規制業務プロセスと統合されたリレーションシップ・ マネジメントの導入 −「広報=PA」から「 リレーション活動」へ− 2001年11月 原子力安全・ 保安院 原子力安全・保安院には、規制機関としてふさわしい広報活動が求められて いる。保安院がこれから取り組もうとすることは、情報提供活動を規制業務プ ロセスと統合した形で組織的に行い、外部からのフィードバックを活動の質的 向上につなげていこうとするものである。これは、国民をはじめ様々なステー クホルダーとの間で良好な関係を築き、維持・発展させ、信頼を得ていくため の活動という意味で、「リレーションシップ・マネジメント」(RM)と呼ぶことがで きるものである。「活動の質的な向上」と「国民の信頼の獲得」のためには、透 明性の向上や説明責任を果たすことが不可欠だが、「 リレーションシップ・マネ ジメント」はそのための中核をなす活動と位置づけられる。 1.保安院の「広報」の意義∼RM の重要性 ○求められる「広報」は自分自身を説明すること 保安院は事業の推進や産業界の利益追求に与する立場にはない。保安院 がまず説明しなければならないことは、規制対象施設が安全であるという事実 ではなく、規制対象がかかえるリスクに対し、保安院がどのような判断に基づ き、どのような活動を行っているか、についてである。「自分自身を説明するこ と」 ( =保安院を主語とする情報の提供) が「 広報」 の主眼となるべきである。 ○外部からの評価を活動の質的向上につなげる 国民各層に対し、自らが公衆の利益に沿ったものと考える安全規制のあり 方を説明し、日常の具体的活動についての情報を提供することの最大の眼目 は、国民各層の様々なステークホルダー( 利害関係者) から評価を受け、それ を活動の質的向上につなげていくことにある。 ○リレーションシップ・マネジメントは組織全体の継続的な取り組み 新しい取り組みは、国民をはじめ様々なステークホルダー(利害関係者)と の間で良好な関係を築き、維持・発展させ、信頼を得ていくためのものという 意味で、「リレーションシップ・マネジメント(RM)」としてとらえるべきである。 RM 活動は、社会の変化に不断に対応し、規制活動を改善するために組織 全体が継続的に取り組むべきものである。 1 2.RM活動の基本的コンセプト 目 的 : 国民、地域住民、報道機関などの外部のステークホルダーから、 自らの活動について評価を受け、その上で信頼を得ることを目的 とする。 手 法 : 様々な機会を通じて規制活動に関する情報を発信するとともに、 ステークホルダーからの反応を適切にフィードバックする。 システム化 : RM 活動を業務プロセスに統合するとともに、組織内部のコミュ ニケーションを活発化することにより、組織の意識向上、規制活 動の質の継続的改善をシステム化する。 RM活動の重要な要素 ・RM活動は、規制そのものと同様の中核的業務との共通認識をもつ。 ・トップマネジメントのイニシアティブを下に、全体のリレーション活動を統括 する組織・責任を明確化する。 ・活動に対して外部から評価を受けるのに十分な量・質の情報を提供する。 ( 主要な活動全てについて、保安院を主語として情報を提供) ・情報の発信が恣意的にならないよう情報提供の基準を明確化する。 ・日常の規制業務プロセスの中に情報提供を組み込む。 ・ステークホルダーのセグメントの関心に即した情報を、セグメントに適した わかりやすい表現技術により提供する。 ・RM活動が規制活動の質的向上につながるよう、外部からの反応を フィードバックし、評価する仕組みを確立する。 ・職員がリレーション活動の重要性を認識できるよう組織内のコミュニケー ションを活性化させるとともに、必要な訓練を行う。 2 3.達成すべき課題とRM の活動目標 課題1:原子力安全・保安院の認知度の向上 <それを達成するための RM の活動目標> ○保安院は独立した判断で安全行政を担当する組織であることについて、 一般国民や規制活動に関連の深い地域住民に対して情報提供を行う。 課題2:日常の活動への国民の理解の促進 <それを達成するための RM の活動目標> ○日常の活動状況(個別の処分、防災活動など)について、十分な情報 をコンスタント、タイムリーに提供する。 課題3:国民の特別の関心への対応 <それを達成するための RM の活動目標> ○特定の規制活動に深く関係する地域がある場合には、自治体、住民 が規制活動について十分な情報を得ることができるような機会を確保 する。また、安全問題についての一般的な質問窓口を設ける。 課題4:規制制度のあり方・改正についてのオピニオン形成 <それを達成するための RM の活動目標> ○規制制度のあり方、制度改正について、原子力安全・ 保安院が公衆の 安全のために適切であると考える判断の内容、根拠、効果等について 外部専門家、報道機関等に対して十分に説明し、評価を受ける。 ○被規制者である事業者に対しては、規制の実効性を向上させるため、 原子力安全・保安院の考え方を十分に説明する。 課題5:事故等緊急時における対応 <それを達成するための RM の活動目標> ○事故、トラブルなどについて、必要な情報をタイムリーに国民に提供す るとともに、緊急時における報道機関への対応などを円滑に行う。 課題6:インナーリレーションズの活性化 <それを達成するための RM の活動目標> ○組織理念の浸透、共通認識と価値観の醸成を図るため、院内のコミュ ニケーションを活性化させる。 ○業務を分担する経済産業局、地方自治体との意志疎通を強化する。 3 4.RM活動の具体的プログラム (1)一般国民とのリレーションズ ① ホームページ ・規制活動全般についての情報をコンスタント、タイムリーに掲載する。 ② パンフレットなどの情報提供素材の作成・ 配布 ・保安院のパンフレットの配布 ・規制制度の内容、防災対応などを説明するパンフレット等の作成・ 配布 (2)メディア・リレーションズ ① 報道発表 ・これまでの事故・トラブル中心の情報提供から、保安院の活動全般につ いての情報提供を充実させる。 ・保安院を主語とする情報提供に心がける。 ・原子力施設の立地地域に関係する報道発表資料を道府県、市町村及び 自治体記者会参加の報道機関(記者) に FAX する。 ② プレス懇談会・科学論説懇談会 ・規制行政の重要事項、組織運営の方針等についてプレス関係者に説明 するとともに、プレス関係者の問題意識、意見を把握し、活動の改善に役 立てる。 (3)コミュニティー・リレーションズ ①日常活動についての説明会などによる情報提供 ・原子力施設立地地域において、保安院が独立した判断で規制活動を行 う組織であることや日常の活動についての情報提供を活発化させる。 ②規制上の個別処分に関する情報提供 ・保安院による報道発表資料を関係道府県、市町村及び自治体記者会参 加の報道機関(記者)に FAX 送信する。 ・重要な案件については、保安院自らが説明会を主催し、規制判断内容を 説明する。 ③防災専門官と自治体、消防・ 警察、住民等の地域関係者との連携の強化 4 (4)事業者とのリレーションズ ① 透明性確保を前提とした事業者との十分な情報交換 ② 事業者への指導の文書化 (5) 外部専門家、国際機関とのリレーションズ ① 外部専門家との十分な意見交換 ② 外部専門家による講演会などの開催奨励 ③ 国際機関とのコンタクトポイント拡大 (6) インナー・リレーションズ ① 職員全体への情報提供の強化 ② 職員の知見の活用・共有化 ③ 法施行担当自治体との連絡強化 (7) 緊急時対応 ①事故・ トラブル等の緊急時における情報提供体制の整備 ・緊急時における報道発表について的確に対応できる体制を整備する。 ②原子力施設立地地域における対応ルールの整備 5.RM 活動の実施体制 (1) ステップアップ ○進捗状況に応じて更に情報提供を充実させていく。 (2) RM 活動に関するトップマネジメント ○幹部会においてリレーション活動全体について定期的にフォローする。 (3) RM 活動の統括組織 ○企画調整課が保安院全体の RM 活動を統括する。 (4) 各課での取り組み ○各課では RM 活動についての重要性を認識し、各課の業務の中で RM 活動を実施する。 (5) トレーニング ○緊急時におけるプレス対応、地域における説明会などに出席する可能 性のある職員を対象にトレーニングを行う機会を設ける。 5
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