NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title Bacillus subtilisの胞子発芽に対する環境条件,pH,滲透圧及び嫌気条件 の影響について Author(s) 銭谷, 武平 Citation 長崎大学水産学部研究報告, v.7, pp.61-64; 1959 Issue Date 1958-10-31 URL http://hdl.handle.net/10069/31893 Right This document is downloaded at: 2015-01-31T20:49:14Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp Bacillus subtilis の胞 子 発芽 に対 す る環境 条 件, pH,滲 透 圧 及 び嫌 気条 件 の影響 に つい て 銭 On Some Spore 谷 Environmental Germination Buhei 武平 Factors which of Bacillus Affect the subtilis ZENITANT On the germinationof Bacillus sulbtilis spores, some environmental factors,especiallygermination pH, osmoticpressureand anaerobicconditionwerestudied. The followingresultswere obtained. 1. Sporegermination was observedto have more than 90 per cent germinationrate betweenpH 4.5 to. 7,5 , whilein the presenceof acetateor sodiumchloridegerminationpH in acidicside was shifted to aboutpH 5.5 (Figure 1). 2. Remarkableinhibitoryeffecton spore germinationwas not observedin a solutionof 10% sodium. chlorideor of 40% glucose by the decreaseof optical densityof spore suspensionas criteria of germination(Figure2). 3. Underanaerobicconditionsmaintainedwith 0.5% sodium thioglycolate , Bacillus subtilis spore germinatedrapidlyat a higher germinationrate in the first hour (Table 1). 62 既報の研究方法に拠り胞子濃度は乾燥重量1.5 kee 酸緩衝液によって調節した。前者の場合Figure l のようにpH 5∼7の発芽域を示したが後者では 酸性域がpH:6に境界を有するように発芽pH域 は狭くなった。また栄養細胞になり呼吸を開始す るのはpH 7前後が最も速かった■. ii・耐熱性を基に測定した各pH域における発 芽率について:一 齢 60⑳⑳ ︻δ量g嘱套畿﹄。2老逮 ・n9/mlとしpHはMcllVain燐酸緩衝液または酢 03t−S一一g5一一一st一一:6 7 8 各pHで胞子を発芽させてから加熱して発芽細 胞を殺し未発芽胞子を直接平板培養法で測定した. PH Figure 1. Effect of pH on the spore germina− 胞子濃度は2×ユO’i/6.2malとした。30。C,3時間 tio1ユ of B(工Cil∼:乙e5 5乙e6ti;/iSP 、培養し発芽させた後にその1 mlをO。ユM燐酸緩 A and B・.・:.Vlcllvain phospha{e buffer solution. 衝液pヨ7.0,9ml中に注加(予め650Cに保温)7 C and D・.・Acetate buffer so]ution. The change 30分間加熱して発芽細胞を殺し再びそのlmlをと in optical density (A and T)) and the loss of heaL resistance (B and C) are used as an index り平板培養(3000,48時間)によって生残胞子から of spore gennination. の集落数を測定した。耐熱性に拠ってもMc正IVain 緩衝液を使用した場合は前実験の結果と発芽pH域はよく一致したが酢酸緩衝液の場合は濁度変化に基づ いた時よりも若干酸性側に寄った。 これらの結果から胞子発芽のpH:域は緩衝液の種類によって相違するが増殖pH域に比較し一層酸性 側においてもなお発芽する。即ち発芽は増殖が全くおきないような条件でもおこり得るようである。 2.胞子発芽と滲透圧との関係について 胞子発芽と滲透圧との関係については殆ど研究されていない。僅かにCurran9)がB. myc・idesにつ いては比較的低い滲透圧では発芽が急速且つ完全に行われるが36∼46気圧では抑制されると報告している にすぎない。 P}{7.0の、’lcltAaln燐酸緩衝液に所要濃度の食塩または葡萄糖を添加し胞子懸濁液の濁度変化を基に 比較した結果はFigure 2の如くである。食塩濃度が高い時は発芽開始が一時抑制されるに比較し葡萄糖 はかなり高濃度でも阻害効果を示 獣10◎ e︿ L喬こ、 9︵H。O£a戸蓉℃Uo。聴萬 90 さない.従って枯草菌胞子の発芽 に対しては供試濃度の範囲内では 面しい阻止効果はないようである. ’こζ、 鵠 70 しかしながら各pHのMclivain燐 ltN ぴも lc1sX Naci 酸緩衝液に5%食塩または30%葡 40% G1ucese 萄糖を添加した場合は:Figure 3の 凝獣 Centrcl K ’㌦一酌 蝸ヨ一一一一 60 ツQ%Giucose )〉.一.==/一一’一一一 5% NaCl fl.:tr−1一一’一一一;一.一.2.5%NaCl 50 lo;g orucose 60 120 i80 1ncubation−Time (Min.) 如く興味ある結果が得られた.5 %食塩含有緩衝液では恰も酢酸緩 衝液と同様に発芽pH域が狭くな る.30%葡萄糖添加の場合は食塩 Figure 2. Effect on osmotic pregsure on the 含有緩衝液と同様の傾向がpH5,5 spore germination of B‘tcillus sabti/is. ∼7に見られるが全般的には広範 囲発芽pH:域を示した. 枯草菌胞子の発芽pH:域は緩衝液の種類によって相違したが同一燐酸緩衝液でも共存する食塩または糖類 の濃度によっても影響をうけるようである., 3.溶媒処理した胞子の発芽に対する影響について 枯草菌胞子の発芽pH域は緩衝液の種類,同一緩衝液でも共存ずる塩類叉は葡萄糖の濃度の影響によつ 63 3 hrs. LirJ ト て広狭二様の範囲を示した.この相違の原因が何に 由来するか,先づ胞子の構造特に胞子表面の脂質の 影響が考えられるので溶媒処理した胞子についてそ の懸濁液の濁度減少を基に発芽率を比較して見た. 60 ⑳ 塾◎ ξ網蓉嘱雪蕊も㊤5H戦 80 叢 や此 時 hrsi e 胞子懸濁液6mlを遠心分離して沈澱した胞子にメ 攣一 タノール12mtを加え充分二二して30分間放置する 操作を2回反復する。次にメタノール・クロロホル ム混液(1:1)30mlを加え53∼55。Cに2時間放 置する。溶媒を遠心除去してから蒸溜水で3回胞子 O 3 4 5 6 7 8 を洗画する。胞子塊は疏水性になり固着しているの pH で集塊をよく砕きホモゲナイザーで更に均質にした Figure 3. tlL coniparison of the rate of germi一 後,原話に復してから加熱活性化し前同様に実験し ’nation in various Tl)H between 5% 1 aCl and 30% g{ucose containing media (Nl()llvain phos− phate buffer). o…5%1tsTocl, ttlx…30% Glucftf e. た。Fig. ure 4に図示した如くこの処理によってpH: 範囲は狭くなり酢酸緩滋雨や5%食塩含有Mcllva− in緩衝液と同様の発芽pH域を示した。従って溶媒 によって除去される脂質成分が発芽の広範回pH:域を示すために役立っているように思われる。 4.嫌気条件下における胞子の発芽について 固形食品の内部に混在する胞子は比較的に低酸素 G◎ g。個聴三月おb£旧○ ㊤昇⇔ 分圧下にあると考えられ,この様な嫌気条件におい ても好気性細菌の胞子が発芽するか否かについて試 験した。試験培地はCasate(カゼイントリプシン消 化物)O.7%,酵母エキス0.5%,葡萄糖0.5%及び K2HI)ぐ)40、5%にチオグリコレーートO.5%とレザズ リソO、Ol%を加えpH 7.3とLIOnil宛を試験管に 60 鼻o oo 分注殺菌し,流動パラフィンを重層させる。3GOC e に放置し予め加熱活性化した胞子懸濁液を殺菌ピペ 3 為 5 6 ? 8 ットで管底迄届かせて加える.300Cで1,2及び3 時間培養した後,650C保温中の0.01M燐酸緩衝液 齢 pH Figure 4・ Thc rate・f ger・舳ation of spores ・(pH 7.0)gml中に試験液lrn1を加え 30分開加 treated with methanol and chloroform 皿ixture 熱して発芽細胞を殺す。未発芽胞子は普通平板法に at various pH of Mcllvain phosphate buffer. よって測定する.Table 1の如く枯草菌胞子及び澱 粉から分離したBaci“αs属細菌1株の胞子はこの試験条件において1時間後に90%以上の発芽率を示し Table 1. The spore germination of Bacildus subtigis and ’B.s p. under anaerobic conditions. ExP・ 1 Exp. 2 Er p. 3 1ncubation−Time B.subtilis Bacillas sp. Bacillus sp. O m塁n. 1910,000* 980,000 980,000 60 !! 450,000 22,000 13,000 120 !! 100,000 8,400 10,000 180 ク 10,000 6,480 9,800 Anaerobic conditions vg’ere maintained with O.5% sodium thioglycolate. * indicates viable spores. 64 た・Ehは測定していないがレザズリンは接種時に僅かに変色するのみでその後は無色を保ち, Ehは約一 〇.3Vに相当するようでlo)嫌気度は充分に保持されていると思う。この結果及びRoth&Liveleyの研 究LO)から見て好気菌の胞子発芽には酸素の影響は殆どないと考えられる。 考 察 枯草菌胞子は比較的広範囲のpH域に亘って発芽し,また滲透圧や嫌気条件も普通の食品に於けるような 条件では殆ど発芽阻止の効果は少ない。従って胞子発芽を直接阻害する様に環境条件を変更し食品保蔵を 計ることは困難のようでoutgowth以降の発育を阻害ずる方法に依らねぽなるまい.特に発芽pH域が広狭 両方の場合がある事実は溶媒処理の効果と併せ枯草菌胞子は少なくとも二層の障壁で保護されていること を示唆し,溶媒によって除去される脂質成分と食塩・酢酸によって発芽pH域が狭少になるように1価陰 イオンとが密接に関係しているように思われる.胞子膜の構造についてはB.megαtheriurnの複層膜, B.cere“sの単層あるいは三重膜が超節片によって観察されているが枯草菌胞子の発芽pH域の変化から 見て脂質性の胞子膜と更に内部にも外部環境の影響の少ない膜質とからなっているものと想像される.ま たRoth&Live}ey L。)と同様に枯草菌胞子が嫌気条件下でもなお発芽し得ることを確認したが発芽に伴う 酸素吸収との関連性については今後の研究に侯ちたい. 。 括 総 Bαcillus subtieisの胞子発芽に対する環境条条件の影響について試験し,広範囲pH4.5∼7.5で90%以 上の発芽率を示すが酢酸,食塩の共存下ではその範囲が狭くなること及び比較的高濃度の食塩または葡萄 糖も発芽自体には影響の少ないことを確かめた.また嫌気下においても短時問内に高率の発芽率を示すζ とを知った. 本研究は内地留学中に実施したもので終始懇篤な指導を与えられた九大農学部富安行雄教授に対し深謝. の意を表する. 文 献 1) ’il[ALvoRgoN, 1/i[., and B. CHuRcH : BacL.Rev. . 21. 112 (1957) 2) OcxlNsKy, E. L., and W. W. UMBRE[T: A’n lntroduction to [Bacteriat hysiology. p. 370. (1954> 3)木俣 正夫= 日本水産学雑誌,16(12),52(1951) 井野 米次:腐敗研究所報告,7,31(1954) 清田,高尾.加藤:醗酵工学雑誌,35,142(1957) 4) 銭谷武平:長崎大学水産学部研究報告N・・7.53(1958) 5) CooK, R. P. : Zentral. Bakt., 1, 122, 329 (1931) 6) IFA.BエAN, F. v▽.,and:BRYAN. c. s:∫. Bact・.26,543 (1933) 7) ’KNAysi, G. : J. [Bact., 49. 473 (1945) 8) CHuRcH, B. D., H. HALvoRsoN and H. O. HALvoRsoay : J. Bact. 9) CuRRAts, H. R. : J. Bact., 21, 197 (1931) IO) RoTH, N G., and LivELy, D. H. : J. Bact., 71, 162 (1955) 68, 393 (1954) ’
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