加 ⇒ 消費(C) を拡大 ⇒ 所得増加分の一部は税として政府へ ⇒ 課税額の大きさが、乗数効果の大きさを左右する 5 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス 初期の需要増 派生需要(2次) 派生需要(3次) クーラー需要100億円 up 100億円の所得からの 派生需要(80億円) 80億円の所得からの 派生需要(64億円) 80億×0.8 100億×0.8 64億×0.8 クーラー生産100億円 up 派生需要による 生産増(80億円) 派生需要による 生産増(64億円) 所得100億円 up 所得がさらに増加 (80億円) 所得がさらに増加 (64億円) 6 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス 初期の需要増 派生需要(2次) 派生需要(3次) クーラー需要100億円 up 90億円の所得からの 派生需要(72億円) 64.8億円の所得からの 派生需要(51.8億円) 64.8億×0.8 90億×0.8 51.8億×0.8 クーラー生産100億円 up 派生需要による 生産増(72億円) 派生需要による 生産増(51.8億円) 所得100億円 up 所得がさらに増加 (72億円) 所得がさらに増加 (51.8億円) 政府への税金(10億円) t = 0.1 政府への税金(7.2億円) t = 0.1 政府への税金(5.2億円) 7 t = 0.1 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス 政府の課税は次の式に基づいて行われるとする。 T tY T0 T: 総税収、 (1)式 Y: 所得水準、 t: 限界税率、 T0: 所得補助(定数) 限界税率: 所得増加のうち、どの程度が税にとられるかを表した数字 (0 < t <1) 所得補助: 所得がある水準以下なら政府から所得補助がもらえる。 家計の可処分所得(Yd)と消費額(C)はそれぞれ次の式で表される Yd Y T (2)式 C cYd C0 (3)式 c: 限界消費性向、 C0: 基礎消費 8 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス 所得(GDP)の構成式は次のようになっていた。 Y C I G (4)式 (1)、(2)、(3)式を(4) 式に当てはめると・・・ Y [c(1 t )Y cT0 ] (C0 I G) これを所得(Y) について整理すると、 1 Y (C0 I G cT0 ) 1 c(1 t ) 9 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス つまり、課税を考慮すると、乗数の大きさは 1 1 c(1 t ) 税を考慮しない場合 ⇒ 1 1 c 限界税率(t) が大きいと、 ⇒ 乗数効果は小さい 限界消費性向(c) が大きいと、 ⇒ 乗数効果は大きい ⇒ もし、所得水準を基準にした税率が高くなると、政府の財政政策 の効果は、(乗数が小さくなるため)弱まってしまう。 10 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス 問: 財政の均衡式が次のように表されている。C0 = 100、 I = 50、 G = 50、 T0 = 0、 c = 0.8、 t = 0.2 の時、次の問いに答えなさい。 1 Y (C0 I G cT0 ) 1 c(1 t ) ① 均衡所得(Y) はいくらになるか? ② 政府支出が 50 から 150 に増えた時の、所得の 増加分はいくらか? ※ 乗数は小数点第2位まで計算する 11 6.5. 政府の課税活動と乗数プロセス ① 均衡所得(Y) はいくらになるか? Y 1 (100 50 50 0) 1 0.8(1 0.2) 1 * 200 2.78 * 200 556 0.36 ② 政府支出が 50 から 150 に増えた時の、所得の 増加分はいくらか? ⇒ 乗数の値に政府支出(G)の増加分をかければよい。 Y 2.78 *100 278 12 6.6. 財政収支の長期的意味 平成に入り、政府の国債発行残高が急速に拡大 国債発行残高(億円) 10,000,000 9,000,000 8,000,000 7,000,000 6,000,000 5,000,000 4,000,000 3,000,000 2,000,000 1,000,000 0 出所) 財務省『国債および借入金並びに政府保証債務現在高』 ⇒ 原因は、税収の落ち込みと財政支出拡大 13 6.6. 財政収支の長期的意味 前年比増加額(億円) 800,000 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 -100,000 出所) 財務省『国債および借入金並びに政府保証債務現在高』 ⇒ 景気の緩やかな回復を見て、 2005年以降国債の発行を抑制 ⇒ リーマンショック以降、再び増加 14 6.6. 財政収支の長期的意味 政府の財政政策は、常に次のような予算制約のもとで行われる (財政支出)+(負債への利払)=(税収)+(公債残高の変化) 日本の負債残高はどうすればよい? 大規模な増税、政府支出の大幅抑制 ⇒ 負債残高の減少 ⇒ しかし、実際には負債への利払だけでも大変な金額! ⇒ プライマリー・バランスの考え方 15 6.6. 財政収支の長期的意味 プライマリー・バランス 政府の税収と純粋な政府支出との差でみた財政収支 (公債の利払いなどは含まない) もしこれがゼロなら、「プライマリー・バランスが実現している」という ⇒ 日本の財政再建の目標! (政府債務をゼロにすることではない!) 達成出来れば・・・ ⇒ 債務が無制限に膨れ上がるの ことを防げる。 16 6.6. 財政収支の長期的意味 債務状態を示す指標: 債務額 GDP ⇒ この指標の動きは成長率と金利の大小関係に依存 ① 成長率 > 金利 ⇒ (債務額)/(GDP) down!! ② 成長率 < 金利 ⇒ (債務額)/(GDP) up!! 日本が現在、成長率も金利も低い ⇒ (債務額)/(GDP) が著しく拡大することはない 17 6.6. 財政収支の長期的意味 債務残高/GDP 200.0 180.0 160.0 140.0 120.0 ( % ) 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 出所) 財務省『国債および借入金並びに政府保証債務現在高』 18
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