屈折率測定ソフトによるフィルムの屈折率測定例

2014.10
王子計測機器株式会社
屈折率測定ソフトによるフィルムの屈折率測定例
●はじめに
フィルムの屈折率測定方法は、JIS K 7142:2008 でAbbe屈折計を使って測定すると定めら
れていますが、測定には習熟が必要であり、精度のよい値を得るのは簡単ではありません。
今回、位相差測定装置KOBRA-WRあるいは楕円偏光測定装置KOBRA-WPR用のオ
プションソフトウェアとして、等方性フィルムの屈折率測定専用ソフトKOBRA-Nを作成し
ましたので、それを使って実際にいくつかのフィルムを測定した例を報告します。
●実験に使用した装置とソフトウェア
・装置
楕円偏光測定装置
KOBRA-WPR
・使用ソフト
屈折率測定用ソフト
KOBRA-N
●試料
表1の各種フィルムを使用して測定しました。
表1 試料
記号
文献値n
面内位相差
(波長589.3nm)
R0(nm)
PC
1.583
7.6
PET
1.666
15.0
1.65
30.9
PES
PMMA
1.492
0.5
FEP
1.347
57.0
LDPE
1.514
4.2
※ 文献値の出典は主にJIS K7142-1996
※ PETの屈折率は文献によっては1.576の場合あり
●測定結果
KOBRA-Nソフトでは、複数波長の測定値を基に屈折率の波長分散グラフを描くことがで
きます。表1の各試料を、KOBRA-Nで測定した結果の屈折率の波長分散グラフは、図1の
ようになります。
1
屈折率
1.65
1.64
1.63
1.62
1.61
1.60
1.59
1.58
1.57
1.56
1.55
PC
PET
PES
400
500
600
700
800
波長 (nm)
屈折率
(a)PC、PET、PES
1.55
1.54
1.53
1.52
1.51
1.50
1.49
1.48
1.47
1.46
1.45
PMMA
LDPE
400
500
600
700
800
波長 (nm)
屈折率
(b)PMMA、LDPE
1.40
1.39
1.38
1.37
1.36
1.35
1.34
1.33
1.32
1.31
1.30
FEP
400
500
600
700
800
波長 (nm)
(c)FEP
図1 KOBRA-Nによる各種フィルムの屈折率の波長分散特性
2
値が不確かなPET以外の試料について、KOBRA-Nの測定値の波長分散曲線上の波長5
89.3nmでの値(以下nD)と、表1の文献値とを比較すると図2のような相関関係になりま
す。また、PETのnDは1.59203で、文献値の1.666とは大きな違いがあります。
1.70
1.65
屈折率 (文献値)
1.60
1.55
1.50
1.45
1.40
y = 1.1049x - 0.1473
R2 = 0.9944
1.35
1.30
1.30 1.35 1.40 1.45 1.50 1.55 1.60 1.65 1.70
KOBRA-N測定値
図2 KOBRA-Nによる測定値と文献値との比較
KOBRA-Nの測定値の繰り返し再現性を確認するために、カバーグラス(t0.15mm、
nD:1.522)を20回連続測定した結果、変動幅Rと標準偏差σは図3のようになります。
また、そのときの各波長の平均値をグラフにすると図4のようになり、nDは1.52290で、
(×10-3)
カタログ値の1.522と良い一致です。
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
R
σ
450
500
550
590
630
750
波長 (nm)
図3 繰り返し測定時の変動幅と標準偏差 (カバーグラス、測定回数20)
3
屈折率
1.538
1.536
1.534
1.532
1.530
1.528
1.526
1.524
1.522
1.520
1.518
1.516
400
500
600
700
800
波長 (nm)
図4 KOBRA-Nによるカバーグラスの屈折率の波長分散特性
●おわりに
光学用途の新しい高分子材料を開発する場合、材料物性の1つとして屈折率の値を調べること
が重要ですが、本ソフトを利用することにより、フィルム状試料の屈折率の波長分散特性を誰で
も簡便に測定することができます。
本ソフトの測定原理は、弊社技術資料「等方性フィルムの屈折率測定方法の検討結果」
(2013.12)
の測定方法に基づいており、基準板と本ソフトをKOBRA-WR、WPRに追加することによ
り使用可能になります。
以上
4