熊本大学工学部附属工学研究機器センター報告 1/2 39-38 −第39号− pn 接合を利用したキャリアライフタイム測定による拡散防止膜 の評価 大学院自然科学研究科 教授 久保田 弘 工学部電気システム工学科 学部学生 溝上隆之 大学院自然科学研究科 前期課程 小村俊一郎 大学院自然科学研究科 後期課程 居村史人 Si デバイスに対する配線材料として,Al よりも微細化による配線抵抗の増大に有利な Cu が適 用されている.しかし,Cu は Si デバイスにおける金属汚染の代表的な材料であるため配線材料 として Si デバイスに適用するには,Cu 原子 Si 基板間あるいは層間絶縁膜の相互拡散を防ぐため の拡散防止膜が必要となる. これまで過剰キャリアの再結合モデル(SRH モデル)によりキャリアライフタイムを変化させる ことによってデバイス性能のシミュレーション確認することができた.[1]本研究ではキャリアラ イフタイムの測定による拡散防止膜の評価を提案する. pn 接合に逆方向パルス電圧を印加すると,電子,正孔はそれぞれ p 領域内,n 領域内で伝導し ている間に再結合する.このため,再結合までにかかる時間,すなわちキャリアライフタイムを 測定することが可能となる.これは逆方向電圧を印加したときの pn 接合における少数キャリアの 蓄積効果を利用している.ここで,逆方向電流の緩和時間を tsd,キャリアライフタイムを τp,順 方向電流を If,逆方向電流を Ir とすると,その関係は(1)のようになる. If tsd = τ p erf −1 I +I r f 2 ⋅ ⋅ ⋅ (1) Vpp=10V f=20kHz R1 20MΩ 図1.測定回路 vout 60 15 60 10 40 10 40 20 5 20 0 0 5 If 0 0 tsd Ir -5 -20 Voltage [V] Pulse Generator vin 15 Current [mA] R2 510Ω Voltage [V] i -5 -20 -40 -10 -40 -10 -15 0.0 -60 -15 0.0 0.4 0.8 1.2 Time [µs] 1.6 2.0 図2.トランジスタ(ベース・ エミッタ間)の出力波形 Current [mA] この(1)式により pn 接合のキャリアライフタイムを算出することができる.[2] 測定回路を図 1 に示す.パルスジェネレータによりパルス電圧(Vpp=10V,周波数 20kHz)を印加 する.印加電圧 vin,pn 接合間に掛かる電圧 vout,さらに電流プローブより電流 i の各波形をオシ ロスコープによって観測する.ここで pn 接合には既製品バイポーラトランジスタ(2SC1317,npn 型) と作製 TEG(拡散防止膜に TiN,配線電極に Cu を使用し,700℃でアニール処理を行った pn 接合) を用いた. 図 2 に既製品のバイポーラトランジスタのベース,エミッタ間の pn 接合で実験を行った結果を 示す.また,図 3 に作製した pn 接合デバイスで実験を行った結果を示す.既製品のバイポーラト ランジスタではキャリアライフタイムを求めることができた.しかし,作製した pn 接合デバイス では緩和時間 tsd の観測が困難であった. このような実験方法によって tsd の測定が可能になると,キャリアライフタイムと作製した pn 接合デバイスの熱処理温度を対応させることにより拡散防止膜の性能評価を行うことが可能にな ると考えられる. -60 0.4 0.8 1.2 Time [µs] 1.6 2.0 図3.作製した pn 接合デバ イスの出力波形 熊本大学工学部附属工学研究機器センター報告 2/2 参考文献 [1] 小村俊一郎 他,第 67 回応用物理学関係連合講演会 講演番号 31p-ZN-6 [2] Ben G.Streetman, SOLID STATE ELECTRONIC DEVICES, pp. 170∼172, 1995. −第39号−
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