平成25年度 卒業論文 内容梗概 電気電子工学科 高指数面基板上InAs量子ドットの光学特性評価 研究題目 氏 名 松原 修三 [井須 研究室] はじめに 私の研究室では、量子ドット(QD)を利得媒質として利用した二波長面発光レーザでの二次非線形光学効果 である差周波発生によるテラヘルツ波発生を目指している。これには、大きな二次非線形性を持つ GaAs 高 指数面上で発光特性の強い QD を作製する必要がある。 (311)B GaAs 基板上に InAs QD の成長を行った試 料では QD の合体(コアレッセンス)や、WL(濡れ層)からの発光強度が QD の発光強度よりも強いという報告 があった。また(100)GaAs 基板上で成長をした QD に AlAs cap 層を導入することで WL を減らし[1]、また QD の発光を強くできるという報告[2]があった。本研究では、QD のコアレッセンスを無くすことを目的とした 試料、 (311)B 基板上で成長した QD に AlAs cap 層を導入した試料を作製し、AFM による基板の表面状態、 また PL 測定よる QD の発光特性の評価を行った。 試料作製 分子線エピタキシー(MBE)法を用いて自己組織化InAs QDの作製を行った。InAs供給量をQD形成の臨界膜厚 (2.1ML) に 近 い 値 で あ る 2.3ML と し て (311)B GaAs 基 板 上 に 、 QD の 成 長 時 の 基 板 温 度 (Ts) を 470 ℃ ,500 ℃ ,530 ℃ で 成 長 し た 試 料 を 作 製 し た 。 ま た 、 Ts を 500 ℃ と し AlAs cap 層 の 膜 厚 を 0.5ML,1.0ML,1.5MLで成長した試料を作製した。 原子間力顕微鏡(AFM)による評価 図1に(311)B GaAs基板上にTs=500℃で成長したQDのAFM像を示す。図1(a)がAlAs cap層を導入していない 試料、図1(b)が0.5ML AlAs cap層を導入した試料のAFM図である。温度変化を行った試料、またAlAs cap 層の膜厚を変えた試料でもQDのコアレッセンスは見られなかった。Ts=500℃でのAlAs cap層を導入してい ない試料のドット密度は2.14×1010/cm2であり、QDに0.5ML AlAs cap層を導入した試料のドット密度は5.53 ×1010/cm2であった。0.5ML AlAs cap層を導入することにより密度が高くなっていた。 フォトルミネッセンス測定(PL測定)による評価 図2に(311)B GaAs基板上にTs=500℃で成長させたQDの4KでのPL発光スペクトルを示す。AlAs capの膜厚依 存性があり、一番強い発光強度を示したのは0.5ML AlAs cap層を導入した試料であった。図中の黒の実線 がAlAs cap層を導入していない試料、赤の実線が0.5ML AlAs cap層を導入した試料の発光スペクトルであ る。AlAs capの膜厚依存性があり、AlAs cap層を導入していない試料の発光スペクトルはシャープな形状 であり、WLからの発光を示していると考えられる。また、0.5ML AlAs cap層を導入した試料の発光スペク トルはブロードな形状であり、QDの発光を示していると考えられる。 まとめ InAs供給量をQD形成の臨界膜厚に近い値でQDの成長を行うことにより,温度変化を行った試料、AlAs cap の膜厚量を変えた試料でのQDのコアレッセンスがなくなった。 (311)B GaAs基板上で成長したQDに0.5ML AlAs cap層を導入することによりQDの発光が強くなり、またドッ ト密度も増した。QDにAlAs cap層を導入することは、(311)B GaAs基板上での発光特性が高いQDを作製るこ とが出来る有効な方法であることが分かった。 (b)AlAs cap(0.5ML) AlAs:0.5ML AlAs:無 PL Intensity (arb.units) (a)AlAs cap(無) 800 図 1: 1×1μm の AFM 像 [1] V.shchukin et al.Phys.Rev.Left 110,176101 (2013) 900 1000 Wavelength(nm) 図 2:4K での PL の発光スペクトル [2] F.K.Tutu et al.Appl.Phys.Left 102,163907 (2013)
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