情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 今後の予定 13回7月7日、14回7月14日 15回7月21日 講義&模擬試験 定期試験7月28日(月) 10:55~12:05 教室 20831 自筆ノートのみ持ち込み可、講義のプリント等の印刷物は持ち込み不可 演習の解答例 (1)41 より小さくて,41 と互いに素な自然数の個数 (41) 41 は素数なので、 1,2,3,…, 40 と 41 は互いに素である。 従って、 (41) 40 である。 (2) 81 3 より小さくて,81 と互いに素な自然数の個数 (81) 4 81 34 と互いに素な 81 以下の自然数は、 1,2, 4,5, 7,8, 10,11, … ∴ (81) 2 27 54 79,80 である。 (3) 48 2 3 より小さくて,48 と互いに素な自然数の個数 (48) 4 次のページに解答例あり。 オイラー関数の性質 (n) #{ x N | 1 x n, ( x, n) 1} ・素数 p については、 ( p) p 1 である。 ・素数ベキ p k については、1 から p k までで p で割り切れる数は p k 1 個あるので、 ( p k ) p k p k 1 である。 ・自然数 n, m が互いに素、すなわち (n, m) 1 であれば、 (n m) (n) (m) が成立する。 【直観的な説明】碁石を n m 個長方形に並べ、1 から順に番号をつけるとわかりやすい。つ まり、n 行 m 列の長方形に番号付きの碁石を並べる。そのなかから、まず n と互いに素 でない 1 以外の碁石を除く。そうすると n の約数が属する行がなくなる。次に m と互い に素でない 1 以外の碁石をとり除く。m の約数(1 以外)が属する列の碁石がなくなる。 残った碁石の数が (n m) である。 数えるには、上下左右に形をくずさないで縮めると (n) 行 (m) 列の長方形になることがわかる。 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 従って、自然数 n を n p1 1 p2 2 pl e e el と因数分解すると、 (n) ( p1e p2 e pl e ) ( p1e ) ( pl e ) 1 2 e 1 p1 1 p1 1 e l 1 p el l pl l el 1 1 1 1 1 e e e p1 1 p2 2 pl l 1 1 n 1 1 p1 pl p1 pl 定理 4.7 オイラー関数 (n) は以下の性質をもつ。 (1) (1) 1 (2) 素数 p については、 ( p) p 1 (3) 素数ベキ p については、 ( p k ) p k p k 1 p k 1 ( p 1) (4) 自然数 n, m が互いに素であれば、 (n m) (n) (m) k (5) n p1 1 p2 2 pl e e el と因数分解されると、 1 1 1 1 (n) n 1 1 p1 p2 pl 証明 今までの説明より、省略する。 先週の演習の(3)の計算 1 (48) (2 4 3 ) 48 1 1 2 例題8. 1 1 2 48 16 3 2 3 n 2 のときは、 (n) は偶数である。 e 1 解答例 (n) p1 1 p1 1 e p el l pl el 1 を考える。 n が奇数の素因子 p1 を持ったとすると、 p 1 e1 e 1 p1 1 は奇数から奇数を引くので偶数である。 偶数の素因子は 2 だけなので、 2 k 2 k 1 2 k 1 偶数となる。 例題 9. 解答例 █ (2n) (n) であるための必要十分条件は、 n が奇数であることを証明せよ。 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 「 n が奇数ならば、 (2n) (n) である。」 n が奇数ならば、 (n, 2) 1 なので、 (2n) (2) (n) 1 (n) (n) 。 対偶 「 n が偶数ならば、 (2n) n (n) 」で証明する。 は偶数なので、 n 2 n ' と書ける。ここで、 k 1 、 n ' は奇数である。 k (2n) (2 k 1 n ' ) (2 k 1 ) (n ' ) 2 k (n ' ) 他方、 (n) (2 n ' ) (2 ) (n ' ) 2 k k となり、 (2n) 例題10. 解答例 (n) k 1 (n ' ) が証明された。 █ (n) 2 となるとき、 n はどのような数か。 n p1 1 p2 2 pl l と素因数分解すると、 e e e 1 1 1 p1e 1 p1 1 pl e 1 pl 1 2 1 (n) n 1 1 p1 p2 pl 1 l 5以上の素因子を含めば、 (n) 4 となるので、 n は 5 未満の素因子である 2 か 3 の可能性しかない。 つまり、 a, b を自然数として n 2 , 3 , 2 3 となる。 a b a b (2a ) 2a 1 2 の場合 a 2 となり、 n 4 。 (3a ) 3a 1 2 2 の場合 a 1 となり、 n 3 。 (2a 3b ) 2a 1 3b1 2 2 となるので、 a b 1 となり、 n 6 。 以上より、 n 3, 4, 6 となる。 ■ 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 5.メルセンヌ素数、完全数、フェルマー素数 素数は無限にあるので最大の素数は存在しませんが、人類が知っている限りでの最大の素数と いうのは存在します。 定義 5.1 m N に対し、 M m 2 m 1 をメルセンヌ数といい、 特に、 M m が素数のときメルセンヌ素数という。■ 現在までに(2014 年 6 月末)、メルセンヌ素数は 48 個知られている。 発見されている最大のメルセンヌ素数(最大の素数)は 2578851611 (GIMPS, Jan. 2013)である. メルセンヌ数を 2 進数で表すと、 n 桁の 1111 である。 歴史的には、1644 年にメルセンヌが、 2 1 が素数になるのは、 n 257 では、 n = 2, 3, 5, 7, n 13, 17, 19, 31, 67, 127, 257 だけであると主張した。しかしその主張の一部は誤っていた。 リストに含まれていない M 61 , M 89 , M 107 が素数であり、リストに含まれている M 67 , M 257 は合成数であった。 再度書きますが、 M 67 が素数でないことは、1903 年 10 月、フランク・ネルソン・コールによ り示された。彼はニューヨークで開かれたアメリカ数学会で 193707721 × 761838257287 を黒 板に計算し、 M 67 と一致することを証明した。この間一言もしゃべらず、席に戻った後、少し間 を置いて拍手が沸き起こったと伝えられている。 命題 5.2 n を自然数とする。 (1)2 1 という形の数(メルセンヌ数)が素数になるのは, n が素数の場合に限ることを示 せ。 n (2) 2 1 という形の数が素数になるのは, n が 3 以上の奇数では割り切れない場合に限る ことを示せ。 証明 n (1) n が合成数で, n k s, 1 k n の形に書けるなら, 2n 1 (2k ) s 1 (2k 1) ( 2k ( s1) 2k ( s2) 2k 1) の形に因数分解できる.したがって 2 1 も合成数である. n (2) n が 1 より大きい奇数 s で割り切れて, n k s, 1 k n の形に書けるなら, 2n 1 (2k ) s 1 (2k 1) ( 2k ( s1) 2k ( s2) 2k 1) 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 と因数分解できる.したがって 2 1 は合成数である.■ n n 7 なら s 7, k 1 に対して上の式が成りたつ.したがって 2 7 1 は 上の(2)の例: 21 1 3 で割りきれる.実際,128+1=129=3×43 。 メルセンヌ素数 人類が知りえる最大の素数は、現時点では、最大のメルセンヌ素数 M n 2 1 である。 n 命題 5.2 より、 p 2 1 の形の素数であるためのには、 n が素数である必要がある。 n しかしながら、 p が素数でも M p は素数とは限らない。 M 2 2 2 1 3 , M 3 23 1 7 , M 5 25 1 31 , M 7 27 1 127 M 11 211 1 2047 2389 メルセンヌ素数でない 現在知られているメルセンヌ素数 M p は 48 個である。以下では p を列挙する。 p 2, 3, 5, 7, 13, 17, 19, 31, 61, 89, 107, 127, 521, 607, 1279, 2203, 2281, 3217, 4253, 4423, 9689, 9941, 11213, 19937, 21701, 23209, 44497, 86243, 110503, 132049, 216091, 756839, 859433, 1257787, 1398269, 2976221, 3021377, 6972593, 13466917, 20996011, 25964951 ― メルセンヌ素数発見の歴史 - 紀元前 5 世紀 p 2, 3 古代ギリシャの数学者 紀元前 3 世紀 p 5, 7 古代ギリシャの数学者 1456 年 不明 p 13 1588 年 ピエトロ・カタルディ p 17,19 1772 年 レオンハルト・オイラー p 31 1876 年 エドゥアール・リュカ p 127 1883 年 イヴァン・パヴシン p 61 1911 年 R・E・パワーズ p 89 1914 年 R・E・パワーズ p 107 p 521 1952 年 ラファエル・M・ロビンソン*計算機利用 ・・・ p 1398269 1996 年 GIMPS これ以降 【未解決問題】 ・メルセンヌ素数は無限に存在するか? ・ 素数 p に対して M p が合成数であるとき、これをメルセンヌ合成数と呼ぶことにして、 それは無限に存在するか? ・平方因子を持つメルセンヌ数 M p ( p は素数)が存在するか? ・ n を奇数とするとき、次の 3 つの条件のうち 2 つが満足されれば、残りの 1 つも満足され ると予想されており、 n 100000 に対してこの予想は正しいと確認されている。 1. M n が素数 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 4k 3 2. n 2k 1 または 3. (2n 1) 3 が素数 完全数 この節では、ピタゴラスにより重要性が唱えられた完全数に関して述べる。 以前、自然数 n と整数 m に対して、一般化した約数関数 m (n) m d を記した。 d |n そして、 (n) 1 (n) であり、 d (n) 0 (n) となっていて、約数の個数関数、約数関数を含ん でいること、さらに、この関数 m (n) は乗法的関数となっていることを言及した。 特に、 m (n) で m 1 の場合は、 1 (n) d |n 1 となる。 d a 自然数 n が素数ベキである場合、つまり素数 p のとき、 1 ( p a ) d|p a 1 pd a p 1 p a 1 1 1 p 1 i i 0 ここで、 1 ( p ) lim 1 ( p ) a a 1 pa p 1 p p と置くと、次の補題が言える。 p 1 補題 5.3 奇素数 p, q に対して、 (1) 自然数 a , b が、 1 a b ならば 1 1 ( p a ) 1 ( p b ) (2) 自然数 a , b が 1 a , b かつ p q ならば 1 (q b ) 1 ( p a ) が成立する。 証明 (1) 奇素数 p と 1 a b なる自然数 a , b に対して、 1 1 ( p a ) a p i 1 i 0 a 1 1 a 1 ( p b ) p i p p i 0 b p i a 1 i 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 より、明らか。 (2) 1 a , b , p q に対して、 1 (q a ) 1 (q ) なので、 1 (q ) 1 ( p) を示せば良い。 p q で、しかも p, q は奇素数なので p, q の差は 2 以上なので、 p 1 q が成り立つ。 p 1 q p q 1 1 q 1 p q q 1 q 1 1 q 1 p 故に、 1 (q ) 1 ( p) が成り立つ。 補題 5.4 q 1 p █ 自然数 x 1, y 1 である自然数に対して、 x y y x y1 x 1 これは、上の補題 5.3 で a b 、 p q ならば 1 (q ) 1 ( p ) に該当する。 証明 x y 定義 5.5 例 y x y x y1 x 1 xy y xy x y ( x 1) x ( y 1) ■ n N に対し, n の約数の和を ( n ) と表す. ( n ) 2 n をみたすとき, n を完全数(perfect number) という。 ( 6 ) 1 2 3 6 2 6 , ( 28 ) 1 2 4 7 14 28 2 28 そのほかに、496, 33550336, 8589869056 などがある。 【偶数の完全数】 偶数の完全数については、よく知られている。 情報数学 Ⅰ 配布日時 2014 年 6 月 30 日 補題 5.6( ユークリッド原論第 IX 巻の最後の命題) m N に対し、 q 2 m 1 が素数ならば、 n 2 m1 q 2 m1 ( 2 m 1 ) は完全数である. q 2 m 1 が素数なら、奇素数であるので 2 の素因子を持たない。 証明 q 2 m1 ( 2 m 1 ) の約数は、 1, 2, 2 2 , , 2 m1 , 従って、 n 2 m1 q, 2q, 2 2 q , , 2 m1 q であるので、総和は (n) (1 2 2 m1 ) ( 1 q) (2 m 1) (1 q) 2 m (2 m 1) 2 2 m1 (2 m 1) 2 n となるので、 n は完全数である。 ■ 補題 5.7 自然数 m に対して、もし n 2 m1 ( 2 m 1 ) が完全数であれば、 2 m 1 は素数である。 証明 背理法で証明をする。つまり、 2 m 1 は素数でないとする。 a 2 m 1 と置き、 a の約数を d1 ,, d r とする。 a は 2 を素因子として含まないので、 n 2 m1 ( 2 m 1 ) の約数は d1 , 2 d1 , , 2 m1 d1 , d 2 , 2 d 2 , , 2 m1 d 2 , , dr , 2 dr , , 2 m1 d r となり、 a の約数の総和は (a ) d1 d 2 d r なので、 (n) ( 2 m1 ( 2 m 1 ) ) (1 2 2 m1 ) (d1 d 2 d r ) (2 m 1) (a) (1) となる。 a 2 m 1 は素数で無いと仮定しているので、 a は 1 と a 以外に約数をもつので、 (a) 1 a 2 m となるので、 (1) とあわせて (n) 2 m (2 m 1) m m が得られるが、 n が完全数であるので (n ) 2 n 2 ( 2 1 ) となり、矛盾する。 m 故に、 a 2 1 は素数でなければならない。 █ 実は、偶数の完全数は n 2 れました。 m1 ( 2 m 1) の形しかありません。これはオイラーによって証明さ
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