はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま . . 第 1 章 微分方程式と近似解法 畔上 秀幸 名古屋大学 情報科学研究科 複雑系科学専攻 December 18, 2014 . . . . . . 1 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.1 はじめに (目標) 数値解析の考え方を理解する. . . . . . . 2 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.2 数値解析の考え方 数値解析における問題処理のプロセスを図 1.2.1 に示す. 熱伝導 現象 有限差分方程式 近似関数による弱形式 (連立方程式) 熱伝導方程式 (偏微分方程式) 記述方程式 数理モデル化 数値解 近似方程式 離散化 (有限差分法, 有限要素法, 境界要素法, 有限体積法, 粒子法) コンピュータ による数値計算 図 1.2.1: 数値解析における問題処理のプロセス . . . . . . 3 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.3 熱伝導問題 偏微分方程式の境界値問題の基本問題として Poisson 問題を取り上げ る.ここでは,Poisson 問題が身近な物理現象の数理モデルになってい ることを理解するために,熱伝導現象を例に挙げて,その定常的な現象 が Poisson 問題になることをみておこう.最初に,1 次元連続体の時間 発展型熱伝導問題について考えてから,d ∈ {2, 3} 次元連続体の時間発 展型熱伝導問題に拡張していこう. . . . . . . 4 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま 1 次元問題 §1.3.1 1 次元問題 図 1.3.1 のような 1 次元連続体を考えよう.(0, tT ) を時間の領域, (0, l) を 1 次元連続体の領域とする.a を断面積を表す正定数とする. b : (0, tT ) × (0, l) → R を単位時間, 単位体積当りの内部発熱, u : (0, tT ) × (0, l) → R を温度分布とする.このとき,b に対して,u を 求めるための熱伝導方程式を熱と温度の構成方程式と Fourier の熱伝導 法則を満たす熱の釣合から求めてみよう. u,b u(t,x) b(t,x) a x=l x=0 図 1.3.1: 1 次元熱伝導問題 . . . . . . 5 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま 1 次元問題 §1.3.1 1 次元問題 (cnt.) . 定義 1.3.1 (熱と温度の構成方程式) . u を温度とするとき,単位体積当りの熱量は (1.3.1) w = cv u で与えられる.ここで,cv は正値をとる関数 (0, l) → R で,体積熱容 量という. . . 定義 1.3.2 (Fourier の熱伝導法則) . u を温度とするとき,単位時間, 単位面積当りの熱流束は q = −λ ∂u ∂x (1.3.2) で与えられる.ここで,λ は正値をとる関数 (0, l) → R で,熱伝導率と .いう. . . . . . . 6 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま 1 次元問題 §1.3.1 1 次元問題 (cnt.) u u(t,x) q(t,x) x 図 1.3.2: Fourier の熱伝導法則 任意の (t, x) ∈ (0, tT ) × (0, l) に対して,微小な adxdt における熱量 の変化は, (w (t + dt, x) − w (t, x)) adx = (b (t, x) dx − q (t, x + dx) + q (t, x)) adt となる.dx → 0, dt → 0 のとき, ∂w ∂q =b− ∂t ∂x . . . . . . 7 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま 1 次元問題 §1.3.1 1 次元問題 (cnt.) が成り立つ.さらに,(1.3.1) と (1.3.2) を用いれば, ( ) ∂u ∂ ∂u cv − λ =b ∂t ∂x ∂x が成り立つ.この方程式を熱伝導方程式という. {q(t,x)adt b(t,x)adxdt a q(t,x+dx)adt dx 図 1.3.3: 熱量の釣合 熱伝導方程式は空間に関して 2 階,時間に関して 1 階の微分方程式で ある.u を一意に決定するためには,2 つの境界条件と1つの初期条 件が必要となる.例えば,次のような条件が考えられる. . . . . . . 8 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま 1 次元問題 §1.3.1 1 次元問題 (cnt.) 1. uD : (0, tT ) → R を既知として,x = 0 において u (t, 0) = uD (t) が満たされていると仮定する.このような u を指定する条件を基 本境界条件あるいは第 1 種境界条件,Dirichlet 条件という. 2. pN : (0, tT ) → R を既知として,x = l において λ ∂u (t, l) = pN (t) ∂x が満たされていると仮定する.このような u の導関数を指定する条 件を自然境界条件あるいは第 2 種境界条件,Neumann 条件という. 3. u0 : (0, l) → R を既知として,t = 0 において u (0, x) = u0 (x) が満たされていると仮定する.このようなある時刻における u を 指定する条件を初期条件という. . . . . . . 9 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま 1 次元問題 §1.3.1 1 次元問題 (cnt.) 初期条件は時間領域の境界条件とみなすことができる.そこで,初期 条件も含めた境界条件と偏微分方程式を満たすような u を求める問題 を偏微分方程式の境界値問題という.熱伝導方程式は線形 2 階偏微分方 程式に分類される.その中でも,熱伝導方程式は放物型偏微分方程式に 分類される (1.4 節参照).定常状態のときは,u (t, x) = u (x) となり, − ∂ ∂x ( λ ∂u ∂x ) =b (1.3.3) となる.(1.3.3) は定常熱伝導方程式とよばれ,楕円型偏微分方程式に 帰着する. . . . . . . 10 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 次に d ∈ {2, 3} 次元物体における熱伝導現象を考えよう.Ω ⊂ Rd を 有界領域として,ΓD を Ω の境界 ∂Ω の部分集合とする. ¯ D とおく.b : (0, tT ) × Ω → R を内部発熱, ΓN = ∂Ω \ Γ u : (0, tT ) × Ω → R を温度分布とする.このとき, u,b u(t,x) uD b(t,x) ºp(t,x) x2 x1 ¡D 図 1.3.4: 2 次元熱伝導問題 . . . . . . 11 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) . 定義 1.3.3 (Fourier の熱伝導法則 : d 次元領域) . 温度 u に対して,熱流束 q : (0, tT ) × Ω → Rd は q1 λ11 .. .. . = − . qd λd1 ··· .. . ··· ∂ λ1d ∂x1 .. .. u or q = −λ∇u . . λdd ∂ ∂xd を満たす.λ = (λij )ij は正定値行列を値域とする関数 Ω → Rd×d で, 熱伝導率という.熱伝導率が等方的であれば λ を正の実数値をとる関数 として,λ = λI (I は単位行列) とかくことができて, q = −λ∇u (1.3.4) .とかけることになる. . . . . . . 12 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) 任意の (t, x) ∈ (0, tT ) × Ω に対して,微小な dx1 · · · dxd dt における 熱量の変化は,ei は xi 軸方向の単位ベクトルとして, (w (t + dt, x) − w (t, x)) dx1 dx2 · · · dxd ∑ = b (t, x) − (qi (t, x + ei dxi ) − qi (t, x)) dt i∈{1,··· ,d} となる.dx1 , · · · , dxd → 0, dt → 0 のとき, ∂w =b− ∂t ∑ i∈{1,··· ,d} ∂qi ∂xi が成り立つ. . . . . . . 13 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) q(t,x+e 3 dx 3 )dx 1 dx 2 dt b(t,x)dx 1 dx 2 dx 3 dt q(t,x+e 2 dx 2 )dx 1 dx 3 dt dx 3 q(t,x+e 1 dx 1 )dx 2 dx 3 dt {q(t,x)dx 2 dx 3 dt {q(t,x)dx 1 dx 3 dt dx 1 x3 x2 x1 dx 2 {q(t,x)dx 1 dx 2 dt 図 1.3.5: 3 次元の熱量の釣合 . . . . . . 14 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) さらに,(1.3.1), (1.3.4) を用いて, cv ∂u − ∂t ( ∂ ∂x1 ··· λ11 ) .. ∂ ∂xd . λd1 ··· .. . ··· ∂ λ1d ∂x1 .. .. u = b . . ∂ ∂x3 λdd が成り立つ.この関係は cv ∂u − ∇ · (λ∇u) = b ∂t とかかれる.この方程式を d 次元の熱伝導方程式という.熱伝導率が実 数値関数ならば, cv ∂u − ∇ · (λ∇u) = b ∂t . . . . . . 15 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) となり,さらに,定数であれば, cv ∂u − λ∆u = b ∂t となる.ただし,∆ = ∇ · ∇ を Laplace 作用素,調和作用素あるいは発 散作用素といい,∇2 ともかく.本書では ∆ を用いることにする. . . . . . . 16 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) u を決定するためには次のような境界条件が必要となる. 1. uD : (0, tT ) × ΓD → R を既知として, u = uD 2. on (0, tT ) × ΓD を基本境界条件という. pN : (0, tT ) × ΓN → R を既知として, ν · (λ∇u) = pN on (0, tT ) × ΓN を自然境界条件という.熱伝導率が実数値関数ならば, λ∂ν u = pN 3. on (0, tT ) × ΓN となる.ただし,∂ν ( · ) = ∂( · )/∂ν = (∂( · )/∂x) · ν と定義する. u0 : Ω → R を既知として,ある t0 ∈ (0, tT ) に対して u (t0 , x) = u0 (x) を初期条件という. in x ∈ Ω . . . . . . 17 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) 定常状態であれば,u (t, x) = u (x) となり,熱伝導方程式は −∇ · (λ∇u) = b となる.また,∂Ω 全体で自然境界条件の場合は,定数分の不定性が残 る.u を一意に決定するためには,ΓD の大きさが零ではない必要が ある. 以上をまとめると,熱伝導問題は次のようにかける.Ω ⊂ Rd を ¯ D とする.cv は正値 d ∈ {2, 3} 次元領域, ΓD ⊂ ∂Ω および ΓN = ∂Ω \ Γ をとる関数 Ω → R とする.λ は正定値行列をとる関数 Ω → Rd×d と する. . . . . . . 18 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) . 問題 1.3.4 (熱伝導問題) . b : (0, tT ) × Ω → R, pN : (0, tT ) × ΓN → R, uD : (0, tT ) × ΓD → R, u0 : Ω → R が与えられたとき, ∂u − ∇ · (λ∇u) = b in (0, tT ) × Ω, ∂t ν · (λ∇u) = pN on (0, tT ) × ΓN , u = uD on (0, tT ) × ΓD , u = u0 in Ω at t = 0 cv を満たす u : (0, tT ) × Ω → R を求めよ. . . . . . . . 19 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま d 次元問題 §1.3.2 d 次元問題 (cnt.) 定常状態のとき,次のようになる. . 問題 1.3.5 (定常熱伝導問題) . b : Ω → R, pN : ΓN → R, uD : ΓD → R が与えられたとき, − ∇ · (λ∇u) = b in Ω, ν · (λ∇u) = pN on ΓN , u = uD on ΓD .を満たす u : Ω → R を求めよ. 問題 1.3.5 において,λ = 1 とおけば,Poisson 問題となる. . . . . . . 20 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類 1.3 節でみたように,熱伝導問題は時間発展問題としてみたときに放 物型に分類され,定常問題としてみたときに楕円型に分類された.ここ では,定数係数の 2 階偏微分方程式 (線形 2 階偏微分方程式) の標準形 に基づく分類法についてまとめておこう. . 定義 1.4.1 (線形 2 階偏微分方程式の分類) . 偏微分作用素 ∂/∂xi , i ∈ {1, · · · , d}, を ξi と表して,階数の和が最大の 項 (主要項) の特性方程式が f (ξ1 , ξ2 , · · · , ξd ) = 0 であるとする.この とき,次のようにいう. 1. 2. 3. . 特性方程式が (ξ1 , . . . , ξd ) = (0, . . . , 0) 以外の実数解をもたないと き,楕円型偏微分方程式という. 特性方程式が (ξ1 , . . . , ξd ) ̸= (0, . . . , 0) に対して,常に2つの異な る実数解をもつとき,双曲型偏微分方程式という. 特性方程式 f (ξ1 , ξ2 , · · · , ξd ) = 0 が ξ1 − f1 (ξ2 , · · · , ξd ) = 0 とかく ことができて,f1 (ξ2 , · · · , ξd ) = 0 が (ξ2 , . . . , ξd ) = (0, . . . , 0) 以外 の実数解をもたないとき,放物型偏微分方程式という. . . . . . . 21 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類 (cnt.) 楕円型偏微分方程式の典型は Laplace 方程式 ( 2 ) ∂ ∂2 ∆u = + · · · + u=0 ∂x21 ∂x2d である.実際, f (ξ1 , · · · , ξd ) = ξ12 + · · · + ξd2 = 0 となり,(x1 , . . . , xd ) = (0, . . . , 0) 以外の実数解をもたない.Laplace 方 程式の他に Poisson 方程式 ∆u = b や Helmholz 方程式 ∆u + λu = 0 な ども楕円型に分類される.これらの特徴は • 釣合い型であること • 閉じた境界条件が必要であること . . . . . . 22 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類 (cnt.) である.例として,定常熱伝導 (温度),静電場 (電位),静的線形弾性問 題 (変位),理想流体の流れ場 (ポテンシャル), Stokes 流れ場 (流速と 圧力) などが挙げられる. 一方,双曲型偏微分方程式の典型は波動方程式 ) ( 2 ∂ ∂2 ∂2 ∂2u 2 2 u=0 + + u ¨ − c ∆u = 2 − c ∂t ∂x21 ∂x22 ∂x23 である.ただし,c は定数で波の速度とよばれる.実際,変数名を変え れば, ( ) f (ξ1 , · · · , ξd ) = ξ12 − c2 ξ22 + · · · + ξd2 = 0 となり,(x1 , . . . , xd ) ̸= (0, . . . , 0) に対して,常に2つの異なる実数解を もつ.双曲型偏微分方程式の特徴は • 時間発展型であること • 閉じた境界条件と 2 つの初期条件が必要であること . . . . . . 23 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類 (cnt.) である. さらに,放物型偏微分方程式の典型は拡散方程式 ( 2 ) ∂2 ∂2 ∂ ∂u −a + + u=0 u˙ − a∆u = ∂t ∂x21 ∂x22 ∂x23 である.ただし,a は定数で拡散係数とよばれる.実際,変数名を変え れば, ( ) f (ξ1 , · · · , ξd ) = ξ1 − a ξ22 + · · · + ξd2 = 0 となる.放物型偏微分方程式の特徴は • 時間発展型であること • 閉じた境界条件と1つの初期条件が必要であること である. . . . . . . 24 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 . 定義 1.5.1 (線形性 ) . d n d 1. 関数 u : R → R が,任意の α, β ∈ R, 任意の x, y ∈ R に対して u (αx + βy) = αu (x) + βu (y) を満たすとき,u を線形関数 (linear function) , あるいは 線形作用 素 (linear operator) という. 2. 同様に,U , V をノルム空間として,写像 D : U → V が,任意の α, β ∈ R, 任意の x, y ∈ U に対して D (αx + βy) = αDx + βDy . を満たすとき,D を線形作用素 (linear operator) という. (注) 作用素は,慣例で,D (x) ではなく, Dx とかく. . . . . . . 25 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) 微分作用素は線形であることを確認しよう.関数 u : R → R の微分は u (x + ϵ) − u (x) du (x) = lim ϵ→0 dx ϵ で定義される.任意の α, β ∈ R, 任意の関数 u, v に対して αu (x + ϵ) + βv (x + ϵ) − αu (x) − βv (x) d (αu + βv) = lim ϵ→0 dx ϵ αu (x + ϵ) − αu (x) βv (x + ϵ) − βv (x) = lim + lim ϵ→0 ϵ→0 ϵ ϵ du dv =α +β dx dx が成り立つ. . . . . . . 26 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) 線形性の利点: 線形性が成立すれば微分方程式の解を解析的に得るこ とができる. (第3章) 非線形微分方程式の例 µ mg 図 1.5.1: 単振り子 . . . . . . 27 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) 図 1.5.1 のような単振り子の運動方程式は l d2 θ + g sin θ = 0 dt2 となる.sin θ は θ = 0 周りで sin θ = θ − θ3 θ5 + + ··· 3! 5! と展開できる.そこで, θ ≪ π のときには sin θ ≈ θ より,線形化で きる. . . . . . . 28 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) Van der Pol の運動方程式 ( ) du d2 u − µ 1 − u2 =0 2 dt dt を満たす u は,図 1.5.2 のように,任意の初期条件に対して,あるリ ミットサイクルに落ち込む.この現象は本質的に非線形であると考えら れる. . . . . . . 29 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) 図 1.5.2: Van der Pol の運動方程式の解の軌跡 . . . . . . 30 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) 運動方程式を非線形にする例をいくつか挙げてみる. f(u) f(u) u (a) 硬化ばね f(u) u u (b) 軟化ばね (c) がた 図 1.5.3: 非線形ばね . . . . . . 31 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) µ l l(1{cosµ) mg (a) 軟化ばね (b) 硬化ばね 図 1.5.4: 大変形による剛性の非線形性 . . . . . . 32 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.5 微分方程式の線形性 (cnt.) f(u_) f(u_) u_ (a) Coulomb 摩擦 u_ (b) 動摩擦 図 1.5.5: 摩擦による減衰の非線形性 . . . . . . 33 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.6 Poisson 問題 この教材では,次のような Poisson 問題を取り上げて,数値解析の原 理を考えていこう. . 問題 1.6.1 (1 次元 Poisson 問題) . ある b : (0, 1) → R, uD ∈ R, pN ∈ R を固定する.このとき, d2 u = b in (0, 1) , dx2 u(0) = uD , du (1) = pN dx − を満たす u : (0, 1) → R を求めよ. . . . . . . . 34 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.6 Poisson 問題 (cnt.) ¯ D とする. ΓD ⊂ ∂Ω および ΓN = ∂Ω \ Γ . 問題 1.6.2 (d 次元 Poisson 問題) . Ω ⊂ Rd , d ∈ {2, 3}, ΓD ⊂ ∂Ω, b : Ω → R, pN : ΓN → R, uD : ΓD → R を固定とする.このとき, − ∆u = b in Ω, ∂u = pN on ΓN , ∂ν u = uD on ΓD .を満たす u : Ω → R を求めよ. . . . . . . 35 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 数値解法の典型として有限差分法の考え方をみておこう. 有限差分法では,問題 1.6.1 を次のように解く. m ある自然数として,(0, 1) 上に節点 {x0 , x1 , x2 , · · · , xm }, x0 = 0, xm = 1, を等間隔に配置する.節点間の長さを h = 1/m とする.近似 関数を uh : (0, 1) → R と表して,uh (xi ) = ui とかく. ui{1 u1 um ui ui+1 u0=uD um{1 h x x0=0 x1 xi{1 xi xi+1 xm{1 xm=1 図 1.7.1: 近似関数 uh (x) . . . . . . 36 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) Taylor の公式より, duh h2 d2 uh (xi ) + (xi ) dx 2 dx2 ( ) h3 d3 uh + (xi ) + O h4 3 6 dx duh h2 d2 uh uh (xi−1 ) = uh (xi ) − h (xi ) + (xi ) dx 2 dx2 3 3 ( ) h d uh − (xi ) + O h4 3 6 dx uh (xi+1 ) = uh (xi ) + h が成り立つ.2 式の和をとれば uh (xi+1 ) + uh (xi−1 ) = 2uh (xi ) + h2 ( ) d2 uh (xi ) + O h4 dx2 ( ) が成り立つ.両辺を h2 で割って,O h2 を省略すれば − uh (xi+1 ) − 2uh (xi ) + uh (xi−1 ) d2 uh (xi ) = − 2 dx h2 . . . . . . 37 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) が成り立つ. . . . . . . 38 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) 自然境界条件について,Taylor の公式より, uh (xm−1 ) = uh (xm ) − h ( ) duh (xm ) + O h2 dx が成り立つ.両辺を h で割って,O (h) を省略すれば duh uh (xm ) − uh (xm−1 ) (xm ) = dx h が成り立つ. . . . . . . 39 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) したがって,uh (xi ) = ui , b (xi ) = bi とかけば,問題 1.6.1 に対して, 未知変数 u0 , u1 , u2 , · · · , um に対する m + 1 元連立 1 次方程式 u0 = uD , ui+1 − 2ui + ui−1 − = bi h2 um − um−1 = pN h i ∈ {1, 2, · · · , m − 1} , を得る.この連立 1 次方程式は一意に解ける. . . . . . . 40 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) 次に,問題 1.6.2 を有限差分法で解く手順をみてみよう. m と n をある自然数として,Ω を含む領域 D 上に節点 {x00 , x01 , x02 , · · · , xmn } を等間隔に配置する.節点間の長さを h = 1/m = 1/n とする.近似関数を uh : D → R と表して, uh (xij ) = uij とかく. xmn D xij xi j+1 xi{1 j xij xi+1 j ¡D h x00 xi j{1 図 1.7.2: 2 次元問題に対する有限差分法の節点 . . . . . . 41 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) Taylor の公式より, ∂uh h2 ∂ 2 uh (xij ) + ∂x1 2 ∂x21 3 3 ( ) h ∂ uh + (xij ) + O h4 3 6 ∂x1 ∂uh h2 ∂ 2 uh uh (xi−1 j ) = uh (xij ) − h (xij ) + ∂x1 2 ∂x21 ( ) h3 ∂ 3 uh − (xij ) + O h4 3 6 ∂x1 ∂uh h2 ∂ 2 uh uh (xi j+1 ) = uh (xij ) + h (xij ) + ∂x2 2 ∂x22 ( ) h3 ∂ 3 uh (xij ) + O h4 + 3 6 ∂x2 ∂uh h2 ∂ 2 uh uh (xi j−1 ) = uh (xij ) − h (xij ) + 2 ∂x2 2 ∂x 2 . uh (xi+1 j ) = uh (xij ) + h (xij ) (xij ) (xij ) (xij ) . . . . . 42 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) − ( ) h3 ∂ 3 uh (xij ) + O h4 3 6 ∂x2 ( ) が成り立つ.4 式の和をとって,両辺を h2 で割って,O h2 を省略す れば, ∂ 2 uh ∂ 2 uh (x ) + (xij ) ij ∂x21 ∂x22 uh (xi+1 j ) + uh (xi j+1 ) + uh (xi−1 j ) + uh (xi j−1 ) − 4uh (xij ) =− h2 が成り立つ. 基本境界条件については,ΓD 近傍の節点 xij を選んで uh (xij ) = uD (xij ) . . . . . . 43 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) で近似する.自然境界条件については,ΓD を横切る x1 方向と x2 方向 の節点間 (xij1 , xi+1 j 1 ), (xij1 , xi j+1 1 ) に対して Taylor の公式を適用 して ( ) ∂uh (xij ) + O h2 ∂x1 ( ) ∂uh uh (xi j+1 ) = uh (xij ) + h (xij ) + O h2 ∂x2 uh (xi+1 j ) = uh (xij ) + h が成り立つ.両辺を h で割って,O (h) を省略すれば, ∂uh uh (xi+1 j ) − uh (xij ) (xij ) = ∂x1 h ∂uh uh (xi j+1 ) − uh (xij ) (xij ) = ∂x2 h が成り立つ. したがって,Ω 上と Ω に隣接する節点 xij に対して,uh (xij ) = uij , b (xij ) = bij , pN (xij ) = pNij , uD (xij ) = uD ij とかいて,さらに,境界 . . . . . . 44 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) 付近の節点 xij における法線 νij の情報が与えられれば,問題 1.6.2 に 対して,未知変数 {uij }ij に対する未知変数個の連立 1 次方程式 uij = uD ij , ui+1 j + ui j+1 + ui−1 j + ui j−1 − 4uij = bij , − h2 ui+1 j − uij ui j+1 − uij νij1 + νij2 = pNij h h を得る.この連立 1 次方程式は一意に解ける. . . . . . . 45 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.7 有限差分法の考え方 (cnt.) 有限差分法について,次のことがいえる. • 境界付近の節点 xij における法線 νij の評価は容易ではない. • 一方,有限要素法は微分方程式の弱形式 (weak form) に基づく近似 解法で,このような問題は起こらない.また,誤差評価も数理的に 示すことができる. . . . . . . 46 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.8 演習問題 1. 2. 微分方程式で表させる現象を一つ挙げて,その微分方程式と境界条 件で構成された境界値問題 (初期値問題,初期値境界値問題も含 む) を示せ.また,その境界値問題は,線形 / 非線形,線形 2 階偏 微分方程式の場合は楕円型 / 双曲型 / 放物型のどれに分類されるの かを示せ. 1 次元 2 階微分方程式の境界値問題 − d2 u + u = b in (0, 1) , dx2 u(0) = uD , du (1) = pN . dx に対して,有限差分法による連立 1 次方程式を示せ.ただし, (0, 1) 上に節点 {x0 = 0, x1 , x2 , · · · , xm = 1} を等間隔に配置して, 節点間の長さを h = 1/m とする.近似関数を uh : (0, 1) → R と表 して,uh (xi ) = ui , b (xi ) = bi とかく. . . . . . . 47 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま §1.9 まとめ 数値解析の考え方を概観した. 1. 2. 3. 4. 数値解析における問題処理のプロセスでは,現象を偏微分方程式な どで数理的にモデル化し,差分方程式などで離散化し,コンピュー タによる数値計算により連立 1 次方程式を解いて,数値解を得る. 熱伝導現象は,熱量と温度の関係式 (構成方程式),Fourier の熱伝 導法則から,発熱と温度分布の関係を表す 2 階偏微分方程式の境界 値問題として数理モデル化される. 2 階偏微分方程式は,楕円型,双曲型,放物型に分類される.これ らは線形微分方程式である.非線形微分方程式の例として,単振子 の運動方程式と Van der Pol の運動方程式をみた. 有限差分法によって 1 次元 2 階微分方程式の境界値問題と Poisson 問題の近似方程式が得られるプロセスをみた. . . . . . . 48 / 49 はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題 線形 2 階偏微分方程式の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . 微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま 参考文献 [1] 菊地文雄. 有限要素法概説 : 理工学における基礎と応用. サイエンス社, 1980. [2] 藤田宏, ほか. 数理物理に現われる偏微分方程式. 岩波書店, 1977. [3] 草野尚. 境界値問題入門, 復刊. 朝倉書店, 2004. [4] 広田良吾. 差分方程式講義 : 連続より離散へ. サイエンス社, 2000. . . . . . . 49 / 49
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