神奈川県立衛生短期大学紀要Vol.27(1994) 宇宙線電子の伝播 古森良志子. PropagationofCosmicRayElectrons YoshikoKOMORI* Non-localpropagationofcosmicrayelectronsisdiscussedintwomodels.TheLeakyBoxModelisusedfor t h e p u r p o s e o f e v a l u a t i n g t h e e s c a p e r a t e f r o m t h e G a l a x y . T h e r e s u l t s g i v e n b y m e t h o d o f l e a s t s q u a r e s b e c o m e s ( 5 . 4 ± 0 . 6 ) × K ) 6 ( 0 . 0 8 ± [ y r ] . T h e s t o r a g e t i m e i s i n r o u g h a g r e e m e n t w i t h t h e i s o t o p i c d a t a a n d t h e e n e r g y dependenceconsistentwiththevaluebelowseveralGeVobtainedbytheratioofsecondarytoprimarynuclei components.ThenucleiresultocE-*aboveseveralGeVisdifferentfromelectron'sbutitcouldnotbe s e r i o u s ・ b e c a u s e t h e e n e r g y s p e c t r u m a t t h e h i g h e n e r g y s i d e i s i n d e p e n d e n t o f a e s c a p e r a t e a s e n e r g y l o s s e s a r e dominant. N e s t e d L e a k y M o d e l t r e a t s t h e e l e c t r o n p r o p a g a t i o n i n s o u r c e r e g i o n s a s w h i c h w e n o w r e g a r d t h e G a l a c t i c s u - p e r n o v a r e m n a n t s ( S N R s ) . T h e e s c a p e r a t e o f e l e c t r o n s f r o m S N R s b e c o m e s 1 . 4 × 1 0 * * [ y r ] , i f t h e m a g n e t i c f i e l d strengthinSNRsis10timestheGalacticmagneticfield.Intheestimationweusetheratiooftheamountofradio e m i s s i o n f r o m a l l t h e G a l a c t i c S N R s t o t h a t o f t h e b a c k g r o u n d r a d i o e m i s s i o n i n t h e G a l a x y . 1 . 4 × 1 0 * [ y r ] i s g o o d agreementwiththeSedovphaselifetimeofSNRs,andtheindex0.3showsthatmanyhighenergyelectronscannot leakoutofaSNR・ThebreakpointofelectronspectrumbyenergylossesinSNRsisin600∼700GeV,andindicates t h a t t h e e l e c t r o n p r o p a g a t i o n i n S N R s i n f l u e n c e s t h e c u r r e n t e l e c t r o n s p e c t r u m o b s e r v e d u p t o 2 T e V . は星間空間のイオン化した領域に閉じ込められていると I序 ローバルな伝播を考える場合には,宇宙線を個々として 考えられる。実際その速度はlO-lOOlWs]となり,宇 宙線は銀河の中に長い間閉じ込められていると予想きれ る[3]・宇宙線が閉じ込められている方法は現在のとこ みるのではなく集団として取り扱う必要がある。集団と ろはっきりとはわかっていないが,現象論的な閉じ込め 宇宙線は我々の銀河内に多く存在しているが,そのグ してみた場合の速度は,個々の宇宙線粒子の速度に比べ を扱ったモデルであるLeakyBoxModelでは,宇宙線は てはるかにゆっくりとしており,伝播領域の磁場によっ ハローガスを通ってゆっくり拡散していくし, て散乱される頻度に依存している。銀河磁場は向きの Convection-Diffusionのモデルでは,宇宙線は銀河風に 揃った磁場と,磁場の乱れのスペクトルつまりplasma よってディスクの外へ輸送される。 wavesとして特徴づけられるランダムな成分とを含んで この詩文では,LeakyBoxModelとそれを組み合せた いる。磁場の乱れのスケール長と宇宙線のジャイロ半径 NestedLeakyBoxModelをつかう。これらのモデルの特 のスケール長が重なった所では,強いピプチ角散乱が起 徴を一言でいえば,宇宙線の存在している領域を考え, きて,宇宙線は空間を等方的に拡散していくし,一方, 散乱の起きない所では宇宙線粒子は単に磁力線に沿って その領域からエスケープする確率を求めるというもので 運動する。Wentzel(l974)によると,電離度が高く中性 ある。電子の場合は他の核種成分と異なり,エネルギー 損失が大きい。このため高エネルギー側のスペクトルは 水素原子密度が小さい場合,宇宙線の伝播速度はアル エスケープ確率に依存しない。NestedLeakvBoxModel フェン速度に等しくなり,中性媒体の中では大きくイオ を使うことは以前にも述べたように,宇宙線電子の発生 源とみられる超新星残骸の強い磁場の領域と銀河磁場領 ン化領域では小さくなる。したがって,宇宙線の大部分 *物理学 −37− 域を区別することによって,発生源からのエスケープ確 率を求めることにある。この場合発生源を1つのLeaky となる。姥の値は銀河全体の平均的磁場の強さ3│>G] を採用すれば,約半分の値になる。6.7[/iG]という値 Boxとみなすが,電子が発生源内に閉じ込められている は地球から極方向に測った電波強度から求めた値である 様子や,どのように銀河に放出されるかということはわ から,言わば太陽系のまわりのローカルな値である。後 かっていない。しかしながら,このモデルの利点はその に実際比較する観測値は太陽系近傍の値であるから,こ ような詳しい物理が分からなくてもグローバルな伝播を 畿麓できることにある。 こではローカルな値を使った方がよい。 第2,3節では各伝播モデルの公式を求め,その特徴 LeakyBoxModelとは,銀河内磁場によって宇宙線は ある期間閉じ込められるが,一方拡散により少しずつ銀 についてのべる。第4,5節では,実際に観測データと 河外にもれ出ていくとするモデルである。電子の場合は, モデルを比較し,最小二乗法(修正Marquardt法)を使っ 加えて上で述べたエネルギー損失を考慮する必要があ てエスケープ確率を求める。その際,エスケープ確率の る。宇宙線電子は銀河内のどこかで生まれていると考え エネルギー依存性については最も単純な形を採用してい られ,銀河外からくることが不可能なことは他の宇宙線 る 。 より確実である。なぜならば.3K宇宙背景轄射は宇宙 全体に拡がっているから,それによる電子のエネルギー 損失はかなり強く,そのため数十MeV以上の宇宙線電 Ⅱ恥akyBoxM面elの公式 子は我々の銀河には到達できない[17]。したがってGeV GeV以上の電子におけるエネルギー損失は,主にシ 以上の電子の伝播を扱う場合は,我々の銀河内で閉じて ンクロトロン報射や逆コンプトン効果による。前者は銀 考えられる。宇宙線電子は銀河内のおそらくは超新星残 河磁場により電子が加速度を受け,電磁波を放出しエネ 骸から生まれ,エ永ルギー損失を受けつつ銀河内を伝播 ルギーを失う現象であり,後者はこれも銀河に存在する し,やがて銀河の外へ抜けていく。こうした中で銀河内 星光や,宇宙に充満している3Kの宇宙背景輯射の低エ は電子の数雌(卸についてある程度の定常状態が保た ネルギーフォトンとの衝突によって,電子がエネルギー れているとする。それはエネルギースペクトルの方程式 を失う現象である。,逆'とついているのは,通常コンプ では次の様に表される。 トン散乱といえば.x線が電子による散乱のためエネル 今鵠十会等雌()]=(h(E)(2) ギーを失う(波長が長くなる)現象を言うが,この場合は 逆にエネルギーを獲得する(波長が短くなる)からであ ここで唖(句は電子の発生率を,1/で2(aは銀河から る。実際,電子がこれらの理由でエネルギーを損失する 洩れていく単位時間当たりの確率を表している。で2(匂 割合は,銀河磁場の大きさを氏銀河のフォトン密度を はエネルギー損失を無視できる場合には,銀河内滞在寿 Wphとすると, 命と見なすことができる。更に.Qz(),*2(。を次の ようなEの乗べきの形で表す。 子=一睡 &()=QozE γ '*()=rrfT" & [ G e V^ s e c^ ] = 1 . 0 2 × 1 0 " 噸 器 + w ・ 卿 ) [ e V / c c ] と表される。それぞれのエネルギー密度は[eV/cc]で 表されている。磁場のエネルギー密度は ( 3 ) 銀河における電子の発生率金()をこのようにおく根拠 は,宇宙線電子がSNR内のshock加速で創られ,それ ^ [ e V / c c ] = 0 . 0 2 4 8 f l * [ > G * ] が乗ベキの形をもつと考えられているからである。また 創られた電子の電荷符号についてはよくわかっていない で与えられ,銀河磁場を6.7[G]とすると.l.l[eV/cc] となる。フォトン密度については,紫外線成分からの寄 与は無視し,可視光成分のフオトン密度を0.26[eV/ccL 赤外のフォトン密度を0.31[eV/cc]とし[2],3Kの宇 宙背景報射のフォトン密度を0.25[eV/cc]とすると, が,ともかくここでは陰電子と陽電子の総和を取り扱っ ているものとする。またで2(匂をエネルギーに依存し て乗べきの形におくことは,物理的要請からくるもので はなく磁場の乱れのスペクトルを乗べきで表すことから 現象誇的に仮定されている。 0.82reV/cc]程度となる。したがって,合計で約1.93 [eV/cc]程度となり,瞳の値はおよそ 以上のように仮定すると.LBModelの解が得られる [ 1 1 ] 。 姥=2.0×10 '6にeV *sec i](1) −38− 神奈川県立衛生短期大学紀要Vol.27(1994) 蝿 ② = 万 琴 零 * ' 0 1 露 γ ‘ ri()=roi-*> −1+多−62 e x p [ で 2 ( ) ( ! $ z )] d 工 ( 4 ) LBModelによると,あるエネルギー範囲を考えたとき, とおくと,単位時間にSNR領域から銀河空間にエスケ ープしていく電子の数,即ち銀河領域での発生スペクト ル唖(匂は その中の電子の数はソースから加えられ,更により高い 。(。=砦号(6) エネルギーの電子がエネルギー損失によってその範囲に 入ってくる。一方減少の方は,エネルギー損失と銀河か で与えられる。 らのエスケープが考えられ,どちらの頻度が高いかは, ここでSNR内でのNi(○は,加速源からの寄与,シン 注目しているエネルギーの値に依るはずである。エネル クロトロンによるエネルギー損失,SNRからのエスケ ギー損失の割合は助Eであり,エスケープ確率は,/で2 ープが釣合い定常状態になっているとおく。 である。この2つが等しい場合を境に,それよりエネル ‐筈号+去塔蝿⑤'=。⑤(7) ギーの低い電子は銀河からのエスケープが効き,それよ りエネルギーの高い電子はエネルギー損失が効く。この 境のエネルギーを昼と表すと, 曇 = [ ( γ − 1 ) 姥 で o z ] − ユ ノ ( ' − 8 2 ) ( 5 ) となり,この前後の電子のスペクトル指数は ここで &()=<3bi-γ はSNR内での電子の発生スペクトルであり,SNRの爆 発後,粒子加速が続いて起こっており,一定の状態で電 子を供給し続けているものと仮定される。したがって爆 <易のとき 発後粒子加速が続いては起こっていないSNR(例えば CAS-A[6])をleakyboxとみなすことには無理がある 雌()=&(勘で2(団匪E一(γ+62) かもしれない。しかしここではSNRの総和を考えてい >昼のとき るので.1つのSNRが伝播モデルの時間レンジに比べ て速く衰退しても,全体として一定性を保っていれば良 蝿 ( 劇 = ( 鍔 " 。 。 E ( 蕨 ・ ” と表される。すなわち電子スペクトルの指数は,折れ曲 い訳である。このNLBModelの解を得るには,(6)式の Ai<匂にLBModelの解(4)式の添字2→lに変えたもの がり点昼を境に,一(γ+62)から−(7+1)に変化 をとり,ソーススペクトルをfc(。とするLBModelの することがわかる 解を計算すればよい。結果は 蝿 ( 勘 万 亨 丁 哉 万 ァ 零 雰 ↓ ‘ 錘 僻 “……簿p[-害志託蒜k IDNestedLeakyBoxModelの公式 次に,NestedLeakyBoxModel(NLBModel)につい て述べる。このモデルでは,銀河の1つの大きなleaky boxに含まれるSNRの複数のleakyboxが存在する。宇 宙線高エネルギー電子はSNRの中でshockwaveにより −1+毒−32 . e x p [ 6 2 で 2 ( ) ( ! f i z ) 1 ( 8 ) となり,具体的なパラメータの値が入力されれば,上式 加速されたものと考えられるが,nebulaの中には銀河 から数値積分によりNLBModelで計算した銀河内一次 磁場よりも強い磁場が存在し,電子はそれによりエネル 電子スペクトルが得られる。ところで,このNLBMod- ギーを失う。そのエネルギー損失係数をhとする。電 elのスペクトルの特徴は,折れ曲がり点が2ヶ所に存在 子はSNRから銀河のleakyboxへと抜けだして(すなわ ち見方を変えれば,これが銀河の発生スペクトルとなる) することである。1つはSNR内でのエネルギー損失に 銀河内を伝播し,エネルギー損失を受け,やがてその銀 内におけるエネルギー損失による折れ曲がりで,これを よる折れ曲がりで,これをdとおく。2つ目は,銀河 河からも抜け出していくという描像である。これを式で <2とおく。 表すと以下のようになる。SNRに関する量は添字1で, NLBModelの電子スペクトル変化は以下の様に.2 銀河に関する量は添字2で表している。 つの場合に分けられる。 SNR領域における電子のスペクトルをNi(E)dEとし, SNRから電子がエスケープする確率をl/'i(). case1*<ciの場合 −39− <a,^()-0i()'ziE)oc-<''+*> 発生源から銀河内へ電子がエスケープする確率が 高い,あるいは発生源での電子のエネルギー損失 1 a<<壁雌=>,竺釜-r" の割合が/J、さい場合,各折れ曲がり点は以下の式 .c-<*-"一ざ'十62) で表きれ, 昼,=[(γ−1)伽で]一〃('一"') 姥=[(γ−1)吃でoj−1/〔'一” 1 陸 く 旦 雌 ( 動 = ( γ 竺 釜 “ ( 動 ( 9 ) ⑩ スペクトル指数の変化は, ( γ − 6 1 ) b Z E O C E ( γ + 2 − ざ j $ i ) b > E * * * * となる。 <*,Afe()^Qi()tMoe-^+'> このNLBModelにおける電子スペクトルの変化をまと めて図1に載せておく。またここで2,3の注意点を述 < 2 < < 昼 恥 雌 ( ) 7 鍔 嘩 嘩 直 ( ' 判 ’ 鞄 く 昼 雌 ( 劇 = ( 皇 幾 E r , ( J E ) べておく。case1とcase2の場合では&2の式が少し 異なる[9]。これは折れ曲がり姥の起きる所での銀河 1 における発生スペクトルに差があるからである。図にみ るように,case1の場合は発生スペクトルのべきはγ 1 ( γ − 6 1 ) 助 < ' 一 s ' ) であるし,case2の場合はγ+l-d1である。したがっ となる。一方, て,LBModelの(5)式のγの所にそれぞれの値を入れた case2EaK.Ea.の場合 発生源から銀河内へ電子がエスケープする確率が の場合は最もエネルギーの高い領域でも一γ−1とな 少ない,あるいは発生源での電子のエネルギー損 てこの場合は,LBModelと同じスペクトル変化となる。 ものが上に示した昼2の値になっている。また6,=1 り,曇,でスペクトル指数の変化は現れない。したがっ 以上のようにスペクトルの変化の様子を調べることに 失の割合が大きい場合,各折れ曲がり点は よって,NLBModelにおける物理的に重要な結果を得 島 , = [ ( γ − D h i o i ] ' ノ ( ' 3 1 ) 堅=[(γ−6ユ)ぬroJ−'/('一” ることができる。1つは62が一次電子スペクトルの低 エネルギー側に関与しているのに対し,61は高エネル ギー側に関与している点である。2つ目はそのSNRに となり,スペクトル指数の変化は, 蛾 γ l|→助l|→鮒 QlM γ+61 γ γ+1 γ+1−61 easel γ+621γ+11 , ↑ 雌 γ+2−61 ︽雌 2 E 里 & , γ+621γ+1−6,+621 γ+2−6, ↑ 0 昼 , 単 図1NestedLeakyBoxModelにおける電子スペクトル指数の変化 −40− 神奈川県立衛生短期大学紀要Vol.27(1994) おけるエネルギー損失によりスペクトルはLBModelの 場合より更に1-Siだけ折れ曲がる点である。 次/一次)組成比から求められているmeanescapelength のエネルギー(又はRigidity)依存性については.B/C を使ってlOOGeV以下の範囲で得られている結果から, 数GeV以下では0となりそれ以上では0.6の値となると Ⅳ恥akyBoxM畝elと鑑則値との比較 いうのがおよそ一致した結果である[5][13][14]。つま LBModelと観測値を比較して得られるパラメータの り核種成分では62の値は数GeVにおいて変化している。 1つは,銀河の発生スペクトルである。すなわち2節で 電子も宇宙線核種成分と同じ様に銀河磁場に捕捉され散 調べたように,電子のスペクトルが折れ曲がり点島よ 乱を受けているとすれば,エスケープ確率も同様な形を り大きいところでは,スペクトルのべきはγ+1で与え とるかもしれない。したがって62が変化している場合 られるので,観測値の高エネルギー側のスペクトルを得 にはその平均値とみなすことにして一定であるとおく。 ることによってγが得られる。我々の30GeVから2TeV までの観測値は3.3±0.1であるが,他のグループのデー 以上によりγ.b*o,S2をパラメータにして,銀河 の背景電波からのデータ,Golden.Tangらのデータ,そ タは数十GeV付近の値がかなり高いので,それらを加 して我々のデータに最も良く一致する値を求めることに えると結果はより大きな値になると考えられる。 する。股小二乗法のうちGauss-Newton法は最も簡単で 次にエスケープ確率は(3)式により与えられ,ここで あるが,モデルの非線型性が大きい場合はよい結果が得 ^02は電子エネルギーE=GeVにおける値である。電子 られない。それに対し,修正marquardt法はそのよう の観測スペクトルが62の値に対しどれほどの情報を与 な場合でも収束が良く,しかもヤコピアン行列を解析;的 えられるか考えてみると,62の値が効いているのは折 に求めることができる場合に有効なので,この方法を使 れ曲がり点よりエネルギーの低い領域である。それより うことにする隅]。ここでスペクトルの絶対値0)2はパ 高いエネルギーではエネルギー損失が効いてくるから, 62の値がどの様に変化してもスペクトルには影響しな 測値 ラメータとはしないで,エネルギーlOGeVの点での観 くなる。言い換えれば62に対して鈍い関数になって, 観測値は情報を与えない。一方,宇宙線核種成分の(二 W ( l O G e V ) = 2 7 0 ± 3 0 [ m2 s r * s e c* G e V 勺 一一一一 103 2 0 1 一一一一一一一 ● ● ● ● ● ● ● ● fromradiodata モ Goldenetal.'84 ' * Tangetal.'84 f Ourdata.'93 thelinegivenbyleastsquares γ=2.56 γ=5.4×106-*[yr] 一一一一一一一一 0 1 ︵副ンの①︻1局︻IC①吻函1日︶め目×暑一望一g星 ー I■■ 1 0.1 1 1 0 i n * Energy(GeV) 図2LeakyBoxModelと観測値との比較 −41− 1 0 3 104 に一致するように選んでいる。 や小さい。 結果は図2に示すように この節では(8)式を使って,観測値との比較により最小 二乗法からエスケープ確率を求める。未知のパラメータ γ=2.56±0.03 は沢山あるので,次のようにパラメータを選択する。 まず,SNRにおける電子の発生スペクトルγの値は, ro2=(5.4±0.6)×10*[yr] 62=0.08±0.08 加速理鰭から理想的な場合には2.0であるが,SNRでの となる。ソーススペクトル指数2.56という結果は,これ まで考えられてきた値に比べてかなり大きいが,これは 衝撃波面は球面であること,衝撃波が定在的でなくある 期間しか続かないことを考慮すると2.1<γ<2.3と考え Tangらの絶対値の大きなデータが効いていることによ られている[1]。したがってここでは る。彼らの結果は残差が小さいので,最小二乗法で求め γ=2.2 ると影響が大きい。 次に,ro2はエネルギーがIGeVにおけるエスケープ とおく。 確率の値であるが,これは(5武から求めた折れ曲がり点 また実際の計算に必要な値は,エスケープ確率にエネ ルギー損失係数をかけた値である。そこでIGeVにおけ Ec=25GeV るこれらの比をαとおき, よりかなり小さいので滞在寿命とみなすことができる。 . ^ f t │ T o i ( i G e V ) ^02の値は,宇宙線核種成分の同位体のデータから得ら らで02(IGeV) れている結果."Beによる8.4(+4.0,-2.4)×10*[yr] と定義する。ここでαの値は,銀河内のSNRから放射 [19],15(+7,−4)×10[yr][15],また最近のデータ されている電波量と銀河内に存在する背景頼射の電波量 "Beによる(2.9±1.0)×10*[yr],*Alによる(4.1±2.4) の比較から見積もると, X10*[yr]の値[18]に比べてやや小さいが,これは銀河 のグローバルな磁場の値3[//G]に比べてここで採用し た太陽系付近の値6.7[*G]はかなり大きく,エネルギ ー損失係数助の値が大きいことによると考えられる。 エスケープ確率のエネルギー依存指数62の値は,上 で述べた宇宙線核種成分の(二次/一次)組成比の値と数 α=0.05∼0.15 程度の値をもつことがわかる。これはNLBModelのス ペクトルが3節のcase1の場合であることを示してお り,壁く島'となっている。 SNRの方のパラメータはαを使って GeV以下では一致しているが,それ以上ではかなり異 hri=biroi−61 なっている。しかし電子のエネルギースペクトルは高エ =α・瞳^02ごび’ ぬで2=瞳r02-β2 ネルギー側ではエスケープ確率に依らないので,数 GeV以上で∼0.6となっていても観測値とは矛盾しない と考えられる。 と表わす。 以上により,必要なパラメータはb2*"02i$2^1 となり,これらを最小二乗法のパラメータとして選ぶこ VNestedLealw政xModelと蹴則値との比較 とにする。実際に計算を行なった結果は,γ=2.2, NLBModelにおける最も重要なパラメータは,宇宙 α=0.05のとき, 線電子の発生源SNRからのエスケープ確率である。エ 蛇r02=0.18±0.06 スケープ確率が高ければ電子は発生後あまりエネルギー ($2=0.26±0.15 を失うことなく銀河に出てくるし,低いとなかなか出て <$i=0.290.16 こない。このことを閉じ込めが,弱い,,,強い'という。 予想としてはSNRの中心部分のパルサー加速で生成さ となった。その様子を図3に示す。またα=0.1,0.15 れたものはnebula内のエネルギー損失が大きくあまり の場合も合わせて結果を表1に示しておく. 出てこれないだろうし,爆発のblastwaveにより加速 されたものはかなり出てくるだろう。Duricによれば, SNR内における電子の滞在寿命のIGeV付近の値で01 は パルサー加速による宇宙線供給率はblastwaveに比べ ると数は多いが1つ1つの供給量は小さく全体としてはや −42− roi="(Hs/Hc^roz 神奈川県立衛生短期大学紀要Vol.27(1994) 表1NestedLeakyBoxModelから推定されるパラメータ 12 でて γ=2.2 ==α・でoi =ro2 31 一け2 HJHg α 2.88× 0.10 40 2.90× 0.15 100 2.82× 111 10 7 07 07 0 [ y r ] 0.05 61 62 ^02 昼2&1 foi [yr][GeV][GeV] 0.260.29 4 1.4×10 4.18581 0.220.42 15006.91704 0.210.47 4207.09660 1 0 3 0 1 2 1 0 ︵菌ンの①[1.扇[IUのm観I旨︶②国×堂一切目g胃角 fromradiodata 1 01 モ Goldenetal・'84 心 Tangetal.'84 I Ourdata'93 1 thelinegivenbyleastsquares 7=2.2 7 , = 0 . 0 5 . 2 . 9 × 1 0 ' 2 9 [ y r ] 巧=2.9×107E-0.'"'[yr] 1 0 * 10 10* 1 0 4 Energy(GeV) 図3NestedLeakyBoxModelと観測値との比較 から得られる。姥IHgはSNRと銀河の磁場の大きさの り,一方SNR内でのエネルギー損失による折れ曲がり 比である。α=0.05,SNRの磁場が70fiG程度ではで0, &,は数百GeVのところにある。このことから電子の発 =1.4×10*[yr]となり,700uG(a=0.15)とすれば 生源でのエネルギー損失が現在の2TeVまでの観測範囲 に影響を与えていることがわかる。 roi=420[yr]程度に短くなる。SNRからのエスケープ 確率のエネルギー依存指数61の値は0.3∼0.5程度の値 である。このような61の範囲ならば,SNR内の電子の Ⅵ 結 論 発生源分布の効果はlOTeV以下ではほとんど効いてこ ないので,61はSNRにおける電子の伝播の仕方にかか わるパラメータとみて良いだろう。また,銀河のエネル ギー損失による折れ曲がり姥は数GeVのところにあ この請文では電子の伝播モデルとしてLeakyBox ModelとNestedLeakyBoxModelを考えてきた。最小 二乗法を用いて得られた結果は従来の結果とはやや異な −43− る部分があるが,全体として矛盾なく伝播を考えること 134,1973 ができる。まず,LeakyBoxModelから得られたソース [ 1 幻 S e w a r d , F . D . , S p a c e S c i . R e v . , ( 4 9 ) 3 8 5 , 1 9 8 9 スペクトルγ=2.56はこれまでの値γ=2.4±0.1に比べ [ 1 3 ] S o u t o u l , A . e t a l . , P r o c . 2 1 t h I C R C ( 3 ) 3 3 7 . 1 9 9 0 て大きいが,これはTangらのデータが効いている結果 である。低エネルギー側のスペクトル指数はγ+62= 2.65となり,宇宙線陽子のスペクトルの値と一致してい [ 1 4 ] S w o r d y , S . P . , e t a l . , A p J . , ( 3 4 9 ) 6 2 5 , 1 9 9 0 [ 1 5 ] Simpson,J.A.andGarcia-Munoz,M、,SpaceSci. R e v . , ( 4 6 ) 2 0 5 . 1 9 8 8 る。IGeV付近の滞在寿命で02=5.4×10*[yr]の値はや [ 1 6 ] Taira,T・etal..Proc.23thICRC.1993 や小さいが,これはローカルな姥の値が大きいことに [ 1 7 ] VanDerWalt、D.J.etal..SpaceSci.Rev.(47)1, [ 1 8 ] Webber,W.R.,Proc.21thICRC(3)393.1990 [ 1 9 ] W i e d e n b e c k . M . E . a n d G r e i n e r , D . E . , A p . J . , ( 2 3 9 ) よると考えられる。62=0.08が高エネルギーまで続い ているかという点は,宇宙線核種成分の結果(6=0.6 >5GeV)と異なっているかどうかという重要な問題で 1988 あり,今後別の方向から樹付が必要である。 L139,1980 NestedLeakyBoxModelから得られた結果は大変興味 深い。まず銀河のエスケープ確率はαが変化しても変わ らないが,これは低エネルギー側のスペクトルから決め られるので妥当な結果である。また,銀河内SNRの磁 場の大きさは平均して銀河磁場の10倍程度と考えられる から,α=0.05程度が現実に近いと思われる。 この場合,SNRでのIGeV付近の電子の滞在寿命は10* [yr]程度となり,これはSNRがSedovphaseにおいて 活動できる期間と一致している。また,SNRからのエ スケープ確率のエネルギー依存指数6,の値は0.3程度と なり,これは高エネルギー部分の閉じ込めがかなり強い ことを表している。 参考文献 [ 1 ] B o g d a n e t a l . , A s t r o n . A s t r o p h y s . ( 1 2 2 ) 1 2 9 , 1 9 8 3 [ 2 ] C o x , P . a n d M e z g e r . P . G . , A s t r o n . A s t r o p h y s ・ R e v . , ( 1 ) 4 9 , 1 9 8 9 [ 3 ] D u r i c , N . . S p a c e S c i . R e v . ( 4 8 ) 7 3 , 1 9 8 8 [4]Dejager,O.C.andHarding,A、K..Ap.J.(396)161. 1992 [ 5 ] E n g e l m a n n , J . J . , e t a l . , A s t r o n . A s t r o p h y s . , ( 2 3 3 ) 96.1990 [6]Green,D.A.,SupernovaRemnantsandtheInterstellarMedium.CambridgeUniv.Press. 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