最終処分場浸出水の pH 低減化 資源・廃棄物研究室 10T7-017 斉藤 指導教員 大将 宮脇健太郎 1. 研究背景・目的 一般廃棄物において、最終処分場へ搬入される埋立廃棄物の約60%が、可燃ごみの焼却処理によ って生じる焼却残渣である。焼却残渣は、焼却灰とも呼ばれている。焼却灰には、水酸化カルシウム が多く含まれており、その水酸化カルシウムが埋立地からの高い pH 浸出水の主な原因となっている。 山間埋立地からの浸出水を排水するには、pH5.8~8.6、海面埋立地からの浸出水を排出するには pH5.0~9.0 という排水基準に合致しなければならない。そのため埋立終了後から安定するまで長期間 にわたり浸出水処理を行う必要がある。現在では、人口密集地に隣接した埋立地もあり、埋立地を廃 止するまでの期間を短縮することは極めて重要な課題である。高 pH の浸出水を埋立地の集排水管近 傍で空気に接触させ、空気中の二酸化炭素を溶け込ませることにより生じる中和反応に着目した。本 研究では、埋立地において排水基準まで高 pH の浸出水を低下させることのできる条件を把握するこ とを目的とし、カラムに建設資材として利用されている砕石を充填し、最終処分場排出水を通過させ 集排水管近傍を模擬した中和実験をした。 2. 実験方法 本研究では、高 pH の供給液を空気に接触させ、二酸化炭素を溶け込 ませることによる中和反応に着目している為、建設資材として用いられ る砕石の粒径 9.5~16mm 程度にふるい分けされた砕石を使用し、直径 9cm、長さ 50cm のカラムに充填し高さを 20cm とした。カラム内部の 二酸化炭素濃度を一定に保つため、エアーポンプを用いて空気を供給し た。供給液として最終処分場排出水 A,B を用意し、カラムの流入量(降 雨量 50~800mm/日換算)を段階的に変化させ、ポンプを調整し、最終処 分場排出水(実測ApH10.1、BpH10.9)をカラム上部から滴下し、pH に 変化が見られなくなった状態を定常とし、破砕層の反応が定常状態と考 えられる時間にカラム下部から採水した。原子吸光で測定する場合は前 処理として酸を添加し 700wの電子レンジで1分間加熱処理を行い 0.45μm メンブレンフィルターでろ過後各濃度の測定を行った。測定項目としては、pH、無機炭素 (IC)、Ca、K、Na濃度の測定を行った。今回の実験では二酸化炭素による中和反応に着目している ため、pH、IC については採水後ただちに測定を行った。 写真1に今回使用した実験器具を示す。 12 ↓B 実濃度 11 図1に各降雨量別の pH の関係示す。 10 pH 3.結果・考察 ↑A 実濃度 9 8 降雨量 50mm/日∼400mm/日の供給液では排水基準であ 7 る pH8.6 を達成することが確認できた。500mm/日∼ 6 A 0 800mm/日では中和反応は確認されたが、排水基準まで 200 400 図1 図2に各降雨量別の A の供給液の IC 濃度を示す。A 8 IC(mg/L) 7 6 図2 IC(A 定常) 5 4 3 2 1 a 0 を示したと考えられる。実濃度は 516mg/l であった。 0 100 200 300 400 500 B 600 700 800 900 降雨量(mm/日) Ca の測定値は 50mm/日で高い値となり、200mm/日∼ 図2 800mm/日ではほぼ一定となった。50mm/日で高い値 IC(A 定常) 14 12 がでた理由として流量が小さく二酸化炭素が十分に溶 10 IC(mg/L) 図5各降雨量別の Ca(B の供給液)濃度を示す。実 pH 9 大きい、十分な CO₂が吸収できないため IC は低い値 け込んだと考えられる。 1000 10 の供給液での IC 濃度はほぼ一定の値となった。 が小さい程、層内滞留時間が長いと考えられ、流量が 800 降雨量(mm/日) は中和されなかった。 図 3 に各降雨量別の IC(B の供給液)濃度を示す。流量 600 B 8 6 4 濃度は 750mm/日であった。B の供給液では、Ca 濃度 2 B定常1 B定常2 0 はほぼ一定の値になった。A と B の供給液で Ca の濃 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 降雨量(mm/日) 度に差があるのは、A と B で pH に差があるためと考 図 3 IC(B 定常) えられる。Ca 濃度が実濃度まで達しなかったのはカラ 800 ム内の砕石に付着したと考えられる。 700 Ca(mg/L) 600 まとめ 500 400 300 200 100 pH は流量が大きくなるにつれて高くなる傾向が見 Aろ過 0 0 100 200 300 られた。IC については、流量が大きくなるにつれて低 500 600 A未ろ過 700 800 900 降雨量(mm/日) 図4 Ca(A の供給液) くなる傾向が見られた。これらの結果より、流量が小 800 さい程、カラム内での滞留時間が長くなるので、二酸 700 化炭素に接触する時間が長くなるほど中和されること 500 600 Ca(mg/L) が確認できた。 400 400 300 200 100 Bろ過 B未ろ過 0 0 100 200 300 400 500 600 700 降雨量(mm/日) 図5 Ca(B の供給液) 800 900
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