Page 1 Page 2 【 565 】 はやし かず ひこ 学位(専攻分野) 博 士 (理 学

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
Molecular Systematics of Liliales and Allied Groups(
Abstract_要旨 )
Hayashi, Kazuhiko
Kyoto University (京都大学)
1999-03-23
http://hdl.handle.net/2433/182016
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
名
ひこ
かず
はや し
氏
彦
林
学位 (
専攻分野)
博
士
(
理
学)
学 位 記 番 号
論 理 博 第 1
3
61号
学 位 授 与 の 日付
平 成 11年 3 月 23 日
学 位 授 与 の要 件
学 位 規 則 第 4条 第 2項 該 当
学 位 論 文 題 目
Mol
e
c
ul
a
rSys
t
e
ma
t
i
csofLi
l
i
al
esa
ndAl
l
i
edGr
oups
論 文調査 委員
教 授 河 野 昭 一
(
主査)
論
文
教 授 長谷 あき ら
内
容
の
要
助教授 村 上 哲 明
旨
主論文は 3部 よ り構成 されている。第一論文では,Kr
aus
eの定義す るユ リ科 (
広義) におけるユ リ目,ユ リ科の位置,
ユ リ属 と近縁属及びユ リ属内の種間関係 を葉緑体DNA,r
bc
L遺伝子の塩基配列 よ り構築 された分子系統樹 にもとづき,類
u
r
ana属 5種の系統 関係 を,同
縁関係 と分類体系を再検討 している。第二論文では,広義のユ リ科 に含まれ る代表的な Uv
様な分子系統学的解折を行い,解析 してい る。第三論文では,t
r
i
beMe
de
o
l
o
i
de
aeのMe
de
o
l
av
e
r
gi
ni
a
naとCl
i
nt
o
ni
a属 5
種の種間関係 を,葉緑体DNAのr
bc
Lとmat
K遺伝子の塩基配列 を決定 し,分子系統樹 を構築 して解析 している。
2属 37種 2亜種 のr
bc
L遺伝子の塩基配列 , また 15属 50種 2亜種 の
第一論文では狭義のユ リ科 の位置 を決定す るために2
mat
K遺伝子の塩基配列 を決定 し,それ に基づ き系統樹 を構築 した。r
bc
L遺伝子 の分子系統樹 か ら, FT
i
t
i
l
I
ar
i
a, Li
l
i
um
をは じめとす る1
0属は,ま とまった一つのクレー ドに属 し,単系統 をなす ことが判 ったomat
K遺伝子の分子系統樹か らは,
Me
de
o
l
aとCl
i
nt
o
ni
a属 とその他 の狭義 のユ リ科 の属 が分 かれ る。 後者 は Er
yt
hr
o
mi
um な どの 4属 を含 む ク レー ドと,
Fr
i
t
i
l
l
a
r
i
a,Li
l
i
um な ど 5属 を含むク レー ドに分かれ る。 この結果は,ユ リ科 をMe
de
o
l
o
i
de
aeとLi
l
i
o
i
de
aeのふたっの亜科
に分 け, さらに後者 はTu1
1
i
pae
aeとLi
l
i
e
ae
族 に分 ける体系に一致す る (田村 ,1
998)oLi
hum 属は 3つのク レー ドに分かれ
l
i
um 属の 日本 の固有種 と,Li
l
i
um とNo
mo
c
har
i
s属の雲南,四川 の中国内陸部か らチベ ッ トを
る.第一のク レー ドにはLi
経て ヒマラヤにかけて分布す る,いわゆる植物地理学上の 日華 区系に属す る種群や, さらに北米東部か ら中部 に分布す る
L.
phi
l
ade
]
phi
c
um な どが属す る。第二のク レー ドには,西は 日本か ら朝鮮半島を経て中国 ・シベ リアを経て ヨーロッパ に
davu
r
i
c
um,L.
mar
t
a
go
nな どの種が含 まれ る.第三のク レー ドには北米西部,東部 の種 の大半が含 まれ
分布域 を持 っL.
る。 これ らは地理的分布 とよく一致 し, Co
mbe
r(
1
9
49) の分類系 とは一致 しない。 mat
K遺伝子 を用いた分子系統樹 に
Co
mbe
r(
1
9
49) が用いた形質 を最節約配置 した ところ鱗茎 の形質以外 は系統 を反映 しなかった。 また種 間の交配結果 は
mat
K遺伝子の遺伝距離 とよく一致す ることが判明 した。第二論文ではr
bc
L, mat
K遺伝子の塩基配列 を決定 しUvu
r
a
r
i
a
属5種 の類縁 関係 を解析す る とともに,形質の分化パ ター ンを分子系統樹上 に最節約配置 して検討 した。 第三論文では,
Me
de
o
l
av
i
r
gl
'
ni
a
naとCl
i
nt
o
ni
a属 5種間の類縁 関係 を,r
bc
上,mat
K遺伝子の塩基配列 を決定 し,同様な観点か ら類縁関
係 を解析 した。
論
文
審
査
の
結
果
の
要
旨
申請論文は,ユ リ科 (
狭義)の系統的位置 を決定す るために,ユ リ科 (
s
e
nsuKr
aus
e,1
93
0) の中か ら代表的な属 を選
bc
L とmat
K遺伝子の塩基配列 を決定 し,分子系統樹 を構築 し,類縁関係 を解析 している。 さらに,
び,葉緑体DNA上のr
ユ リ属 とユ リ属近縁属及びユ リ属内の種間関係 を検討 し, さらに広義のユ リ科 に含 まれ る代表的な Uv
ul
a
r
i
a属 5種 と別 の
t
r
i
beMe
de
o
l
o
i
de
aeに属す るMe
de
o
l
av
e
r
gz
'
ni
anaとCl
i
nt
o
ni
a属 5種 の種 間類縁 関係 を,分子系統学的手法 を用いて解析
-1
351-
してい る。特 に申請者が力 を入れた第一論文では,ユ リ科がMe
de
o
l
o
i
deaeとLi
l
i
o
i
deaeのふたつの亜科 よ りな り,さらに後
i
pae
aeとLi
l
i
eae
族 よ り構築 され ることを明 らかに した。分子 レベルのデータか ら把握 された類縁関係 は,最新の分
者 はTul
Tamur
a, 1
9
9
8)。 またユ リ属 とユ リ属近縁属及 びユ リ属 内の種 間関係 の解析 か ら, Li
l
i
um,
類 体系 とも一致す る (
Ca
r
di
o
c
r
i
num,Not
ho
l
i
r
i
o
n, B
h'
t
i
l
l
a
r
i
a,No
mo
c
ha
r
i
sの 5属が,Not
ho
l
i
r
i
o
n, Ca
r
d
i
o
c
r
i
num, Fr
i
t
i
l
l
a
r
i
a順に姉妹群 を
形成 しなが ら,No
mo
c
ha
r
i
s
,Li
]
i
um を含む大 きなク レー ドを構成す る. Li
l
i
um 属 は地理的分布 とよく一致す る 3つの大
mbe
r(
1
9
4
9)の分類系 とは一致 しない ことを明 らかに した。 mat
K遺伝子 を用いた分子系
きなクレー ドに分かれ るが,Co
mbe
r(
1
9
4
9)が用いた識別形質 を最節約配置 し,形質を評価 した。大半の形質は,収赦 して分化 した可能性 を
統樹 に,Co
示 したが,鱗茎の形質のみは系統関係 を直接反映 している可能性 を示唆 した。
ユ リ属植物の種間の交配結果 を,mat
K遺伝子 の塩基配列に照 らして比較 した結果,双方の遺伝距離はよく一致す ること
を示 した。 この発見はDo
r
o
s
o
phi
]
aシ ョウジ ョウバェで兄いだ された結果 によく対応 し,種分化が起 こってか らの進化時間
を反映 してい る可能性が高い ことが示唆 された。
b
c
L,mat
K両遺伝子の全長 にわたる塩基配列 を決定す るとと
この一連の研究で, 申請者 は対象植物群の葉緑体DNA,r
もに,分類学上用い られている識別形質 を得 られた分子系統樹上に最節約配置す ることによって,形質の分化パター ンの解
析 も平行 して進 め,収赦 した形質分化 と系統的制約 を示す形質分化を証明す るな ど,植物の系統分類学にはた した功績はき
わめて大きい。
本研究に関連 した問題 に関 し, 口述試験お よび質疑応答により,申請者が今後, 自らの研究を計画 ・遂行す る能力を十分
にもつ と判断 した。以上,平成 11
年 1月2
0日論文内容 とそれに関連 した 口頭試問を行 った結果合格 と認 めた。
-1
352-