次亜塩素酸ナトリウム換算濃度について

検量線を利用した亜塩素酸水の酸化力:次亜塩素酸ナトリウム換算濃度について
次亜塩素酸ナトリウムの酸化力は、遊離塩素と呼ばれている他の物質と反応しやすく殺菌や除菌や抗ウイルス作
用を発揮する塩素として表わされ、この遊離塩素の濃度は、次亜塩素酸ナトリウムが不安定な薬剤であるが故に、
有効塩素濃度(ヨードカリ滴定法による)と、ほぼ一致しており、この遊離塩素の測定方法としましては、DPD指示
薬等による発色反応(510nm)が一般的に用いられています。
それに対して、亜塩素酸水は、不安定な亜塩素酸(HClO2)を、(H+・ClO2-⇔HClO2)という化学的平衡関係を保
つことが出来るサイクル反応によって、安定している物質であり、亜塩素酸水の濃度を示す亜塩素酸の濃度は、亜
塩素酸水の酸化力とイーコールの関係ではありません。その為、亜塩素酸水の殺菌力を正しく判定するためには、
亜塩素酸水の酸化力を知る必要があります。
但し、亜塩素酸水の酸化力は、何かを物差しにして表さなければ、どのくらいの効果があるのかが判りません。
そこで、次亜塩素酸ナトリウムが、有効塩素濃度と、遊離塩素濃度が同じ値になることを利用して、この次亜塩素
酸ナトリウムの有効塩素濃度1ppmの酸化力を1と定め、亜塩素酸水の酸化力を、次亜塩素酸ナトリウムの何
ppmの酸化力と同じ酸化力をもつのか?ということをわかりやすく表現するために、“次亜塩素酸ナトリウム換算濃
度”という名称を付けて、表すことにしました。尚、この“次亜塩素酸ナトリウム換算濃度”が1であれば、その酸化力
は、次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度:1ppmに相当するということになります。
又、この“次亜塩素酸ナトリウム換算濃度”の測定方法につきましては、次亜塩素酸ナトリウムの遊離塩素を測定
するのに使われているDPD法を基に、亜塩素酸水に適応させたDPD変法(三慶法(510nm))を定め、この方法で求
めた値と、現場という環境下で広く用いられておりますヨウ化カリウムでんぷん法(590nm)で求めた値、この2つの測定
方法による値の整合性を確認し、その上で、一つに纏めた値を“次亜塩素酸ナトリウム換算濃度:OX値”として、
表すことにしました。
以下に、この2つの測定方法について提示させて頂きます。
『次亜塩素酸ナトリウムを用いた検量線の作成方法』
1.装置及び調整法
測定装置としては、分光光度計を用いる。
あらかじめ、分光光度計に添付されている操作方法により装置を調整した後、波長及び透過率等を試験に適合
することを前提として確認する。
尚、波長は、波長校正用光学フィルターを用いて、それぞれのフィルターに添付されている試験成績書の試験条件
で、試験成績書に示されている基準値の波長付近における透過率を測定し、この透過率が、極小値を示す波長
を読み取る。
但し、試験を行うとき、その測定波長と基準値の波長のずれは±0.5nm以内とし、測定は3回繰り返して行うことと
し、その測定値はいずれも平均値±0.2nm以内であることとし、透過率又は吸光度は、透過率校正用光学フィル
ターを用いて、それぞれのフィルターに添付されている試験成績書の試験条件で、試験成績書に示されている基準
値の波長における透過率を読み取る。
又、試験を行うとき、その測定透過率と、基準透過率のずれは試験成績書に示されている相対精度の上限値及
び下限値に、それぞれ1%を加えた値以内であることとし、測定は3回繰り返して行い、吸光度の測定値(あるいは
透過率の測定値を吸光度に換算した値)は、吸光度が0.500以下のときは、いずれも平均値±0.002以内にあり、
吸光度が0.500を超えるときは、いずれも平均値±0.004以内にあることを確認する。
尚、同一波長において透過率の異なる透過率校生用光学フィルターの複数枚を用いて、透過率が直線を描くこと
を確認しておくことが望ましい。
2.操作法
あらかじめ調整した装置を用い、光源、検出器、装置の測定モード、測定波長又は測定波長範囲、スペクトル幅
及び波長走査速度などを選択し、設定する。
次に、装置を起動させ一定時間放置し、装置が安定に作動することを確認する。
又、試料光路にシャッターを入れて光を遮切り、測定波長又は測定波長範囲での透過率の指示値が、ゼロ%に
なるように調整する。
更に又、シャッターを除き、測定波長又は測定波長範囲での透過率の指示値が100%(又は吸光度が、ゼロ%)
になるように調整し、対照液などを入れたセルを光路に入れる。
対照液などを入れたセルを、試料光路及び対照光路に置き、透過率の指示値を 100%(又は吸光度を、ゼロ%)
に調整し、対照液には、規定するもののほか、試験に用いた溶媒を用いる。
ⅰ)《DPD変法(三慶法)》
N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン硫酸塩 1.0g を乳鉢で粉砕し、これに無水硫酸ナトリウム 24g を加え、結晶粒を
粉砕しない程度に均一に混和したものを“指示薬”とする。
リン酸二水素カリウム 13.61g にイオン交換水(又は蒸留水)加え、500mL にメスアップし溶解させ、“リン酸二水素
カリウム溶液”とする。
水酸化ナトリウム 3.99g にイオン交換水(又は蒸留水)を加え、500mL にメスアップし溶解させ、“水酸化ナトリウム
溶液“とする。
リン酸二水素カリウム溶液 100mL と、水酸化ナトリウム溶液 35.4mL を加え、pH メーターを用いて、pH6.5 になる
様に、リン酸二水素カリウム溶液、又は、水酸化ナトリウム溶液で調整した液を“リン酸緩衝液”とする。
次亜塩素酸ナトリウムを、イオン交換水(蒸留水)を用いて、遊離塩素濃度として 100ppm に調製し、“基準液”と
する。(この時、希釈した液が 100ppm であることは必ず確認しておくこととする。)
尚、この基準液を正確に量り取り、これにイオン交換水(又は蒸留水)を加えて、1mL 中に 0.01mL,0.02mL,
0.05mL,0.10mL を含む液を作成し、“標準液”とする。
又、この標準液 9.5mL を量り取り、これにリン酸緩衝液 0.5mL を加え、均一に混合し、指示薬 0.1g を加え混合し、
紫外可視吸光度測定法〔日本薬局方〔一般試験法〕2.24〕により試験を行い、波長 510nm における吸光度を
測定し、イオン交換水(又は蒸留水)9.5mL を量り、リン酸緩衝液 0.5mL を加え、均一に混合した液を、“ブランク
液”とする。
次に、このブランク液を紫外可視吸光度測定法〔日本薬局方〔一般試験法〕2.24〕により試験を行い、波長
510nm における吸光度を測定し、上述の操作を 3 回繰り返し、標準液の吸光度の値からブランク液の吸光度を差
し引いた値を用いて各濃度の吸光度の平均値を算出し、算出した値を用いて、横(X)軸に酸化力(≒遊離塩素
濃度)、縦(Y)軸に吸光度をグラフ上にとり、“検量線”を作成する。
ⅱ)《ヨウ化カリウムでんぷん法》
可溶性でんぷん 2.0g に、イオン交換水(又は蒸留水)97.5g を加え、電子レンジ〔500W 2 分程度〕(又は電熱器)
で加温し、完全に溶解させる。この液を室温で冷却した後、ヨウ化カリウム 0.5g を加え、溶解させ、“指示薬”とす
る。
リン酸二水素カリウム 13.61g にイオン交換水(又は蒸留水)加え、500mL にメスアップし溶解させ、“リン酸二水素
カリウム溶液”とする。
水酸化ナトリウム 3.99g にイオン交換水(又は蒸留水)を加え、500mL にメスアップし溶解させ、“水酸化ナトリウム
溶液”とする。
リン酸二水素カリウム溶液 100mL と、水酸化ナトリウム溶液 35.4mL を加え、pH メーターを用いて、pH6.5 になる
様に、リン酸二水素カリウム溶液、又は、水酸化ナトリウム溶液で調整した液を“リン酸緩衝液”とする。
次亜塩素酸ナトリウムを、イオン交換水(蒸留水)を用いて、遊離塩素濃度として 100ppm に調製し、“基準液”と
する。(この時、希釈した液が 100ppm であることは必ず確認しておくこととする。)
尚、この基準液を正確に量り取り、これにイオン交換水(又は蒸留水)を加えて、1mL 中に 0.01mL,0.02mL,
0.05mL,0.10mL を含む液を作成し、“標準液”とする。
又、この標準液に指示薬 1 mL を加え混合し、1 分間静置させた後、紫外可視吸光度測定法〔日本薬局方〔一
般試験法〕2.24〕により試験を行い、波長 590nm における吸光度を測定し、イオン交換水(又は蒸留水)9.5mL
を量り、リン酸緩衝液 0.5mL を加え、均一に混合した液を、“ブランク液”とする。
次に、このブランク液に指示薬 1 mL を加え混合し、1 分間静置させた後、紫外可視吸光度測定法〔日本薬局方
〔一般試験法〕2.24〕により試験を行い、波長 590nm における吸光度を測定し、上述の操作を 3 回繰り返し、標
準液の吸光度の値からブランク液の吸光度を差し引いた値を用いて各濃度の吸光度の平均値を算出し、この算
出した値を用いて、横(X)軸に酸化力(≒遊離塩素濃度)、縦(Y)軸に吸光度をグラフ上にとり、“検量線”を作成
する。
※本方法は、製造現場において使用する予定の簡易検査キットの基本原理となる方法であり、その詳細は以下
の通りである。
尚、本方法を用いて作成した検量線は、研究開発及び品質管理等を行う為の器具器材類を持たない企業や、
≪DPD 変法(三慶法)≫等の発色反応を用いて(別紙参照)発色させた色調を、精密機器(分光光度計)を用
いて読み取り、その値から次亜塩素酸ナトリウムの検量線を描く事が出来ない場合に、この≪ヨウ化カリウムでんぷ
ん法≫を基本原理として用いているヨウ化カリウムでんぷん紙を、亜塩素酸水の酸化力を測定するための簡易検
査キットとして利用することになるであろうと予測している。又、≪DPD 変法(三慶法)≫と、≪ヨウ化カリウムでんぷ
ん法≫で作成した、この 2 つの検量線による分析結果の整合性を図ることを前提にして、このⅱ)≪ヨウ化カリウム
でんぷん法≫を用いた検量線の作成方法を取り決めており、この 2 つの測定方法による値に整合性が図れた時の
≪ヨウ化カリウムでんぷん法≫に基付くヨウ化カリウムでんぷん紙を、簡易検査キットとして利用することで、製造現
場という環境下でも亜塩素酸水の酸化力を、誰もが簡単に確認して頂けることを意図して企画してある。
=《DPD変法(三慶法)》:検量線を作成した結果=
分光光度計:日立製U-3210、日立製U-5100、日本分光製 V-550
次亜塩素酸ナトリウム:和光純薬製 試薬「次亜塩素酸ナトリウム溶液」
酸化力と吸光度の検量線
2.5
吸光度(Abs 510)
2.0
1.5
日立製U-3210 y = 0.2234x
2
R = 0.9937
1.0
日本分光製V-550 y = 0.2187x
2
R = 0.9959
0.5
日立製U-5100
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
y = 0.2265x
2
R = 0.991
9
10
11
酸化力〔≒遊離塩素濃度(ppm)〕
=《ヨウ化カリウムでんぷん法》:検量線を作成した結果=
分光光度計:日立製U-3210、日立製U-5100
次亜塩素酸ナトリウム:和光純薬製 試薬「次亜塩素酸ナトリウム溶液」
酸化力と吸光度の検量線
4.0
吸光度(Abs 590nm
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
日立製U-3210
y = 0.3756x
2
R = 0.9997
日立製U-5100
y = 0.3655x
2
R = 0.9974
1.0
0.5
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
酸化力〔≒遊離塩素濃度(ppm)〕
8
9
10
11
一般的な、次亜塩素酸ナトリウムを使用している製品類を検体に用いて、酸化力(≒遊離塩素濃度)を測
定した時、《DPD 変法(三慶法)》検量線と、《ヨウ化カリウムでんぷん法》検量線で求められる値に対して近
似値が得られるのかどうかについて確認してみた。
確認対象製品:
和光純薬;試薬次亜塩素酸ナトリウム(食添グレード)、オーヤラックス;ピューラックス、花王;キ
ッチンハイター、ミツエイ;キッチンブリーチ、南海化学工業;サンクリン 12、東亜合成;アロンクリン
《DPD 変法(三慶法)》検量線における確認結果
各種次亜塩素酸Na製品と検量線との比較
試薬次亜塩素酸ナトリウム(化学用)
試薬次亜塩素酸ナトリウム(食添グレード)
ピューラックス
キッチンハイター
キッチンブリーチ
サンクリン・12
アロンクリン
吸光度(Abs 510)
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
酸化力〔≒遊離塩素濃度(ppm)〕
9
10
11
薬品名
検量線の係数
試薬次亜塩素酸Na
0.2234
(化学用)※ベース
試薬次亜塩素酸Na
0.2183
(食添グレード)
ピューラックス
0.2262
キッチンハイター
0.2335
キッチンブリーチ
0.2232
サンクリン12
0.2201
アロンクリン
0.2265
《ヨウ化カリウムでんぷん法》検量線における確認結果
吸光度(Abs 590nm)
各種次亜塩素酸Na製品と検量線との比較
日立製U-3210
試薬次亜塩素酸ナトリウム(食添グレード)
ピューラックス
キッチンハイター
キッチンブリーチ
サンクリン・12
アロンクリン
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11
薬品名
検量線の係数
試薬次亜塩素酸Na
0.3756
(化学用)※ベース
試薬次亜塩素酸Na
0.3524
(食添グレード)
ピューラックス
0.3551
キッチンハイター
0.3563
キッチンブリーチ
0.3658
サンクリン12
0.3524
アロンクリン
0.3655
酸化力〔≒遊離塩素濃度(ppm)〕
以上の結果から、一般的な、次亜塩素酸ナトリウムを使用している製品類の全ては、どちらの検量線を用いまして
も、それぞれの製品類が持つ酸化力(≒遊離塩素濃度)を算出することは出来るということが分かった。
『検量線を利用した亜塩素酸水の酸化力:次亜塩素酸Na換算濃度の求め方』
1.装置及び調整法
測定装置としては、分光光度計を用いる。
あらかじめ、分光光度計に添付されている操作方法により装置を調整した後、波長及び透過率等を試験に適合
することを前提として確認する。
尚、波長は、波長校正用光学フィルターを用いて、それぞれのフィルターに添付されている試験成績書の試験条件
で、試験成績書に示されている基準値の波長付近における透過率を測定し、この透過率が、極小値を示す波長
を読み取る。
但し、試験を行うとき、その測定波長と基準値の波長のずれは±0.5nm以内とし、測定は3回繰り返して行うことと
し、その測定値はいずれも平均値±0.2nm以内であることとし、透過率又は吸光度は、透過率校正用光学フィル
ターを用いて、それぞれのフィルターに添付されている試験成績書の試験条件で、試験成績書に示されている基準
値の波長における透過率を読み取る。
又、試験を行うとき、その測定透過率と、基準透過率のずれは試験成績書に示されている相対精度の上限値及
び下限値に、それぞれ1%を加えた値以内であることとし、測定は3回繰り返して行い、吸光度の測定値(あるいは
透過率の測定値を吸光度に換算した値)は、吸光度が0.500以下のときは、いずれも平均値±0.002以内にあり、
吸光度が0.500を超えるときは、いずれも平均値±0.004以内にあることを確認する。
尚、同一波長において透過率の異なる透過率校生用光学フィルターの複数枚を用いて、透過率が直線を描くこと
を確認しておくことが望ましい。
2.操作法
あらかじめ調整した装置を用い、光源、検出器、装置の測定モード、測定波長又は測定波長範囲、スペクトル幅
及び波長走査速度などを選択し、設定する。
次に、装置を起動させ一定時間放置し、装置が安定に作動することを確認する。
又、試料光路にシャッターを入れて光を遮切り、測定波長又は測定波長範囲での透過率の指示値が、ゼロ%に
なるように調整する。
更に又、シャッターを除き、測定波長又は測定波長範囲での透過率の指示値が100%(又は吸光度が、ゼロ%)
になるように調整し、対照液などを入れたセルを光路に入れる。
対照液などを入れたセルを、試料光路及び対照光路に置き、透過率の指示値を 100%(又は吸光度を、ゼ
ロ%)に調整し、対照液には、規定するもののほか、試験に用いた溶媒を用いる。
3.各検量線の作成方法
ⅰ) DPD変法(三慶法) 検量線を利用した亜塩素酸水の酸化力:次亜塩素酸Na換算濃度の算出方法
N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン硫酸塩 1.0g を乳鉢で粉砕し、これに無水硫酸ナトリウム 24g を加え、結晶
粒を粉砕しない程度に均一に混和したものを“指示薬”とする。
リン酸二水素カリウム 13.61g にイオン交換水(又は蒸留水)加え、500mL にメスアップし溶解させ、“リン酸二
水素カリウム溶液”とする。
水酸化ナトリウム 3.99g にイオン交換水(又は蒸留水)を加え、500mL にメスアップし溶解させ、“水酸化ナトリ
ウム溶液“とする。
リン酸二水素カリウム溶液 100mL と、水酸化ナトリウム溶液 35.4mL を加え、pH メーターを用いて、pH6.5 に
なる様に、リン酸二水素カリウム溶液、又は、水酸化ナトリウム溶液で調整した液を“リン酸緩衝液”とする。
その後、亜塩素酸水をイオン交換水(又は蒸留水)を用いて、亜塩素酸濃度として 300ppm に調製し、“検
液”とする。
その上で、この検液9.5mLを量り取り、これにリン酸緩衝液0.5mLを添加し混合した後、指示薬0.1gを加え混合し、
直ちに分光光度計を用いて、波長510nmの吸光度を測定し、測定した吸光度値を、《DPD変法(三慶法)》で作
成した検量線を用いて、その関係式(Y=aX a:係数)から、“次亜塩素酸Na換算濃度”を求める。
ⅱ) ヨウ化カリウムでんぷん法 検量線を利用した亜塩素酸水の酸化力:次亜塩素酸Na換算濃度の算出方法
可溶性でんぷん 2.0g に、イオン交換水(又は蒸留水)97.5g を加え、電子レンジ〔500W 2 分程度〕(又は電熱器)
で加温し、完全に溶解させる。この液を室温で冷却した後、ヨウ化カリウム 0.5g を加え、溶解させ、“指示薬”とす
る。
リン酸二水素カリウム 13.61g にイオン交換水(又は蒸留水)加え、500mL にメスアップし溶解させ、“リン酸二水素
カリウム溶液”とする。
水酸化ナトリウム 3.99g にイオン交換水(又は蒸留水)を加え、500mL にメスアップし溶解させ、“水酸化ナトリウム
溶液”とする。
リン酸二水素カリウム溶液100mLと、水酸化ナトリウム溶液35.4mLを加え、pHメーターを用いて、pH6.5になる様
に、リン酸二水素カリウム溶液、又は、水酸化ナトリウム溶液で調整した液を“リン酸緩衝液”とする。
その後、亜塩素酸水をイオン交換水(又は蒸留水)を用いて、亜塩素酸濃度として300ppmに調製し、“検液”とす
る。
その上で、この検液 9.5mL を量り取り、これにリン酸緩衝液 0.5mL を添加し混合した後、指示薬 1 mL を加え混
合し、1 分間、静置(反応)させた後、直ちに分光光度計を用いて、波長 590nm の吸光度を測定し、測定した吸
光度値を、《ヨウ化カリウムでんぷん法》で作成した検量線を用いて、その関係式(Y=aX a:係数)から、“次亜塩
素酸 Na 換算濃度”を求める。
※本方法は、製造現場において使用する予定の簡易検査キットの基本原理となる方法であり、その詳細は以下
の通りである。
尚、本方法を用いて作成した検量線は、研究開発及び品質管理等を行う為の器具器材類を持たない企業や、
≪DPD 変法(三慶法)≫等の発色反応を用いて(別紙参照)発色させた色調を、精密機器(分光光度計)を用
いて読み取り、その値から次亜塩素酸ナトリウムの検量線を描く事が出来ない場合に、この≪ヨウ化カリウムでんぷ
ん法≫を基本原理として用いているヨウ化カリウムでんぷん紙を、亜塩素酸水の酸化力を測定するための簡易検
査キットとして利用することになるであろうと予測している。又、≪DPD 変法(三慶法)≫と、≪ヨウ化カリウムでんぷ
ん法≫で作成した、この 2 つの検量線による分析結果の整合性を図ることを前提にして、このⅱ)≪ヨウ化カリウム
でんぷん法≫を用いた検量線の作成方法を取り決めており、この 2 つの測定方法による値に整合性が図れた時の
≪ヨウ化カリウムでんぷん法≫に基付くヨウ化カリウムでんぷん紙を、簡易検査キットとして利用することで、製造現
場という環境下でも亜塩素酸水の酸化力を、誰もが簡単に確認して頂けることを意図して企画してある。
但し、その整合性を図る為には、下記の「次亜塩素酸 Na 換算濃度の算出方法の比較による補正系数の算出方
法」に基づき、補正係数を導き出しておく必要があり、この補正係数を用いることによって、これらの値の整合性を図
っておけば、この≪ヨウ化カリウムでんぷん法≫を基本原理として用いているヨウ化カリウムでんぷん紙を、簡易検査
キットとして、利用した場合の裏づけになると考えている。
4.次亜塩素酸Na換算濃度(OX値)の算出方法の比較による補正系数の算出方法
《DPD変法(三慶法)》:検量線を利用した亜塩素酸水の次亜塩素酸Na換算濃度を『D』として、この値を “正”
と考えた場合の、「《ヨウ化カリウムでんぷん法》:検量線を利用した亜塩素酸水の次亜塩素酸Na換算濃度を「K」
として、この値との整合割合として求める場合、下記の計算式を用いて、その割合を算出する。
「K」
「D」
=
Z × 100
Z
= A %
ここで算出された割合A%が、(X・1)%以上であれば、補正係数として使用できると定め、(X・2)%以上の場合には、
十分な信頼性があると判断して、上記の式中の〔Z〕を《ヨウ化カリウムでんぷん法》:検量線を利用した亜塩素酸
水の次亜塩素酸Na換算濃度(『K』として)を、《DPD変法(三慶法)》:検量線を利用した亜塩素酸水の次亜塩
素酸Na換算濃度(『D』として)に換算するために、以下の計算式を用いて補正係数を求める。
1
Z
×
「K」
=
「D」
A): 《変法DPD(三慶)法》検量線を用いた結果
分光光度計:日立製U-3210
亜塩素酸水測定結果※検量線の関係式:y=0.2234Xから算出
亜塩素酸濃度
吸光度
次亜塩素酸 Na 換算濃度※
300
2.085
9.33
上記測定結果の吸光度を、検量線のグラフに反映した結果
亜塩素酸水の吸光度と検量線から算出する次亜塩素酸
Na 換算濃度
亜塩素酸水の吸光度と検量線から算出するOX値
吸光度(Abs 510)
2.5
日立製U-3210
2.0
1.5
測定結果
y = 0.2234x
1.0
0.5
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
次亜塩素酸 Na OX値
換算濃度
B): 《ヨウ化カリウムでんぷん法》検量線を用いた結果
分光光度計:日立製U-3210
亜塩素酸水測定結果※検量線の関係式:y=0.3756Xから算出
亜塩素酸濃度
吸光度
次亜塩素酸 Na 換算濃度※
300
3.146
8.38
上記測定結果の吸光度を、検量線のグラフに反映した結果
亜塩素酸水の吸光度と検量線から算出する次亜塩素酸 Na 換算濃度
吸光度(Abs 590nm)
亜塩素酸水の吸光度と検量線から算出するOX値
4.0
3.0
2.0
y = 0.3756x
日立製U-3210
1.0
測定結果
0.0
0
1
2
3
4
5
6
次亜塩素酸 Na OX値
換算濃度
7
8
9
10
11
5. 次亜塩素酸Na換算濃度の算出方法の比較による補正系数の算出
A): 整合性を次式に従い確認する。
((X・1)%以上の場合、補正係数として使用できると定め、(X・2)%以上の場合には、十分な信頼性がある
と判断することにする。)
K
D
=
Z
Z × 100
= A %
「K」;《ヨウ化カリウムでんぷん法》検量線を利用した亜塩素酸水の次亜塩素酸 Na 換算濃度
「D」;《変法 DPD(三慶)法》検量線を利用した亜塩素酸水の次亜塩素酸 Na 換算濃度
8.38/9.33=0.898
0.898×100=89.9%
B): A)の結果が、※(X・1)%以上であった場合には、《ヨウ化カリウムでんぷん法》:検量線を利用した亜塩素酸
水の次亜塩素酸 Na 換算濃度(「K」として)を、《DPD 変法(三慶法)》:検量線を利用した亜塩素酸水の次亜塩
素酸 Na 換算濃度(「D」として)に換算するために、以下の計算式に、A)で算出された数値を補正係数として用い
ることによって、《ヨウ化カリウムでんぷん法》:検量線を利用した場合の試験結果であっても、《DPD 変法(三慶
法)》:検量線を利用した試験結果と同等に評価することができる
1
Z
×
K =
D
×
K =
D
×
K =
D
1
0.898
1.113
※ この時、同じであると評価(判明)した値を、初めて次亜塩素酸 Na 換算濃度:OX 値と定め、
亜塩素酸水が持つ酸化力を遊離“亜”塩素:OX-P として表すこととする。
※ (X・1)、(X・2)は、2014 年 2 月末現在、測定中である。