験 震 時 報 第 48巻 ( 19 8 3 )18-22頁 三ケ日 V L $ : .ける埋込式体積歪言十に対する降雨の影響. -二瓶ー信一, 櫓 皮 久 義 " E f f e c t ofP r e c i p i t a t i o n on B o r e h o l eVolumeS t r a i n m e t e ra tM i k k a b i S .Nihei and H.Hikawa ( E a :r thquake P r e d i c t i o I I 1nformation D i v i s i o n,J .M.A.) S t r a i n changesa t Mikkabi訂 e. i n f l u e n c e d by p r e c i p i t a t i o n . 1n ordert oc o r r e c tth~ e f f e c to f , p r e c i p i t a t i o n,atank modeli sa p p l i e dt os i m u l a t et h es t r a i n responset op r e c i p i t a t i o n。 Ast h er e s u l to ft h es i m u l a t i o n,agood c o r r e l a t i o n between t h el e v e lo ft h et a n k5and s t r a i n changesi so b t a i n e d . The c o r r e c t i o n can r e j e c tabout8 0% o ft h ee f f e e t sdue t op r e c i p i t a t i o n . I t~s the reason ofthed i l a t a t i o na f t e rp r e c i p i t a t i o nt h a tt h eground neart h es t r a i n m e t e r expands byabsorbing t h ew a t e r . ~ 1 しかし"三ケ日 Kおいては.他の点にはみられない はじめに 夏期(雨期)に膨張し.冬期(乾燥期)には収縮する 一般に.傾斜計や伸縮計等 Kよる地殻変動の観測で という年変化をくりかえしている ( F i g . l参照). こ は.その観測点が.地表または浅い場合.降雨の影響 れは.明らかに降水による季節変化である.この三ケ をうけやすい.一方.埋込式体積歪計は.他の地殻変 日の歪変化を降水によって補正することを目的~,タ 動観測用測器忙比較すると, 5 0 . . . . . . . 3 0 0 mの深きに埋設 ンクモデルを用いてシミュレージョンを行ったのでそ きれているので.その影響は少ないと考えられる. の結果について報告する. EXP │ 5 x 1 6 5 m 100 1 9 7 6 1 9 7 7 1 9 7 9 1 9 7 8 1 9 8 0 Fig.l S t r a i n changesa t5 s t a t i o n si n Tokair e g i o n and p r e c i p i t a t i o na tHamamateu. S t r a i n changesa t Mikkabiarei n f l u e n c e d by p r e c i p i t a t i o n . • R e c e i v e dF e b . 2 8 .1 9 8 3 “気象庁地震予知情報課 また.降水 K よって歪計に変化が起る理由について 考察した. -18- 1 9 三ケ日における埋込式体積歪計に対する降雨の影響 ~2 三ケ日付近の地形と地質および観測乳の構造 と歪変化を比較したものが. F ig.4である.歪計に近 い鶴代の水位とやや相関があるようにみえるが.簡単 歪計の設置点は.浜名湖北部の猪鼻湖の湖岸から約 ig.4にみ な関係ではないようである.湖の水位は. F 700m離れた標高 15mの地点で.北東方向には.標高 られるように雨の直後に増加し.すぐに滅少してしま 200m程度の丘陵地帯が拡がっている ( F i g . 2参照). うが.歪は夏期(雨期)に膨張し.冬期に収縮すると 歪計感部は,地下 51mの地点 K埋設されている.現 いう長い変化をしている. 在 , 3 1点の歪計が設置されているが.その中で最も浅 ig.3V(.歪計の孔の構造と,ポーリ くなっている. F なお.猪鼻湖は浜名湖に連結しており.浜名湖は太 平洋に開口しているので.水位は短時間で変化してし ングしたときの柱状図を示した.観測孔の上部は.風 まう.湖の水位を歪変化の補正に用いることはむずか 化が著しく軟弱であるが.歪計埋設地点は楕曲がある しL、 も安定した岩盤となっている.このため.孔の上部H m までは. 6イ,ンチのケーシングパイプが入っている 2 1 1 H │ J 2 │ J ては地下 が.それより下部は裸孔のままである.孔内 U 事 水がたまってドるがが裸孔部分を通して出入りしてい 風イt着 1く、成坊さ札 るものと考えられる.なお. 1 9 7 6年 1 0月の設置時の 1 0 . 01 結 孔内の水位は,地表から1.8mであったが. 1 9 8 1年 1 0 1 れみコ ベ町51.0~ 猪鼻湖の水位と歪変化 400~ ぬえしろ 猪鼻湖では.鶴代(釣橋 J 1 1)と瀬戸(都田)11)で静 T昨 日 170m-碍 軟 ; k . ・ 官 失帝tl 2001 月には 3 .2mであった. ~3 コ 71~~不可官邑 与手そc l ~氏 ~ ~虫 7 母4.ヱ ナ 、 叫 附 │ l 4 A 5 6 d m 4, d l 、 2 将3 e c 暑 m五 L 重恥 晴~.., -.r; 者";'(, 五度時収、岩盤刊写え 岡県浜松土木事務所が水位観測を実施している.水位 51 .0 146mm Fig.3 The c r o s ss e c t i o no fobserving bore~ h o l eand columnar i l l u s t r a t i o no f t h eboring a tMikkabi. 40 40 20 1 9 8 0 F i g .2 Topographicalmap nearMikkabi. x:P oint o fs t r a i n m e t er . ④ :P oint o fwater l e v e lo b s e r v a t i o n . F i g .4 S t r a i n changesa t Mikkabi,water l e v e la t Nueshiroand Seto a t Lake lnohanaand p r e c i p i t a t i o na tH Hamamatsu. -19- 2 0 験 震 時 報 第 48巻 第 1- 2号 ~4 は.3 0 n n n以上の降水量は全て流出してしまい.地下 K タンクモデルによるシ ξ ュレーション は3 0n n n分が浸透すること とした.タンク 2段目以降で. J タンクモデルは,降雨・降雪忙よって河川流出量が どのように変化するかを計算する流出計算法の一つで. 0r nV Lは徐々に浸透していくと考え.その時間的 地下 5 おくれなどを調整する働きをしている. 9 7 2 ,1 9 7 9 ) . 洪水予報等 K利用きれている(菅原正己:1 また.地殻変動観測に対する降雨の影響のシミュレー シミュレーションは,短期間から始めて.次第 K長 い期聞に合うよう試行錯誤でタンクモデルやその係数 9 7 9 . ション K も用いられている(例えば,田中寅夫:1 9 7 7 " " " "1 9 7 8年について調整し を求めた.主として. 1 山内常生. 1 9 8 1,など). 。 て合うよう VLLた 一般に地殻変動観測の場合.降雨の影響は,ある 程度まとまった降水量がなければ.影響を受けない. タンク 5の水位(貯留高) HVL比例した量だけ歪が 変化すると考えシミ・ュ νーションを行う. また,その時点で地質の含有している水分の状況によ Fig.6は.降水量とタンク 2 . . . . . . . . . 5の貯留高の変化お ってもその影響が異なる.通常流出解析に用いられて よび,歪の変化との比較である.タンク 5の変化が歪 ドるタンクモデルは 3段ないし 4段のタンクを直列に 変化に良く似ていることがわかる. 並べたものが多いが.その方法は確宣されたものはな ~5 く.経験や試行錯誤忙よって求められている. 三ケ日の場合にも.はじめ 3段程度で始めて.計算 シ ξ ュレーションの結果 1976年から 1 9 8 0年までの結果を Fig.7V L示す.歪 をくり返したが.あまり良い結果が得られなかった. の変化は.降水による膨張.収縮の変化を除いて考え 特V L . 時間のおくれの調整がむずかしく,結局 5段の ると.指数曲線的に収縮しているので. ドリフト除去 ものを 用いることとなった. にあたっては.修正指数曲線(公式 y=K-a・b )を X i 降水量は浜松測候所のものを用いた.三ケ日との距 最小自乗法であてはめた. 離は約 25krnである. Tab.1V Lタンク 5の貯留高とドリフト除去した歪と Fig.5がその夕、ンクモデルである. 1段自のタンク P← Fig.7をみると.タンク 5の貯留高を歪量 K換算し たもの (TANK5)とドリフト除去した歪 .(D-STRAIN) 司 a 1 ab.1の よ う に 年 に タンク 5と歪の比例係数は. T よってかなり変動しているが,全体を平均的な 0 . 6x 1 0 -7 / n n nで歪を修正した (C-STRAINおよび C : D - 2 園田 STRAIN)• 降水の影響と考えられる夏期の大きな ii 園 STI 司AIN TANK5 TANK4 TANK3 TANK2 ﹁喝 M - ・ E-BEBEE-- 圃 , 、 - E n nu u ; ・ nu n u しい肘U 、E・-一│圃 5 , EE固目目E 弔目 刊J U K ﹁ ''・・角 ﹃ m 。 一 。 一 同 55 FEl'HH G 24 ・ 33E n 圃 C4Elil--L ζ --mjT a-or ・ ・K 1 l l a k ﹁│││﹁市 In 口 圃﹁ ド T TInu--Illi-J; BIlli--I1111111 勺f thill-巳 J 司 .4l-nu ・!♂ nu--au ・ ll 川 D l小川 }mm ι- 日 、L 川 ' h --川官( n 1 (1 T 口 ﹃│-5﹃│﹁ O'm は.変化のしかたは良く似ている. 1 9 7 6年から 1 9 7 8 年までは非常に良い結果が得られた. F i g .5 . Diagram o ft h e tank model f o rt h e s i m u l a t i o n . Simulation i s madeby t h e assumption t h a ts t r a i n change i s ft h e proportionel t ot h el e v e l 但)o tank5 . の相互相関係数と 1次の比例係数を示す. PRECIPITATION F i g .6 P r e c i p i t a t i o n,l e v e l so ft h et a n k sand s t r a i nc h a n g e s . -20ー 三ケ日における埋込式体積歪計に対する降雨の影響 2 1 あるととや.タンクモデノレそのものが.まだ不十分で あると考えられる. ~6 芳察 三ケ日の季節的な歪変化は.ある程度タンクモデル -O-ST 1 IAIN を用いて補正できることがわかった.通常.降水があ ると歪計はその荷重 K よって収縮する.じかし〈三ケ 日では降水のあった後膨張する.降水の動きから考え て.水は地下に徐々に浸透していき,地下水位はそれ K よって変動している.地下水位が変動すると.歪に ' L よ 変化を与える.静岡の観測(太田金房ら:1982)V F i g .7 Ther e s u l to ft h es i m u l a t i o nf o r s t r a i nc h a n g e s . STRAIN:O r i g i n a ls t r a i n change. C-STRAIN:S t r a i n changec o r r e c t e d by t h et a n k5 . D -STRAIN: S t r a i n ehange a f t e r r e j e c t i n gd r i f t . S t r a i n change C-D-STRAIN: f t e r c o r r e c t e d byt h et a n k5 a r e je c t i n gd r i f t . Tank5:Amount o ft a n k 5 converted i n t os t r a i n change v a l u e . れば.通常.地下水位が上昇すると歪は膨張しており. 三ケ日の現象と一致している. 地下水位の上昇によって歪計付近の岩盤は.吸水し て膨張すると考えるのも一つの考え方である.逆に地 下水位がきがると.岩盤は含水率が波少して収縮する と考えられる.なお.岩盤の吸水膨張の大きさは.岩 盤の地層に垂直の方向 K大きく.水平方向の 2倍位で ある(鈴木光:1973). 三ケ日の場合,歪計センサー 0 . . . . . . .60度の角度で摺曲しているので. 付近の地層は. 3 吸水膨張の影響が大きく出やすいことも考えられる. また.地形的に考察すると.北東方面の丘陵地帯より. o r r e l a t i o n and p r o p o r t i n a lC o e f f i c i e n t Tab.1 C . between s t r a i n changesand t a n k5 牢 C o r r e l a t i o na f t e rr e j e c t o dd r i f tonly 1976 y e a r . 猪鼻湖付近の低地の方が.降水は浸透しやすいと考え られる. もう一つの考え方として.地下の温度変化のことが あるが.降水のため地下水位温度が変化すると考える と説明できるかもしれない。膨張するためには.歪計 y e a r C o r r e l a t i o n P r o p o r t i o n a lc o e f f i c i e n t センサーだけを考えると.温度は下降しなければなら 1976 0 . 6 0( 0 . 9 4 . ) 0 . 7 8X 10-7/ n n n ない. しかし.まわりの岩石も含めて考えるとまわり 1977 0 . 9 6 0 . 6 2 の岩石の熱膨張率と歪計の効果とが相殺され.その大 1978 0 . 9 3 0 . 5 4 .3 きさ K よって変わってくる。歪計は自由であれば.1 1979 0 . 7 2 0 . 3 5 x10-4/'Cの変化があるといわれているが.例えば.岩 1980 0 . 8 8 0 . 6 0 石が歪計と同じ程度の熱膨張率をもっているとすれば. Total 0 . 8 2 0 . 6 4 温度変化の影響は現われない.岩石の熱膨張率は詳し く知られていないが.東伊豆の温度観測と歪の関係は. 膨張の変化は除去されているが,時期 K よっては.補 現在.歪 K現われる変化(ドリフト)が全て温度によ 正のしすぎ.あるいは逆 K補正のたりないところがあ るものと仮定すると. 0 . 5X 1Q-4/'C程度である.三ク 程度 る.しかし.降水によると思われる歪変化の 80% 日の場合もこの程度と仮定し.降水のあと膨張する歪 は補正きれている。タンク 5の変化のしかたは,歪変 変化が全て温度変化によるものとすると.その年 Kよ 化に比べると.まだこまか L、変化が残っており.特V'L. . 5X 1 0 -5程度の歪変化が認め って異なるけれども. 0 1979 ,1 980年は良くない.全期聞を同じ係数で補正し られるので.1 /10'C程度の変化が必要である.しかし. たが.係数の値は.年によっては 2倍以上の開きがあ 三ケ日で温度を測定した結果では. 1 /100'C以下の変 り.年によって降水による影響は一様でないのかもし 化しか認められないので.温度変化によるものとは考 れない. えられない. 1979 ,1980年が良くあわない原因としては.使用し た降水量が.三ケ日から 25kmはなれた浜松のもので 降水のあと現われる歪変化は.岩盤の吸水膨張によ るものと考えられる. 一21- 験震時報第 4 8巻 第 1- 2号 22 鈴木光 ( 1 9 7 3 ) 謝辞 三ケ日および東伊豆の温度測定 Kついて.北海道大 学の島村英紀氏 K大変お世話になったことを報告し. 岩盤力学と計則.内田老鶴圃新社. 339 田中寅夫(19 7 9 ) ここ K感謝の意を表します. 傾斜計・伸縮計記録 K現われる降 I地学会誌. 雨の影響とそのシミュレーション,調J 25, 91-100 参芳文献 田中寅夫.細善信.加藤正明(19 7 9 ) 太田金房.吉田明夫 ( 1 9 8 2 ) 地下水位と歪みの関係. 東管技術ニュース, 67 , 56-62 和歌山由良に おける傾斜.ひずみと降雨 Kついて.測地学会誌 25, 302-312 山内常生(1981 ) 降 雨 K対する地殻歪レスポンスの 菅原正己(1972) 流出解析法.共立出版社, 菅原正己(19 7 9 ) 続流出解析法.共立出版社, 2 69 257 シミュレーション.測地学会誌, 27 ,40-49 -22-
© Copyright 2024 ExpyDoc