X線回折法と吸収測定による六方晶バリウムフェライト中の
席占有解析に関する研究
豊田丈紫 *
北 川 賀 津 一 * 山 脇 康 知 **
花 島 隆 泰 **
佐 々 木 聡 **
Peter D. Siddons * * *
研究の背景
マグネトプランバイト型フェライトは優れた永久磁石の特性を有し,その結晶構造に由来する大きな一軸
異 方 性 に よ り GHz帯 を 利 用 す る 次 世 代 通 信 シ ス テ ム 用 の 電 波 吸 収 体 と し て 注 目 さ れ て い る 。Y型 や Z型 の 六 方
晶 系 フ ェ ラ イ ト で は 電 波 吸 収 体 が 設 計 さ れ て い る が , 一 般 に M型 以 外 は 結 晶 中 に Fe 2 + と Fe 3 + が 含 ま れ る 混 合
原子価状態を取るため,単相の化学両論組成の化合物を得ることが難しく実用化されるまでには至っていな
い。本研究では,単相にて置換元素の固溶限界が比較的大きく置換効果により容易に共鳴周波数を制御でき
る 六 方 晶 M型 バ リ ウ ム フ ェ ラ イ ト に 注 目 し , Feイ オ ン を 元 素 置 換 し た 場 合 の 席 占 有 率 解 析 を XAFS( X線 吸 収
微 細 構 造 ) 測 定 お よ び X線 回 折 に て 行 っ た 。
研究内容
し た M型 Baフ ェ ラ イ ト を 用 い た 。 所 定 の 組 成 に 秤 量 し , 混 合 ・
プ レ ス 成 型 後 1073 Kで 1時 間 仮 焼 成 し た . 粉 砕 後 , 1473 Kで 2時
8000
Intensity / cps
実 験 で は ,Fe 3 + イ オ ン を (Ti 4 + -Me 2 + ) 3 + ( Me= Mn, Co)で 置 換
2000
0
ョ ン に 設 置 さ れ て い る XAFS測 定 装 置 を 用 い て Mn, Fe, Coの 吸
収 端 領 域 を 室 温 に て 行 っ た 。得 ら れ た デ ー タ に 対 し て 吸 収 端 領
6000
Intensity / cps
NSLS(National Synchrotron Light Source)の X23A2実 験 ス テ ー シ
observed
calculate
peak position
4000
間 本 焼 成 し た .焼 結 体 は 粉 砕 し て X 線 回 折 お よ び 吸 収 測 定 に 用
いた.吸収スペクトル測定は,ブルックヘブン国立研究所
BaTiMnFe11O19
6000
BaTiCoFe11O19
4000
observed
calculate
peak position
2000
0
域 の デ ー タ を 抽 出 す る こ と で Mn と Coの 価 数 を 同 定 し , 振 動 ス
20
40
60
ペクトルのフーリエ変換から動径分布関数を抽出した。
80
100
120
2θ (Cu Kα) / degree
六 方 晶 フ ェ ラ イ ト の 粉 末 X線 構 造 解 析 結 果
研究成果
上 ) BaTiMnFe 1 1 O 1 9 , 下 ) BaTiCoFe 1 1 O 1 9
X線 回 折 実 験 デ ー タ に よ る リ ー ト ベ ル ト 解 析 法 に よ る 結 果 か
ら , 非 磁 性 Tiイ オ ン の 席 占 有 率 は 2bサ イ ト へ 優 先 的 に 占 め る こ
解 析 か ら Mnお よ び Coの 分 布 を 調 べ た 結 果 ,Mnと Coの 動 径 分 布
曲 線 は 同 様 の 傾 向 を 示 し ,大 部 分 が 六 配 位 の サ イ ト を 占 有 し て
おり,若干量が四配位を占有することがわかった。
Fourir transform / a.u.
と が 明 ら か と な っ た 。 Mnお よ び Coの K吸 収 端 に お け る EXAFS
(b)
(a)
x=1
x=1
x=2
x=2
x=3
x=3
x=4
x=4
x=5
論文投稿
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
Distance / nm
Journal of the Ceramic Society of Japan, Supplement 112-1,
PacRim5 Special Issue, 112(5), 2004 P.S1455-S1458.
0.5
0.6 0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
Distance / nm
六方晶フェライトの動径分布関数
a) Ba(TiMn) x Fe 1 1 - x O 1 9 , b) Ba(TiCo) x Fe 1 1 - x O 1 9
*化 学 食 品 部
**東 京 工 業 大 学
***Brookhaven National Laboratory, USA