帯板形式薄板軽量形鋼組立圧縮材の有効細長比

平成 25 年度創成シミュレーション工学専攻修士論文梗概集
都市シミュレーション工学分野
帯板形式薄板軽量形鋼組立圧縮材の有効細長比
学籍番号 24413579 氏名 三井 和也
指導教員名 佐藤 篤司 准教授
1.はじめに
鋼構造設計規準 1) では組立圧縮材の座屈応力
度を有効細長比に基づいて算定し,帯板形式の
組立圧縮材の有効細長比は式 (1)~(3) で規定さ
れる.この式は弦材が厚板で綴り材によって高
力ボルト接合などの剛接合された場合が対象で
あり,Bleich2),3) らの仮定に基づいている.
本論文では実験および数値解析により鋼構造
設計規準の有効細長比が薄板軽量形鋼に適用可
能であるかを検証し,座屈変形に伴う曲げモー
メント分布形を確認するともに,エネルギー法
に基づいて帯板形式薄板軽量形鋼組立圧縮材の
有効細長比を導出することを目的とする.
(1)
𝑎𝑎
(2)𝜆𝜆1 = 𝑖𝑖
1
(3)
λye: 有効細長比,λy: 弦材が一体となって挙動するとした時の細長比 ,
m: 弦材数 λ1: 区間長さによる細長比 , L: 材長 , iy: 弦材が一体となって
挙動するとした時の断面二次半径 , a: 区間長さ , i1: 弦材の断面二次半径
F10T-M12
300
2150
弦材
300
300
25 300
表 2 組立材の断面諸性能
σy=314.1[N/mm2]
0.8
/σy
断面二次モーメント
Iy1[mm4]
84624
0.6
B000
B004a
B007a
B007b
B028a
B064a
B064b
B152a
0.4
0.2
区間長さ 図心間距離 断面二次モーメント
有効細長比
a[mm]
h[mm]
Iy[mm4]
λye
300
80
1407729
50.34
0.0
k=0.3
0.0
0.5
1.0
k
1.5
2.0
表 3 試験体の断面諸性能および実験結果 図 2 最大応力度 - 剛比
試験体名 綴り材
剛比 k
B000
B004a
0.04
B007a
0.07
B007b
0.07
綴り材
図5(b)
B028a
0.28
B064a
0.64
0.64
(a)
(b)
(c) unit:mm B064b
B152a
1.52
図 1 試験体全体
綴り材
図5(a)
有効断面積
Ae1[mm2]
387.0
σ
全断面積
A1[mm2]
387.0
1.0
exp max
実測板厚
t1[mm]
2.165
表 1 弦材の断面諸性能
綴り材
接合形式
全接合部ピン接合
部材端ピン接合
部材端ピン接合
部材端固定接合
部材端ピン接合
部材端ピン接合
部材端固定接合
部材端ピン接合
最大耐力 最大応力度
P [kN] expσmax[N/mm2]
142.0
183.4
187.1
241.7
195.3
252.3
179.4
231.7
201.9
260.9
188.6
243.7
190.1
245.6
196.8
254.2
exp max
基準強度F=280[N/mm2]
1.0
降伏点σy
0.8
/σy
300 25
h
300
歪ゲージ
h
300
h
220
2.組立圧縮材曲げ座屈実験
2.1.実験概要
本研究では弦材(89LCN22)の区間長さを基
準剛度とし,パラメータである綴り材剛比を変
化させ座屈応力度に及ぼす影響を確認する実験
を実施した.表 1 に実測板厚に基づく弦材の断
B000
B004a
B007a
B007b
B028a
B064a
2
E=201514[N/mm ] B064b
B152a
σy=314.1[N/mm2]
0.6
λy
σ
𝐿𝐿
𝜆𝜆𝑦𝑦 =
𝑖𝑖𝑦𝑦
𝑚𝑚 2
𝜆𝜆
2 1
exp max
𝜆𝜆𝑦𝑦𝑦𝑦 = √𝜆𝜆𝑦𝑦 2 +
面諸性能を,表 2 および表 3 は組立材の断面諸
性能を示す.図 1 に示す 3 種類の試験体形状を
対象とし,(a) は部材端の接合部以外に曲げモー
メントを負担させる試験体,(b) は全ての接合
部で曲げモーメントを負担させる試験体,(c)
は全ての接合部で曲げモーメントを負担させな
い試験体であり,曲げモーメント分布に違いが
生じる設定となっている.パラメータの綴り材
剛比 k は表 3 のように設定した.
載荷はアムスラー型試験機による単調軸圧縮
載荷とした.試験機両端にはピン治具を設置し,
座屈長さが試験体長さと一致している.弦材と
綴り材には歪ゲージを添付し,軸力作用時の断
面力を計測し,鉛直変位計を 2 箇所に設置した.
2.2.実験結果
結果一覧を表 3 に,最大応力度 - 剛比関係を
図 2 に,実験結果と座屈強度曲線との対応を図
3 に示す.図 2 の横軸は綴り材剛比 k,図 3 は
鋼構造設計規準の有効細長比 λye である.
最 大 応 力 度 を 考 察 す る と, 綴 り 材 剛 比
k=0.0~0.3 の範囲では綴り材剛比を大きくする
ことで組立材の最大応力度は上昇し,綴り材剛
比 k ≧ 0.3 では最大応力度に影響を及ぼさない
と推察できる.図 3 に示す実線は座屈安全率を
0.4
0.2
0.0
0
20
40
λye
60
80 100 120 140
λye
図 3 座屈強度曲線
図 4 M 分布
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割
3分 割
40 5 分
h= 60 分割
7
h= 0 8
h=
a250h 80
250 80
[m
50
m]
6[m
図 5 解析モデル
/σy
0.0
~
1.0
0.0
~
1.0
0.0
~
1.2
25,
50,
75,
100,
125,
150
表 5 区間数変化型概要
40,60,80
0.6
(5)
0.60
1~25
0.00
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4
k
図 6 最大応力度 - 剛比
a150
a250
a300
a500
a600
a750
a1000
0.6
0.4
0.2
0.0
50
100
150
λye
λ25
λ50
0.8
0.6
250
M b(n-2)
50
100
150
proλye
図 8 解析結果と座屈強度曲線
200
qb(n-1)
250
M t(n-1)
M o(n-2)
qb(n-2)
M t(n-2)
M o(k+1)
q(k+1)
qb(k+1)
qk M b(k+1)
M t(k+1)
M ok
qk
qbk
q(k-1)M bk
x
(b) h80シリーズ
0
M tn
M o(n-1)
q(n-2)
0.4
0.0
M on
q(n-1)
q(k+1)
a150
a250
a300
a500
a600
a750
a1000
qn
qbn
q(n-2)
λ75 λ100 λ125 λ150
1.0
0.2
200
h
M b(n-1)
図 7 必要剛比 k0
(a) h80シリーズ
0
M bn
q(n-1)
250/1000
0.20
(6)
M b(n+1) qb(n+1)
qn
500/1000
0.40
a250_h60シリーズ
0.8
a250_h60
a500_h60
a250_h80
0.80
0.2
0.0
𝐼𝐼
𝜋𝜋 2
= √ 𝜆𝜆𝑦𝑦 2 + 𝜑𝜑𝜆𝜆1 2
12
𝐼𝐼0
𝑝𝑝𝑝𝑝𝑝𝑝𝜆𝜆𝑦𝑦𝑦𝑦
1.00
λ25
λ50
λ75
λ100
λ125
λ150
0.4
1.0
区間長さ 図心間距離 区間数
a[mm]
h [mm]
n
150,250,
300,500
600,750,
1000
𝐴𝐴1 ℎ2
2
σ
500 60
STABILITY,McGraw-Hill Book Company,inc.,pp135-142,1961
0.8
ana max
m]
a500h 60
3)Stephen P. Timoshenko:THEORY OF ELASTIC
/σy
剛比変化型
解析モデル
12.5[mm]
a
せ
wb
tb
250 60
STRUCTURES,McGraw-Hill Book Company,inc.,pp.167-179,1952
σ
い
板厚
a250h 60
区間数変化型
解析モデル
離 ]
距 m
間 0[m
心
図 ,60,8
0
4
h=
h
/σy
名称
区間長さ a
150,250,300,500
600,750,1000[mm]
綴り材 細長比
λy
[mm] [mm] 剛比 k
a
σ
シリーズ
1.0
2)Freidrich Bleich:BUCKLING STRENGTH OF METAL
a
表 4 剛比変化型概要
1)日本建築学会:鋼構造設計規準 -許容応力度設計法-,2002
L
𝐼𝐼0 = 𝐼𝐼 − 2𝐼𝐼1 =
参考文献
ana max
(4)
ana max
1 𝑎𝑎𝑎𝑎 2
1− ( )
2 𝐿𝐿 )}
𝜑𝜑 = {1 + 3 (
1 𝑎𝑎𝑎𝑎 2
1+ ( )
2 𝐿𝐿
結果を図 7 に示す.a/1000 以上の綴り材剛比で
あれば,最大応力度に影響が現れないと言える.
区間数変化型解析モデルの解析結果を図 8(a)
に示す.解析結果は全て座屈曲線を下回り鋼構
造設計規準の有効細長比では座屈応力度を適切
に評価できないことが確認できる.
4.エネルギー法に基づく有効細長比の導出
実験で確認された曲げモーメント分布形(図
9)を基に組立材の歪エネルギーを算定し,導
出した組立圧縮材の有効細長比が式 (6) であり,
導出した有効細長比により座屈応力度を算定し
た結果が図 8(b) である.鋼構造設計規準の有効
細長比と比較すると,安全側の評価となり提案
する有効細長比に有用であるといえる.
5.まとめ
実験および数値解析より鋼構造設計規準の有
効細長比で座屈応力度を評価すると過大に座屈
応力度を算定する.また,確認された曲げモー
メント分布は材長全体にわたり単曲率形分布と
なる.本論文で提案した有効細長比により座屈
応力度を評価すると鋼構造設計規準と比較し安
全側の評価となる.
k0
考慮しない短期荷重に対する座屈強度曲線であ
る.全ての試験体において座屈強度曲線を下回
り,薄板軽量形鋼組立圧縮材の座屈応力度を鋼
構造設計規準の有効細長比では評価できないこ
とがわかる.図 4 に最大応力時の曲げモーメン
ト分布を示す.分布形は Bleich らが仮定した反
曲点位置が区間中央位置の逆対称曲げモーメン
ト分布とは異なり,材長全体にわたりほぼ単曲
率形分布となった.
3.有限要素法による弾塑性数値解析
3.1.解析計画
実験結果を補間するため弾塑性数値解析を実
施する.部材断面の要素分割は図 5 に示す.本
解析では 2 種類の解析を実施し,1 種類目は綴
り材剛比 k が主なパラメータであり,解析モデ
ルを図 5 の上半分に,表 4 に解析概要を示す.
2 種類目は区間数が主なパラメータであり,解
析モデルを図 5 の下半分に,解析概要を表 5 に
示す.解析モデルの綴り材は全て同一である.
3.2.解析結果
剛比変化型解析モデルの解析結果の一例を図
6 に示す.実験と同様に綴り材剛比の上昇とと
もに最大応力度が上昇するが,ある一定値以上
となると最大応力度に影響を及ぼさない.実験
と同様に変動係数を求め,0.01 を越える時に最
大応力度に影響を及ぼすとすると,綴り材剛比
が影響を及ぼさない最小値を定義でき(必要剛
比 k0)
,求めた必要剛比を細長比毎にまとめた
都市シミュレーション工学分野
y
弦材
qb(k-1)
q1 M b(k-1)
M tk
M o(k-1)
q(k-1)
q1
M t(k-1)
M o1
綴り材
qb1
M b1
M t1
図 9 提案モデル