第 49 回日本理学療法学術大会 (横浜) 5 月 31 日 (土)14 : 50∼15 : 40 第 4 会場 (3F 302)【口述 基礎!人体構造・機能情報学 4】 1068 α1 受容体活性化による収縮に関与する受容体サブタイプはラットの膝窩動脈と 膝窩静脈で異なっている 大塚 亮1),柴山 靖1,2),小山 明男3),梶栗 潤子1),伊藤 猛雄1) 1) 名古屋市立大学大学院医学研究科 薬理学,2)ユマニテク医療福祉大学校, 名古屋大学大学院医学研究科 血管外科 3) key words 膝窩動脈・膝窩静脈・a アドレナリン受容体サブタイプ 【はじめに,目的】交感神経より遊離されるノルアドレナリン(NAd)は血管平滑筋細胞の a! アドレナリン受容体(a! AR)と AR b! AR に作用することにより,血管のトーヌスを調節している。血管平滑筋細胞において,NAd が活性化する a! AR には a1! AR の 2 種があり,さらに,a1! AR は a1A! AR,a1B! AR の a1D! AR の 3 種のサブタイプよりなる。全身の種々の臓器に分布 と a2 ! する血管の平滑筋細胞に存在するこれらのサブタイプ受容体の種類は,その臓器によって異なっており,交感神経による臓器特 異的な血流分配を調節している。また,糖尿病を発症した重症下肢虚血疾患の患者では,a! AR による下肢血管の収縮反応が亢 進しているとの報告もあり,種々の臓器での血管収縮に関与している a 受容体サブタイプを明らかにすることは,循環器疾患患 者の治療やリハビリテーション法を考える上で極めて重要である。しかしながら,種々の下肢疾患病態と下肢血管に局在する AR サブタイプの機能変化との関係は未だ不明な点が多い。これらの点を明らかにするため,我々は,正常ラットの膝窩動脈お AR 活性化による収縮に関与するサブタイプ受容体について検討した。 よび膝窩静脈における a1! 【方法】 実験には,8! 9 週齢の Wistar 系雄性ラット(体重 263±21 g)を使用した。ラットをセボフルレンにて麻酔後,腸骨動脈切断に より瀉血,致死させた。その後,膝窩動脈・膝窩静脈を摘出し,実体顕微鏡下にてステンレスピンで血管の内皮細胞を注意深く 除去し,内皮除去輪状標本を作製した。標本を 37℃ に保温し,5% CO2+95% O2 を通気した張力測定用チャンバーにセットし, 等尺性張力を測定した。全ての実験はグアネチジン(5 mM:交感神経からの NAd 遊離を阻害するため)とジクロフェナク(3 mM:プロスタグランジン合成阻害のため) を含む Krebs 溶液中で行った。まず,過剰 K+(70 mM)による収縮反応を記録した。 AR アゴニストであるフェニレフリン (PE : 10!7! 10!5 M) を累積投与しコントロールとしての濃度依存性反応を取得後, 次に,a1! 765,314(1 nM,3 a1A 選択的アンタゴニストであるシロドシン(5 pM,10 pM,30 pM),a1B 選択的アンタゴニストである L! nM,10 nM) ,または a1D 選択的アンタゴニストである BMY7378(10 nM,30 nM,100 nM)存在下で PE の濃度依存性反応を 取得した。 【倫理的配慮,説明と同意】 本実験は名古屋市立大学動物実験倫理委員会の規定に従って行った。 【結果】 溶液と PE(10 µM)は膝窩動脈と膝窩静脈をともに収縮させたが,その発生張力は膝窩静脈より膝窩動脈が大きかった 高 K+! 。シロドシン(5 pM,10 pM,30 pM)は,膝窩動脈での PE 収縮を有意に抑制したが(P <0.001) ,膝窩静脈での PE (P <0.001) 。一方,L! 765,314(1 nM,3 nM,10 nM)は,膝窩静脈での PE 収縮を 1nM から濃度依 収縮に影響を与えなかった(P >0.05) 存性に抑制した(P <0.001)が,膝窩動脈での PE 収縮には 10 nM でも影響を与えなかった。BMY7378(10 nM,30 nM,100 。 nM)は,膝窩動脈と膝窩静脈での PE 収縮をともに抑制した(P <0.001) 【考察】 AR の活性化は収縮を発生させるが,一方,a2! AR 第 48 回学術大会において,ラット膝窩動脈と膝窩静脈平滑筋における a1! AR による収縮に関与する の活性化は収縮を発生させないことを報告した。今回,我々は,膝窩動脈と膝窩静脈平滑筋での a1! AR サブタイプが異なっていることを明らかにした。 a1 ! 収縮を抑制したが,膝窩静脈平滑筋での PE! 収縮に影響を与え a1A 選択的アンタゴニストのシロドシンは膝窩動脈平滑筋で PE! 765,314 は,膝窩静脈平滑筋でのみ PE 収縮を抑制し,更に,a1D 選択的アンタ なかった。一方,a1B 選択的アンタゴニストの L! ゴニストである BMY7378 は,膝窩動脈と膝窩静脈平滑筋での PE 収縮をともに抑制した。これらの結果より,ラット膝窩動脈 AR と a1D! AR が, 膝窩静脈平滑筋では a1B! AR と a1D! AR が PE 収縮に関与していることが明らかとなった。 平滑筋では, a1A! 以上のことより,膝窩動脈と膝窩静脈は異なった a! AR サブタイプを使用して末梢循環の調節を行っている可能性が考えられ る。 【理学療法学研究としての意義】 リハビリテーションによる身体構造・機能の向上を考えていく上で,血管トーヌスの調節機能を理解することは重要であると 考えられ,本研究成果はその基礎的な知見を提供するものと考えられる。
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