ひび割れ、はく離、空洞 1 ■サーモグラフィー ・原理:赤外線カメラを用いて構造物表面温度を計測し、表面温度異常部から、 内部欠陥の存在を推定。内部に生じた空隙等の欠陥が断熱層となる。 ・測定の基本:晴天日で日射受熱量が最大となる、あるいは最高気温、最低気 温となる時間に測定。 →空洞、ひび割れ、浮き等の異常物付近の表面温度が明確な時。 検出深度は表面から50㎜程度。 健全部と欠陥部の温度変化 地覆の剥離、浮き ※欠陥部は温度変化の影響を受けやすい。 1/64 かぶり・埋設物 1 ■電磁波レーダー ・原理:電磁波を送信アンテナから放射し、受信アンテナで受信し伝播時間から反射 体までの距離を測定。すぐ結果が得られる簡便な手法であるが作業者の技量や経験 に依存する。 ・適用箇所:異物、ひび割れ、はく落、空洞、躯体厚(トンネル覆工)。・周波数:周波数 が大きいと減衰が大きく、小さいものが対象。遠くや大きいものは周波数を小さく。 (400MHz~1GHz)・測定:平面的位置、深さ方向の位置測定。 ・配筋について:基本的には埋設物や空洞部の調査で、鉄筋径等の詳細は不利。 鉄筋位置 所在地 :千葉県 対象構造物:跨線橋 壁式橋脚 供用年数 :39年以上 断面寸法 :幅 W=7.0m 厚さ t=2.0m (地上部)高さ H=3.0m 2/64 鉄筋腐食 1 ■中性化試験 ・原理:フェノールフタレイン1%エタノール溶液はPH10以上 で赤紫色に呈色。 ①はつり法:はつり面に直接フェノールフタレイン溶液を 噴霧し、4~8箇所を等間隔で測定する。 注)コンクリート粉の除去する。測定時水洗いをしない。 ②コア採取:コアを採取し削孔面、コア側面、割裂面を測定。 等間隔で5箇所以上を測定。 注)のろが付着した場合は、のろを水洗いしてきれいに 落とす。 ③ドリル法 試験:フェノールフタレイン1%溶液を噴霧したろ紙 にドリルの削孔粉を落下させの変色位置を測定。 →構造物を破壊せずデータを多量かつ簡易に入手。 中性化深さ測定位置 注)中性化深さの測定箇所 ・鮮明な赤紫色に着色する部分 まで。 ・骨材粒子がある場合は中性 化位置を結んだ直線上で。 中性化深さ 直線 粗骨材粒子 はつり法 コアによる方法 ドリル法 無色 赤紫色 (鮮明) 3/64 鉄筋腐食 3 ■自然電位測定(出題が多い) ・概要:鉄筋腐食の推定。 鉄筋を+、コンクリートを-として電位差を測定。 ・調査方法:照合電極の先端は含水させたスポンジ等を巻きつけコンクリート表面 に保持。電位差計の分解能は1mV以下の直流電圧計。 + 電位 - 0 差計 照合電極 鉄筋 水を含ませたスポンジ 自然電位(mV) -0.1 -0.2 -0.3 腐食 -0.4 -0.5 コンクリート 時間 飽和硫酸銅電極により測定した自然電位E(mV vs CSE)によって判定する ASTM C 876 -200mV<E -350mV <E≦-200mV E≦-350mV 90%以上の確率で腐食なし 不確定 90%以上の確率で腐食あり 4/64 コンクリートの配合推定、微細構造 2 ■走査型電子顕微鏡(SEM) ・原理:顕微鏡の一種でセメント硬化体組織、アルカリシリカゲル、エトリンガ イトの生成状態を調査。 ・走査:小豆大のサンプルがあればOK。前処理としてサンプル表面に薄膜 の金属を蒸着。金属としては炭素、金が一般的。 ・精度・適用限界:水を含んでいるサンプルは装置に悪影響。物質の特定 は難しく専門技術者の判断を仰が必要な場合も。 エトリンガイト ■電子線マイクロアナライザー(EPMA) ・対象:コンクリートの断面内における炭酸化、 塩化物イオンの侵入状況、下水道劣化の侵入状況等の面分析。 ・測定:サンプルカッティング→鏡面研磨(潤滑剤に水の使用厳禁)→ 超音波洗浄機によりアセトン洗浄→乾燥→金属蒸着→EPMA分析 中 性 化 内 部 炭素の分布(白=炭素) 中性化によって 塩化物が内部へ 塩化物の分布(白=塩化物) (中性化フロント現象) 5/64 コンクリートの配合推定、微細構造 3 ■水銀圧入式ポロシメーター 水銀に圧力をかけコンクリート内に圧入し、 加えた圧力と押し込まれた水銀容積との関 係から細孔分布を求める。 細孔容積量(cc/g) 1 30 25 20 15 10 5 0 0.001 2 0.01 3 0.1 4 1 10 細孔径(μ m) ■示差熱重量分析(TG-DTA) 試料の温度を変化させながら、重量の変化を測定し、定性・定量を行う。 ⇒火災を受けたコンクリートの受熱温度の推定 ■X線回折 物質にX線を照射し、回折角度によ り物質の結晶構造を把握し、含有成分 の同定を行う。 ⇒岩石中の成分分析 6/64 コンクリートの配合推定、微細構造 3 ■アルカリシリカ反応の調査 コンクリートコアから採取した骨材によって行う試験 ①反応性鉱物の観察:(岩石学的な判断) ・ 偏光顕微鏡観察 ・SEM(走査線電子顕微鏡) ・ X線回折 ・EPMA (電子線マイクロアナライザ) 偏光顕微鏡観察の一例 Gl Cp Cp Pl Pl Cr Oq Pl Cp Cp Oq Cr Pl Cr Gl Gl 凡 例 Qz:石英 Pl:斜長石 CP:単斜輝石 RP:斜方輝石 Ho:角閃石 Ch:緑泥石 Mi:雲母 Gl:ガラス Cr:クリストバライト Sm:スメクタイト Oq:不透明鉱物0 メイジテクノ(株)HPより ②骨材のアルカリシリカ反応性試験 化学法(JIS A 1145):粉砕した骨材試料を80℃の1N-NaOH中に24時間浸漬 ⇒ろ液の溶解シリカ量とアルカリ濃度減少量から「無害」または「無害でない」を 判定する。 モルタルバー法(JIS A 1446):水酸化ナトリウムを添加し、等価アルカリ量(1.2%) にしたモルタル供試体を湿気箱(温度40℃、相対湿度100%)に保存し6カ月後の 膨張量を測定する。膨張率0.1%以上であれば「無害でない」と判定する。 結晶格子を持つ石英、チャート等、膨張反応が遅いものは適切に評価できない。 7/64 コンクリートの配合推定、微細構造 3 ■アルカリシリカ反応の調査 ●コンクリートコアに対して行う試験 ①促進膨張試験(残存膨張量の測定) コアを促進環境下にて養生し、今後の膨張の可能性を判定。 【判定基準】阪神道路公団:全膨張量0.1%を超えるもの(膨張が収束するまで) 建設省:膨張量0.05%以上(13週の促進養生) ・JCI-DD2法:温度40℃、湿度100%条件下 ・デンマーク法:温度50℃の飽和NaCl溶液中に浸漬 酢酸ウラニル蛍光法の一例 ・カナダ法:温度80℃の1N-NaOH溶液中浸漬 ②アルカリシリカゲルの判定 ・蛍光X線分析 ・酢酸ウラニル蛍光法 ・偏光顕微鏡観察 ・SEM(走査線電子顕微鏡) ●その他 石川県の反応性骨材とASR劣化構造物データベース化 コンクリート工学年次論文集、Vol30、No.1、2008より ・アルカリ量の測定 コンクリート試料を粉砕した微粉末試料やコア試料により、コンクリート中の アルカリ(Na+、K+)を採取してアルカリ量を測定し、診断の材料とする。 8/64
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