内面化プロセスを明らかにしていくのにエラーバイアスという

内面化プロセスを明らかにしていくのにエラーバイアスという指標は妥当か
○奈田 哲也*
丸野 俊一**
(九州大学大学院人間環境学府)* (九州大学大学院人間環境学研究院)**
【目的】社会構成主義によると,子どもの認知機能の発達は,他者とのやりとりで行われる活動(精神
間活動)で発揮された問題解決方略などが,次第にその痕跡を残す形で個人に内面化され,個人の中で
独立に発揮される(精神内活動)ような過程(Vygotsky, 1986)とされている.そして,これまで内面化を
扱った多くの研究は,理論的に内面化が生じたというような現象的記述に留まり,上記の内面化プロ
セスそのものに直接的にアプローチしてきていたわけではなかった.そのため,Ratner ら(e.g., Ratner,
Foley & Gimpert, 2002)は,協同活動の有無による 2 条件を設けて,各条件で内面化の程度が異なる
かどうかを検討した.また,その際,内面化が生じるようなやりとりでは,自己の行為・考えと他者
の行為・考えとが混在する状況が生じるという先行知見(Rogoff, 1990)に基づき,内面化が生じた指標
としてソースモニタリングエラー(エラーバイアス)の生起を用いた.その結果,協同活動を行った群
の方が,よりエラーバイアスを生じさせることや,協同活動後に課題を 1 人で行った場合の成績も良
いということが判明した.つまり,Ratner らの研究により,内面化プロセスを探る際にエラーバイア
スの生起をその指標として用いていくというような新たな方法論が提起されたことになる.しかしな
がら,このようにエラーバイアスの生起を内面化の指標として用いれると主張しているのは,Ratner
らのみであり,Ratner らの研究以外で,この方法論に対する実証的研究は行われていない.そこで,
本研究では,Ratner らの研究の追試を行うことによって,内面化プロセスを探っていく際の指標とし
てのエラーバイアスの妥当性を検討していくことにする.
【方法】被験児:4・5歳児クラス20名,5・6歳児クラス20名 手続き:様々な家具をその家具が属する
部屋(台所,洗面所など)に配置していくという家具配置課題をプレテスト(単独学習),協同活動or非協
同活動(実験者と被験児のそれぞれが交代で家具を配置していくor実験者の言う通りに家具を半分(残
りの半分は配置済み)置いていく),ポストテスト(単独学習)という流れで行った.また,協同活動セッ
ション後に家具配置課題において置かれた家具1つ1つに対して,誰が置いたのを尋ね,エラーバイア
ス(相手の活動を自分が行ったと言ったエラーから,自分の活動を相手が行ったと言ったエラーを引い
た値)の生起の程度を確認した.
【結果】①ソースモニタリングテスト:両年齢群ともソースモニタリングエラーの主効果が見られた
(4・5歳児/F(1,18)=21.84 p<.01,5・6歳児/F(1,18)=20.45 p<.01).②カテゴリ化課題の成績:4・5
歳児では,交互作用が見られ(F(1,18)=8.86 p<.01),5・6歳児では,テスト時期の主効果が見られた
(F(1,17)=6.04 p<.05).また,交互作用に関して,単純主効果の検定を行った結果,コラボレーティブ
活動有り条件におけるテスト時期の単純主効果(F(1,36)=10.80 p<.05)とポストテストにおけるコラボ
レーティブ活動の単純主効果(F(1,18)=54.70 p<.05)が見られた.③エラーバイアスと成績の関係:コラ
ボレーティブ活動無し条件における5・6歳児において,有意な負の相関が見られた.
【考察】①エラーバイアスは,コラボレーティブ Tabl e2 各条件におけるエラ ーバイアス と 成績と の相関結果
エラ ーバイ ア ス
活動の有無に関わらず起きた.②4・5 歳児のみ,
4. 5歳児ク ラ ス
5. 6歳児ク ラ ス
コラボレーティブ活動を行うことにより,学習を
コ ラ ボレ ーテ ィ ブ コ ラ ボレ ーテ ィ ブ コ ラ ボレ ーテ ィ ブ コ ラ ボレ ーテ ィ ブ
活動有り
活動無し
活動有り
活動無し
促進させていた.という結果は,Ratner らの結果
正答数
0.474
-0.029
-0.399
-.712 *
とは相反する結果を示したことにな Tabl e1 各条件における ソ ース モニタ リ ン グ エラ ー数と 正答数
4. 5歳児ク ラ ス
5. 6歳児ク ラ ス
る.そこで,今後は,内面化プロセス
ソ ース モニ タ リ ン グ
ソ ース モニ タ リ ン グ
正答数
正答数
エラ
ー
エラ
ー
の解明のためにも,やりとりの質を詳
M
SD
M
SD
実験者
自分
実験者
自分
細に検討していくなどして,エラーバ コ ラ ボ レ ーテ ィ ブ
活動有り
3.7
3.65
5.8
6.97
イアスが指標として用いれるかの再
プレ
4.6
8.3
4.5
8.4
9.4
5.28
10
8.71
ポス ト
検討を行うと共に,エラーバイアスに コ ラ ボ レ ーテ ィ ブ
活動無し
変わるような内面化の指標を探って
4.6
4.2
5.9
4.31
プレ
3.3
9
1.9
7.1
3.1
3.84
10.3
7.71
ポス ト
いく必要がある.