地震計に用いる C o e l i n v a rつる巻ばねについて* 矢 崎 敬 * * 5 5 0 .3 4 1 On. theC o e l i n v a rSpringf o rtheV e r t i c a lSeismograph K.Yazaki ( M e t e o r o . l o g i c a lI n s t r u m e n tP l a n t ) Toremovet h eu n f a; v o u r a b l ee f f e c t softhetemperaturechangeont h emains t e e lh e l i c a l o e l i n v a rs p r i n gi st e s t e d . . The super~or s p r i n go f the p r e s e n tv e r t i c a l sei~mograph, a c c h a r a c t e r i s t i c soI 't h ec o e l i n v a rs p r i n gt ot h es t e e ls p r i n gandi t sc r e e pc h a r a c t e r i s t i c sbecame c 1e a r . The amount o ft h e temperature change i nl e n g t ho ft h ec o e l i n v a rs p r i n gi sabout o i ld i a .41 .4 φ,ande f f e c t i v enumberofc o i l1 9, --0.6μ/oc f o rt h es p r i n go fw i r ed i a .5 . 9 φ,c and: jh a ti sa b q u t1/20 't h a to ft h es t e e ls p r i n go ft h e same d i m e n s i o n s . Thec r e e ph a sbeen 斜均時 r vedf o rabout2, 0 0 0 h r s . A f t e rt h eh e a t treatmenttoimprovet h ec r e e pc h a r a c t e r i s t i c s, cre~p ' i sn o tp e r c e p t i v e,andt h eamounto ft h etemperaturechangei nl e n g t hbecame2 . 0f t/ o c . Fro I 1 ' 1t 1 l e s ee x p e r i m e r i t s, i t becomes c 1 e a rt h a tt h ec o e l i n v a rh e l i c a ls p r i n g improves t h e c.hara,ct~ristics ~ o ft h ev e r t i c a l seismographremarkably. ,.はしがき 従来,上下動地震計は特殊のものを除いては, Gray型あるいは ' E w i n g型などといったように重 鐙をつる巻ばねでつり下げる式のものがほとんどである.このような地震計にあっては,つる巻ば ねを調節して振子を零位に保持するわけであるが,ばねの材料としてはもっぱら銅線あるいはばね 鋼が用いられているために,一度零位に調整しておいても,地震計の設置されている室の温度の変 化に影響されてばねが伸縮して零位の変化を生ずる.特に倍率の大きいものになると, この変化は 記象紙上に顕著に現れることになるので,温度変化による伸縮の橘正.装置をつけなければならない. ワィーへノレト地震計がその一例であるが, 温度補正器がついているにもかかわらず, 常時観測者 が重鍾を増減していなければ,完全に補正ができない状態である.温度補正器が完全に機能を発揮 すれば,これを用いるのも,ばねの温度による伸縮の影響を除く一つの方法であるが,厳密にいえ ば,温度による材料の弾性係数の変化は周期をも変化させることにもなるので,温度による特性の 変化のきわめて小さい材料を用いることができるならば,はるかに抜本的な方法と考えられる.こ のような要求をみたす材料として Co-elinvar を選び,つる巻ばねを試作し,地震計に実用するに 先きだって二,三の実験を行ったので,その結果について報告する. *ReceivedJan.19,1955 料気象測器工場 - 1~ 2 ~ 験震時報ー第 2 . 2 0怠 第 1号 温度菱化に件うぼねの伸縮について つる巻ばねのゴイノレ軸線方向に引張あるいは圧縮荷重をかけた場合,荷重と伸びとの関係は一般 に次のように表わされる. 2l α 2/G o=PR { ( c o s ん)+(siが α/EI)}...・ H ・..…・人……...・ H ・・・ . . … . . . ・ H H H ・ . . ( 1 ) D=2R三コイル径,1= ばねを形成する線の有効長さ ~'G= 剛性率 , E=ヤシグ率 , 1=素線 6 4,1p =:=素線断面の極断面二次モーメント 7t♂/ 3 2,d=ば 断面の断面三次モーメント π♂/ ねの線径 温度変化が生ずると,ばねを形成する線が線膨脹を起すばかりでなく,剛性率,ヤシグ率ともに 変化するために,たとえ荷重 Pが一定でも, 伸びに変化を生ずることは (1)式からめいりょうで ある. い ま , あ る 基 準 温 度 丸 。 C のときのばねの線長,岡] 1性率,ヤング率をそれぞれ 1 ,E。とし, 0,Go , G,αE とすると ,t度の温度変化が ばね材料の線膨脹係数,弾性係数の温度係数をそれぞれ αt,a あった場合には,荷重 P の下での伸びは, α/{ δt = P R 2 1 0(1+αの ( c o s。 α/{IG (l+αG t ) }+sin2 I E o (1+αE t ) } J… … ( 2 ) o となる.なお, TooCのときの伸びは, Oo=P I ? J1 o{(cos2 a/lpG )十 sin2 a/IEo} ……....・ o H ・ . . . ・ H ・..……… H ・ ・-… H H ・・ . . .( 3 ) H である. ( 2 )を書き直すと 3 也 α/ ' Ot=P J ? Al { ( c o s2 IpG )+(sin2 a/IE ) }+PJ ? 2l { ( ぬ 一 αG ) c o s2 a!んGo (尚一 αE ) }+ { o o( o o 2 α/ s i n I E o } Jt. . . ・ H ・ -7 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 4 ) となる.したがっ.て ,t度の温度変化によって生じた伸びの変化は, ( 3 ) ならびに ( 4 ) から 2 α 2/ ムOt=PR 1 ( α古 一 αE)sin I E o } Jt・ ・ … ・ … ( 5 ) o({(αt- αG)cos~α/IpG o} + { H である.ばねに鋼材を用いた場合を考えると, 4 αi = : 1 0 .96x1 0 -6/ " C,αG土 ヲαE=3.3X1 0 ; oC であるから,ムふの変化に対しては α z より α α ならびに αEがより重要な要素であることがわか る.これは鋼ばかりでなく,他の材料についてもいえることで,ぬのほうが αG,αE に比して 1 けた小さい値であるから,温度による伸びの変化の小さド材料ということは, ぬの小さいことも 大切であるが,それより αE,αG の小さな材料ということである. E l i n v a r はその名のように弾性係数の温度変化が小さいことで知られ τいる.そのおよその傾向 は , F i g .1のようであるが,さらに最近,増本量博士が発見された C o e l i n v a r では αE=5.5x、 5 5 1 0 " ' 8 . 5X 1 0 という値をとり,このあいだには αE=Oの場合もありうるわけで,銅の場合に くらべて 1けた小さい値が得られる. - 2ー s 3・ ・地震計に用いる Co, e l i n v a r ・ 勺る巻ばねにういて一一矢崎 1 これらの利点から,一昨年東北大学金属研究所に CoM l - e l i n v a r を材料とするつる巻ばねの試作をお願いし,一て昨 6TI 年末入手以来試験を試みてきた. 3 . ~ ... ・〈 2 0 戸 : ; o 鋼材ばねとの温度ー伸び菱化の比較 2型強震計土下動用の まず,予備試験として中央気象台 5 鋼材ばね(材料はピアノ線で初張力 0 ' . 5 k gを 持 つ , 素 線 径 3 φ ,ゴイノレ径 4 2 . 6 φ ,有効巻数 9) を用い, F i g .1 . これに直 接 花g の重錘をつるし,ばねの温度特性を Lらベた. 包装置全体を恒温槽に牧めて実験を行うことができなからたので, できるだけ空気のじよう乱のな い室を選んで,室温の変化に伴う伸びを測定することにした.その装置は F i g . 2 .に示すようなも i g . 3 . . aに示す ので,その測定の結果,得.られた温度一時間,伸び一時間ならびに温度一伸びは F 主うLにきわめて良ぐ理論式に示されるような l i n e a rf u n c t i o n の関係を示し, F i g .3 . b から求め た温度?伸びの関係は, δ= 11.59t , ( μ ) . と得られ t c .室温の変化を用ドて,上記のような linearrelationを得ることができたので,続く 測定も室温の変化を用いることとした・ -L駕 穐 1 5 0 60 100- -' ' " ' V I ' C20 EJAU ﹃ -司選 ιS8這51 SMW40hR送 CJ ω凶 23MUS皆 同 居s h p、 守副 zJ-nu , elFa'' h叩 除 m-MM MM 1 1 F i g . 2 . 1 0 0 12 13 T i .me 14 15 F i g .3 .a s o 45 ' C 1 5 1 0 F i g .. 3 .b 次に,同じく普通地震計に用いるために製作した鋼材ばね(素線径 φ 6 ,ゴイノレ径 3 9< 1 >,有効巻 . 数 2 0,使用荷重 60kg) について Fig.4のような測定装置にし,重鍾を 3種に変え, ばねにか かる荷重を 1 8kg,25kg ,3 5kgにして同様に温度一伸びを測定した結果, Fig.5を得た. o e l i n v a rばねとしては,結果が良ければ,普通地震計に試用することを考え,ばね常 さて, :C 3 数を同じくするために, C o e l i n v . a rばねの剛性率をおよそ 6 .7x1 0 1 c 1 } /mm2 と仮定し, D=41 .4,d=6.5 ,n=20 -3- 4 験震時報第 2 0怠 第 1号 のばねの試作を東北大学 金属材料研究所に依頼し た. 試作したばねは,種々 の都合により i D=4l. 4 , d=5.9, n=19, 10C のものとなった.、 5 このばねについても同 Fig.5. F i g . 4 . 様な試験を行うために',.' Fig.4 と同様な装置にじ τ測定を行三た.この測定については次項に述べるクリーフ?にも関連があ るが, ig.6のようで,図中鋼材ばねの測定値は Fig.5 中に示されているも およその結果は F のと同様である. F ig.6に明らかなように, 鋼材ばねが温度の μ 300 上昇にともなって伸びる性質を持っているのに対し, C o e l i n v a r ' L o a r i35匂 ばねは温度上昇にともなって縮む性:質を持っている.その縮み量 2 ω . 5 6 μ / o cで鋼材ばねのそれに対し,ゃく はおよそ 0 ~ の大いき . 9 0 0の地震計に使用したとすると,鋼材ばね である.これを倍率 1 はJ ' < > 1/2 0 E 、‘UHa ~ が温度1"C の上昇に対し記象紙上.1.3mm の変位になるのに対 < > 4 企 手 、 弓 ! 1 ぢ 2 1 0 0 本当 司 " 民 し,同じばね常数ゐ C o e l i n v a rばねは 0;06mm くらいの変化 t しが生じないと-とになる. ~ 口 む 4 . Co-elinvarばねの creepについての測定 E l i I i v a r合金は h y s t e r e s i sが大きいのがばね・に用いた場合に s c 世 Fig.6. 懸念される点であるが,その点を確かめるための充分な試験装置がないので,前項同様陀室温を用 い,毎 R一定時間ごとの温度一伸びを観測し,一日ごとの温度一伸びの関係から,ある一定温度の ときの伸びの示度とその時刻を読み取り, F i g .7の一定温度についての伸び一時間線図を得た. a Fig.7. ---4- ー 地震計に用いる C o eI i I lvar‘つる巷ばねについて一一矢崎 5 一般に金属の c r e e p試験は一定温度の下で,一定荷重または一定応力の下で長時間の測定を行って, c r e e p特性をうんぬんできるのであるが,場所ならびに時間のつごうで 2,000時間 はじめてその ' 0 C の示 足らずの測定しかできなかった.かつ,測定期間が冬季から春季にまたがっていたため, 5 00C の示度は測定期間の半ば以前には得られなかったので, 度は測定期間の半ば以後は得られず, 2 資料として用いられるのは 1 00C の線と 1 50C の線との 2本となった.この曲線を資料として, c r e e p速度芯らびに c r e e pひずみを求めてみるに, c r e e p速度が漸減する第 I期の部分においで 金属材料の c r e e p試験の場合と同様, m m-l o=ct ,v=cmt ( c,m はともに材料,温度,応力によって決る常数) の関係が適用されるものとして, 1 00C につき O・ 8二 6.583t 228.,c =6.583,v = L 5 0 1 J " ' 0・ 772 m=0, 2 2 8 1 50C につき, O・ 0=21 .2 6 3t 125,c =21 .2 6 3,v=3.2321 -0・848 m=0.152 が得られた・ 1 これらの 8ならびに 数日盛上に描き観測値をブ。ロ γ U の変化を F ig.8に示す. さらに, の 1 00C の結果を両対 ζ トしてみると, F i g . 9のようになり,ゃく 1,500時間後においても c r e e p 速度ー定の第 E期に達していないことがわかる.しかし, 2,000時 間 後 の c _ r e e p速 度 は Fig.8 あるいは F i g . '9から 1 5C の場合において 0 . 0 0 5 μ/ h r = 0 . 1 2μ/ u'1 あまりで実用にはまっ 0 ' 1 川 刷 mvI 一T たくさしっかえないことは明らかである. I S ' C お官 v e dν ' a l u e sofγ 丸一 明 、も μ m 。 合 山川町 v mI 1 I=Cηu I = c t ω I1 0 " 1 0.660 d ι 日550 t. .~ トー4・ 0 . 4 4 0HL p rT σ 1 01 , 内¥ 。 。 3m . 4 f X ) 9 m A r 一夜 万一一刀 'i? 雨 明 仰 捌 卿 : F I g .' 8 : ‘ ~ WI0 1 Vi 1 0 /0 0 . I . I J ω 官0 0 0 Fig.9. 5 . 低温熱処理後の特性の率化 0 0 0時間後においても,なお,ばねの c r e e p が進行していることが 第 4項に述べたように, 2, わかったので,実際に,普通地震計に取り付けで実験する前に低温熱処理を行うことによって c r e e p 特性を向上させることを試みた. - 5ー 験震時、報第 2 0巻 第 1号 6 3 5 k gにさらに . 4 k gを加え, 3 9 k gの重錘左つるし,加熱炉としては木 負荷とじては使用荷量 、 験 炭使用の乾燥炉を用い, L 1 3 0oC, 6時間の加熱を行いそのまふ徐冷して後取り出し 4 k g を除去 して観測を行った. まず,試験期が気温変化の少ない O 2月であったので, 日変化はわずかに l C程度でほとんど温 度変化のない半地下室で,実際院普通地震計上下動成分に組み立て,送りをかけない地震計ドラム r e e p .の有無を観測した. その結果,ばねの伸び その記録線のズレすなわち c 上に記録せしめて, については,ゃく 2 1 0倍の拡大率になるドラム上において数日間の観測においても,今度はまった r e e pの現象が見られなかった. くc 次に,セ γ ト全体を温度変化の著しい地上の室に置き, 温度変化に伴う伸びを観測した.前と同 様送りをかけないドラムを 1回転 3 0分に調節し, 3 0分ごとの記録線の ズレとそのときの温度とを読みとり,これから温度変化に伴う伸びを出 i g .1 0に示す. そこで, した. その結。果を F mm 低温熱処理後の温度一伸 i g .1 0から びの関係は F 0 = 2 . 0 μ / o c I~ となる.これは処理前の値の約 3倍にも及ぶが, 実際にこのばねを用い、 1 0 3 . る普通地震計のドラムの送りは 3 0分 I回転につき 2mmであるから地震、 国 計室内の温度変化では全くさしっかえない. ~S. 結語 以上の試験観測の結果は,観測設備の不備もあって,もちろん満足な o e l i n v a r 'S p r i n g を上下動地震計の主スプリングとして用いることによって, ものではないが, C 従来の欠点を除去した満足な地震計が得られることが明かとなった.今回の試験観測に使用した Co.o:,~linvar S p r i n gは,現在の 5 3年型普通地震計に使用するためスプリングとして多少無理な設 o e l i n v a rの 計諸元で,金属材料研零所に詩作をお願いした最初のものでもある1:-,たがって, C ヒよることによって, 特性によ‘く適合した藷元 i さらに一層良好な成績を期待できることは明らかで ある. こ与に,ばねの試作を引受けていたどき, さらに, 種々の御指導をいたどいた東北大学金属材料 研究所長増本量博士ならびに所J員のかたがた, 種々御教示をい主ごどいた気象測器工場長岡田群司先 生および御協力をいたどいた王場の各位に厚く感謝する次第である. r ~ 6ー
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