日韓両語の「電話」の連語に関する考察 ―韓国語の「전화를 받다(jeonhwa-reul batda)」に対応する日本語を中心に― 20) 劉 恩 聖* <目 次 > 1. 2. 3. 4. はじめに 先行研究及び研究方法 日韓両語の「電話」の連語目録 韓国語の「jeonhwa-reul batda」に対応 する日本語 4.1. 「電話に出る」 4.2. 「電話を受ける」 4.3. 「電話をもらう」 4.4. 「電話を取る」 4.5. まとめ 5. おわりに Key Words: 連語(collocation)、전화를 받다(jeonhwa-reul batda)、電話に出る(denwa-ni deru)、電話を受ける(denwa-wo ukeru)、電話をもらう(denwa-wo morau)、 電話を取る(denwa-wo toru) 1.はじめに 現代の日常生活において「電話」というものは、もはや必要不可欠な通信機 器の一つであり、「電話」に関する言語表現も、外国語教育の初期段階から導 入されやすい項目である。日韓両語の「電話ㆍ전화(jeonhwa)」1)という名詞は同 じ漢語名詞であり、互いに目標言語形式を知っていれば、語彙知識としては 十分だと思われやすいが、実際の運用場面においては、他の語との結合関係に おける知識が必要となり、なおかつ、両語間の連語の対応における違いが問題 * 檀國大學校敎育大學院講義專擔專任講師, 日本語敎育学・韓日対照言語学(語彙論) 1) 韓国語のローマ字表記は、韓国国立国語研究院の「ローマ字表記法」による。 308 日語日文學研究 제83집 となる。 本稿では、両語の「電話」の連語パターンを比較考察し、特に「電話」がどの ような動詞とペアになっているのか、また、両語間にどのようなずれがある かを中心に分析し、語彙教育の単位として連語の重要性を再確認する。 姫野(2006, p. 42)では、「固定している語同士の結び付き」の連語は、外国人 学習者においては重要なものであるが、連語として扱われない普通の句にお いても、語の連結関係を示す必要があると指摘し、飲食に関する「*薬を食べ る」のような誤用例を挙げ、言語的背景の異る外国人学習者に対しては、でき るだけ広い範囲の結合関係を示しておくことが望ましいと指摘している。ま た、秋元(2004, p. 6)は、形式上は二つ以上の語であるが、意味上は一つの語に 相当する連語や慣用句などの「句語彙項目」の習得は、単語の記憶強化のみな らず、主語と述語間の文法規則に従った実際の単語運用上の定着を図ること ができ、第二言語の語彙習得において重要だと指摘した上で、日本語教育に おいて必要な「句語彙項目」のリストアップと具体的な指導法などを残された 課題としている。 日韓両語の中で使われている「連語(collocation)」という概念及びその範囲に ついては、両語の諸学者によって多岐にわたっている2)が、一般に、「連語」は ある程度結合が固定しているものとされ、文法的ㆍ意味的に関連のある語と 語同士の自由な結合とされる「自由な語結合」と句の構成要素の意味を反映し ない「慣用句」とは区別されているのが普通であるが、三者間の境界は必ずし もはっきりしているとは言えない。本稿では、両語におけるこのような連語 そのものの定義や範囲についての比較は、別稿に譲り、主に先行研究を参照 し、「電話」の連語として認められる例を収集し、両語間の対応関係を考察 し、特に動詞との結合パターンの中で、韓国語の「jeonhwa-reul batda」といっ た一つに形式に対応する日本語の四形式間の類義関係を明らかにすることを 目的とする。 2) 一例に日韓両語の連語の類型を体系的に捉えるために活発な研究を行っている尹 相實・城田(2011)などでは、「縁語」という独特の用語を用いている。
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