第1章 微分方程式と近似解法

はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題
線形 2 階偏微分方程式の分類
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微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま
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第 1 章 微分方程式と近似解法
畔上 秀幸
名古屋大学 情報科学研究科 複雑系科学専攻
December 18, 2014
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はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題
線形 2 階偏微分方程式の分類
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微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま
§1.1 はじめに
(目標)
数値解析の考え方を理解する.
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はじめに 数値解析の考え方 熱伝導問題
線形 2 階偏微分方程式の分類
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微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま
§1.2 数値解析の考え方
数値解析における問題処理のプロセスを図 1.2.1 に示す.
熱伝導
現象
有限差分方程式
近似関数による弱形式
(連立方程式)
熱伝導方程式
(偏微分方程式)
記述方程式
数理モデル化
数値解
近似方程式
離散化
(有限差分法,
有限要素法,
境界要素法,
有限体積法,
粒子法)
コンピュータ
による数値計算
図 1.2.1: 数値解析における問題処理のプロセス
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微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま
§1.3 熱伝導問題
偏微分方程式の境界値問題の基本問題として Poisson 問題を取り上げ
る.ここでは,Poisson 問題が身近な物理現象の数理モデルになってい
ることを理解するために,熱伝導現象を例に挙げて,その定常的な現象
が Poisson 問題になることをみておこう.最初に,1 次元連続体の時間
発展型熱伝導問題について考えてから,d ∈ {2, 3} 次元連続体の時間発
展型熱伝導問題に拡張していこう.
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1 次元問題
§1.3.1 1 次元問題
図 1.3.1 のような 1 次元連続体を考えよう.(0, tT ) を時間の領域,
(0, l) を 1 次元連続体の領域とする.a を断面積を表す正定数とする.
b : (0, tT ) × (0, l) → R を単位時間, 単位体積当りの内部発熱,
u : (0, tT ) × (0, l) → R を温度分布とする.このとき,b に対して,u を
求めるための熱伝導方程式を熱と温度の構成方程式と Fourier の熱伝導
法則を満たす熱の釣合から求めてみよう.
u,b
u(t,x)
b(t,x)
a
x=l
x=0
図 1.3.1: 1 次元熱伝導問題
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微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま
1 次元問題
§1.3.1 1 次元問題 (cnt.)
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定義 1.3.1 (熱と温度の構成方程式)
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u を温度とするとき,単位体積当りの熱量は
(1.3.1)
w = cv u
で与えられる.ここで,cv は正値をとる関数 (0, l) → R で,体積熱容
量という.
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定義 1.3.2 (Fourier の熱伝導法則)
.
u を温度とするとき,単位時間, 単位面積当りの熱流束は
q = −λ
∂u
∂x
(1.3.2)
で与えられる.ここで,λ は正値をとる関数 (0, l) → R で,熱伝導率と
.いう.
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1 次元問題
§1.3.1 1 次元問題 (cnt.)
u
u(t,x)
q(t,x)
x
図 1.3.2: Fourier の熱伝導法則
任意の (t, x) ∈ (0, tT ) × (0, l) に対して,微小な adxdt における熱量
の変化は,
(w (t + dt, x) − w (t, x)) adx = (b (t, x) dx − q (t, x + dx) + q (t, x)) adt
となる.dx → 0, dt → 0 のとき,
∂w
∂q
=b−
∂t
∂x
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1 次元問題
§1.3.1 1 次元問題 (cnt.)
が成り立つ.さらに,(1.3.1) と (1.3.2) を用いれば,
(
)
∂u
∂
∂u
cv
−
λ
=b
∂t
∂x
∂x
が成り立つ.この方程式を熱伝導方程式という.
{q(t,x)adt
b(t,x)adxdt
a
q(t,x+dx)adt
dx
図 1.3.3: 熱量の釣合
熱伝導方程式は空間に関して 2 階,時間に関して 1 階の微分方程式で
ある.u を一意に決定するためには,2 つの境界条件と1つの初期条
件が必要となる.例えば,次のような条件が考えられる.
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1 次元問題
§1.3.1 1 次元問題 (cnt.)
1.
uD : (0, tT ) → R を既知として,x = 0 において
u (t, 0) = uD (t)
が満たされていると仮定する.このような u を指定する条件を基
本境界条件あるいは第 1 種境界条件,Dirichlet 条件という.
2.
pN : (0, tT ) → R を既知として,x = l において
λ
∂u
(t, l) = pN (t)
∂x
が満たされていると仮定する.このような u の導関数を指定する条
件を自然境界条件あるいは第 2 種境界条件,Neumann 条件という.
3.
u0 : (0, l) → R を既知として,t = 0 において
u (0, x) = u0 (x)
が満たされていると仮定する.このようなある時刻における u を
指定する条件を初期条件という.
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1 次元問題
§1.3.1 1 次元問題 (cnt.)
初期条件は時間領域の境界条件とみなすことができる.そこで,初期
条件も含めた境界条件と偏微分方程式を満たすような u を求める問題
を偏微分方程式の境界値問題という.熱伝導方程式は線形 2 階偏微分方
程式に分類される.その中でも,熱伝導方程式は放物型偏微分方程式に
分類される (1.4 節参照).定常状態のときは,u (t, x) = u (x) となり,
−
∂
∂x
(
λ
∂u
∂x
)
=b
(1.3.3)
となる.(1.3.3) は定常熱伝導方程式とよばれ,楕円型偏微分方程式に
帰着する.
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題
次に d ∈ {2, 3} 次元物体における熱伝導現象を考えよう.Ω ⊂ Rd を
有界領域として,ΓD を Ω の境界 ∂Ω の部分集合とする.
¯ D とおく.b : (0, tT ) × Ω → R を内部発熱,
ΓN = ∂Ω \ Γ
u : (0, tT ) × Ω → R を温度分布とする.このとき,
u,b
u(t,x)
uD
b(t,x)
ºp(t,x)
x2
x1
¡D
図 1.3.4: 2 次元熱伝導問題
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
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定義 1.3.3 (Fourier の熱伝導法則 : d 次元領域)
.
温度 u に対して,熱流束 q : (0, tT ) × Ω → Rd は
 

q1
λ11
 .. 
 ..
 .  = − .
qd
λd1
···
..
.
···
 ∂ 
λ1d
∂x1
..   ..  u or q = −λ∇u


. 
.
λdd
∂
∂xd
を満たす.λ = (λij )ij は正定値行列を値域とする関数 Ω → Rd×d で,
熱伝導率という.熱伝導率が等方的であれば λ を正の実数値をとる関数
として,λ = λI (I は単位行列) とかくことができて,
q = −λ∇u
(1.3.4)
.とかけることになる.
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
任意の (t, x) ∈ (0, tT ) × Ω に対して,微小な dx1 · · · dxd dt における
熱量の変化は,ei は xi 軸方向の単位ベクトルとして,
(w (t + dt, x) − w (t, x)) dx1 dx2 · · · dxd




∑
= b (t, x) −
(qi (t, x + ei dxi ) − qi (t, x)) dt


i∈{1,··· ,d}
となる.dx1 , · · · , dxd → 0, dt → 0 のとき,
∂w
=b−
∂t
∑
i∈{1,··· ,d}
∂qi
∂xi
が成り立つ.
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
q(t,x+e 3 dx 3 )dx 1 dx 2 dt
b(t,x)dx 1 dx 2 dx 3 dt
q(t,x+e 2 dx 2 )dx 1 dx 3 dt
dx 3
q(t,x+e 1 dx 1 )dx 2 dx 3 dt
{q(t,x)dx 2 dx 3 dt
{q(t,x)dx 1 dx 3 dt
dx 1
x3
x2
x1
dx 2
{q(t,x)dx 1 dx 2 dt
図 1.3.5: 3 次元の熱量の釣合
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
さらに,(1.3.1), (1.3.4) を用いて,
cv
∂u
−
∂t
(
∂
∂x1
···

λ11
)
 ..
∂
∂xd  .
λd1
···
..
.
···
  ∂ 
λ1d
∂x1
..   ..  u = b


. 
.
∂
∂x3
λdd
が成り立つ.この関係は
cv
∂u
− ∇ · (λ∇u) = b
∂t
とかかれる.この方程式を d 次元の熱伝導方程式という.熱伝導率が実
数値関数ならば,
cv
∂u
− ∇ · (λ∇u) = b
∂t
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
となり,さらに,定数であれば,
cv
∂u
− λ∆u = b
∂t
となる.ただし,∆ = ∇ · ∇ を Laplace 作用素,調和作用素あるいは発
散作用素といい,∇2 ともかく.本書では ∆ を用いることにする.
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
u を決定するためには次のような境界条件が必要となる.
1. uD : (0, tT ) × ΓD → R を既知として,
u = uD
2.
on (0, tT ) × ΓD
を基本境界条件という.
pN : (0, tT ) × ΓN → R を既知として,
ν · (λ∇u) = pN
on (0, tT ) × ΓN
を自然境界条件という.熱伝導率が実数値関数ならば,
λ∂ν u = pN
3.
on (0, tT ) × ΓN
となる.ただし,∂ν ( · ) = ∂( · )/∂ν = (∂( · )/∂x) · ν と定義する.
u0 : Ω → R を既知として,ある t0 ∈ (0, tT ) に対して
u (t0 , x) = u0 (x)
を初期条件という.
in x ∈ Ω
.
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
定常状態であれば,u (t, x) = u (x) となり,熱伝導方程式は
−∇ · (λ∇u) = b
となる.また,∂Ω 全体で自然境界条件の場合は,定数分の不定性が残
る.u を一意に決定するためには,ΓD の大きさが零ではない必要が
ある.
以上をまとめると,熱伝導問題は次のようにかける.Ω ⊂ Rd を
¯ D とする.cv は正値
d ∈ {2, 3} 次元領域, ΓD ⊂ ∂Ω および ΓN = ∂Ω \ Γ
をとる関数 Ω → R とする.λ は正定値行列をとる関数 Ω → Rd×d と
する.
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
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問題 1.3.4 (熱伝導問題)
.
b : (0, tT ) × Ω → R, pN : (0, tT ) × ΓN → R, uD : (0, tT ) × ΓD → R,
u0 : Ω → R が与えられたとき,
∂u
− ∇ · (λ∇u) = b in (0, tT ) × Ω,
∂t
ν · (λ∇u) = pN on (0, tT ) × ΓN ,
u = uD on (0, tT ) × ΓD ,
u = u0 in Ω at t = 0
cv
を満たす
u : (0, tT ) × Ω → R を求めよ.
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d 次元問題
§1.3.2 d 次元問題 (cnt.)
定常状態のとき,次のようになる.
.
問題 1.3.5 (定常熱伝導問題)
.
b : Ω → R, pN : ΓN → R, uD : ΓD → R が与えられたとき,
− ∇ · (λ∇u) = b in Ω,
ν · (λ∇u) = pN on ΓN ,
u = uD on ΓD
.を満たす u : Ω → R を求めよ.
問題 1.3.5 において,λ = 1 とおけば,Poisson 問題となる.
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§1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類
1.3 節でみたように,熱伝導問題は時間発展問題としてみたときに放
物型に分類され,定常問題としてみたときに楕円型に分類された.ここ
では,定数係数の 2 階偏微分方程式 (線形 2 階偏微分方程式) の標準形
に基づく分類法についてまとめておこう.
.
定義 1.4.1 (線形 2 階偏微分方程式の分類)
.
偏微分作用素 ∂/∂xi , i ∈ {1, · · · , d}, を ξi と表して,階数の和が最大の
項 (主要項) の特性方程式が f (ξ1 , ξ2 , · · · , ξd ) = 0 であるとする.この
とき,次のようにいう.
1.
2.
3.
.
特性方程式が (ξ1 , . . . , ξd ) = (0, . . . , 0) 以外の実数解をもたないと
き,楕円型偏微分方程式という.
特性方程式が (ξ1 , . . . , ξd ) ̸= (0, . . . , 0) に対して,常に2つの異な
る実数解をもつとき,双曲型偏微分方程式という.
特性方程式 f (ξ1 , ξ2 , · · · , ξd ) = 0 が ξ1 − f1 (ξ2 , · · · , ξd ) = 0 とかく
ことができて,f1 (ξ2 , · · · , ξd ) = 0 が (ξ2 , . . . , ξd ) = (0, . . . , 0) 以外
の実数解をもたないとき,放物型偏微分方程式という.
.
.
.
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§1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類 (cnt.)
楕円型偏微分方程式の典型は Laplace 方程式
( 2
)
∂
∂2
∆u =
+
·
·
·
+
u=0
∂x21
∂x2d
である.実際,
f (ξ1 , · · · , ξd ) = ξ12 + · · · + ξd2 = 0
となり,(x1 , . . . , xd ) = (0, . . . , 0) 以外の実数解をもたない.Laplace 方
程式の他に Poisson 方程式 ∆u = b や Helmholz 方程式 ∆u + λu = 0 な
ども楕円型に分類される.これらの特徴は
• 釣合い型であること
• 閉じた境界条件が必要であること
.
.
.
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§1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類 (cnt.)
である.例として,定常熱伝導 (温度),静電場 (電位),静的線形弾性問
題 (変位),理想流体の流れ場 (ポテンシャル), Stokes 流れ場 (流速と
圧力) などが挙げられる.
一方,双曲型偏微分方程式の典型は波動方程式
)
( 2
∂
∂2
∂2
∂2u
2
2
u=0
+
+
u
¨ − c ∆u = 2 − c
∂t
∂x21
∂x22
∂x23
である.ただし,c は定数で波の速度とよばれる.実際,変数名を変え
れば,
(
)
f (ξ1 , · · · , ξd ) = ξ12 − c2 ξ22 + · · · + ξd2 = 0
となり,(x1 , . . . , xd ) ̸= (0, . . . , 0) に対して,常に2つの異なる実数解を
もつ.双曲型偏微分方程式の特徴は
• 時間発展型であること
• 閉じた境界条件と 2 つの初期条件が必要であること
.
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§1.4 線形 2 階偏微分方程式の分類 (cnt.)
である.
さらに,放物型偏微分方程式の典型は拡散方程式
( 2
)
∂2
∂2
∂
∂u
−a
+
+
u=0
u˙ − a∆u =
∂t
∂x21
∂x22
∂x23
である.ただし,a は定数で拡散係数とよばれる.実際,変数名を変え
れば,
(
)
f (ξ1 , · · · , ξd ) = ξ1 − a ξ22 + · · · + ξd2 = 0
となる.放物型偏微分方程式の特徴は
• 時間発展型であること
• 閉じた境界条件と1つの初期条件が必要であること
である.
.
.
.
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§1.5 微分方程式の線形性
.
定義 1.5.1 (線形性 )
.
d
n
d
1. 関数 u : R → R が,任意の α, β ∈ R, 任意の x, y ∈ R に対して
u (αx + βy) = αu (x) + βu (y)
を満たすとき,u を線形関数 (linear function) , あるいは 線形作用
素 (linear operator) という.
2.
同様に,U , V をノルム空間として,写像 D : U → V が,任意の
α, β ∈ R, 任意の x, y ∈ U に対して
D (αx + βy) = αDx + βDy
.
を満たすとき,D を線形作用素 (linear operator) という.
(注)
作用素は,慣例で,D (x) ではなく, Dx とかく.
.
.
.
.
.
.
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§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
微分作用素は線形であることを確認しよう.関数 u : R → R の微分は
u (x + ϵ) − u (x)
du
(x) = lim
ϵ→0
dx
ϵ
で定義される.任意の α, β ∈ R, 任意の関数 u, v に対して
αu (x + ϵ) + βv (x + ϵ) − αu (x) − βv (x)
d
(αu + βv) = lim
ϵ→0
dx
ϵ
αu (x + ϵ) − αu (x)
βv (x + ϵ) − βv (x)
= lim
+ lim
ϵ→0
ϵ→0
ϵ
ϵ
du
dv
=α
+β
dx
dx
が成り立つ.
.
.
.
.
.
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線形 2 階偏微分方程式の分類
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微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま
§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
線形性の利点: 線形性が成立すれば微分方程式の解を解析的に得るこ
とができる.
(第3章)
非線形微分方程式の例
µ
mg
図 1.5.1: 単振り子
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線形 2 階偏微分方程式の分類
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微分方程式の線形性 Poisson 問題 有限差分法の考え方 演習問題 ま
§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
図 1.5.1 のような単振り子の運動方程式は
l
d2 θ
+ g sin θ = 0
dt2
となる.sin θ は θ = 0 周りで
sin θ = θ −
θ3
θ5
+
+ ···
3!
5!
と展開できる.そこで, θ ≪ π のときには sin θ ≈ θ より,線形化で
きる.
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§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
Van der Pol の運動方程式
(
) du
d2 u
− µ 1 − u2
=0
2
dt
dt
を満たす u は,図 1.5.2 のように,任意の初期条件に対して,あるリ
ミットサイクルに落ち込む.この現象は本質的に非線形であると考えら
れる.
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§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
図 1.5.2: Van der Pol の運動方程式の解の軌跡
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§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
運動方程式を非線形にする例をいくつか挙げてみる.
f(u)
f(u)
u
(a) 硬化ばね
f(u)
u
u
(b) 軟化ばね
(c) がた
図 1.5.3: 非線形ばね
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§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
µ
l
l(1{cosµ)
mg
(a) 軟化ばね
(b) 硬化ばね
図 1.5.4: 大変形による剛性の非線形性
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§1.5 微分方程式の線形性 (cnt.)
f(u_)
f(u_)
u_
(a) Coulomb 摩擦
u_
(b) 動摩擦
図 1.5.5: 摩擦による減衰の非線形性
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§1.6 Poisson 問題
この教材では,次のような Poisson 問題を取り上げて,数値解析の原
理を考えていこう.
.
問題 1.6.1 (1 次元 Poisson 問題)
.
ある b : (0, 1) → R, uD ∈ R, pN ∈ R を固定する.このとき,
d2 u
= b in (0, 1) ,
dx2
u(0) = uD ,
du
(1) = pN
dx
−
を満たす
u : (0, 1) → R を求めよ.
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§1.6 Poisson 問題 (cnt.)
¯ D とする.
ΓD ⊂ ∂Ω および ΓN = ∂Ω \ Γ
.
問題 1.6.2 (d 次元 Poisson 問題)
.
Ω ⊂ Rd , d ∈ {2, 3}, ΓD ⊂ ∂Ω, b : Ω → R, pN : ΓN → R, uD : ΓD → R
を固定とする.このとき,
− ∆u = b in Ω,
∂u
= pN on ΓN ,
∂ν
u = uD on ΓD
.を満たす u : Ω → R を求めよ.
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§1.7 有限差分法の考え方
数値解法の典型として有限差分法の考え方をみておこう.
有限差分法では,問題 1.6.1 を次のように解く.
m ある自然数として,(0, 1) 上に節点 {x0 , x1 , x2 , · · · , xm }, x0 = 0,
xm = 1, を等間隔に配置する.節点間の長さを h = 1/m とする.近似
関数を uh : (0, 1) → R と表して,uh (xi ) = ui とかく.
ui{1
u1
um
ui
ui+1
u0=uD
um{1
h
x
x0=0
x1
xi{1
xi
xi+1
xm{1
xm=1
図 1.7.1: 近似関数 uh (x)
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
Taylor の公式より,
duh
h2 d2 uh
(xi ) +
(xi )
dx
2 dx2
( )
h3 d3 uh
+
(xi ) + O h4
3
6 dx
duh
h2 d2 uh
uh (xi−1 ) = uh (xi ) − h
(xi ) +
(xi )
dx
2 dx2
3 3
( )
h d uh
−
(xi ) + O h4
3
6 dx
uh (xi+1 ) = uh (xi ) + h
が成り立つ.2 式の和をとれば
uh (xi+1 ) + uh (xi−1 ) = 2uh (xi ) + h2
( )
d2 uh
(xi ) + O h4
dx2
( )
が成り立つ.両辺を h2 で割って,O h2 を省略すれば
−
uh (xi+1 ) − 2uh (xi ) + uh (xi−1 )
d2 uh
(xi ) = −
2
dx
h2
.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
が成り立つ.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
自然境界条件について,Taylor の公式より,
uh (xm−1 ) = uh (xm ) − h
( )
duh
(xm ) + O h2
dx
が成り立つ.両辺を h で割って,O (h) を省略すれば
duh
uh (xm ) − uh (xm−1 )
(xm ) =
dx
h
が成り立つ.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
したがって,uh (xi ) = ui , b (xi ) = bi とかけば,問題 1.6.1 に対して,
未知変数 u0 , u1 , u2 , · · · , um に対する m + 1 元連立 1 次方程式
u0 = uD ,
ui+1 − 2ui + ui−1
−
= bi
h2
um − um−1
= pN
h
i ∈ {1, 2, · · · , m − 1} ,
を得る.この連立 1 次方程式は一意に解ける.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
次に,問題 1.6.2 を有限差分法で解く手順をみてみよう.
m と n をある自然数として,Ω を含む領域 D 上に節点
{x00 , x01 , x02 , · · · , xmn } を等間隔に配置する.節点間の長さを
h = 1/m = 1/n とする.近似関数を uh : D → R と表して,
uh (xij ) = uij とかく.
xmn
D
xij
xi j+1
xi{1 j
xij
xi+1 j
¡D
h
x00
xi j{1
図 1.7.2: 2 次元問題に対する有限差分法の節点
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
Taylor の公式より,
∂uh
h2 ∂ 2 uh
(xij ) +
∂x1
2 ∂x21
3 3
( )
h ∂ uh
+
(xij ) + O h4
3
6 ∂x1
∂uh
h2 ∂ 2 uh
uh (xi−1 j ) = uh (xij ) − h
(xij ) +
∂x1
2 ∂x21
( )
h3 ∂ 3 uh
−
(xij ) + O h4
3
6 ∂x1
∂uh
h2 ∂ 2 uh
uh (xi j+1 ) = uh (xij ) + h
(xij ) +
∂x2
2 ∂x22
( )
h3 ∂ 3 uh
(xij ) + O h4
+
3
6 ∂x2
∂uh
h2 ∂ 2 uh
uh (xi j−1 ) = uh (xij ) − h
(xij ) +
2
∂x2
2 ∂x
2
.
uh (xi+1 j ) = uh (xij ) + h
(xij )
(xij )
(xij )
(xij )
.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
−
( )
h3 ∂ 3 uh
(xij ) + O h4
3
6 ∂x2
( )
が成り立つ.4 式の和をとって,両辺を h2 で割って,O h2 を省略す
れば,
∂ 2 uh
∂ 2 uh
(x
)
+
(xij )
ij
∂x21
∂x22
uh (xi+1 j ) + uh (xi j+1 ) + uh (xi−1 j ) + uh (xi j−1 ) − 4uh (xij )
=−
h2
が成り立つ.
基本境界条件については,ΓD 近傍の節点 xij を選んで
uh (xij ) = uD (xij )
.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
で近似する.自然境界条件については,ΓD を横切る x1 方向と x2 方向
の節点間 (xij1 , xi+1 j 1 ), (xij1 , xi j+1 1 ) に対して Taylor の公式を適用
して
( )
∂uh
(xij ) + O h2
∂x1
( )
∂uh
uh (xi j+1 ) = uh (xij ) + h
(xij ) + O h2
∂x2
uh (xi+1 j ) = uh (xij ) + h
が成り立つ.両辺を h で割って,O (h) を省略すれば,
∂uh
uh (xi+1 j ) − uh (xij )
(xij ) =
∂x1
h
∂uh
uh (xi j+1 ) − uh (xij )
(xij ) =
∂x2
h
が成り立つ.
したがって,Ω 上と Ω に隣接する節点 xij に対して,uh (xij ) = uij ,
b (xij ) = bij , pN (xij ) = pNij , uD (xij ) = uD ij とかいて,さらに,境界
.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
付近の節点 xij における法線 νij の情報が与えられれば,問題 1.6.2 に
対して,未知変数 {uij }ij に対する未知変数個の連立 1 次方程式
uij = uD ij ,
ui+1 j + ui j+1 + ui−1 j + ui j−1 − 4uij
= bij ,
−
h2
ui+1 j − uij
ui j+1 − uij
νij1 +
νij2 = pNij
h
h
を得る.この連立 1 次方程式は一意に解ける.
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§1.7 有限差分法の考え方 (cnt.)
有限差分法について,次のことがいえる.
• 境界付近の節点 xij における法線 νij の評価は容易ではない.
• 一方,有限要素法は微分方程式の弱形式 (weak form) に基づく近似
解法で,このような問題は起こらない.また,誤差評価も数理的に
示すことができる.
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§1.8 演習問題
1.
2.
微分方程式で表させる現象を一つ挙げて,その微分方程式と境界条
件で構成された境界値問題 (初期値問題,初期値境界値問題も含
む) を示せ.また,その境界値問題は,線形 / 非線形,線形 2 階偏
微分方程式の場合は楕円型 / 双曲型 / 放物型のどれに分類されるの
かを示せ.
1 次元 2 階微分方程式の境界値問題
−
d2 u
+ u = b in (0, 1) ,
dx2
u(0) = uD ,
du
(1) = pN .
dx
に対して,有限差分法による連立 1 次方程式を示せ.ただし,
(0, 1) 上に節点 {x0 = 0, x1 , x2 , · · · , xm = 1} を等間隔に配置して,
節点間の長さを h = 1/m とする.近似関数を uh : (0, 1) → R と表
して,uh (xi ) = ui , b (xi ) = bi とかく.
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§1.9 まとめ
数値解析の考え方を概観した.
1.
2.
3.
4.
数値解析における問題処理のプロセスでは,現象を偏微分方程式な
どで数理的にモデル化し,差分方程式などで離散化し,コンピュー
タによる数値計算により連立 1 次方程式を解いて,数値解を得る.
熱伝導現象は,熱量と温度の関係式 (構成方程式),Fourier の熱伝
導法則から,発熱と温度分布の関係を表す 2 階偏微分方程式の境界
値問題として数理モデル化される.
2 階偏微分方程式は,楕円型,双曲型,放物型に分類される.これ
らは線形微分方程式である.非線形微分方程式の例として,単振子
の運動方程式と Van der Pol の運動方程式をみた.
有限差分法によって 1 次元 2 階微分方程式の境界値問題と Poisson
問題の近似方程式が得られるプロセスをみた.
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参考文献
[1] 菊地文雄.
有限要素法概説 : 理工学における基礎と応用.
サイエンス社, 1980.
[2] 藤田宏, ほか.
数理物理に現われる偏微分方程式.
岩波書店, 1977.
[3] 草野尚.
境界値問題入門, 復刊.
朝倉書店, 2004.
[4] 広田良吾.
差分方程式講義 : 連続より離散へ.
サイエンス社, 2000.
.
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