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1
第1章 数学的な準備
この章では、一般的に N 次元空間 äN (= RN ) を扱うので、この章に限
り特にことわらない限り、添字 i; j; k; l; m; n; ::: は 1; 2; :::; N の値を指すも
のとする。また、本書全体を通じて N 次元空間 äN の座標 (x1 ; x2 ; :::; xN )
を (xi ) と略記する。また、 éji ; éij を Kronecker のデルタとする。
x1. 1 テンソル
テンソルについては、詳しく知っている必要はないが、定義は知らな
くてはならない。ここでの定義は、この章の末尾:参考文献「幾何学概
論」に従った。
(m; n) 次テンソル (m; n ï 0) について例を上げながら説明する。N
ij
が (2; 3) 次テンソルで
次元空間 äN 上に定義された N 5 個の関数 Tklm
ij
i
i
あるとは、座標変換 (x ) ! (ñ
x ) によって Tklm が、
@x
ño @ x
ñp @xk @xl @xm ij
op
=
T
Tñqrs
@xi @xj @ x
ñq @ x
ñr @ x
ñs klm
op
op
と変換されるときにいう。ここで、 Tñqrs
は座標 (ñ
のこ
xi ) における Tqrs
とである。
共変ベクトル Ai は、
@xj
Añi =
Aj
@ xñi
と変換されるので (0; 1) 次テンソルである。また、反変ベクトル Ai は
@ xñi j
Añi =
A
@xj
と変換されるので (1; 0) 次テンソルである。
gij = gji ; g ij = g ji となるテンソルを対象テンソル、fij = Äfji ; f ij =
ji
Äf となるテンソルを交代テンソルと呼ぶ。対象テンソル,交代テンソ
ルという各性質は座標変換 (xi ) ! (ñ
xi ) によって保存される。それは
k
l
l
k
ñji
ñij = @x @x hkl = @x @x hlk = h
h
@x
ñi @ xñj
@x
ñj @ x
ñi
等によってわかる。
計量 gij は (0; 2) 次テンソルである。なぜならば、
ds2 = gij dxi dxj
2
において、
dxi =
@xi k
dñ
x
@x
ñk
を右辺に代入すると、
ds2 = gij
@xi @xj k l
dñ
x dñ
x
@x
ñk @ x
ñl
これより (ñ
xi ) での計量 gñij は、
gñkl = gij
@xi @xj
@x
ñk @ x
ñl
であることがわかる。
また、 gij の逆行列 g ij は対象行列であるが、これは (2; 0) 次テンソ
ルである。なぜならば、
gñik gñkj = éji
より、
gñik
@xl @xm
glm = éji
@x
ñk @ x
ñj
となるが、この両辺に
@x
ñj np @ x
ñr
g
n
@x
@xp
をほどこすと、
gñir =
ñr np
@ xñi @ x
g
@xn @xp
となる。
x1. 2 各点座標と接続係数
N 次元空間 äN の点 P に対して、P のある近傍 UP をとり、この UP
上に N 次元座標 (z i ) を、その原点が P に一致するように与える。このよ
うな (z i ) を、 (xi ) の各点に与えたとき、これを各点座標 (z i ) と名付け
る。 UP は次の z Äijk が定義できればよいので、どんなに小さな近傍でも
よい。
N 次元空間 äN 上に、各点座標 (z i ) が与えられているとき、各点 P
に対して、 z Äijk を
@xi @ 2 z l
z i
Äjk =
@z l @xj @xk
i
と定義して、これを各点座標 (z ) による接続係数と呼ぶ。
座標変換 (xi ) ! (ñ
xi ) によって z Äijk は次のように変換される。確認
は x1. 8の公式 (6) を用いて行うことができる。
z ñi
Äjk
=
@ xñi z l @xm @xn
@x
ñi @ 2 xl
Ä
+
mn
@xl
@x
ñj @ xñk
@xl @ xñj @ x
ñk
3
この変換式は、Riemann 空間論における Christof f el の記号の変換式
と同じ形である。
(z i ) の代わりに、これを1次変換した (ñ
z i ) を各点座標として考えて
みる。ある Tji によって、
zñi = Tji z j ; z i = Sji zñj
ここで、 Sji を Tji の逆行列 Ski Tjk = éji とした。(ñ
z i ) による接続係数は、
@xi @ 2 zñl
@xi @z m @ 2 (Tnl z n )
=
@ zñl @xj @xk
@z m @ zñl @xj @xk
@xi m l @ 2 z n
S T
= z Äijk
@z m l n @xj @xk
となる。すなわち接続係数は (z i ) を1次変換しても変わらない。
=
いま、点 P に Äijk = Äikj なる任意の3つの数の組 Äijk が与えられた
とする。これを接続係数にするような点 P の各点座標 (z i ) は、例えば、
次のようにして作ることができる。適当な正則行列 Tli をとって、
1
z i = Tli (xl Ä P l ) + Tli Äljk (xj Ä P j )(xk Ä P k )
2
とする。 UP は (xi ) ! (z i ) が1対1になるように十分小さくとる。 Tli
や Äijk は UP 上では定数と考える。 Tji は @z i =@xj を決めるために必要
である。
N 次元空間 äN 上に、計量 gij が与えられているときには、Christof f el
の記号を考えることができる。それを g Äijk で表す。 (z i ) を計量 gij によ
る点 P の測地座標とすれば、 (z i ) は点Pのひとつの各点座標とみなすこ
ñi = 0
とができる。 g Äijk を座標変換 (xi ) ! (z i ) すると、 (z i ) 上では g Ä
jk
であるから、
g ñi
Äjk
=
@z i g l @xm @xn
@z i @ 2 xl
Ä
+
=0
mn
@xl
@z j @z k
@xl @z j @z k
これより
g
Älmn = Ä
@ 2 xl @z j @z k
@z j @z k @xm @xn
これは x1. 8の公式 (5) より、
=
@xl @ 2 z p
@z p @xm @xn
すなわち、 g Äijk は各点座標 (z i ) による接続係数
z
Äijk に一致する。
4
x1. 3 共変微分
ここでは、共変微分の定義を前述の各点座標を用いて行う。この方法
は特殊であるかもしれないが、我々の目的にとっては非常に効果的であ
り、また物理学として自然である。
Ei を äN 上の共変ベクトルとするとき、 Ei の点 P の各点座標 (z i )
ñi とする。すなわち、
上での表現を E
j
ñi = @x Ej
E
@z i
ñi =@z j を (z i ) の原点で考えると、等式
とする。@ E
ñk
@z k @z l @ E
@Ei
=
Ä
@xi @xj @z l
@xj
z
Älij El
が成り立つ。この左辺または右辺を z rj Ei と書いて Ei の、接続係数
z l
ñk =@z l を (xi ) 上へ落としたも
Äij による共変微分と呼ぶ。z rj Ei は @ E
z
の、という風に表現することができる。 rj Ei は (0; 2) 次テンソルであ
ることを、確かめることができる。
同様に、反変ベクトル F i について等式
@z k @xi @ Fñl
@F i
=
+
j
l
k
@x @z @z
@xj
z
Äijl F l
が成り立つ。この右辺を z rj F i と書いて F i の z Älij による共変微分と
呼ぶ。z rj F i は @ Fñl =@z k を (xi ) 上へ落としたもの、という風に表現す
ることができる。これは (1; 1) 次テンソルであることを、確かめること
ができる。
同様に、一般的なテンソルについても、 (z i ) 上の偏微分を (xi ) 上へ
落とすことにより、共変微分を定義することができる。後で必要となるテ
ンソルについて、その共変微分を下記に列挙する。
ここで f はスカラー、gij は (0; 2) 次、 H ij は (2; 0) 次の各テンソル
とする。
z
z
rj Ei = @j Ei Ä
z
Älji El
z
rj F i = @j F i +
z
Äijl F l
rk gij = @k gij Ä
z
rk H ij = @k H ij +
z
z
z
ri f = @i f
Äpki gpj Ä
Äikp H pj +
z
Äpkj gip
z
Äjkp H ip
これらは上から (0; 1) 次 , (0; 2) 次 , (1; 1) 次 , (0; 3) 次 , (2; 1) 次テンソ
ルとなる。
5
共変微分に対して、次のような等式が成り立つ。ここでは、例を上げ
るのみであるが、これらは一般化できる。
z
z
rk (Ai + Bi ) =
z
rk Ai +
z
rk B i
rk (gij v j v j ) = (z rk gij )v i v j + gij (z rk v i )v j + gij v i (z rk v j )
z
z
rk (f Eij ) = (z rk f )Eij + f (z rk Eij )
rk (g ij Aj ) = (z rk g ij )Aj + g ij (z rk Aj )
x1. 4 方程式 z [xi =t] = 0 について
z
N 次元空間 äN 上に、接続係数 z Äijk が与えられているとき、記号
[x =t] を次式の意味とする。
i
z
[xi =t] =
dv i
+
dt
z
Äijk v j v k
ここで、 v i = dxi =dt とする。
方程式 z [xi =t] = 0 の解である曲線 xi (t) について考える。パラメー
タ t を別のパラメータ s に変換すると、 xi (s) は z [xi =s] = 0 を満たす
とは限らない。従って、パラメータ t はこの方程式にとって特別なパラ
メータである。定数 c によって s = ct とすると、 xi (s) もこの方程式を
満たす。逆に、あるパラメータ s による xi (s) がこの方程式を満たすな
らば、定数 c があって s = ct と書けることは、次のようにしてわかる。
z
[xi =s] = 0 のパラメータを t に変換すると、v i = dxi =dt とすれば、 x
1. 8の公式 (8) により、
ê dt ë 2
ds
z
[xi =t] +
d2 t i
v =0
ds2
2
となるが、これより d t=ds2 = 0 が得られ、s = ct と書けることがわか
る。パラメータ s と t が定数 c によって s = ct と書けるとき、 s と t
は同期していると呼ぶ。
v i は xi (t) 上のみに存在するベクトルであるが、一端 xi (t) が与えら
れた後であれば、必要に応じて xi (t) の周りにも仮想的に存在すると考え
ることで、次のような表現が可能になる。
ê @v i
ë
z i
z i
j
[x =t] =
+
Ä
v
v k = (z rk v i )v k
jk
@xk
このように表現すると、計算が簡単になる場合がある。
6
命題 1.4.1 N 次元空間 äN 上に、接続係数 z Äijk と計量 gij が与えられ
ているとする。xi (t) を方程式 z [xi =t] = 0 を満たす曲線とし、パラメー
タ s をこの xi (t) の gij による弧長とするとき、t と s の間に次の関係が
成り立つ。 V i = dxi =ds とするとき、
ê ë2
d2 s 1 z
i j k ds
Ä
r
g
)V
V
V
= 0 (1)
(
k
ij
dt2
2
dt
また、これを書き換えた、
1
d2 t
dt
+ (z rk gij )V i V j V k
= 0 (2)
ds2
2
ds
が成り立つ。
(証明) x1. 8の公式 (8) を使って、 z [xi =t] = 0 の t を s に変換
すると、
ê ds ë 2
d2 s
z i
[x =s] + 2 V i = 0
dt
dt
となるが、これに gij V j をほどこして、
ê ds ë 2
dt
gij z [xi =s]V j +
d2 s
=0
dt2
(3)
とする。一方で gij V i V j = 1 より、
0=
z
rk (gij V i V j )V k = (z rk gij )V i V j V k + 2gij (z rk V i )V k V j
ここで、 (z rk V i )V k =
z
[xi =s] であるから、
(z rk gij )V i V j V k = Ä2gij z [xi =s]V j
(4)
を得る。 (3) と (4) より結果 (1) を得る。結果 (2) については、結果 (1)
に x1. 8の公式 (4) を使用すれば得られる。(終)
この命題において、各点座標として計量 gij の測地座標をとれば、接
続係数 z Äijk は Christof f el の記号 g Äijk に一致し、 Christof f el の記
号においては g rk gij = 0 であるから d2 t=ds2 = 0 が得られる。
命題 1.4.2
N 次元空間 äN 上に、接続係数 z Äijk と計量 gij が与えられ
ているとする。xi (t) を方程式 z [xi =t] = 0 を満たす曲線とし、パラメー
タ s をこの xi (t) の gij による弧長とする。また、別のパラメータ úが、
d2 ú 1 z
dú
+ ( rk gij )V i V j V k
=0
2
ds
2
ds
(1)
7
を満たすとする。このとき、 t と ú の間に
d2 ú
=0
dt2
が成り立つ。ここで V i = dxi =ds とする。
(証明)
dú dúds
=
dt
ds dt
を d=dt することで、
d2 ú d2 úê ds ë 2 dúd2 s
= 2
+
dt2
ds dt
ds dt2
(2)
が得られる。一方で命題 1.4.1 より、
1
dt
d2 t
+ (z rk gij )V i V j V k
= 0 (3)
ds2
2
ds
が成り立つ。 (1) と (3) により、
ds d2 ú ds d2 t
=
dú ds2
dt ds2
が得られ、これより式 (2) の右辺の第1項は、
d2 úê ds ë 2
dúê ds ë 3 d2 t
=
ds2 dt
ds dt ds2
また、式 (2) の右辺の第2項は x1. 8の公式 (4) によって、
dúd2 s
dúê ds ë 3 d2 t
=
Ä
ds dt2
ds dt ds2
これらより結果を得る。(終)
x1. 5 接続係数と計量の同期
N 次元空間 äN の曲線 xi (t) 上に、接続係数 z Äijk と計量 gij が与え
られているとする。
xi (t) 上のベクトル ai (t) や bi (t) が、 z Äijk について平行であるとは、
xi (t) 上で、
(z rk ai )v k = 0 ; (z rk bi )v k = 0 ; v i =
が成り立つことをいう。また、この曲線上の各点で、
(z ri gjk )v i = 0
dxi
dt
8
Äijk と gij は xi (t) 上で同期している、という。こ
こで、 z Äijk と gij は xi (t) 上のみで与えられている、としているから、
z
ri gjk は計算できないが、 (z ri gjk )v i のように v i が付いているので計
算が可能である。次のことが成り立つ。
となっているとき、
z
z i
Äjk と gij が xi (t) 上で同期しているとき、xi (t) 上のベ
命題 1.5.1
クトル ai (t) と bi (t) が z Äijk について平行ならば、
d
(gij ai bj ) = 0
dt
である。
これから、 xi (t) 上で ai の大きさ gij ai aj はずっと一定であり、ま
た、 ai と bi がある点で gij に関して直交していれば、ずっと直交して
いることがわかる。( gij ai bj = 0 のとき ai と bj は gij に関して直交し
ているという)
(証明)
d
(gij ai bj ) =
dt
z
rk (gij ai bj )v k
= (z rk gij )v k ai bj + gij (z rk ai )v k bj + gij ai (z rk bj )v k = 0
(終)
z i
命題 1.5.2
Äjk と gij が xi (t) 上で同期しているとき、xi (t) 上のベ
クトル ai (t) が z Äijk について平行ならば、 ai = gij ai とするとき、
(z rk ai )v k = 0
が成り立つ。すなわち ai も平行である。
(証明)
(z rk ai )v k = fz rk (gij aj )gv k
= (z rk gij )v k aj + gij (z rk aj )v k = 0
(終)
x1. 6 線状座標
N 次元空間 äN 上の曲線 xi (t) (c î t î d) に対して、この曲線の周
りに、この曲線に沿った細長い N 次元の筒状領域をとり、この領域上に
座標 (z i ) が次のように与えられているとする。
9
(z i ) 上の z N 軸上の c î z N î d 区間上の点 (0; :::; 0; z N ) が xi (z N )
である。
このとき、 (z i ) を曲線 xi (t) の線状座標と呼ぶ。
命題 1.6.1 N 次元空間 äN の曲線 xi (t) (c î t î d) 上に、接続係数
Äijk が与えられている。また、 xi (t) 上の各点に N 個の1次独立なベク
y
トル ei [n] が与えられていて、特に
ei [N ] = v i ; v i =
dxi
dt
とする。このとき、 ei [n] の各々が y Äijk に関して平行であるならば、
ei [n] =
@xi
@z n
(1)
@xi @ 2 z l
(2)
@z l @xj @xk
となるような xi (t) の線状座標 (z i ) が存在する。
y
Äijk =
また逆に、(2) を満たすような xi (t) の線状座標 (z i ) が存在したとす
ると、 (1) によって ei [n] を定義すると、 ei [n] は y Äijk に関して平行で
ある。
(証明) 最初に前半を証明する。まず、 xi (t) 上に y Äijk を接続係数
に持つ各点座標 (y i ) を、例えば <x1. 2 各点座標と接続係数> で示し
たような方法で作り、
@xi
ei [n] =
@y n
となるようにする。
別に、もうひとつ N 次元空間 (z i ) を用意しておき、この座標 (z i ) 上
の z N 軸に十分に近い点 P に対して、 P の z N 座標値を z N (P ) とする
とき、まず、 xi (t) 上の点 xi (z N (P )) を Q とする。そして、点 Q の各
点座標 (yi )Q をとる。そして、点 P の (y i )Q 座標を
ya = za ; yN = 0
(a = 1; 2; :::; N Ä 1)
として決める。次に、各点座標 (yi )Q と (xi ) との関係から、点 P の (xi )
座標を決める。このようにして、 z N 軸のまわりで写像 (z i ) ! (xi ) がで
きる。
このようにすると、 z N 軸上の点 P と、それに対応する (y i )Q にお
いて、
@xi
@xi
=
(a = 1; 2; :::; N Ä 1)
a
@z
@y a
10
となるが、これはこの写像 (z i ) ! (xi ) の作り方より明らかである。
また、 z N 軸上の点においては t = z N であるから、
@xi
dxi
=
= v i = ei [N ]
@z N
dt
これらから、結局 xi (t) 上で
@xi
@xi
i
=
e
[j]
=
@z j
@yj
(3)
が成り立つ。
式 (3) より z N 軸上で、行列 @xi =@z j の行列式は 0 でないことが
わかる。従って、 z N 軸のまわりのある細長い領域でも、行列 @xi =@z j
の行列式は 0 でない。従って、この領域で関数 xi (z 1 ; :::; z N ) の逆関数
z i (x1 ; :::; xN ) が存在する。
写像 (z i ) ! (xi ) の作り方から、 z N 軸上の点 P と、それに対応す
る (y i )Q において、
@ 2 xi
@ 2 xi
=
@z b @z a
@y b @ya
(a; b = 1; 2; :::; N Ä 1)
(4)
さらに、式 (3) を z N で微分して、
@ 2 xi
d
= ei [j]
N
j
@z @z
dt
(5)
を得る。
さて、これらの準備の元で、z N 軸上の点 P と、それに対応する (y i )Q
において、
@ 2 xi
@ 2 xi
=
j
k
@z @z
@yj @y k
となる必要条件を求めてみよう。式 (4) によって
j; k = 1; 2; :::; N Ä 1
の場合は、すでに成り立っている。式 (5) を考慮すれば、
d i
@ 2 xi
e [j] Ä N j = 0
dt
@y @y
(6)
が成り立てばよい。 x1. 8の公式 (5) によれば、
Ä
@ 2 xi
=
@y j @yk
p
y i @x
Äpq j
@xq
@y @y k
11
が成り立つから、これを用いて式 (6) を書き換えると、
d i
e [j] +
dt
y i
Äpq
@xp q
e [j] = 0 (6:1)
@y N
となる。これを書き直せば、
d i
e [n] +
dt
y i q
Äpq e [n]v p
= 0 (6:2)
となる。式 (6:2) はベクトル ei [n] が、 xi (t) に沿って
y
Äijk に関して平
行である条件である。
次に、後半の方を証明する。そのような (z i ) が存在したとすると、
(z i ) 上で z N 軸上のベクトル eñi [n] を
eñi [n] =
@z i j
@z i @xj
e [n] =
= éni
j
@x
@xj @z n
と定義すれば明らかに、
d i
eñ[n] = 0
dt
である。<x1. 3 共変微分>に従って、
ê @z k @xi @
ë
ê @
l
j
e
ñ
[n]
v
=
ei [n] +
@xj @z l @z k
@xj
z
ë
Äijl el [n] v j
これより、
d i
e [n] +
dt
z
Äijl el [n]v j = 0
を得る。
(終)
x1. 7 その他の命題
命題 1.7.1 N 次元空間 äN 上に、接続係数 z Äijk と計量 gij が与えられ
ているとする。このとき、 z rk gij = 0 ならば接続係数 z Äijk は計量 gij
の Christof f el の記号 g Äijk に等しい。
(証明) 共変微分の定義より、
z
rk gij = @k gij Ä
z
Älki glj Ä
z
Älkj gil = 0 (1)
z
ri gjk = @i gjk Ä
z
Älij glk Ä
z
Älik gjl = 0 (2)
z
rj gki = @j gki Ä
z
Äljk gli Ä
z
Älji gkl = 0 (3)
これらより、
(1) + (2) Ä (3) = @k gij + @i gjk Ä @j gki Ä 2 z Älik glj = 0
12
これに g mj =2 をほどこすと、
1 mj
g (@k gij + @i gjk Ä @j gki ) =
2
z
Äm
ik
この左辺は Christof f el の記号 g Äm
(終)
ik に等しい。
命題 1.7.2 N 次元空間 äN 上に、接続係数 y Äijk ; z Äijk が与えられてい
るとき、この2つの差 (y Äijk Ä z Äijk ) は (1; 2) 次テンソルである。
(証明) 座標変換による接続係数の変換式、
y ñi
Äjk
=
@ xñi y l @xm @xn
@ xñi @ 2 xl
Ämn j
+
l
k
@x
@x
ñ @x
ñ
@xl @ x
ñj @ xñk
@ xñi z l @xm @xn
@x
ñi @ 2 xl
Ämn j
+
l
k
@x
@x
ñ @ xñ
@xl @ xñj @ x
ñk
この2式の差をとることで結果を得る。(終)
z ñi
Äjk
=
命題 1.7.3 N 次元空間 äN 上に、計量 gij とスカラー ï が与えられて
いるとき、計量 ïgij の Christof f el の記号の値は、
p
g i
Äjk + (éji Ck + éki Cj Ä g il Cl gjk ) ; Ci = @i log ï
g
である。ここで、
(証明)
Äijk は gij の Christof f el の記号である。
1 il
g f@j (ïgkl ) + @k (ïgjl ) Ä @l (ïgjk )g
2ï
=
=
+
1 il
g (@j gkl + @k gjl Ä @l gjk )
2
1 il
g f(@j ï)gkl + (@k ï)gjl Ä (@l ï)gjk g
2ï
=
g
Äijk + g il (Cj gkl + Ck gjl Ä Cl gjk )
(終)
命題 1.7.4 N 次元空間 äN 上に、計量 gij が与えられている。 gij の
Christof f el の記号を g Äijk とすると、次の等式が成り立つ。
@k gij = gil g Äljk + gjl g Älik
13
(証明)
g
Äijk =
1 il
g (@j gkl + @k gjl Ä @l gjk )
2
より、
1
(@j gkm + @k gjm Ä @m gjk )
2
これの j と m を入れ替えて、
gmi g Äijk =
gji g Äimk =
1
(@m gkj + @k gmj Ä @j gmk )
2
(1)
(2)
この2つを足し合わせることで、
gmi g Äijk + gji g Äimk = @k gjm
(終)
命題 1.7.5 N 次元空間 äN 上に、計量 gij が与えられている。xi (s) を
この空間上の任意の曲線とする、パラメータ s を、
ds2 = gij dxi dxj
とし、
Fi =
dv i
+
ds
g
Äijk v j v k ; v i =
dxi
ds
と F i を定義すると、
gij F i v j = 0
が成り立つ。すなわち、 F i と v i は gij に関して直交する。
(証明)
0=
d
(gij v i v j ) =
ds
g
rk (gij v i v j )v k
= (g rk gij )v i v j v k + 2gij (g rk v i )v j v k
Riemann 空間論によれば g rk gij = 0 だから、
0 = gij (g rk v i )v j v k
ところが、 F i = (g rk v i )v k であるから、これより結果を得る。(終)
命題 1.7.6 N 次元空間 äN 上に、計量 gij が与えられている。g Äijk を
gij に対する Christof f el の記号とするとき、等式
@i log
p
g=
g l
Äli
; g = det(gij )
14
が成り立つ。
(証明) 線型代数学による行列式の定義によれば、
g = Üè(ö)g1i1 g2i2 :::gN iN
(1)
ここで、 öは置換
ö= (12:::N ) ! (i1 i2 :::iN )
を表す。è(ö) は置換 öの符号である。Ü の和はすべての置換 öにわたる
ものとする。式 (1) を xp で微分すると、
@p g = Üè(ö)(@p g1i1 )g2i2 :::gN iN + Üè(ö)g1i1 (@p g2i2 ):::gN iN +
: : : + Üè(ö)g1i1 g2i2 :::(@p gNiN )
= (@p g1l )Å 1l + (@p g2l )Å 2l + ::: + (@p gN l )Å N l = (@p gkl )Å kl
ここで、Å ij は行列 gij の余因子である。さらに、線型代数学による等式
g ij = Å ji =g を使えば、(ここで g ij は gij の逆行列とする)
@p g = (@p gkl )Å kl = (@p gkl )gg kl
(2)
を得る。一方、
0=
g
rk gij = @k gij Ä
g
Älki glj Ä
g
Älkj gli
の両辺に g ij をほどこすと、
0 = g ij @k gij Ä
g
Älki glj g ij Ä
g
Älkj gli g ij
これより、
g ij @k gij = 2 g Äiki
これに、式 (2) を使えば、
g Ä1 @k g = 2 g Äiki
これより結果を得る。(終)
命題 1.7.7 N 次元空間 äN 上に、曲線 xi (t) と接続係数
れているとき、
Bi =
は反変ベクトルである。
a
[xi =t]
a i
Äjk
が与えら
15
(証明) 座標変換 xi ! x
ñi によって、 B i がどう変化するかをみれ
ばよい。公式 (7) によって、
ñp
xj dñ
@xi ê d2 x
@x
ñn @ 2 xl dñ
d2 xi
xk ë
=
+
dt2
@x
ñp dt2
@xl @ x
ñj @ x
ñk dt dt
このかっこ内の第2項を、公式 (5) によって書き換えれば、
ñp dxm dxn ë
@xi ê d2 xñp
@2x
d2 xi
=
Ä
dt2
@x
ñp dt2
@xm @xn dt dt
(1)
接続係数の変換規則によって、
ñm @ x
ñn dxj dxk @xi @ 2 x
ñp dxj dxk
dxk
@xi a ñp @ x
=
+
(2)
Ä
mn
dt dt
@x
ñp
@xj @xk dt dt @ x
ñp @xj @xk dt dt
a i dx
Äjk
j
式 (1) と (2) を足しあわせれば、
dxk
@xi ê d2 x
ñp
+
=
dt dt
@ xñp dt2
d2 xi
+
dt2
a i dx
Äjk
j
dñ
xn ë
dt dt
xm
a ñp dñ
Ämn
(終)
x1. 8 公式
ここに、全体を通じて使用する一般的な公式を列挙する。各式は簡単
な計算によって確認することができる。
Christof f el の記号について、
g i
Äjk
=
g
1 il
g (@j gkl + @k gjl Ä @l gjk )
2
rk gij = 0;
g
rk g ij = 0
(1)
(2)
Christof f el の記号の座標変換は、
g ñi
Äjk
=
@x
ñi g l @xm @xn
@x
ñi @ 2 xl
Ämn j
+
l
k
@x
@x
ñ @x
ñ
@xl @ xñj @ x
ñk
(3)
t を s の関数とするとき、
ê ds ë 3 d2 t
d2 s
=
Ä
dt2
dt ds2
(4)
N 次元空間 äN の座標 (xi ); (yi ); (z i ) があるとき、
@xi @ 2 y l
@ 2 xi @yl @y m
=Ä l m j
l
j
k
@y @x @x
@y @y @x @xk
(5)
@ 2 y i @z m @z n
@y i @ 2 z l
@ 2yi
=
+
@xj @xk
@z m @z n @xj @xk
@z l @xj @xk
(6)
16
@yi ê d2 xn
@xn @ 2 y l dxj dxk ë
d2 y i
=
+
2
n
2
dt
@x
dt
@y l @xj @xk dt dt
(7)
さらに、接続係数 a Äijk と曲線 xi (t) が与えられているとき、式
をパラメータ変換 t ! s すると、
a
[xi =t] =
ê ds ë 2
dt
a
[xi =s] +
d2 s dxi
dt2 ds
(8)
参考文献
(1) 石原繁:幾何学概論 (共立数学講座9)(共立出版,1995)
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時空理論 第1章
2010 年3 月 Ver1.1 発行
著者:渡辺 満 , 発行者:渡辺 満
Copyright 渡辺 満 2010 年 a
[xi =t]