ゴム農園周辺地域における住民主体のアグロフォレストリー による森林回復と生物多様性評価 早稲田大学人間科学学術院 国際緑化推進センター Lambung Mangkurat 大学(インドネシア) 研究・活動の背景と目的 研究・活動の実施体制 ✓ブリヂストン・カリマンタン・プランテーション社(BSKP社)は、インドネシア国南カ リマンタン州で大規模なゴム林を経営している。その周辺では、森林が消失し、荒廃 草地化した国有林(保安林)が広範囲に分布している。 ✓こうした荒廃草地にインドネシア林業省の住民林業制度を適用し、ゴムを中心とし たコミュニティ・フォレスト(25ha)を造成する。参加住民を対象として、組織強化を図り、 BSKP社の協力を得てゴム林の栽培技術研修を行う。 ✓帯状に残存する天然性分断林(リボン・フォレスト)の植生・動物調査を行う。 ✓住民主体で自立的にコミュニティ・フォレストを管理運営できるよう、さらなる農民組 織の強化を行う。また、将来的に他地域へ普及することを視野に入れ、現地において 成果の普及・拡大を行う。 活動の成果(1) 現地インドネシア南カリマンタン州 早稲田大学 人間科学 学術院 Lambung Mangkurat 国立大学 (委託) Tanah Laut県 林業部 国際緑化推 進センター BSKP社 支援・協力 Tebing Siring村 農民グループ ✓栽培研修や現地検討の結果、住民の参加意欲が飛躍的に高まり、国、州、県レ ベルでの林野行政への一助となっている。 ✓ 分断林では、多数の木本種を調査し、住民による小径木利用も確認した。固定 プロット設置の結果、分断林の二酸化炭素固定機能量の評価も可能となった。 活動の内容 住民林業制度による 森林造成計画の策定 ◇679haの国有林(保安林)の うち、308haが住民林業地とし て正式に認可 ◇対象国有林地内における土 地権利関係、コンフリクトを調整 ◇ 1年目13世帯(13ha )、2年 目12世帯(12ha)の住民が参加 参加農民のゴム栽培 技術習得と優良ゴム 苗木の無償提供 ゴムを中心としたコミュ ニティ・フォレスト造成 とagro-forestryの試行 自動撮影カメラ設置地点 の選定 自動撮影カメラ の設置 ◇近隣でゴム林を経営する BSKP社の専門技術者を講師と して、参加農民にゴム植栽・保 育・管理技術に関する研修を 開催 ◇ゴム林列間で、コーヒーの木 を栽培予定(多角的な収入源 を創出) ◇周辺の天然性分断林を含め て、ランドスケープレベルでの 森林回復、生物多様性の向上 を目指す! ◇調査地において、3箇所の 分断林を対象として、自動撮 影カメラを9箇所に設置 ◇周辺に生息する動物の動 静に詳しい参加農民に案内を 依頼し、自動撮影カメラの設 置地点を選定 ◇自動撮影カメラを設置 (2014年8月) ◇9月、11月にデータを回収し、 撮影された動物を確認 ◇ 今後も継続して、2015年1 月、3月にデータ回収を行う予 定 ◇ BSKP社による優良ゴム苗 木の無償提供 活動の成果(2) ✓新規参入希望者(21名)に、ゴム栽培技術研修の実施した。 ✓例年より長い乾期に昼夜のパトロールを実施し、これまでに造 成したコミュニティ・フォレスト(25ha)を山火事から守った。 ✓分断林において、自動撮影カメラで18種の野生動物を確認した。 ✓ジャコウネコ科のDiplogale hoseiとウシ科のBos javanicusは、こ の地域では、初めて確認された種となる可能性がある。 今後の展開 ① 国有林(保安林)において住民主体での森林回復: 新たに12世帯の参加を得て12ha植林(ゴムおよび果樹等) ② アグロフォレストリー試行:ゴム植栽列間でコーヒー等の栽培 ③ 参加農民の能力開発支援:更なる農民組織の強化 ④ 更なる生物多様性(特に動物相)の評価。 ⑤ 対象地域社会への経済的効果の定量評価手法の開発 ⑥ 本パイロットモデルを住民主体で自立的に他地域へ普及する 手法の検討 ⑦ 南カリマンタン州において成果発表会の開催 図.本調査において確認された動物種(野生18種+飼育1種(イヌ))
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