Kobe University Repository : Kernel Title 稲麦分けつの独自生長に関する研究 2 : 水稲の第1次分 けつの生長に及ぼす他稈切除の影響 Author(s) 丹下, 宗俊 Citation 兵庫農科大學研究報告. 農学編, 5(1): 5-8 Issue date 1961 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006607 Create Date: 2015-02-01 稲麦分けつの独自生長に関する研究 1I.水稲の h第 1 次 分 け つ の 生 長 に p 及ぼす他稗切除の影響 宝仙 下 丹 俊 Studies on the Independent Growth of T i 1 1ers of Rice, Wheat and Bar 1 ey Plants. Influenceofthe culmremoving00 thegrowthofthe I I. primaryt i l 1 e r sofr i c ep l a n t s .. MenetoshiTANGE れだけ生長が抑制されて出葉期がおそくなったのか,又ザ 7 1<稲の第 1号分けつをある生育時期までに離けっする と,母本についたま は早く切除した区がより大きな刺戟をうけて速い生長を L のものとは異った生長をすること 即ち,主秤に支配されないで或程度独自の生長をするこ 第 1表 出 業 期 直 線 の 常 数 とは前に報告した通りである. ( 1 9 5 9 . 5 . 1 8 播種) A 本研究は分けつの生長に主将の影響を受けさせない方 農林 3 7号 法として,主稗だけ,主稗と所定の分けつ以外の稗を所 定の時期に切除した場合に,第 1次分けつがどのような 生長をするかを明らかにしようとしたものである. 茎数,穏数,穂長などについても調査したが,こ %期切除区 12 5 . 95 14 . 2司2 1 . 9 1 1 4 . 7 斗1 2 . 0 司 9.25 % It 12 5 . 7 0 1 4 . 5 0 12 2 . 7 1 1 5 .問 2 . 8引 8 . 0 9 % 12 5 . 8 9 1 4 .4 6 12 2 .0 4 1 4 , 8 司 ー1 3 . 0 引 9 . 8 1 Lで 。 は主として出禁期,出葉転換点,止葉葉位について述べ 9 5 9 年及び6 0 年に行ったもの ることにする.なお試験は 1 B 農林2 0 号 である. ( 1 9 5 9 . 7 . 2 播種) ,I b, 両 lal I 材料及び方法 1a 標準区 2号分けつ 1 1 5 .0 9 1 3 .1 7 5月 1 8日に播種したものについて弘-%,の出葉期に他 期主て切除区 噌 'a- QJ'a官,, 帽 η o ιzrE E 句E .• ( 1 9 6 0 . 5 . 2 8 賂種) C : 1960 ! f には両品種を 5月2 8日に播種し,第 1-5号分 期円切除区 刊uhl同町﹁} 切除じた区を設けた. nnun桝uw 。 。 EA--A 唱 % % RUFD の稗を切除した区を設けた.又 7月 2日には農林 2 0号 を播種し, %-ちを出葉期に主秤だけ,主稗とイ也の稗を │ : ; : : ; │ ; : 3 i : ; : ; : 1 ; : : : i z 。 句qU-9h-u 2 両年共に水稲農林 2 0号と 3 7号を供試した.前年には 農林 3 7号 けつの第 1葉の出葉期に他の秤を全部切除する区を設け I a l I b l I a l I b, た. 切除は欽で行い,稗の地際で切断した.両年共 1区当 標準区主稗 0 . 6 0 1 4 .3 7 13 .1 4 1 4 .6 8ー5 8 . 2 9 3 3 . 7 7 第 1号分けつ 1 2 . 3 6 1 4 .? 4 11 1 . 7 5 1 4 . 4 3イ 1 7 . 4 4 1 4 . 0 9 1 1 7 . 9 4 1 4 . 3 81 7 ; 3 6 第2 シ 21 .7 1 1 4 . 0 9 11 9 . 8 5 1 4 . 5 18 . 4 8 第3 り1 0個体とし,徐聞は 1 0x10cmとした. 結果及び考察 。 出糞期: 両年の出葉期直線の常数は第 1表に示す通 i 処期理除 区 ろ切区 りで農林 2 0号は 1直線, 3 7号は 2直線で示された. 川 ろ も 第 1表 A によれば,第 4号分けつの b l は%期に切 % 除した区が他の区より僅かに小さい値を示した. 主 ろ 色 ろ この原因は株聞が 1 0x1 0cmであったので,おそく 切除した区程各個体の占有できる空間が小さくなり,そ 5 。 。 ク 1 1 1 4 . 2 8 1 1 8 . 7 0 2 0 . 2 2 2 7 . 1 0 3 0 . 3 7 3 . 8 2 11 2 . 9 2 1 8 . 0 5 3 . 7 81 .9 3 3 . 7 2 21 6 . 2 7 3 .7 82 9 . 8 6 4 . 3 02 4 . 1 3 1 3 6 . 9 0 : 4 . 0 02 7 . 4 2 3 . 9 8ー1 1 . 1 7 . 6 7 3 . 8 1 ー7 3 . 8 7 3 . 4 1 9 . 3 9 9 . 6 0 8 . 5 7 8 . 8 4 9 . 6 0 9 . 4 5 8 . 3 0 8 . 3 6 7 . 6 2 第 5巻 第 1号 兵庫農科大学研究報告 て小さいものであった.又 b l と分けつ次位との閣には したためであるかは不明で更に追試を必要とする. 一定の度係は認、められなかった. 7号の b 2と切除時期との関係は明瞭でなかった 農林 3 農林 3 7号の b2には ,b lにおけるような一定の関係が が,主得のそれよりは小さい値を示した. 0号の第 2号分けつの各期に主 第 1表 B では,農林 2 なし分けつ次位との民係も認められなかった. 粋だけ,主稗と分けつを切除した区の出禁周期は,切除 以上の結果から稗切除処理が残された分けつの出葉周 の程度及び時期の如何をとわず,殆ど差がないことが明 期に及ぼす影響ほ,僅かに促進するか又は殆ど関係がな 0号を盛 らかである. これは非常に感、温性の高い農林 2 いと云えるであろう. 夏に播種したために,播種してから主稗の止薬が出るま これらの結果を前報の離けつ処理したものとくらべる でに僅か 3 2 . 2日,第 2号分けつでは 31.0-36.0日で止 と,離けつ処理の方が標準区との差が明瞭であった. 薬が出禁するというような生長の速度であったので各区 7号だけに認めら 出葉転換点: 出葉転換点は農林 3 の間の差が判然としなかったと思われる. れた.その結果は第 2表に示した. 第 1表 A, B を通じて,各分けつの生長のスタート ? 4-., ~~期に処理した場合には,主秤葉位から計算し の良否を示す a lは各区共殆ど差がなく,全て順調であ た理論上の転換葉位で為る 5 . 8 7よりも 0.63-1.62高い ったと思われる.農林 3 7号 a2には一定の傾向がなかっ イ直が得られた.これを揺種からの日数でみると,主稗の た.この中で%期切除区だけがとび離れた数値を示し それより 5.90-7.75日おそかった. た原因は不明である. 処理期と転換点の変化の傾向との間には一定の関係が 第 1表 C によれば, b l は両品種共標準区では,主稗 認められなかった.これは処理区が少ないためで,区数 が分けつより大で,標準区の分けつより,処理区の方が を多くすれば何らかの関係が得られるのではなかろうか 小さい傾向が認められたが,いづれもそれらの差は極め と考えている. 第 2表 B によれば, 第 2表 出 菜 転 換 点 A 計算値 %期切除区 % / J ,% / J 標準区の主稗の転換点に対し, 第 1,第 3号分けつは略理論値に近い値を示したが,第 2号分けつは理論億よりもおくれた値を示した.標準区 農林 3 7号) 立 と処理区とをくらべると,第 2号分けつでは両区の菜f Xp yp が略等しく,日数では標準区の方が約 3 . 4日おくれた. 5 . 8 7 7 . 4 9 ( 1 .6 2 ) 6 . 5 0 ( 0 . 6 3 ) 7 . 0 8 ( 1 . 2 1 ) 4 9 . 5 1 5 7 . 2 6 ( 7 . 7 5 ) 5 5 . 4 1 ( 5 . 9 0 ) 5 5, 3 8 ( 5 . 8 7 ) 他の分けつでは Xp,yp共に処理区の方がおくれる傾向 を示した. 計算値と観察値とをくらべると,標準区においては前 述したように Xpでは 1葉以内の差であり ,ypにおいて は 3日以内の変異が見られた. 備 考 ( )計算値との差 処理区における Xpの計算値との差は 0.40-2.34菜と 処理区の方が高く,標準区における差よりも大で,しか B も,分けつ位の上昇に伴ってその差が明らかに増大する 2- 5 . 4 8日 傾向が認められた.yp における差はー1.1 Q 区 標 主 準稗 第 1号分けつ 第 2 11 第3 。 処理区 区 ろi 期切除 % % 主 ろ 告 ろ 備考 。 。 。 / J Ic Iム Q Ic Iム で,第 3号分けつまでの差は小さかったが,第 4, 5号 分けつの差は大であった.又 Xpにおけると同様に分け 1 1 . 7 1 51 .6 6 8 . 8 0 8 . 7 1 0 . 0 95 0 . 7 35 0 . 9 3 1 . 6 68 . 4 2 7 . 7 1 0 4 . 8 2 . 7 15 3 . 1 6 6 . 5 5 6 0 . 1 64 9 . 3 9 . 7 12 . 2 7 つ位の上昇に伴いその差が大きくなる傾向があった. 処理区においては,第 1号分けつから第 3号分けつま では分けつf 立が 1位上昇するに従って転換葉位が約 0 . 7 葉づっ低下したが,第 3号分けつから第 5号分けつまで 9 . 1 1 8 . 3 4 7 . 6 6 7 . 4 6 7 . 0 5 Q.実測値, 8 . 7 1 7 . 7 1 6 . 7 1 5 . 7 1 4 . 7 1 0 . 5 4 0 . 4 05 1 .1 2 0 . 6 3 51 .4 15 0 . 2 5 1 . 6 6 2 . 4 2 0 . 9 55 0 . 7 6 1 . 7 55 4 . 6 9 3 . 0 3 7,14 2 . 3 45 5 . 4 8 のものは,分けつ位の上昇による転換葉位の低下の割合 . 2- O .4葉であった. が前者よりも小さく 0 片山氏は水稲農林 6号(主稗葉数 1 4 . 9 ) において,全 蒋の出業期を調査した結果,主稗の止葉葉{立 業位 Xp との聞に次の関係式を得られた. c .計算値,ム =Q-C Xp=ー1.9 6 6 +0.814XB Xn と転換 X I I .1 9 6 1 学 農 上式によると主稗と分けつの聞で止薬の菜イ立が 1位高 ている. くなるに従って,転換葉{立が 0 . 8 1 4枚高くなることを示 第 3表 Bでは標準区の止葉 5 . 0菜に対し,処理区全部 している.又出菜転換のおこった時期 Y'P については分 が路等しい値を示し,処理の影響が全く認められなかっ けつの 1節位の上昇につれて,約 1日のおくれがあると た.この理由は出葉期の項で述べたように生長が非常に 述べている. 早かったことによると考えられる. 第 3表 C によると,農林 2 0号では標準区の分けつは 第 2表に示したように,稗を切除すると,標準区又は 理論値よりも , Xp, YP共にはるかにおくれた値を示し, 主1 早業数1 0 葉の場合の葉数を示しており,処理区との差 残された分けつが主稗の支配を受けないで或程度独自の は殆どなく,処理の影響が現われなかった.農林 3 7号 生長をしたものと解釈される. a 綴 の第 1, 2号分けつは 2 0号と同様に標準区と処理の問 止葉糞位: 止葉菜{立は第 3表に示す通りであった. に差がなく,第 3-5号分けつにおいては処理区の方が 0号で 第 3表 A においては,止葉葉位の計算値は農林 2 標準区又は計算値よりも1.1 -3 . 2菜高くなり,明らか は4 . 0,3 7号は 9 . 8葉であって,処理区においては前者が に処理の効果であろうと思われる. 0.5-0.9, 後者が1.Q-l.9業計算値より高い{直を示し 分けつ位が 1節位上昇するに従って止葉葉位が約 1葉 下ることは,同仲葉の理論から考えられることであるが 第 3表 止 葉 言 葉 位 他稗を切除すると第 3-5号分けつで見られたように, A これらの止葉葉{立が殆ど変らなかった.これは残された 分けつが主秤の支配を受けないで,独自の生長を行った 農林 2 0号 4 . 0 4 . 6 ( 0 . 9 ) 4 . 7 ( 0 . 7 ) 4 . 5 ( 0 . 5 ) 計算値 %期切除区 %。 %。 備考: 農林 3 7号 ことを示していると思われる. 9 . 8 11 .7 ( 1 .9 ) 11 .0 ( 1 .2 ) 1 0 . 8 ( 1 .0 ) 農林2 0号においては稗切除の彰響が非常に小さいか 又は殆ど見られなかったが,この原因は主稗の総葉数が 少し従って分けつの止葉までの葉数も少いので処理の 効果が現われにくいためであろう.又前にも述べたよう に盛夏に播種すると出葉速度が非常に早かったこともそ ( )計算値との差 の一因であると思われる. 農林2 0号 B 別│止葉菜位│区 別│止葉葉位 い 一 一 一 一 一 区 農林 3 7号の第 1, 2号分けつの止葉葉位が処理によ り変らなかったのは,イ也秤を切除した時期はこれらの植 物体が非常に小さく,従って生活力も弱小で初期生育が 標 準 区 15.0 %期主稗切除区 14 . 9 ( 0 . 1 )同期他稗切除区 15 . 1( 0 . 1 ) % % % " 1 5 . 0 ( 0 ) I ! $ ' } " 1 5.0 ( 0 ) " 1 5 .0 1 5 . 0 ( 0 ) ( 0 ) 1 % " 1 % " 1 5 . 0 1 5 . 0 ( 0 ) ( 0 ) 1 1 大きく抑制されたためではないかと思われる. 摘 要 本研究は農林 2 0, 3 7号を供試し, それらの第 1次分 けつを残し,他の稗を種々な時期に地際から鋲で切除し 備 考 ( )標準区との差 た.残された分けっと無処理の分けっとの生長の差異を 究明した. C その結果の概要は次の通りであった. l . 両品種共残された分けつの出菜期は他稗の切除に より殆ど影響されなかった. 2 . 出菜転換点は農林 3 7号だけに認められ, 第 1号分けつ 。 第2 グ 第3 第4 汐 第5 備考 。 。 。 2 . 1 1 7 . 0 0 . 2 1 2 . 0 11 .6 1 6.0 1 . 6 5.0 O 1 1 . 2 1 0 . 1 1 1 . 0 ※9 . 0 3.0 ※3.0 11 .2 ※8.0 6 . 8 6 . 0 5 . 0 Q.実 視 . I J 値 C .標準区 。 それは 0 . 1 処理によっておくらされた. 1 .1 2.0 3 . 2 れず,これと逆に農林 3 7号では第 1次分けつの第 1葉 3 . 止葉葉位は農林 20号では処理により殆ど影響さ の出葉期,特に第 3-5号分げつでは処理により明らか に高くなった. 4 . 残された分けつでは,出業転換点がおくれ,止薬 ※計算値 ム=Q-C 業位が高くなったということは,それらが主稗に支配さ 7 I 第 5巻 第 1号 兵庫農科大学研究報告 3 )片山 れず或程度独自の生長を行ったものと思われる. (食用作物学講座,昭 3 6 . 8 . 3 1受理) 佃:稲麦の分けつ研究,養賢堂, 1 9 5 1 . 4 ) 高村泰雄・竹内史郎・長谷川浩:土箆温度が作物 の生育に及ぼす影響第 3報水稲の出葉速度と土 参考文献 壌温度との関係 1 ) 深城貞義:温度及び空中湿度と稲の分けつ度との 9 ( 2 ),1 9 61 . 自作紀 2 5 ) 丹下宗俊:稲麦分けつの独自生長に関する研究 関係、,日作紀 3( 1 ),1 9 31 . 1.7,/(稲離けつ株の生長について,兵庫農大研究報 2 )猪ノ坂正之:維管束の相互連申告から見た水稲の茎葉 告 農 学 編 5( 1 ),1 9 6 1 . の生育について,宮崎大学農学部研究時報 5 ( 1 ),1 9 5 9 . Summary Norin N o .2 0and3 7 wereu s e df o rt h i se x p e r i - b e ro fl e a v e s on t h et i l l e r sweren o tchangedby ment,t h e i r primary t i l 1 巴r s were remained and t r e a t m e n ti nN o .2 0,ont h ec o n t r a r y,i nN o .3 7 ,t h e o t h e rculm wereremoved byap a i ro fs c i s s o r sa t 1eary higher than p o s i t i o no ft e r m i n a ll e a fa r o s ec v a r i o u ss t a g e s . The growth o fr . ξ m a i n e dt i l l e r s c a l c u l a t e dv a l u ewhent h et r e a t m e n t wasdone a t wereo b s e r v e d . t h ed a t eo ff i r s tl e a fdevelopmenton t h e primary l 1ows: Ther e s u l t so b t a i n e da r esummarizeda sf a t i l 1e r s,e s p e c i a l l y on t h et h i r dt of i f t h primary 1 . The i n f l u e n c eo ft h eculm removingont h e t i 1 le r . averager a t eo fl e a fdevelopmenti nremaining was veryl i tt 1ei nb o t hv a r i e t i e s . 4 . Thef a c tt h a tt h ei n t e r c e p t i n gp o i n twasd e l a y ed andt h ep o s i t i o no ft e r m i n a ll e a fa r o s eh i g h e r 2 . 'I n t e r c e p t i n gp o i n t was o b s e r v e di nN o . 37 twasd e l a y e dbyculmremoving. only,i ,i ti s than c a l c u l a t e dv a l u eont h eremaningt i l l e r presumed t h a tt h e i r culm grows independen t 1y ' 3 . Thep o s i t i o no ft e r m i n a ll e a fv i z .t o t a lnum- B w i t h o t i tc o n f r o l e dbymainc u l m .
© Copyright 2024 ExpyDoc