' $ 社会経済学 2 (2014 年度前期) 第 8 回: ボーモル・モデル 担当者: 佐々木 啓明∗ ∗ & E-mail: [email protected]; URL: http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/˜sasaki/ % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ——はじめに—— 経済のサービス化はなぜ起きるのか, そして, サービス化は経済成長にど のような影響を与えるのか. これに答えるのがボーモルの先駆的な研究. ここでサービス化とは「サービス部門の雇用シェアの増大」と定義して おく. 彼は, 簡単な 2 部門 (製造業とサービス) モデルを構築し, サービス化のメ カニズムと, サービス化により経済成長率が低下していくことを示した. Baumol, W. J. (1967) “Macroeconomics of Unbalanced Growth: The Anatomy of Urban Crisis,” American Economic Review 57 (3), pp. 415– 426. 1 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ——サービス化の実態—— :ĂƉĂŶ ϴϬ ϳϬ ϲϬ ϱϬ ϰϬ ϯϬ ϮϬ ϭϬ Ϭ ĂŐƌŝĐƵůƚƵƌĞ ŝŶĚƵƐƚƌLJ ϭϵϴϬ ϭϵϴϮ ϭϵϴϰ ϭϵϴϲ ϭϵϴϴ ϭϵϵϬ ϭϵϵϮ ϭϵϵϰ ϭϵϵϲ ϭϵϵϴ ϮϬϬϬ ϮϬϬϮ ϮϬϬϰ ϮϬϬϲ ϮϬϬϴ ƐĞƌǀŝĐĞƐ Figure 1: 日本の部門別雇用シェア 2 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 <ŽƌĞĂ ϴϬ ϳϬ ϲϬ ϱϬ ϰϬ ϯϬ ϮϬ ϭϬ Ϭ ĂŐƌŝĐƵůƚƵƌĞ ŝŶĚƵƐƚƌLJ ϭϵϴϬ ϭϵϴϮ ϭϵϴϰ ϭϵϴϲ ϭϵϴϴ ϭϵϵϬ ϭϵϵϮ ϭϵϵϰ ϭϵϵϲ ϭϵϵϴ ϮϬϬϬ ϮϬϬϮ ϮϬϬϰ ϮϬϬϲ ϮϬϬϴ ƐĞƌǀŝĐĞƐ Figure 2: 韓国の部門別雇用シェア 3 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ŚŝŶĂ ϴϬ ϳϬ ϲϬ ϱϬ ϰϬ ϯϬ ϮϬ ϭϬ Ϭ ĂŐƌŝĐƵůƚƵƌĞ ŝŶĚƵƐƚƌLJ ϭϵϴϬ ϭϵϴϮ ϭϵϴϰ ϭϵϴϲ ϭϵϴϴ ϭϵϵϬ ϭϵϵϮ ϭϵϵϰ ϭϵϵϲ ϭϵϵϴ ϮϬϬϬ ϮϬϬϮ ϮϬϬϰ ϮϬϬϲ ϮϬϬϴ ƐĞƌǀŝĐĞƐ Figure 3: 中国の部門別雇用シェア 4 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ——ボーモル・モデルにおける 2 つの重要な仮定—— 1. 製造業の生産性上昇率はサービスの生産性上昇率より高い. 2. 2 つの部門の産出量 (および消費量) 比率が一定. 仮定 2 について. もし, 時間の経過とともに製造業消費よりサービス消 費が増えていく場合, サービスの生産に投入される労働量は増えていく のが普通だから, サービス雇用シェアが増大していくのは明らかである. ボーモルは消費量比率が一定であっても, つまり, 需要がサービスにシ フトしなくとも, サービス化が生じることを示した. 仮定 1 についてはデータを参照. 5 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ——部門間生産性上昇率格差の実態—— :ĂƉĂŶ ϴ͘ϬϬй ϲ͘ϬϬй ϰ͘ϬϬй /ŶĚƵƐƚƌLJ Ϯ͘ϬϬй ^ĞƌǀŝĐĞƐ Ϭ͘ϬϬй ͲϮ͘ϬϬй Ͳϰ͘ϬϬй Figure 4: 日本における各部門の生産性上昇率 6 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 <ŽƌĞĂ ϭϱ͘ϬϬй ϭϬ͘ϬϬй /ŶĚƵƐƚƌLJ ϱ͘ϬϬй ^ĞƌǀŝĐĞƐ ϮϬϬϰ ϮϬϬϮ ϮϬϬϬ ϭϵϵϴ ϭϵϵϲ ϭϵϵϰ ϭϵϵϮ ϭϵϵϬ ϭϵϴϴ ϭϵϴϲ ϭϵϴϰ ϭϵϴϮ ϭϵϴϬ Ϭ͘ϬϬй Ͳϱ͘ϬϬй Figure 5: 韓国における各部門の生産性上昇率 7 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ŚŝŶĂ ϮϬ͘ϬϬй ϭϱ͘ϬϬй ϭϬ͘ϬϬй /ŶĚƵƐƚƌLJ ^ĞƌǀŝĐĞƐ ϱ͘ϬϬй ϮϬϬϰ ϮϬϬϮ ϮϬϬϬ ϭϵϵϴ ϭϵϵϲ ϭϵϵϰ ϭϵϵϮ ϭϵϵϬ ϭϵϴϴ ϭϵϴϲ ϭϵϴϰ ϭϵϴϮ Ͳϱ͘ϬϬй ϭϵϴϬ Ϭ͘ϬϬй Figure 6: 中国における各部門の生産性上昇率 8 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ——ボーモルの不均等成長モデル—— 製造業, サービスともに労働のみで生産されると仮定する. Qm = qm Lm, Q s = q s L s, where qm = ermt , rm > 0 where q s = erst , r s > 0. (1) (2) Qi: 産出量, qi: 労働生産性, Li: 雇用シェア. ボーモルの仮定 1 より, rm > r s. (3) 完全雇用を仮定し, さらに簡単化のために人口を 1 とすれば, 完全雇用条 件は, Lm + L s = 1. (4) 9 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 賃金は部門間で等しいと仮定する. 利潤最大化とゼロ利潤条件より, pm = w/qm, (5) p s = w/q s. (6) つまり, 価格は単位労働費用に等しくなる. これより, 相対価格は, ps = e(rm−rs)t . pm (7) 命題 1. サービスの相対価格は際限なく上昇していく (ボーモルのコスト 病). 10 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ボーモルの仮定 2 を定式化する. ( ) Qs Cs = = K. Qm Cm (8) K : 正の定数. 計算を進めると, Qs L s −(rm−rs)t = K =⇒ e = K. Qm Lm (9) この式の左辺が一定となるためには, L s/Lm が rm − r s > 0 の率で上昇す る必要がある. 命題 2. サービスの雇用シェアは製造業の雇用シェアより速く上昇する (サービス化). 11 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 サービス化が進むとき, 経済成長率はどうなるかを調べてみる. 1 人当た り実質 GDP の成長率は, pm Q˙ m + p s Q˙ s g= pm Qm + p s Q s (10) = Lmrm + L sr s (11) = rm − (rm − r s)L s. (12) 命題 3. サービス化が進むと, 1 人当たり実質 GDP 成長率は低下していく. 12 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ——サービス化と経済全体の生産性成長率—— :ĂƉĂŶ ϱ͘ϬϬй ϰ͘ϬϬй ϯ͘ϬϬй Ϯ͘ϬϬй Ő ϭ͘ϬϬй ZϸсϬ͘Ϭϳϴ Ϭ͘ϬϬй Ͳϭ͘ϬϬй 㻡㻜 㻡㻡 㻢㻜 㻢㻡 㻣㻜 ͲϮ͘ϬϬй >Ɛͬ> Figure 7: 日本におけるサービス化と経済全体の生産性成長率の関係 13 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 <ŽƌĞĂ ϭϮ͘ϬϬй ϭϬ͘ϬϬй ϴ͘ϬϬй ϲ͘ϬϬй Ő ZϸсϬ͘Ϯϱϭ ϰ͘ϬϬй Ϯ͘ϬϬй Ϭ͘ϬϬй ͲϮ͘ϬϬй 㻟㻜 㻠㻜 㻡㻜 㻢㻜 㻣㻜 >Ɛͬ> Figure 8: 韓国におけるサービス化と経済全体の生産性成長率の関係 14 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ŚŝŶĂ ϭϱ͘ϬϬй ϭϬ͘ϬϬй ZϸсϬ͘ϭϵϭ Ő ϱ͘ϬϬй Ϭ͘ϬϬй 㻝㻜 㻝㻡 㻞㻜 㻞㻡 㻟㻜 㻟㻡 Ͳϱ͘ϬϬй >Ɛͬ> Figure 9: 中国におけるサービス化と経済全体の生産性成長率の関係 15 & % ' $ 社会経済学 2: 2014 年度前期 ——補足—— 1. 製造業より生産性上昇率が高いサービスもある. 2. 最終消費だけでなく中間投入となっているサービスもある. 3. サービスを消費することで労働者の生産性が上昇する可能性. 16 & %
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