PF010 教心第 56 回総会(2014) リーディング・リテラシーと読書態度との関係 ○ 中野友香子(東北大学) 深谷優子(東北大学) 佐藤誠子(石巻専修大学) 近年,活字による情報収集および発信の機会の増加 その結果, 「2 読書熱中」と正答数および尺度値 θ と有 に伴い,教育場面に限らないテキストの理解し活用す 意な正の相関が認められた(TABLE1)。 る力であるリーディング・リテラシーが重視されてい 2. 無答率と読書態度の関係 る。しかし,テキストの読みに関して日本では,国語 RL 問題(記述式)1問の回答パターン間での読書態 教育で扱われる読解と教科外で行われる読書を区別す 度および RL 成績を比較した。読書態度の「4 共感重 る見方が踏襲されているという(柴山・佐藤・熊谷・足 視(F(2,68)=3.264, p<.05)」でのみ有意差があり,多 立・中野,2012) 。そこで,本研究ではリーディング・ 重比較の結果,誤答-無答間および誤答―正答間の差 リテラシーと読書の嗜好性を測る読書態度との関係性 が 5%水準で有意であった。 に加え,リーディング・リテラシーで特に育成が求め られているといえる記述問題への無答者の読書態度の 方 法 協力者 私立大生 83 名中欠測のない 71 名が分析対象。 読書態度 特徴について探索的に検討することを目的とする。 TABLE2 記述問題の回答パターンごとの読書態度尺 度得点および RL 成績の基礎統計量(M ± SD) 1 読書回避 2 読書熱中 3 意外性受容 4 共感重視 5 思索専念 正答数 尺度値(θ) 「2 読 材料 ①読書態度:深谷(2012)の「1 読書回避」 書熱中」 「3 意外性受容」 「4 共感重視」 「5 思索専念」 から因子負荷の高い各 5 項目を使用(6 件法)。 ②リー 無答 (n=18) 正答 (n=35) 誤答 (n=18) 2.82 ± 0.82 2.63 ± 1.02 2.93 ± 1.26 3.94 ± 1.16 4.07 ± 1.28 3.97 ± 1.48 5.06 ± 0.80 4.84 ± 0.90 4.89 ± 0.79 4.10 ± 0.96 4.13 ± 1.02 3.40 ± 1.10 3.86 ± 0.65 4.15 ± 1.15 3.96 ± 0.96 7.28 ± 0.54 8.63 ± 2.12 8.39 ± 2.62 0.03 ± 1.30 1.07 ± 1.85 0.78 ± 2.02 :柴山他(2012) ディング・リテラシー問題(以下,RL 問題) 考 察 の多枝選択式問題 12 問(K05:3 問,K06:3 問,K07:3 結果より, 「読書熱中傾向」という教科外での読書 問,K04:3 問)および記述式問題 1 問(K06:1 問)使用。 を嗜好する態度がリーディング・リテラシーと関連す 手続き 心理学の講義時間内に一斉に実施した。 ることが明らかになった。これはリーディング・リテ 結 果 ラシーが分立的に捉えやすい読書と読解とを包括する 得点化 ①読書態度:各下位尺度の α 係数を低める項 概念であることを示唆する結果といえよう。 目(「2 読書熱中」以外の 4 尺度の各 1 項目)を除外し,尺 記述問題の回答パターンによる RL 成績の有意差は 度得点を算出(TABLE1)。 ②RL 成績:柴山他(2012) 認められなかった。今回は読みに特化した多枝選択式 の基準に従い正誤を判定。RL 問題の多枝選択式問題 問題を用いて RL 成績を算出しているため,活字での 12 問について,正答数(0-13)および IRT モデルによ 表現に焦点化した記述式問題の回答とは質的に異なっ り,柴山他(2012)の項目パラメータを使用して協力 ていたと考えられる。一方,回答パターン間の「共感 者パラメータ(尺度値 θ)を算出(推定方法は MLE)。 重視」の読書態度の差は有意であった。この結果は, 1. 読書態度と RL 成績の関係 昨今問題視されつつある無答率の高さの背景にある要 読書態度と RL 成績との関係を検討した。 TABLE1 読書態度の基礎統計と RL 成績との相関 1 読書回避 2 読書熱中 3 意外性受容 4 共感重視 5 思索専念 α M SD .680 .848 .718 .611 .722 2.75 4.01 4.91 3.94 4.03 1.03 1.29 0.84 1.06 0.99 r 正答数 尺度値(θ) -.154 -.127 .388** .263* -.035 -.072 .037 -.074 .082 .002 因の一つとして,教科外でのテキストに触れる機会と 位置付けられる読書への態度や経験の違いがある可能 性を示唆するものであり,更なる検討が求められる。 リーディング・リテラシーの実態把握および育成へ の示唆を得るためには,従来区別されることの多かっ た読書と読解の関連性という観点も含めて精査するこ とが必要といえる。 ― 655 ―
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