ゾレドロン酸で前処置した 白血病性形質細胞様樹状細胞株 PMDC11 を用いた効果的な γδT 細胞の誘導 新潟大学医学部保健学科 臨床検査技術科学専攻4年 M11D337D 高橋周汰 背景と目的 Ø 従来、γδT 細胞の培養法は樹状細胞を用いずにゾレドロン酸 (ZA) と IL-2 で末梢血単核球 (MNC) を直接刺激する方法が行 われていた。 Ø 従来の γδT 細胞の培養法に比べ、ゾレドロン酸で前処置した単 球由来樹状細胞と 末梢血リンパ球を混合培養することにより、 より効率的に γδT 細胞を誘導できると報告されている。 Ø 当研究室で樹立した白血病性形質細胞様樹状細胞株 (PMDC11) は単球由来樹状細胞と類似の機能を有している。 Ø 本研究においては、ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 を用い ることで従来の培養法と比較して γδT 細胞をより効率的に誘導 できるか否かを明らかにすることを目的とした。 PMDC11について ソート前 PMDC05 に CD80 遺伝子を組み込んだ レンチウイルス(カリフォルニア大学ベクター 研究部において作成)を導入 CD80 遺伝子導入 PMDC05 から CD80 の発現の高い分画 (約 5 %)を フローサイトメトリーによるソーティングで分離 分離した細胞を PMDC11 と命名した ソートした細胞 ソート後 γδT 細胞について IPP IPP IPP IPP 認識:刺激 γδT 細胞レセプター IPP アポトーシス 細胞傷害 γδT 細胞 腫瘍細胞 ゾレドロン酸による γδT 細胞の増殖刺激 [メバロン酸代謝経路] アセチルコエンザイム A + アセトアセチルコエンザイム A ヒドロキシメチルグルタリル コエンザイム A メバロン酸 γδT 細胞 ピロホスホメバロン酸 分泌 IPP イソペンテニルピロリン酸 (IPP) ゲラニルピロリン酸 γδT 細胞レセプター 阻害 ゾレドロン酸 (ZA) ファルネシルピロリン 酸 (FPP) 抗原提示細胞 方法1 γδT 細胞の誘導 健常人から末梢血単核球 (MNC) を分離し、以下の 8 種類の方法で 培養を行った。 ① MNC + ZA (0 µM) + IL-2 ② MNC + ZA (1 µM) + IL-2 ③ MNC + ZA(5 µM) + IL-2 ④ MNC + ZA (10 µM) + IL-2 MNC 1.0 × 106 /ml ⑤ MNC + PMDC11*ZA (0 µM) + IL-2 PMDC11 2.0 × 105 /ml ⑥ MNC + PMDC11*ZA (1 µM) + IL-2 MNC : PMDC11 = 5 : 1 ⑦ MNC + PMDC11*ZA (5 µM) + IL-2 IL-2 10 U/ml 6 well plate total 2 ml ⑧ MNC + PMDC11*ZA (10 µM) + IL-2 ZA: ゾレドロン酸 PMDC11*ZA: ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 7 日後に各ウェルの細胞数と γδT 細胞の割合を解析した。 γδT 細胞の誘導 ゾレドロン酸直接刺激 各濃度のゾレドロン酸 MNC MNC: 1.0×106/ml (2ml well) ZA: 1, 5 or 10 µM IL-2: 10 U/ml PMDC11*ZA との共培養 MNC MNC: 1.0×106/ml (2ml well) PMDC11: 2.0×105/ml IL-2: 10 U/ml 各濃度のゾレドロン酸で 前処置した PMDC11 結果1 各種刺激条件による γδT 細胞の誘導 u ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 で刺激することにより MNC からの γδT 細 胞の誘導を効率的に行うことができた。 MNC 培養前 3.68 PerCP-CD3 培養 7 日目 MNC+ZA (0 µM) 6.22 MNC+ZA (1 µM) MNC+ZA (5 µM) 52.89 50.69 7.5 × 105/well 9.0 × 105/well 1.0 × 106/well MNC+PMDC11 *ZA (0 µM) MNC+PMDC11 *ZA (1 µM) MNC+PMDC11 *ZA (5 µM) 10.29 1.7 × 106/well 17.95 1.9 × 106/well 57.52 3.1 × 106/well FITC-γδ TCR MNC+ZA (10 µM) 15.70 5.0 × 105/well MNC+PMDC11 *ZA (10 µM) 70.55 3.3 × 106/well u ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 で刺激することにより 、γδT 細胞の割 合と実数は増加した。 健常人1 健常人2 方法 2 細胞傷害性試験 効果細胞 (下記条件での培養細胞) ① MNC + ZA (0 µM) + IL-2 ② MNC + ZA (1 µM) + IL-2 ③ MNC + ZA (5 µM) + IL-2 ④ MNC + ZA (10 µM) + IL-2 ⑤ MNC + PMDC11*ZA (0 µM) + IL-2 ⑥ MNC + PMDC11*ZA (1 µM) + IL-2 ⑦ MNC + PMDC11*ZA (5 µM) + IL-2 ⑧ MNC + PMDC11*ZA (10 µM) + IL-2 標的細胞 ヒト骨髄腫細胞株 (GFP 遺伝子導入 RPMI8226) ヒト骨髄腫細胞株に対する細胞傷害性試験 IPP等抗原認識 標的細胞の調整 GFP γδTCR + 標的細胞 GFP-RPMI8226 効果細胞 膜破壊による細胞傷害 (グランザイム、パーフォリン Fas-FasL, TRAIL) 効果細胞と標的細胞を 種々の割合で混合 1.0×105 /ml 7AAD 傷害が起きた細胞を染める 100 µl 効果細胞の調整 100 µl 培養 7 日目の γδT 細胞 37 ℃ 4時間共培養 7AAD で染色 暗所 15分間 FACS 解析 結果 2 誘導 γδT 細胞の細胞傷害活性 ヒト骨髄腫細胞株に対する細胞傷害性試験 (ゾレドロン酸刺激培養) 標的細胞のみ 1:1 MNC+ZA 0 µM MNC+ZA 1 µM 効果細胞:標的細胞比 効果細胞:標的細胞比 5:1 4250 10:1 1:1 4058 5:1 4464 3976 10:1 3402 GFP 4958 5099 1:1 MNC+ZA 5 µM MNC+ZA 10 µM 効果細胞:標的細胞比 効果細胞:標的細胞比 4692 5:1 4526 10:1 1:1 4881 4462 7AAD 5:1 4512 10:1 4214 ヒト骨髄腫細胞株に対する細胞傷害性試験 (ZA前処置PMDC11刺激) 標的細胞のみ 5099 MNC+PMDC11ZA 0 µM MNC+PMDC11ZA 1 µM 効果細胞:標的細胞比 効果細胞:標的細胞比 1:1 5:1 3403 1:1 2385 5:1 4020 2495 10:1 1736 GFP 4473 10:1 MNC+PMDC11ZA 5 µM MNC+PMDC11ZA 10 µM 効果細胞:標的細胞比 効果細胞:標的細胞比 1:1 3703 5:1 2313 10:1 1:1 1854 3580 7AAD 5:1 2106 10:1 1529 %細胞傷害活性 u ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 の刺激培養により MNC から誘導され た γδT 細胞は標的細胞に対して高い細胞傷害活性を示した。 (効果細胞:標的細胞比) 結論と考察 Ø リンパ球中の γδT 細胞の割合とその実数はゾレドロン酸で MNC を直接刺激した系よりも、ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 で刺激した系において増加する傾向であった。 Ø 細胞傷害活性はゾレドロン酸で MNC を直接刺激した系より も、ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 で刺激した系におい て増強された。 Ø ゾレドロン酸で前処置した PMDC11 を用いることで、より効率 的に γδT 細胞を培養することが可能であると考えられた。
© Copyright 2025 ExpyDoc