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日消外会 議
隔壁形成 に よる成人 の幽門狭窄症
品T 士ロ
東京慈恵会 医科大学 第 2 外 科学教室 ( 主任 長 尾房大教授)
村 紀 夫
田
完
久
保
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宏
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隆
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昭
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井 健
口 吉
彦
康
A CASE REPORT OF PYLORIC MUCOSAL DIAPHRACM IN ADULT
団DA,
Nodo NAKAMURA,Hirotaka KUBO,Takehiko SAKURA19 Kan YOS】
AHra FUNATSU and Yoshiyasu YAMは
GUGHI
2nd Dept.Of Surgery」ikei lJniversity School of Medicine
(Directori Proi Fusahiro NACAO)
表 l The Reported Cases of Pァ loric Mucosal Di‐
aphragm in Adults
は じめに
幽門狭窄症 は,先 天的なもの としては,小 児におけ る
幽問輪肥厚 による幽門狭窄症 ,あ るいは膜様物 による狭
窄が あ り,そ の うち,幽 門輪肥厚 に よる症例は比較的多
く報告 されている.し か し,小 児において も,膜 様物 に
よる狭窄あるいは閉鎖例は少ないつ.後 天的なもの とし
ては,成 人 の消化性潰場 に よるもの,胃 癌などに伴 う狭
窄が あ り,こ れ らの症例 は 日常 よく経験す るところであ
る。 しか し,成 人 におけ る膜様物 の存在 に よる狭窄はき
わめて稀 とされている。 とくに,そ の成因については,
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そ の結果 ,L4q門輪直上に膜様物がみ られ,こ の隔壁形成
が幽門狭窄 の原因 となつていた 1症 例を経験 したので報
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吐の症状が 1年 間 の経過 で進行 し,幽 門狭窄 の症状が強
くなつたため内視鏡検査な どの精査が不可能 で,明 確な
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もので もむづか しいが,症 状 の進行 した狭窄症状 の強 い
吐が著 るしくな るため
ものでは,胃 液 の貯溜な らびに'区
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はまだその報告 はない.
私 どもは,最 近 ,幽 門狭窄症状 としての腹部膨満 ,H区
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``Gastric Diaphrttn"を
検討 していて,幽 門部 におけ る
見いだ したのが最初 とされている。 これ以来,欧 米にお
いては,1968年 までに44例の報告め' の11)-2の
が ぁ る (表
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1)。しか し,本 邦 においては,私 ども 調査 した範囲で
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先天説 と後天説 とが あるが,い まだ解明されていないの
が現状 である。一方,診 断 の面か らみ ると,症 状 の軽 い
困難なため,そ の確定診断はいつそ うむづか しくなる.
本症例 に関 して,文 献的に報告 された症例は,1946年
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狭窄症
隔壁形成 による成人 の幽F弓
1号
い・胸部 レ線 で も異常陰影はなかつた。
胃造影検査 :経 目的 にパ リウムの 標取 が 不可能 なた
告 し,あ わせて文献的 考察を加 えてみた .
症
日消外会議 8巻
例
男 .36才 .大 工 .住 所 :埼 玉 県三 郷町 .
め, 胃 管を挿入 し, 胃洗浄 な らびに 胃内容 の除去 のの
主訴 :腹 部膨満感 ・ 堰吐.
ち,造 影剤を注入 して撮影 した。 このよ うな処置を行つ
現病歴 :約 1年 前 か ら,食 後 に 腹部膨満感 が 出現す る
て も嘔気が強 く,長 時間の撮影には耐え られない状態 で
よ うにな り,業 医を受診 し精査を うけたが ,と くに 異常
な しといわれた 。 しか しその後 ,嘔 気 も出現 し,腹 部膨
図 1 腹 臥位 レ線像
満感は次第 に強 くな り,llX気 の強 い ときは ,自 分 で指 を
入れて嘔吐 しない と苦 しくて仕方が な い とい う状態 に な
つ た 。 この時点 で 当科受診 し,入 院精査 を うけ る こ とに
な つ たが ,入 院後 も上記症 状 が 進行 し,経 口的 に全 く摂
取 で きな い状態 となつ た.
家族歴 :特 記 す べ き ことな し.既 往歴 :2∼
頃 ,胃 腸 カタル.16才
虫 垂炎手 術 .29才
3才 の
副 鼻腔 炎手
術.
現症 :身 長 156cm, 体 重 45.5kgで ゃゃ 小柄 では あ る
が ,筋 肉質 でた くま しい体格 で あ る。 顔貌 は正 常 で,栄
養状態 も良好 で あ る!貧 血 ・浮腫 もな い,体 温 36.8℃ ,
一 般 状態 は よい。
脈 拍 64で 正 , 血 圧 104/701111Hgで
胸部
は打 ・聴 診上異常 はない。 腹部 は , 上 腹部 に軽度 の膨
満 ,と きに 目の嬬動不安がみ られ るのみでその他 の異常
所 見をみ とめない。
検査成績 :一 般検査所見 は,表 2の ご とくで ,と くに
異常所見 はな ぃ。 腹部 単純撮影 では ,胃 泡 のガス像がや
や大 きい所 見 が 得 られたなか には,鏡 面形成 な どの異常
所 見 はな く, ま た , 小 腸 ・大腸 のガス像 に も異常 はな
表 2 脇 床検 査成績
一
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血
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血
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図 2 半 立位腹臥位 レ線像
1975年1月
39(39)
│
あつた.腹 臥位像 では, 胃の高度 の 拡張が認め られ る
が,と くに器質的な狭窄の原因 となる所見はな く,十 二
致 して厚 さ3∼ 4 mllの
膜様 の隔壁形成が全周にわた りみ
られ,幽 門をはば閉鎖 しているが ,こ の隔壁 の中央でや
指腸球部 の形はほぼ正常に保たれてい る (図 1).このま
ま頭部をあげてやや立位 に して背面か ら撮影す ると,胃
小 さな孔が認め られた
や大弯寄 りに精円形 の 7× 3 mlllの
(図 3).術 中に潰瘍 として触れたのは,こ の小孔 と思わ
体上部か ら幽門部 にかけて嬬動運動が元進 して くるが ,
造影剤 の十二指腸へ の流出は遅延 してい る (図 2).
れ る。 肉眼的には,こ の隔壁は,粘 膜上皮で被われてお
り,指 で触れてみ ると柔軟性 に富んでいて,強 い炎症 と
手術所見 :上 腹部正中切開にて開腹 した。開腹創か ら
観察 しうる限 りでは,腹 腔内臓器 には異常を認 めない。
かび らんはない ように思われた。切除標本 の大弯 を切開
ことに 胃 ・に 指腸 は 葉膜面か らの観察 だけでは, 潰
瘍 ・悪性腫瘍などを疑える所見はみ られなかつた.し か
して胃粘膜面を観察す ると,胃 小弯 の 胃角部か らやや高
位 口側 に14×5 mllの
潰瘍疲痕がみ られた.
組織学的には,隔 壁の子Lの部分を中心 として,大 弯 ・
とっ 幽 門輸 には, 可動性 のあるやわ らかな 陥凹を触れ
た。 とくに幽門輪の肥厚はな く,炎 症性疲痕などもみ ら
前壁 ・小弯 ・後壁 の順 に全周にわたつてスライスを採取
し,HEな らびにマ ッソン染色を施行 し,検 鏡 した・隔
れなかつたが,術 中は この陥凹を幽門輪部 の浅 い潰瘍 と
判断 し,幽 門側 胃切除術 (BI)を 施行 した。
壁は ,胃 と十二指腸 との境 目である幽門輪 の部分に存在
している膜様物 で,粘 膜 す粘膜下筋板,粘 膜下組織か ら
病理組織学的所見 :肉 眼的所見 は,切 除 胃をそのまま
の状態 で十二指腸側か ら観察す ると,幽 門輪の部分 に一
な り,固 有筋層を欠 く・隔膜 の 胃側 は,幽 門腺粘膜 で,
十二指腸側は十二指腸粘膜 で構成 されてお り,隔 膜の中
図 3 隔 膜 の肉限所見 (十 二 指腸側 よ りみた)
小む
隔住
図 4 隔 壁 の組織像
皐 生上良
40(40)
隔壁形成 に よる成 人 の幽門狭窄症
央 の小孔 に相当す る部分で,は つ き りと両粘膜が境 され
ている (図4),こ の両粘膜 の境 目の部分 の上皮は再生上
日消外会誌 8巻
1号
図 6 隔 膜 以外 の幽門腺 (萎縮像 が著 明)
皮で この部分だけ粘膜筋板はない。 しか し,こ の再生上
皮の直下 には増殖 した結合織がみ られ,こ ん棒状 になつ
て先端 の小孔 の方向への強い増殖を示 してお り,こ の結
合繊内には,再 生 した小血管 も多数み られ る (図 5).隔
図 5 隔 膜 の先端小子し
部分 の組織像 (先端 は再生上
皮 のみ)
図 7 隔 膜 の十 二 指腸側,粘 膜基 底部 の願痕
膜 の 胃側 の幽門腺は,小 孔近 くでは幼若な細胞がみ られ
るほかは,全 般的に正常幽門部粘膜上皮 と比較 して過形
成を示 し,粘 膜筋板に も肥厚がみ られた。一方 ,隔 膜以
外 の部分 の幽門腺は,強 い萎縮性 胃炎 の像を示 し,腺 構
造が粗 で,腸 上皮化生 もみ られ ,上 皮の高 さも低 い (図
6).隔 膜 の十二指腸側 は 上述 の如 く十二 指腸腺 である
が,高 度 の過形成を しめ し,隔 膜 の基底部か ら中央 にか
けて小 さな疲痕 または結合織 の増生がみ とめ られ る (図
7).この他 の十二指腸側 の所見 としてはび らんや細胞浸
潤 の強 い ところもみ られた。 また,隔 膜 の存在す る幽門
輪 の筋構造 は正常 とは異な り,幽 門輪状筋層 としての盛
りあが りはみ られず,他 の 胃幽門部輪状筋 と同 じ厚 さで
い り込んで消失 している.こ の部分 の筋束 の一部には断
裂 もみ とめ られ る.
術後 の経過 :術後 の経過は良好 で,術 後20日目に退院
した,
文献的考察
症状な らびに診断 :発 症は男女差はな く,50才 か ら60
才台に多い傾向を示 している.症 状は,食 後 の腹部膨満
ある。 図4に み られ るよ うに,幽 門輪 に相当す る部分の
筋 の一部は,隔 膜 の先端部つ ま り小子との方向へひ き寄せ
感 ,嘔 吐が主であ り,と くに 1∼ 数年 の経過を と り次第
られた ように細 く立 ちあが り,隔 膜 のなかの結合織 には
で10年以上 の経過を とる症例 もみ られ るが,こ の場合は
にはげ しくなる嘔吐は必発の症状で ある。F区
吐が間歌的
1975年1月
‐
体重減少な ども加わ る。本症例 では,経 過中に腹痛を訴
える ことはなかつたが,一 時的に腹痛 のみ られた報告が
41(41)
らの報告 と大差ないが,Cerberの 分類 に よれば PyloriC
typeに属す る。 ただ,他 の報告 にみ られない ことで特徴
的な ことは,正 常 の場合み られ る幽門輪 としての筋束 の
あ る。幽門狭窄 の結果 ,胃 潰瘍 の合併例 も多 く,報 告 さ
も りあが りがみ られず,こ の部に相当す る胃と十二指腸
れた44例中17例 (38.6%)に み られ てい る.
``Constrictitt
de‐
の境 目の 胃輪状筋 は,隔 膜中央 に向つて細 くわずかなた
X線 所見については, BoCkusゆは
いる
fect"と して Prepyioric regionに
め
るとして
ちあが りをみせているにす ぎない ことであつた.
認 られ
隔膜 の成因について :成 困につ いては報告者 に よ りさ
が,CreedOnゆに よれば,著 明な目の拡張像がみ られ るだ
け で,明 らかに幽門狭窄 の原因 と考え られ るものは発見
で きない とし,症 例 に よつては,幽 門部 に不規則な陰影
を塁す る程度の所見 しか得 られない と述べ ている。その
他 の報告 で も,胃 拡張 ,嬬 動運動 の元進 ,造 影剤 の長時
間 の停滞などが主た る所見であ り,diaphragmの 存在を
確認 している症例はみ られない.術 前 X線 診断は,幽 門
産姿 ,十 二指腸潰瘍 ,幽 門部悪性腫場 のことが多い。本
症例 で も,術 前 のX線 フィルムか らは診断 は不 可能 であ
つ たが,腹 臥位 では著明な膏拡張があ り,立 位 にす ると
目の婦動 が 元進 し, また造影剤の排出 は きわめて悪 い
が,い つたん幽門でつ まつてか ら少 しずつ十二指腸 へ流
まざまで あるが, それ らの 代表的な ものに ついて述べ
る。SamesC)は,先 天性 の奇形に よる隔膜が もともとあ
つ て,こ のために幽門部 の筋強直が続 く結果 ,幽 門部粘
膜 の変形が強 くな り閉塞を起す よ うな隔膜 に成長す ると
した.Rotaの は,高 令者 (73才)で 胃の著明な拡張を伴
つた症例を経験 しているが,こ の症例 について,冒 運動
が十分であ る若い時代には 胃内容 の移送 は満足できる状
態 であつた ものが,年 令 とともに 胃運動が弱 くな り,そ
の結果 ,隔 膜に よる通過障害が強 く表面化 された もので
あ り,も ともと隔膜は先天的 に存在 していた と述べ てい
る。 この ような先天的奇形 と考 える報告者は多い.こ れ
らの先天説に対 して後天説を とるものもあ る.Desmond
れ てい くとい う所見は,本 症 の特徴 ではないか と考えて
い る。 また隔膜 の存在す る幽門輸 に一致 して,胃 壁 の一
部が輪状に収縮 した陰影欠損が どの フ ィルムに も必ずみ
and Swymertonめは, 成 人 における幽門肥厚 の 症例か
ら,幽門粘膜 のに 指腸 への脱出が比較的容易に起 り,そ
られ,こ れが,隔 膜 に相 当す る所見 と思われ る.こ の点
で,X線 検査時 に隔膜 による幽問狭窄 とい う観念が あれ
の結果 ,脱 出 した幽門粘膜に部分的な破壊や炎症を くり
返すため この部分 の腺再生機転が強 くな り,粘 膜増生に
ば,診 断が ある程度可能 であつたか も知れない と反省 し
てヽヽ
る.
よる狭窄や隔膜形成 の可能性を述べ ,幽 門部肥厚症例 に
は後天的に隔膜が形成 され るとした。 Rhindいは,報 告
病理組織像 :隔 膜 の存在す る部位 に よ り,Gerber"は
次 の 2つ の型 に分けた,1つ は幽 門輪直上にあるもので
経験 してお
者 のなかで最 も多 くの Castric Diaphragmを
.こ
によると,幽
の
報告
り, 7例 の症例 を報告 している
Pyloric typeと
上 口側 胃幽門
し,他 は幽門輪か ら l cm以
Antral
typeと
。
に
ので
上報告 された
した
文献
部 あるも
60%, Antral
44例の うちわけをみ ると,Pァ10:iC typeが
typeが40%で あ る.こ の両者については,組 織構造上 の
差はな く,両 者 とも隔膜 の中央附近 に小孔を持つてい る
は十二指腸
門輪直上 の ものは 胃偵1は幽門腺 ,十 二指腸偵」
腺 でできてお り,PrePγloricのものは,隔 膜 の両面 とも
幽門腺 であつた とい う・隔膜 の組織学的な所見 は症例 に
よつて異な り,小 さなび らんや潰場 のみとめ られ るもの
点 で共通 してい る.病 理組織学的報告 のあるものを整理
や,疲 痕 の存在す るものな どさまざまで あつた。 これ ら
の所見か ら, 隔膜の 発生に 関す る 仮説 として 5段 階の
してみ ると,隔 膜 は粘膜 と粘膜下層 とか らで きていて 胃
の回有筋層は含 ま れ て お らず ,中 央 の小孔 に相当す る
Stageを 考えた (図 8).す なわ ち,Stage Iは ,隔 膜 の
前段階 として, 線状潰瘍 が 幽門輪直上にある 状態で,
部分 の表面は,小 さなび らんや潰瘍形成が認め られてい
る。 中央 の小子との大 きさは,平 均 して 1∼ 4 mBくらいで
あ る.小 子L以外の隔膜は,表在性 胃炎像を示 し,二部 に疲
Stage Iは ,潰 場に伴つて,大 弯側粘膜がひき寄せ られ
た状態 で,一 部大弯側 には隔膜形成が み られ る。 Stage
常 の 胃粘膜あるいは十二指腸粘膜 とかわ りのない組織像
を示す.隔 膜周辺 の粘膜 について も同 じであるが,症 例
皿は,潰 瘍が疲痕治癒 した状態で,小 弯側 には結合織 の
増生 と潰瘍赦痕が認め られ る。隔膜 は Stage Iよりも成
,隔 膜
長 し,内 腔 はさらに狭 くなつてい るt Stage lvは
一
の 部に小 さな疲痕が認め られ るが ,隔 膜 は幽門輪全周
に よつては,粘 膜筋板 の肥厚 のほかに,胃 幽門部 の固有
私 どもの症例 も,これ
筋層の肥厚がみ られ る こともある。
にわたつて等 しく形成 され ,孔 の部分 は膜 の中央に位置
す る.Stage vは 隔膜 として完成 された状態 である。
痕 と思われ る結合織 の増生を持つ もの もあるが,ほ ぼ正
42(42)
隔壁形成 に よる成 人 の幽門狭窄症
図 8 Rhindの
I
か ら,先 天説では必ず しも納得 で きず ,む しろ後天説 と
しての成因を考える必要があろ う。 また,組 織学的所見
か らは,隔 膜 の存在す る幽門輪の筋構造が正常 と比較 し
て著 るしく異なる点が特徴的であつた。正常の幽門輪 の
1い
構造 については教室吉川 の詳細なデ ータが あ るが,こ
れに よれば,幽 円輪は,十 二指腸回有筋 とくらべ て平均
6倍 の厚 さを持つ とされている。本症例では,幽 門輪 の
厚 さは十二指腸固有筋層 の約 3倍 しかな く,し か も,一
部 には筋 の断裂があつて結合織 の増生 も強 い ことか ら,
幽門輪上に潰易のあつた ことが推測で きる, さらに,隔
膜 の十二指腸側 におけ る粘膜上皮 の 過形成, 疲 痕 の存
在 ,び らんの存在,胃 側 の粘膜筋板 の肥厚 と上皮の過形
成な どの所見を総合す ると,Rhindの 後天説では,潰 瘍
との因果関係が強調 されているが,本 症例 も幽門輪上 の
潰瘍 が,再 発 または増悪 と治癒を くり返 した結果 ,隔 膜
が形成 された と考えた い。
む す び
に
幽門輪上 発生 した,粘 膜 ・粘膜下層 ・粘膜筋板 とか
らなる隔膜に よ り,幽 門狭窄を呈 した成人の 1症 例を経
験 したので,そ の報告 と文献的考察を行つた.自 家経験
例については,臨 床経過な らびに組織学的所見か ら,先
天性の奇形ではな くて,後 天的に発生 した ことを強 く示
唆す るものである。 ことにその成因については,幽 門輪
の練状潰易 の治癒 の結果 と推測 した。術前診断は幽門狭
窄 とい うだけで,開 腹手術に踏 み切つたが ,開 腹時 も,
菱膜面には全 く変化 のない ことに よ り,こ のような幽門
狭窄例では,本 症 の存在 も考慮にいれて,胃 切開に よる
病変部 の確認が必要 であ ると考えてい る。
本論文 の要 旨は,第 127回日本消化器病学会関東甲信
1号
仮説 (1959)
I
これ らの諸説 について,私 どもの症例 を 検討 してみ
た。臨床経過が最近 1年 間 の腹部膨満 ・嘔吐であること
越地方会 にて発表 した。
日消外会議 8 巻
T
文
献
1 ) Dinitrお,C.Ker卸 述das,: Congenital in cOm‐
plete prepyloric diaPhragm in infants and
children,Surgery 75:69略
94ぅ1974.
畑bot,G.: MucOsal Diaphratt Of Pylo五 c
一
Antruln,Arch.Mal.Appar.Dig.44:116み
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