Column23 Si 基板上のナノサイズの溝の鋳型としての活用(1): 8,797 cm/S と高い電気伝導度を持った単結晶 PEDOT ナノワイヤの合成 2014 年 12 月 25 日 Cho ら1 は Si 基板上に作成した幅 100 nm の溝を鋳型として気相重合法により 8,797 S/cm という高い電気伝導度を持った PEDOT を合成している。PEDOT の合成には一般的 に化学酸化重合および電解酸化重合が用いられるが,最近では気相重合法により高い電気 伝導度が得られことが分かってきた。気相重合法は酸化剤を基板に塗布し、そこにモノマ ー蒸気を導入することにより、基板上で酸化重合を行う方法である。水や有機溶媒を使用 しない乾式法であるので、化学重合法や電解重合法に比較し溶媒除去が不要など製造面の 利点を有している一方、希望通りの膜厚を持ったポリマーを得るのが困難であるという問 題点がある。 気相重合法で得られる PEDOT が高い電気伝導度を示す理由については,高次構造につ いて詳細な結果が報告されていないで不明であるが,重合プロセスの特徴として①モノマ ー濃度が高い,②一種の固相重合反応である,③モノマー蒸気によるアニーリング効果が あるといった点が挙げられる。 また,基板の配向がその上に生成する導電性高分子の配向および結晶性に影響を及ぼす ことは従来から知られている。例えば,ポリピロール(PPy)の化学合成を配向したポリカー ボネート(PC)のチューブの中で行うと,PC の配向が生成 PPy の結晶性に影響を及ぼし, その影響の程度はチューブ径に反比例する2。PC チューブ径が 300 nm では 734 S/cm,2000 nm では 90 S/cm と低下する。 さて,Cho らの手法のポイントは Si 基板上にフォトリソグラフィー法で作成した 100 nm 幅の溝を鋳型として,FeCl3 を酸化剤 として気相重合していることである (図 1)。生成した PEDOT は制限視 野電子回折(Selected-area electron diffraction: SAED).などの解析によ り図 2 に示す結晶構造を持っている。 先に述べた PPy の例と同じように, このケースでも生成 PEDOT(Cl-が ドープしている)の電気伝導度は溝 の幅に大きく影響される(図 3) 。95 nm では 8,797 S/cm であるが,幅の 増加と共に電気伝導度は指数関数的 に低下する。この最も高い電気伝導 図 1 Si 基板上の溝を鋳型として EDOT の気相重合 度移動度(σ)=8,797 S/cm を用い, 1 移動度(μ)をμ = σ/qN(q:キャリアの電荷,N:キャリア密度)式から求めるとμ= 88.08 cm2/V・s となる。 図 2 生成した単結晶 PEDOT ナノワイヤ 図 3 単結晶ナノワイヤの径と電気伝導度の関係 参考文献 1) 2) B. Cho et al., Nano Lett. 2014, 14, 3321 V. P. Menon et al., Chem. Mater. 1996, 8, 2382 2
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