3.7

経済学のためのゲーム理論入門
第 3 章 不完備情報の静学ゲーム
3.7
プレイヤー(入札者)の集合を I = {1, 2} とする.3.6 同様,各プレイヤー i の行動空
間は Ai = [0, ∞),タイプ空間は Ti = [0, 1],wi ∈ Ti ,wi ∼ U [0, 1], i.i.d.
*1 .戦略空間は
Si = {si | si : Ti → Ai } である.利得は,

( if si > sj )
 wi − si
(wi − si )/2 ( if si = sj )
ui =

0
( otherwise )
(1)
で表すことができる*2 .3.6 の解答で見たように,一位価格・封印入札オークションのベイジアン・
ナッシュ均衡における戦略は,
∫ wi
s∗i (wi )
=
0
v hi (v) dv
Hi (wi )
(2)
で表すことができる.ここで Hi (wi ): Ti → [0, 1] であり,Hi はタイプ wi のプレイヤーがオーク
ションに勝つことのできる確率を表している.また,hi は Hi の導関数を表す.プレイヤーが 2 人
しかおらず,かつ各プレイヤーのタイプが確率密度関数 f (wi ) に従っていると仮定すれば,タイプ
wi のプレイヤーがこのオークションに勝つことのできる確率は,
Hi (wi ) = F (wi )
(3)
と求めることができる.ここで,F (wi ) は確率密度関数 f (wi ) の原始関数(累積分布関数)であ
る*3 .さらに,hi = Hi′ (wi ) = f (wi ) となることを踏まえると,(3) 式から,(2) 式は
∫ wi
s∗i (wi )
=
0
vf (v) dv
F (wi )
(4)
と変形することができ,これがプレイヤー(入札者)が 2 人の場合の一位価格・封印入札オーク
ションにおける対称的ベイジアン・ナッシュ均衡である.
*1
本問 3.7 では,タイプ wi の従う確率密度関数が f (wi ) で定義されている.3.6. では,
「プレイヤー i が si をビッド
してオークションに勝つ確率」を Fi (si ) とおき,これの導関数を fi (si ) とおいたが,これと混同しないよう注意さ
れたい
*2 3.6 においても 3.7 においても,si = sj となる確率が数学的に 0 となることに注意して各プレイヤーの期待利得を
定式化する.
*3 タイプが wi のプレイヤー i がこのオークションに勝つための必要十分条件は,プレイヤー j(j ̸= i)のタイプ wj
が wj よりも小さくなっていることであり,その実現確率は,
Prob(wj < wi ) = F (wi )
で表すことができる.
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