配布資料 - JOGMEC 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

平成25年度第8回金属資源関連成果発表会
南アフリカ及びロシアにおける
PGM鉱山企業の動向
調査部 金属資源調査課
古瀬義治 ([email protected])
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
1.世界のPGMの供給と需要(2013年)
(供給)
南アフリカ
南アフリカ
ジンバブエ
26%
ロジウム(以下Rh)
パラジウム(以下Pd)
プラチナ(以下Pt)
*ジンバブエでは、鉱石が南アに供給され、
南アで地金に精錬されるので、
地金としては下記南ア供給分に加算される。
南アフリカ
ジンバブエ
26%
26%
ジンバブエ
27%
ロシア(生産)
ロシア
243t
1%
53%
4%
11%
北米
その他
277t
2%
3%
10%
3%
触媒回収
2%
1% 4%
Rh
1%
0%
自動車触媒
5%
自動車触媒
化学
11%
電気
37%
33%
262t
ガラス
投資
5%
6%
化学
歯科
300t
6%
医療
石油
その他
3% 2%
4%
9%
自動車触媒
8%
化学
32t
電気
電気
ガラス
投資
宝飾
9%
触媒回収
3%
Pd
Pt
北米
9%
その他
5%
3%
59%
2%
その他
30%
触媒回収
(需要)
北米
ロシア
31t
ロシア(備蓄放出)
0%
72%
宝飾
79%
その他
その他
1
2,世界のPGMの鉱山・触媒回収からの供給状況
2005年~2013年のPGM供給推移
単位:t
Pt
300
触媒回収
250
200
その他
150
ジンバブエ
100
北米
ロシア
50
0
1、南アフリカ:供給ソースとしての位置付けは高い
PGMでは、南アフリカは、全世界の埋蔵量の約90%以上。
日本の輸入では、南アは Pt:85%,Pd:54%、Rh:61% の
シェア。
2、ロシア:日本の輸入ではPd:40%のシェア。一時生産量は2008年
以降変わらないが、国家備蓄放出量は、2012年から急減。
南アフリカ
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
Pd
350
触媒回収
300
3、触媒及びスクラップからの回収量の大部分は、10年以上前に販売
した自動車の廃棄スクラップからの発生。増大傾向だが、
安定した供給ソースになりにくい。
その他
250
200
ジンバブエ
150
北米
100
ロシア(備蓄放出)
50
ロシア(生産)
0
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
やはり、南アフリカ、ロシアからの
PGMの供給拠点としては重要!
南アフリカ
Rh
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
触媒回収
但し、南アフリカ。ロシアでは、2012年から生産量が急減。
その他
ジンバブエ
北米
何が起きているか?
ロシア
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
南アフリカ
出典:USGS,Johnson Matthey “Platinum 2013中間報告”、財務省貿易統計等より作成
2
韓国の政治経済構造と問題点
南アフリカにおける新鉱業法と
政府/労働組合の現状
3
1、南アの新鉱業法と高付加価値化政策の動向
1、鉱物・石油資源開発法(MPRDA)の改正(現在、 MPRDAの改正法案が内閣で承認され、国会で審議中。)
項目
手段
目的
影響
先願制規定の削除
鉱山権申請の運営面でBEE企業への優遇措置
(注1:)
株取引の関する政府の
統制強化とBEE企業の
会社支配率のアップ
海外からの新規投資
が減少する可能性が
高い
DMR大臣または鉱物
資源省の恣意的運用
国内生産者の輸出制
限に繋がる可能性大
上場企業の株式の譲渡制限
高付加価値化
「戦略的鉱物」概念の導入
上場企業の支配的株式(controlling interest)の譲渡を行う
う場合、鉱物資源省(以下DMR)大臣の同意が必要。
DMR大臣が、鉱種により高付加価値化の度合いや国内へ
への流通条件を決定
DMR大臣は、高付加価値鉱種を「戦略的鉱物」と指定し、
し、輸出に関して大臣の許可が必要
(注1:2009年,南アフリカ鉱業憲章で鉱山企業にBEE企業の株式比率を2016年まで26%まで引き上げるとしたが、罰則や運営方法が定まらず
結果として上記を運営方法として政府が提示したと思える)
2、高付加価値政策による実質的なPGM鉱石中間製品
(精鉱、マット)の 輸出制限
①中間製品での輸出には、貴金属法と鉱業法により
大臣認可が必要
②一部、許可された物もあるが実態は禁止の方向。
結果的にPGMの輸出量は減少。
出典:JOGMEC“金属資源レポート”、JETRO資料等より作成
南アフリカ政府の高付価価
値政策の目的は雇用確保
1、目的:現在失業率が25%なので、これを15%まで減少させ、
2020年までの500万人の雇用創出を行う。
2、南ア政府の方策(PGM絡みで)
①自動車産業の活発化:南ア政府の補助をかけて。南ア国内での
自動車及び部品メーカーの生産増大=>南部アフリカ地域での輸
出拠点へ
②PGMのサプライチェーンを南アで拡大:南アにある自動車触媒
メーカーにPGMを優先供給する。
4
2、南ア鉱山企業と労働組合の対立
1、背景:
①著しい人種間所得差:白人の所得は黒人の所得の約6倍
=>BEE企業優先政策など黒人優遇政策強化
②与党アフリカ民族議会(ANC)の支持率低下:
政権内での、ANC青年同盟(急進派)の地位及び発言力が拡大
南ア政府を構成している3者連合内での対立激化。(ANC,南ア労働組合会議(COSATSU),南ア共産党(SACP))
2、経済よりも政治優先::労働組合の勢力争い(組合が政治権力に関心を向け労働者の引抜き合戦)
南アフリカナショナルセンター(労働組合の全国中央組織)
COSATSU
加盟人数:1,800千人(穏健派)
勢力争い
南ア労働組合協議会(NACTU)
加盟人数: 397千人 (急進派)
労働組合
AMCU
NUM
(National Union of Mineworkers)
1982年設立。メンバー300千人,
80%鉱山労働者、17%建設労働者、3%Eskom関係
約80%が黒人
国際化学品エネルギー鉱業労働組合連盟の一員。
(Association of Mineworkers and Construction Union)
対立激化
1998年、NUMから独立
2001年、労働組合として正式登録。メンバー50千人
※AMCUは、Amplats.Lonmin,Implatsの従業員の
支持を拡大し、プラチナ・金鉱山企業に対する影響力も拡大。
3、2012年:AMCUとNUMの抗争激化
-1月:Impala社/Rustenburg鉱山で、AMCU がNUM 抜きで、ストライキを決行し、暴動に 発展。3 人の死者、
6 週間の鉱山閉鎖、17千人の鉱山労働者の解雇という事態に発展。
-8月:Lonmin社/Marikana鉱山でストライキ中の労働者3千人が暴徒化し、警官が発砲。最終的に死者44名を出した。
-9月-12月:Amplats社/Rustenburg/Amandelbult/Unionで散発的に長期にわたってストライキを行い、
生産量が減少した。
出典:南ア現地報道、Wikipedia、JOGMEC、国際金融情報センター資料等より作成
5
南アフリカのPGM鉱山の概況
6
1、南アBushveldの主要鉱山位置図
ブッシュフェルト岩体
南アフリカ共和国
インパラBushveld鉱区
のPGEの構成率
TumelaMine/Dishaba Mine
AngloPlatinum
Bokoni Mine
Anglo Platinum
/Anooraq Resources
Maruka
impara
Two Rivers
Impala
Mototolo Mine
Anglo Platinum
/Xk Platinum
主力鉱山
最新鋭のImpala製錬所
出典:JOGMEC, Lonmin、Implats資料等より作成
7
2、南アフリカでの鉱脈の問題点
1、メレンスキー鉱脈のPGM埋蔵量が減少し、今後はUG2鉱脈での採掘が重視される。
Amplats
33%
Implats
① Amplats:UG2の割合は、Rustenburg鉱山で70%以上
Implats:UG2の割合は、Rustenburg鉱山で45%
Lonmin:UG2の割合は、Marikana鉱山で75%以上。
67%
44%
Merensky
56%
UG2
Lonmin
25%
0%
20%
75%
40%
60%
80%
②UG2ではCrが多いため、製錬でのCrの分離に時間と
コストがかかる。
③Rhの品位が高いが、現時点では自動車触媒でのRhの
使用は低減傾向。
④副産物であるAu、Niが少なくCrが多いため、鉱山の売上で
は金属価格での寄与分が減る。
100%
2、採掘鉱床状況:より深部に採掘する必要が多くなっている。
①南アのPGMの採掘は深部に及び、採鉱には
新規シャフトへの投資が必要。
②Amplatsは、2012年まで36シャフトで増産して
いたが、今後、4シャフトを減損処理をしてシャフ
トを減少させる見込み。
③Implatsは、現在、17-18シャフトを操業中だが、
さらに3シャフトを建設中。これは、1シャフトの寿
命が平均10年なので新規投資が必要であり、1
シャフト2000人は従事させねばならない。
④Lonminも今後、7シャフト新規投資する計画
がある。
出典:Amplats, Lonmin, Implats 各社 Annual Report等より作成
8
3、安全性の確保
①岩体が曲がって硬いため、全て手作業であり、掘削するのに機械化が困難。
そのため鉱山労働者の数が多い。
②作業上、熟練した労働者が必要。さらに落盤事故などの死亡率が高い。
③南アで死亡率が高いのは、Northern、 Aquariusであり、やはり大型企業でな
いと事故、死亡率を下げるのに困難が多い。
従い、各社との下記労働災害に関する数値を設けて、利率を下げる努力をして
いるが、完全に機械化できず安全確保が各社の大きな命題になっている。
Fatality Rate(死傷率)
Lost Time Injury-Frequency Rate
“LTIFR”(休業災害度数率)
8.00
0.2
6.00
0.15
4.00
0.1
2.00
0.05
0.00
0
2009
2010
2011
2012
Amplats
Implats
Lonmin
2013
単位:百万延べ労働時間
単位:百万人時間
4,Northen Limbの開発
①ここは、Plat reef鉱床ということで開発が進められている。上記Merensky,UG2と同じような鉱帯ではないかと推測も
あるが現状ではどちらともいえず新規鉱床としての位置付けである。
②この鉱床に関しては、現状のUG2の浮遊選鉱は適さず、Sylvania Platinum Limited (Sylvania)が持っている
Volspruit ProjectでMintekで試験をしたが、採算性が悪いとの結論であった。
③一方、JOGMECがPGMの選鉱の採算性を上昇させる技術を特許出願中であり、今後注目されている。
現在の鉱山操業での問題として、採算性が悪いということがあり、これがどこまで浸透していくか注目していきたい。
出典:Amplats, Lonmin, Implats 各社 Annual Report, JOGMEC“金属資源レポート”等より作成
9
南アフリカの主要PGM鉱山企業の状況
10
1、南アPGM鉱山企業生産ビッグ3の概要
南アでのPGMの生産量の約90%は、Amplats.Implats.Lonminが生産している。
各社の内訳は、Amplats:約52%,Implats:約33%,Lonmin:約15%である。
Amplats
Implats
Lonmin
決算日
12月末
6月末日
9月末日
従業員数
55,108人(内、契約社員、4,235人)
(2012年度)
57,367人(内、契約社員、17,130人)
(2013年度)
38,421人(内、契約社員、10,042人)
売上・純利益
(年間)
売上:43,148Rm (2012年12月末)
純利益:▲6,720Rm
売上:30,032Rm
純利益:1,075Rm
売上:14,045Rm (2013年9月末)
純利益:1,836Rm
株主構成
Anglo South Africa:79.72%
他投資家数10社(欧米 南ア系:
1社1-2%)
投資家:Royal Bafokeng Holding(南ア)13%,
残は、 欧米南ア系投資家は数十社
Xstrata Plc: 24.9%
他投資家 :Prudential;plc(英国):14%,
残では他欧米南ア系数10社
概要
•南ア17ヵ所、ジンバブエ1ヵ所 の18鉱山
で操業(うち、 9鉱山は100%)
•世界最大のPGMs生産者で、 Watervalに
あるPGMs製錬所 は世界最大規模
•委託精錬も大手企業向けに手掛けている。
•Implats/Rustenburg鉱山(100%)、
Afplats/Leeuwkop鉱山(74%)等5鉱山
で操業。
•IRS(Impala Refining Services) では、余剰精錬能
力を用いて、他 社から購入した原料の精錬及び委
託精錬も実施(全生産量の約20%程度。)
•自動車触媒リサイクルでの処理能力も大きい。
•南アで2鉱山を操業中で、 うち、Marikana鉱山
から の生産が92%を占める
•委託精錬も手掛ける
生産量推移
暦年ベース(t)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
(2013年6月末)
60
25
50
20
40
15
Pt
30
Pt
Pd
20
Pd
Rh
10
0
出典:Amplats, Lonmin , Implats 各社 Annual Report等より作成
Rh
10
5
Pt
Pd
Rh
0
11
2、南ア主要PGM鉱山企業の決算及び操業費推移
1,2009-2013年度の大手3社の売上高、純利益推移
単位:Rm
60,000
51,484
50,000
46,352
Amplats
40,000 36,947
30,000
26,121
43,148
33,132
27,593
25,446
Implats
30,032
9,558
10,000
11,808
13,844
12,993
②Lonmin:2012年:Akanani鉱山(240千t/月の鉱石量の予定) の
資産評価替えと労働争議コストで769MilUS$の赤字を計上
(6,653Rmに相当)
Lonmin
Amplats
20,000
2、大型特殊損益の発生
①Amplats:2009年/2010年:株売却で7,772Rmの利益計上
2012年:不使用設備減損処理で 6.606Rmの赤字計上
14,045
Implats
③ Implats:2013年:2006年、Afplatsを買収したことでの
Goodwill(のれん代)の減損処理で1,018Rmの赤字を計上
Lonmin
0
2009
2010
2011
2012
2013
2012年での実際のAmplats/Lonminの決算は、若干の黒字。
-10,000
3、2009-2013年度の大手3社の主要分野別コスト推移
Amplats
Implats
単位:Rm
Lonmin
20,000
35,000
減価償却
30,000
12,000
18,000
16,000
25,000
10,000
14,000
精錬費
20,000
15,000
製錬費
12,000
減価償却
10,000
製錬・精錬費
10,000
6,000
5,000
4,000
鉱山操業費
(選鉱も含む)
0
2009
2010
2011
2012
選鉱費
8,000
鉱山操業費
8,000
間接経費
6,000
製錬&精錬費
選鉱費
4,000
鉱山操業費
2,000
2,000
0
0
2009 2010 2011 2012 2013
出典:Amplats, Lonmin, Implats 各社 Annual Report等より作成
2009 2010 2011 2012 2013
12
4.2009-2013年度の大手2社の操業費(鉱山・製錬・精錬)内訳推移
単位:Rm
単位:Rm
Amplats
35,000
18,000
30,000
16,000
4129
25,000
20,000
15,000
Implats
3032
1767
3552
2871
3212
2332
10,000
2144
2516
5,000
8,800
9,445
雑費
10,000
資材費
3803
3236
4,882
8,000
電力代
4,706
6,000
労働費
4,827
2,000
0
2009
2010
2011
5,519
5,464
資材費
1,857
1,647
1,120
1,394
6,158
6,305
6,793
2010
2011
2012
電力代
賃金
792
4,000
11,511
10,651
6,481
12,000
請負
7,496
7,235
6,476
5,851
14,000
2282
7,976
0
2012
2009
2013
5、南ア大手3鉱山会社の従業員推移と大手2社の人件費推移
単位:人
2009-2013年度の大手3社の従業員推移
2009-2013年度の大手2社の一人当たりの年間平均賃金推移
単位:R
70,000
250000
226269
60,000
200000
Amplats 自社員
50,000
Amplats 契約社員
40,000
150000
194706
173635
160712
207747
158732
198,226
171449
134083
Implats 自社員
30,000
Implats 契約社員
20,000
Lonmin 自社員
Lonmin 契約社員
Amplats
Implats
100000
50000
10,000
0
0
2009
2010
2011
2012
2013
出典:Amplats, Lonmin , Implats 各社 Annual Report等より作成
2009
2010
2011
2012
2013
13
3、南アのPGM鉱山企業をめぐる経済状況
1.南アのPGM鉱山の1人当たりの生産 性とPGM生産量1kg当たりに対する実質労働賃金の推移(1990年を100とした指数)
1.2000年―2011年の実質労働賃金の上昇は、
Ptの価格動向に類似している。
特に、2006年以降は、経済成長に伴う2桁の
インフレ進行と、資源会社からの利益供与の一環
で賃金上昇率は、2009年以降2006年比
約2倍になった。
2.生産性の悪化は、
①探鉱面:深部への採鉱、メレンスキーから
UG2鉱体への移行
②労働面:安全作業のための操業停止、ストライキ
での操業停止が原因として挙げられる。
2.南アの標準平均電力料金の推移と予想
1.2008年から2012年まで電力代は 2倍以上の伸び。
これは、2008の電力危機以降、南アフリカ電力公社
(Eskom)が発電能力の拡大を優先しており、その資金源と
して電力料金の引上げを要求。
2.鉱山業への影響としては、
①鉱床の深部化に比例して、空調数の増加、坑道の移動の
ためのエレベーターの距離が長くなり、使用電力量が増大。
②製錬・精錬での電力原単位の増加が電力使用量増大
につながり、さらなるコストアップ。
出典:Lonmin、南アDMR/商工会議所発表、JETRO等の資料から作成
14
4、南アのPGM鉱山/主要PGM鉱山企業の状況のまとめ
A, 生産推移:
1, メレンスキー鉱脈のPGM埋蔵量が減少し、今後はUG2鉱脈での採掘に移行。
2, 深部に採掘する必要。
3, 安全性の確保のため度重なる操業の停止。
各社とも2011年まで生産が順調に増加していたが、 南ア全体では、上記のため2006年のピーク時に比較して年々減少
しており、2012年のLonmin/Marikana鉱山を始めとしたストライキで2012年に急減になったと思われる。
2013年は、Amplatsの合理化案が、2013年10月に締結されたことで、労使交渉が翌年に持ち越された事。Amplatsの合
理化案にあったAmplats/ Rustenburg鉱山(4シャフト)の停止で、大規模ストライキはなかったが、
2012年並みと予想される。
B, 売上推移:Pt/Pdの価格は2009年以降上昇しており、2012年以降伸び悩み。Rhの価格は、2011年に下落してお
り、また、UG2ではAu,NiよりCrが多く、販売価格での寄与分が少なく、UG2鉱床が多いAmplats、Lonminの決算に影響
を与えている。
C, コスト状況:労働賃金と電力代は、操業費の50-60% を占めている。
1, 人件費
①鉱山では、全て手作業であり、掘削するのに機械化が困難。
②熟練した労働者が必要。さらに落盤事故などの死亡率が高いため、他業種と比較して人件費が高い。
③労使交渉でここ最近で年率平均7-13%の労働賃金の上昇率になっている。
④Amplatsでは契約社員の数が全体の約7%(Implats、Lonminでは、約30%)でいまだ正社員の割合が高い。
2, 電力代のアップ(鉱山、製錬・製錬関係)
電力代は、年率20-25%以上の伸びであり、2008年の電力危機以降、南アフリカ電力公社(Eskom)は、将来
にわたり電力料金を引上げる意向。
3, 減価償却費の増加
①より深部に採掘するため、新規シャフトの増設。
②一方、不採算のシャフトの廃却も進める。
4, メレンスキーからUG2鉱床へ移行でのコストアップ: Crの分離にコストがかかる
今後は、生産量は減少し、コストは増加していく
15
ロシアの主要PGM鉱山企業の状況
16
1、 ロシア/PGMの生産企業構造
Norilsk Nickel Group
Ekaterinburgsky
Zavod OTsM
Ekaterinburgsky
Zavod OTsM
Shyolkovsky Zavod
Dragossennih Metallov
Russian Platinum
Shyolkovsky Zavod
Dragossennih Metallov
Kondyor
Kondyor
Kondyor
出典:JOGMEC”金属資源レポート“、Johnson Matthey Platinum2012等よりの資料から作成
Kondyor
Affinage Plant
of Kondyor
17
2、ロシアの鉱山企業の概要
企業名
MMC Norilsk Nickel
決算日
12月末
従業員数
81,793人(2012年度)
売上・純利益(年間)
売上:12,065Mill US$,純利益:2,143MillUS$ (2012年12月末)
株主構成
Interros Internatinal Investments Ltd:30%,United Company Rusal Plc:28%,Crispian Investmentr Ltd:6%
(この3社で株主間契約を締結して64%の株式シェアを獲得)
Metalloinvest:5%,Free Float:31%
概要
•世界最大のニッケル(以下Ni)・Pd製造会社。他に銅(以下Cu)、Pt,コバルト、Rhでも世界的にマーケットシェアが高い。
特に、Pdでは世界の33%のシェアを持ち第一位の生産者。
•ロシアでは、世界最大の多金属鉱床を持つ。PGMを含む鉱山は下記
ロシア:Polar Div,(Taimyr半島):Norilsk -1(2鉱山)Oktyabrsky(2鉱山),Talnakh :1鉱山
Kola MMC(Kola半島):2鉱山
J/V:ボツワナ、南ア各1鉱山、豪州:100%:1鉱山(生産規模が少ない)
生産量推移
暦年ベース
ロシア、Ni/Pt/Pdの生産量推移
単位:千t
単位:t
250
ボツワナ、フインランドのNi/Pdの生産量推移
単位:千t
単位:t
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
200
150
100
50
0
2009
2010
Ni
Pd
2011
2012
Pt
70
5
60
4
50
40
3
30
2
20
1
10
0
0
2009
2010
Ni
2011
2012
1, 2010年度より,Stillwater(米国)
の権益の売却で年Pt:4t, Pd:12tの
生産量が減少。
2、南アのNkomati鉱山(50%
取得)のニッケル,PGM分は、2011
年よりNorilskの決算から除外。
3、豪州からは、2012年から100%
権益保有の鉱山から約8,900tの
ニッケルが生産されたが、PGMの
生産はなし。
Pd
Niの生産量にPt/Pdの生産量に連動する。ロシアの Ni/Pt/Pdの生産量は2007年以降横ばい
18
3、Norilsk Nickelの決算動向
1,2009-2013年度の売上高、純利益推移
2,2009-2013年度の資産推移
16,000
4,000 単位:MillUS$
14,000
3,500
12,000
3,000
10,000
2,500
8,000
2,000
6,000
1,500
4,000
1,000
2,000
25,000
20,000
売上高
2010
2011
単位:US$
2,300
2009
Norilsk Nickelグループで
の従業員分布
6%
鉱山、製錬所
(Polar Div.)
2,000
1,900
19%
1,800
70%
1,700
鉱山。製錬所
(Kora Div,北西
部)
精錬所
(Krasnoyarsk)
本社・支社
1,600
2010
2011
12,343
11,222
14,160
12,940
固定資産
純資産
13,751
6,569
6,814
2011
2012
0
2012
5%
流動資産
5,000
2,200
2,100
10,158
17,974
14,755
14,384
3,従業員の給料状況
平均月間給料推移
8,376
10,000
0
2009
15,000
単位:MillUS$
純利益
500
0
30,000
2010
2012年度のトピックス
1,売上は、2011年比へ15%減。原因は、Cu,Ni,PGMの
市場価格の下落。
2、操業費の上昇
①人件費:2011年比約13%増
②他社(Russian Platinum)PGM,PGMスクラップ等中間
原料の購入困難でコストアップ。
③Rh,Co等副産物売上低調
3、自社株の評価損:▲552MillUS$
2011年度のトピックス
純資産が減少:8,995MillUS$の自社株の買戻し。
2012
出典:Norilsk Nickel Annual Report等よりの資料から作成
19
4、今後の計画
出典:Norilsk Nickel及びJOGMEC等資料より作成
1、2013-2018年までの販売数量計画
単位:千t
2,2013年8,9月、 Norilsk Nickel CEO/Invest Café社の発言
単位:t
250
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
200
150
100
50
0
2013
2014
Ni
2015
Pd
2016
Pt
2017
2018
①配当政策の見直し=>株主への利益還元を優先。
・15年以上の長期プロジェクトを断念。
・最低でも20%の収益率がある2年以内の短期プロジェクトに集中。
・重要性が低いと判断した海外資産からは撤退し、コスト・リスク軽減のため
外国企業に現行プロジェクトへの資本参加を呼びかける。
・Norilskは、投資金額に対する配当金額基準を設定。
②Pdに経営資源を集中。
売上構成はNi:44%,Cu:25%,Pt:19%,Pd:10%であるが、Cu/Ni
はLME在庫が多く(Cu:2013年半ばが過去最高の記録、Niは記録続伸
中)で市場が弱く、自動車触媒でのPdの需要増加拡大の見通し。
3、具体的な方策
①豪州Ni投資案件からの撤退
Honeymoon Well、Lake Johnston、Cawse、Black Swan及びWaterloo鉱山等(現在では全ての鉱山が休止している)
の売却を表明した模様だが、未決着。=>PGMの生産増大にはNiの増産が不可欠なので、Niの生産はロシア内に
とどめる意向。
②Cu/Niの新規鉱山案件への資本参加はしない。
ウラル採鉱冶金会社(UMMC)が所有するエラン及びヨルカCu/Ni鉱床の開発に協力し原料確保に動くが、
資本参加しない。
③精錬能力のアップ
Norilsk傘下のKrastsvetmet社(PGM精錬の大手でロシア国内市場シェア99%)が、生産量拡大で136億ルーブル
の投資を計画。
④Pdの販売強化.のため、世界的なマーケッテイング コンサルタントを起用予定。(但し、上記新規投資基準では大規模
なマーケッテイングは困難)
20
5、ロシアのPGM鉱山開発状況
Maslovskoe鉱床の鉱床状況
1, Norilsk Nickel
Polar Div近辺、Norilsk 1の延長上に下記開発中。
①Skalisty mine:
埋蔵量:58Mt、現在、建設途中(28%完了)で2014年から生産開始。
② Maslovskoe鉱床:
探鉱->開発、2017年:F/S,建設:2017-2023年
2, Russian Platinum (Artel Starately(Amur)が主要株主。Kondyor鉱山ですでに生産。2011年、Ptを約3.7t生産)
①Chernogorskoye鉱山: Norilsk Nickel、Polar Divの近辺、
可採埋蔵量:約143Mt.(品位:Ni:0.22%,Cu:0.29%,Pt.Pd,Rh,Au合計:3.9g/t.)
PGM鉱床は、西部では20m深度、東部では245mの深度にある。
2015年に開始する予定。
②Norilsk Nickel所有の Norilsk-1鉱区南部分の地下資源利用権を取得したと発表したが、 Norilsk Nickelは
本件は無効とのことで訴えている。
3, Eurasia Mining :英国に拠点を置く国際的資源開発会社。2008年にAnglo PlatinumとHard Rock PGM
プロジェクトの共同開発の契約を締結
①西Kytlim鉱山(中央ウラル):ボーリング、ピットによるサンプリングを行い埋蔵量が増加している。
② Monchetundra鉱山(コラ半島) 2008年までAnglo Platinumと共同でボーリングで16,000Mほど探鉱をした。
4, Barrick Gold:Federovo Pana Province(Kola半島)で開発
5, ロシア主要PGM鉱山企業のまとめ
①ロシアのPGMのほとんどは、Norilsk Nickelが生産している。
②Norilsk Nickelは収益強化のためPdの販売を強化する。既存の鉱床での枯渇化もあり、豪州での資産を
売却しNiの生産をロシアに集中。 Norilsk 全体でのNi生産は維持しながら、Pdの生産を維持する意向。
③一方、他鉱山会社もロシアでの資源開発を活発化させ、Norilskとの摩擦が増加する傾向にある。
出典:Norilsk Nickel Annual Report, JOGMEC “ニュースフラッシュ”等資料より作成
21
まとめ
22
9、まとめ
1,PGMの供給
①南アフリカ:PGMの埋蔵量は世界一。供給量で、Pt、Rhでは世界の50%以上。Pdは、30%程度だが、ロシア
国家備蓄放出量が減少傾向であり、ますます、PGMの供給の南アフリカの地位は高まる。
②ロシア:Pdについては、上記国家備蓄放出量の減少及び主要産物であるNi供給量の抑制でPdの
供給を増加する見通しは少ない。また、ロシアからの供給は常に国家政策に左右されるため、
安定的供給源になりずらい。
2、南アフリカの鉱業政策と労働問題
①南アフリカ政府の懸案事項は雇用政策。そのために、自国での高付加価値化を進めており、今回の
新鉱業法もそのステップ。
②南アフリカ政府は、2014年に総選挙、大統領選挙があるので国民の人気取りを優先。
③PGM鉱山の労使交渉も2014年から始まるが、上記状況から政府としての介入する可能性は低い。
3、南アフリカの主要PGM鉱山企業の状況
①問題点: 生産量:メレンスキー鉱床からUG2鉱床への移行で、PGMの生産量が減少。
深部での採掘、多発するストライキ、安全性を保つための操業停止による生産性ダウン
コスト:人件費高騰、鉱山労働者の増大(特に、熟練労働者が必要)、電力代アップ、深部での採掘、
UG2でのCr処理費のアップ
②解決策: 生産量アップ:鉱山運営の正常化、機械化、PGM鉱量の多い鉱床の開発:Waterburg, Platreef等
コスト削減:人件費ダウン、人員整理、機械化
政府の雇用政策と対立
不採算部門の撤退:大手鉱山会社での不採算鉱山の撤退、中小鉱山企業の倒産
新規の生産性のよい鉱山がなければ生産量縮小へ
現在の市場価格及び南アの状況が継続すれば、南アフリカ鉱山会社の経営悪化で
世界への供給体制が崩れる可能性大
23
4、ロシアの主要PGM鉱山企業の状況
①現状、Norilsk Nickelのロシア市場での占有率が高く、国家のBack Upもあり、海外を含めた
他資源開発会社が力を伸ばしていくのには困難。
②ロシア国内での開発には、資金不足から海外資源開発会社との取り組みを盛んに行おうとしているが、海外投資
家に有利な条件は出にくく、海外投資家からの資金は集めにくい。
ロシアは、国家備蓄分を供給の調整弁として使い、市場をコントロールする。
5、結論
①自動車触媒でのPGMの需要増加を考慮すれば、PGMの供給確保は絶対必要。
②南アフリカへの自動車産業の進出拡大でPGMの輸出削減の可能性大。
・自動車産業の、今後のアフリカ市場攻略では南アフリカは重要拠点になる。また、世界大手の自動車製造会社のみならず
大手自動車触媒メーカー(Johnson Matthey, BASF, Umicore)は製造拠点を南アに置き、触媒を輸出する計画がある。
・南アフリカ政府は“雇用確保”で多種の政策で後押しをしている。
“国家開発政策(NDP)”,“国内生産優遇補助( APDP)”など自動車産業育成プログラム及び
“新鉱業法”、“高付加価値政策”の推進
④南アPGM企業の財務状況悪化になれば、海外資本からのアプローチは強まる。
特に、上記ロシア企業及び中国企業のアプローチが可能性として高い。
(バナジウムでは、ロシア、Evraz社が南アフリカ、HighveldSteelを買収し、EU委員会からの提訴で精錬部門は
売却したが、実際には、世界の50%以上のバナジウム原料のシェアを確保している。)=>ロシアの寡占化へ
⑤ロシアからの海外企業への安定供給は困難で、いつ国家が市場に介入するか不安が大きい。
⑥他地域での埋蔵量は少なく、安定供給に不安。新規鉱山の実際の生産がいつになるか、プロジェクトとして採算性が
取れるか疑問。
PGMの鉱床は遍在しており、南アフリカの埋蔵量は非常に多い。ロシアの自己中心な政
策やロシアでの閉塞的な投資環境を考えれば 南アフリカからの安定確保に
努めるべきだが方策は?
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