SIDS 初期評価プロファイル(SIAP)の日本語訳を掲載します。 SIDS

Ⅵ.
SIDS 初 期 評 価 プ ロ フ ァ イ ル
Screening Information Data Set for High Volume Chemicals
OECD Initial Assessment
SIDS 初 期 評 価 プ ロ フ ァ イ ル (SIAP)の 日 本 語 訳 を 掲 載 し ま す 。
SIDS ホ ー ム ペ ー ジ で CAS No.検 索 に よ り SIAP ま た は SIAR の 原 文 を 見 る こ と が で き ま す 。
http://cs3-hq.oecd.org/scripts/hpv/
2.2,4,6‐トリブロモフェノール
OH
物 質 名 :2,4,6-tribromophenol
化 学 式 :C6H3OBr3
Br
Br
CAS No.:118-79-6
SIAR の結論の要旨
Br
ヒトの健康
2,4,6‐トリブロモフェノールは胃腸管から速やかに吸収され、尿と便により速やかに排泄される。
ラット急性経口 LD50 は 1,486mg/kg bw である。ラット急性吸入 LC50 は 50,000mg/m3 よりも大きい。
ラット急性経皮 LD50 は 2,000mg/kg bw より大きい。
本物質は皮膚に対しては非刺激性であるが、眼に対しては刺激性であると考えられる。本物質はモル
モットに対して感作性物質であると考えられる。
反復投与・生殖発生毒性併合試験[OECD TG 422]が SD ラットを用いて強制経口投与により 0(媒
体)、100、300、1,000mg/kg/日の用量で実施された。1,000mg/kg/日では体重増加の抑制と肝臓の絶対
重量および相対重量の増加が雌雄に認められ、血中の総蛋白、アルブミン、A/G、ALP の増加が雄ラッ
トに認められた。300mg/kg/日では流涎が雌雄に認められ、血中クレアチニンの増加が雄ラットに認め
られた。反復投与毒性の NOAEL は雌雄のラットで 100mg/kg/日と考えられる。
細菌における 2 件の独立した in vitro 変異原性試験[OECD TG 471]は陰性であった。1 件の in vitro
染色体異常試験[OECD TG 473]は代謝活性化系の有無にかかわらず陽性であった。腹腔内投与によ
る MTD(最大耐量)までの 1 件の in vivo 小核試験[OECD TG 474]では、遺伝毒性の証拠は認めら
れなかった。
上記の反復投与・生殖発生毒性併合試験[OECD TG 422]では、SD(Crj:CD)ラットに 2,4,6-トリ
ブロモフェノールを 0(媒体)、100、300、1,000mg/kg/日を強制経口投与した。発情周期、交尾率、受
胎率、妊娠期間、黄体数、分娩所見、ならびに着床数、仔の総数、産生仔数、着床率、出産率に対する
有害性影響は被験物質のいずれの投与群にも認められなかった。1,000mg/kg/日群の授乳 4 日目の新生
仔生存率と授乳 0 日目と 4 日目の新生仔体重が対照群よりも低かった(投与群の新生仔生存率は約 50%)。
同じ用量の母動物において、体重が約 8%だけ少なく、肝臓重量が約 15%だけ少なかった。結論として、
生殖・発生毒性の経口による NOAEL は 300mg/kg/日と考えられる。
環境
2,4,6‐トリブロモフェノールは白色ないしほぼ白色の結晶性粉末であり、水に僅かに可溶である
(59mg/L(25℃))。融点 93.9℃、沸点 244℃、蒸気圧 0.042Pa(25℃)、分配係数は log Kow=3.89(25℃)
である。本物質は pH にかかわらず非生物的に加水分解されない。紫外線による直接光分解は半減期が
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4.6 時間であった。本物質は生分解され(BOD=28 日で 49%)[OECD TG 301C 同等試験]、魚類にお
ける最も安全サイドの生物濃縮係数の測定値は BCF=513 である。Mackay レベル III フガシティーモ
デルは、本物質が水と土壌に放出されるならば、他のコンパートメントには分布しないであろうことを
示している。本物質が空気中に放出される場合、29.2%が空気中にとどまり、21.4%が水系に分布し、
47.8%が土壌に分布する。
本 物 質 は 水 生 生 物 種 ( 藻 類 、 無 脊 椎 動 物 、 魚 類 ) を 用 い て 試 験 さ れ た 。 藻 類 ( Selenastrum
capricornutum)による 1 件の急性毒性試験から EbC50(72hr) が 0.76mg/L、NOEbC(72hr)が 0.22mg/L、
ErC50(24~72hr) が 1.6mg/L、NOErC(24~72hr)が 1.0mg/L となった[OECD TG 201]。ミジンコ
( Daphnia magna)の EC50(48hr)は 0.26mg/L であった[OECD TG 202 part 1]。魚類( Cyprinus carpio)
の LC50(96hr)は 1.1mg/L であった[OECD TG 203]。1 件の慢性毒性試験がミジンコ類(Daphnia magna)
を用いて実施された[OECD TG 211]。繁殖の NOEC(21day)は 0.1mg/L と報告された。原生動物
( Tetrahymena pyriformis)による試験が実施され、IGC50 (60hr)(50%成長阻害濃度)は 2.95mg/L
と報告された。
ばく露
2,4,6‐トリブロモフェノールの製造量は 2001 年に日本で約 2,500 トン/年、世界で 9,500 トン/年
と推定された。本物質は日本では閉鎖系で工業的に製造される。本物質はほぼ全部が、難燃剤の製造の
ための中間体または直接難燃剤として使用される。本物質が難燃剤として使用される方法はキャッピン
グと呼ばれ、ポリマーの末端 OH 基に 2,4,6‐トリブロモフェノールをかぶせる。オキシランを重合して
2,4,6‐トリブロモフェノキシエーテルを製造する際にこの反応が起こる。したがって生じたポリマーは
難燃性/耐炎性となる。本物質はその使用パターンから、様々な廃棄物の流れを通じて環境に放出され
ることが示唆されている。本物質の日本および世界における環境濃度に関する若干のモニタリングデー
タが存在する。発生源として挙げられるのは、本物質は底生生物による生合成により、様々なブロモフ
ェノールと共に天然に存在することが知られていることである。食品および水による本物質の摂取が原
因の間接ばく露が起こる可能性がある。
本物質の製造と使用の際に吸入および経皮経路による職業ばく露の可能性がある。製造工程における
職場ばく露は管理されている。本物質は日本では通常ペレットの形で製造者から川下ユーザーに輸送さ
れる。作業員は通常ばく露を予防するためにマスク、ゴム手袋、ゴーグルのような保護具を身につける。
勧告
本物質は追加作業の候補である。
勧告の根拠および勧告された追加作業の内容
本物質はヒト健康への有害性を示唆する特性(感作性、刺激性、スクリーニング試験における生殖毒
性に関する不確かさ)と環境への有害性を示唆する特性を有する。川下用途における工業的ばく露およ
び殺菌剤としての用途の可能性を調査することを勧告する。必要ならばリスク評価を実施しなくてはな
らない。各国は、スポンサー国が提示しなかった何らかのばく露シナリオがあればそれを調査すること
を要望するかもしれない。
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