提出日:2015 年 1 月 7 日 千葉大学 工学部 都市環境システム学科 3 年 12T0272W 菅波慎吾 ■ ■■■■■ 都市環境エネルギー概論 課題レポート ①分析的視点 世界では政府間パネル IPCC が 2050 年までに二酸化炭素排出量を 40~70%削減する必要があると 強調しており、二酸化炭素排出量削減については地球温暖化対策の一環として緊急性の高い事項となっ ている。 日本において二酸化炭素排出量削減目標を達成するためには、火力発電燃料や運送用燃料を全て再生 可能エネルギーや燃料電池に置き換える、二酸化炭素回収を行う、さらには産業用燃料や家庭用燃料を 燃料電池などに置き換える必要がある。現状では、火力や産業プラントなどで大規模な二酸化炭素排出 回収技術はすでに確立され、商用普及が始まっている。 再生可能エネルギーは 10 年以上前から世界で普及が進み、加速的に増大している。例えば、ドイツ では 2050 年までに電力の 80%を賄う計画であり、アメリカも同様な計画を掲げている。また、EU 全 体としても 2050 年までに 50%程度の目標を掲げ、中国も大規模に風力などに投資している。 世界が再生可能エネルギーを積極的に電気事業に取り入れているのに対し、現在の日本は、化石燃料 を利用した発電を採用している。しかし、燃料源である原油に関しては、近年、新規油田開発が留まり つつあり、原油の枯渇が予想されている。そのため、エネルギー供給源を化石燃料から切り替えていく 必要がある。 日本における二酸化炭素排出量の約 20%を占めるのは運輸部門(主に自動車)である。そのため、現 在主流であるガソリン自動車を電気自動車や燃料電池自動車に切り替えていけば、二酸化炭素排出量は 大幅に削減され、有限である石油の採掘も抑えることが可能となる。 そこで、電気自動車や燃料電池自動車の普及を促進させるためには、水素の利活用が有効である。こ れらの自動車に水素を利用して再生可能エネルギーを蓄電することで、送電線などのインフラを必要と せず、機動的になるため、効率が良くなると考えられる。 1 提出日:2015 年 1 月 7 日 千葉大学 工学部 都市環境システム学科 3 年 12T0272W 菅波慎吾 ②提案的視点 現在の日本は、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を利用する火力発電や、ウランを燃料とした安 定的な発電が可能な原子力発電を主としてエネルギー供給を行っている。 しかし、将来的に有限である化石燃料は枯渇する危険性があり、地球温暖化や原発問題などのエネル ギー問題も深刻化する中で、将来的なエネルギーとして水素の利活用が注目されている。水素をエネル ギー源として活用する水素社会の実現のために、安倍政権の成長戦略である日本再興戦略において、水 素ステーションの整備を支援することにより世界最速の普及を目指すと明記された。国内資源が乏しく、 エネルギーの大部分を海外の化石燃料に依存している日本にとって、水素は、エネルギーの有効活用や エネルギー効率の向上を通じて、エネルギー供給源の多様化や環境負荷の低減に貢献すると考えられる。 水素は、自然には単独では存在しないが、水素源の一つである水は地球上に無限に存在している。ま た、化石燃料だけでなく太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーからの製造も可能となる。さら には、再生可能エネルギーなどを大量に貯蔵でき、送電線などの大規模なインフラを使用せずにトレー ラーや船舶での輸送が可能となる 1)。環境負荷の低減に関しては、利用段階で二酸化炭素を排出せず、 燃料電池の場合はエネルギー効率が高いことから、省エネに寄与すると期待されている。近年、定置型 燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車での活用が徐々に実用化されており、将来的にはこれらの 用途以外にも化石燃料に代わるエネルギーとして水素を利用できる可能性がある 1)。 しかし、水素社会を形成するにあたっての課題も多い。水素は自然には単独で存在しないため、効率 の良い製造方法、輸送や保存のための圧縮方法、さらには圧縮保存用の高耐圧材料の開発などの技術的 課題がある 1)。また、ガソリンスタンドの 5 倍程度の費用がかかる水素ステーション建設費用や燃料電 池費用などのコストに関する課題も抱えている。 しかし、課題である水素の液化保存について、近年、千代田化工建設が新たな開発を行っている。有 機溶剤のトルエンと水素を反応させて、メチルシクロヘキサンという化学物質に液化し、常温常圧で水 素の貯蔵・輸送を可能にする技術(SPERA 水素)を開発して注目を集めている 2)。 これらを踏まえて私が提案するのは、水素ステーションの設置に関しての案である。上記で水素ステ ーションの建設費用が高額になることが課題であると記述したが、燃料電池自動車を将来的に普及させ るためには、現在のガソリンスタンドを水素ステーションに置き換えていく必要がある。しかし、燃料 電池自動車の普及は進むものの、現在主流のガソリン自動車の利用者も少なからず存在してしまう。そ こで提案するのが、既存のガソリンスタンドに、新たな自動車燃料となる水素を供給するための水素ス タンドを併設するというものである。将来的に全国規模の水素ステーションを新たに建設するための費 用は非常に高くなるため、時間的にもコスト的にも効果的であると考えられる。さらには、燃料電池自 動車の他に、電気自動車利用者も普及していくことを考慮すると、蓄電可能な充電施設なども併設する とより実用的になるだろう。その際の電気の供給には、ガソリンスタンドの屋根に太陽光パネルを設置 して、各ガソリンスタンドで太陽光発電すれば、環境負荷の低減にも貢献し、他施設から送電する場合 に比べて時間・コストの節約にもなる。これらの提案を実現するためには、各ガソリンスタンド会社が 技術的に可能なのかを検討し、利用者に快適に提供するための更なる開発が求められる。また、この提 案が実用化していけば、安倍政権が提唱する成長戦略(水素ステーションの整備を含む)が実現するた め、国家予算の配分が期待できる。この予算を、さらに水素社会に向けての開発・研究費に充てること ができれば、理想の水素社会が形成していくだろう。 2 提出日:2015 年 1 月 7 日 千葉大学 工学部 都市環境システム学科 3 年 12T0272W 菅波慎吾 参考文献 1) 資源エネルギー庁・経済産業省 水素・燃料電池について http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/008/pdf/008_008.pdf# search='%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E3%83%BB%E7%87%83%E6%96%99%E9%9B%BB%E6% B1%A0%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6' 2) 千代田化工建設株式会社 SPERA 水素 千代田の水素供給事業 http://www.chiyoda-corp.com/technology/spera-hydrogen/ 3
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