Topics 「第6回日台合同セミナー」を台北にて開催

Topics 「第 6 回日台合同セミナー」
を台北にて開催
トピックス
台湾側の衛生署食品薬物管理局(Food and Drug Administration、TFDA)および財団
法人医薬品査験中心(Center for Drug Evaluation、CDE)と日本製薬工業協会の共催で
第6回日台合同セミナーを2011年11月22日、台大医院国際会議場にて両国の政府関係
者も含め110数名参加のもとに開催しました。
実施されました、
「未承認薬・適応外薬検討による新
日台セミナーについて
薬創出・適応外薬解消等促進加算」を、台湾側に話題
台湾日系医薬品部会の発案により、単発で終わる
提供しました。患者数の少ない疾患への薬剤供給、医
セミナーではなく、セミナーの成果が将来の相互認
療現場では要望の強い適応症ですが、開発企業にと
証やデータベースの共用といった成果につながるよ
って利益が期待できない適応外薬の開発など、双方
うな、継続性あるテーマを取り上げたい気持ちを含
の国民にとって重大な関心事のテーマであり、台湾
※1
め、開発薬事関連の治験相談制度、GMP 管理制度、
当局を始め多くの参加者より質問が寄せられ関心の
安全性管理計画の課題を取り上げ、情報交換を通じ
高さが伺われました。近い将来、相互交流により具
て相互理解を深めました。
体的な成果が得られるのではと、今後のフォローア
薬価制度、薬価差解消の提言等の経済的な諸問題
ップに期待するところです。
につきましては、前日の11月21日に中央健康保険
本セミナーには、日本側から、厚生労働省医政局経
局(健保局)の李副局長との面談で、日本側から種々
済課の中島宣雅課長補佐、医薬食品局安全対策課の
要望を提案いたしました。歴史的な双方の立場の相
田中大祐課長補佐、独立行政法人医薬品医療機器総
違を認識しながらも、今後とも対話を継続すること
合機構(PMDA)の佐藤岳幸審議役、日本製薬工業協
を確認しました。また、薬価差解消を含めた経済的
会企画部の草井章部長にスピーカーとして参加いただ
諸問題は、12月7∼8日に東京で開催する第36回日
きました。
台貿易経済会議で取り上げられる予定です。
本稿では、セミナーでの台湾側の発表4演題と質疑
内容を紹介します。また今回、日本で2010年から
セミナー前日の台湾中央健康保険局(健保局)との会合
「第6回日台合同セミナー」を台北にて開催
※1)GMP…Good Manufacturing Practice、医薬品の安全性
試験の実施に関する基準
セミナー会場
JPMA News Letter No.147(2012/01)
37
午前のセミナーについて
TFDA医薬品・生物製剤局鄒玫君(Dr. Meir-Chyun
Tzou)科長および製薬協伍藤忠春理事長の挨拶の後、
TFDA陳恵芳科長、製薬協国際委員会益田アジア部会
長の座長で午前のセミナーが始まりました。
最初の課題は治験の事前相談制度に関し、TFDA石
麗鳳科長の講演がありました。
※2
※3
2011年8月2日にIND またはpre-NDA 医薬品
左から 伍藤製薬協理事長、台湾健保局 李副局長
に適用される「Domestic Innovation Consultation
Project」がアナウンスされました。
「Normal Pro-
新施設、移転増設、新製剤の追加が対象となり、い
ject」
、
「Active Project」の2種に分類されます。
ったん閉鎖した工場が再開する場合も査察を受けな
「Normal project」ではpre-clinical(前臨床試験)
、
ければなりません。リスクレベルにより2∼4年で定
フェーズⅠ、フェーズⅡが対象でメーカー側より
期調査を受けます。問題がある場合は(for-cause
「pre-filing meeting」
(申告前の合意)または「INDス
inspec-tion)アトランダムに直接現場に調査に行き
ポンサーミーティング」のリクエストができます。
ます。国内製造所は、151の医薬品製造工場のうち
「Active project」ではフェーズⅡ終了時が対象で、
31の医薬品製造工場がPIC/S GMPに適合していま
TFDAが
「pre-filing meeting」
を開催し、IND もしく
す(2011年10月現在で)
。海外製造所は新GMP審
はNDA承認後、必要に応じてスポンサーミーティン
査を受けなければならず、また2∼4年の頻度(リスク
グを開催します。国内メーカーをサポートすること
レベルに基づく)でfollow-up審査も受けなければな
が目的であり、販売承認取得までサポートされます。
りません。PIC/S加盟国の実地調査かPlant Master
メーカー側からProject申請でき、以下4点を満足し
File review
(資料審査)
を申請側が選べます。PMF
(台
ているかで評価されます。革新的/公衆衛生への貢献
※5
湾行政院衛生署)にはSOP もすべて整理して提出す
度/目標まで要する時間/法規制への満足度です。1年
ることになります。台湾PIC/S GMP審査を通過の海
ごとに審査され、プロジェクトに特化したチームが
外 製 造 所 は71,005ヵ 所 中705ヵ 所。 そ の 内 訳 は
編成(TFDA、CDE、諮問委員会が参加)され、四半
PIC/S 加盟国が517ヵ所、PIC/S非加盟国が188ヵ
期ごとにメーカー側と進捗確認し、目標を達成でき
所でした。
※4
なかった場合はリストから除外されます。また、ミ
PIC/S GMP の完全実施は2014年12月31日と
ーティングの議事録はIND/NDA審査の参考となり
なっています。質疑では「2014年12月31日までに
ます。
GMP証明がないと、台湾では製品を流通させられな
質疑では、
「日本はICH(医薬品規制調和国際会議)
いことになっているが、審査対象の海外工場数が多
のメンバーだが、FDA(米国食品医薬品局)
やEMA(欧
く、現在審査官36名で、どのように完了させるのか。
州医薬品庁)の承認製品のみが簡略申請の対象であ
審査官を増員したり、PIC/S加盟国からの調査結果
り、日本承認製品は簡略申請の対象からはずれてい
を受け入れるなど対策予定はあるのか」との質問に対
る。今後日本はどのような努力をしたら同様に扱わ
し、
「リスクレベルにより査察方法を調整し、follow-
れるのか」との問いに対し、
「日本をはずしていると
upの審査も一時期に実施するのではなく段階に分け
いうわけではない。もっと分析を行い、政策上反映
て実施する」
との回答がありました。
したいと思う」
との回答がなされました。
次 に 台 湾 医 薬 品GMP管 理 制 度 の 現 況 に つ き、
TFDA陳映樺(Ms. Li-Feng Chen)代理科長が講演さ
れました。
資格審査を受けたフルタイムの査察官は現在36人
おり、国内(今まで170社)
・海外製造所、包装資材
を含む物流業者、原料メーカー、医療ガスメーカー、
委託試験施設の査察実績があります。GMP査察は、
JPMA News Letter No.147(2012/01)
38
※2) IND…Investigational New Drug、臨床試験申請で使われ
る用語。臨床試験を行うとしている新医薬品(候補)について
の情報をまとめたパッケージ。
※3) NDA…New Drug Application、米国において使われる用
語で、新薬の承認申請PICおよび医薬品製造査察共同機構
PIC-Schemeをあわせた呼称。
※4) PIC/S … Pharmaceutical Inspection Convention/
Scheme医薬品製造査察の相互承認に関する協定(GMP相互
査察協定)。
※5) SOP…Standard Operating Procedures、標準業務手順
書。治験の業務手順について詳細に記述した指示書。
「第6回日台合同セミナー」を台北にて開催
台湾 CDE 高執行長、台湾 TFDA 王シニアスペシャリストとの記念撮影
午後のセミナーについて
午後のセミナーはTFDA鄒玫君科長、製薬協赤坂
国際部部長の座長でセミナーが再開されました。
結核の治療をする。潜在型結核では、INAH治療を9
ヵ月実施後1∼2ヵ月にTNF-αを投与。そのうえで
定期的な検査・観察を実施する。肝炎では、治療前
に血清B型肝炎抗原および抗HCVの測定、活動型肝
CDE陳紀勲(Dr.Chi-Husun Chen)小科長および
炎は禁忌、無症候性保菌者ではRMPのもとTNF-α
TFDA陳可欣(Ms.Keh-Sin Chen)科長より、台湾に
阻害剤を投与。無症候性保菌者の投与前試験として
おけるREMS(Risk Evaluation Mitigation Strat-
種々の検査を実施。種々の検査による経過観察と
egies、リスク評価および軽減プログラム)について
TNF-α阻害剤中止基準が示されました。
の説明がありました。
Ms. Chenも市販後の副作用モニターで発見され
Dr. Chenは台湾ではREMSとRMP(Risk Manage-
た重篤な副作用に関するRMPにつき、抗てんかん剤
ment Program、医薬品リスク管理計画)は発足し
Carbamazepineによるスティーブンスジョンソン
ようとしている段階であることをまず説明したうえ
症候群と上皮壊死、糖尿病薬Rosiglitazoneによる
で、TNF-α阻害剤は強力な免疫抑制剤で、リウマチ
心血管疾患とPioglitazoneによる膀胱がんの高い危
のような自己免疫疾患に使用されますが、1998年
険性について紹介しました。Carbamazepineのケ
に発売されて以来、広範囲に使用されるようになり、
ースでは、外来患者の1/3がオフラベル使用であっ
重篤な感染症の危険性が見いだされたことの紹介が
たため、患者に初期症状を印刷物で説明するととも
ありました。この中には、細菌感染症、マイコバク
に、投与に際しては健保局の事前承認を必要としま
テリアによる潜在性結核の再発、真菌症、寄生虫症、
した。2011年9月7日には薬物治療ガイドを出し、
ウイルスなど、これらはFDA、EMA他の表示に警告
Physician/Pharmacist Letterを出したことの紹
として記載されています。特に結核、B型肝炎への特
介がありました。
別な関心が示されました。
最後に
台湾での高頻度の結核(66.7人対10万人)は、台
湾での広範囲BCGの使用による潜在性結核の診断に
今回のセミナーには100名をこえる参加者、特に
おけるツベルクリン皮膚反応の偽陽性化を招いてお
若い方々が集い、最後まで熱心に討議に参加いただ
り、また、B型肝炎抗原(+)の高い発現頻度(台湾:
き、中身の濃い情報交換ができましたことを大変嬉
15∼20%、米国:0.27%)についても、簡単な警
しく思っています。
告表示のみでは不十分で、特別な台湾でのRMPが必
また、日本側の演者のPMDA佐藤岳幸審議役、日
要です。TNF-α阻害剤による結核およびウイルス性
本製薬工業協会企画部 草井章部長、医薬食品局安
肝炎のためのRMPを詳細に紹介しました。
全対策課 田中大祐課長補佐、厚生労働省医政局経済
すなわち、結核では、治療前に活性型と潜在性結
核のスクリーニング(病歴、身体検査、胸部レントゲ
ン、ツベルクリン皮膚反応、インターフェロンγ遊
離検査)
をし、活性型結核では、TNF-α治療を中止し、
「第6回日台合同セミナー」を台北にて開催
課 中島宣雅課長補佐のご講演内容につきましては、
省略いたしましたことをご了承ください。
(国際委員会アジア部会台湾チームリーダー
京地 成和)
JPMA News Letter No.147(2012/01)
39