2014 年 5 月 1 日付改訂のポイント

2014 年 5 月 1 日付改訂のポイント
What’
s New in the Guidelines?
2013 年 2 月 12 日版のガイドラインを改訂した。改訂版には新たな項目を追加し、従来の項目に重要
な変更を加えた。本文中では、主要な改訂箇所をグレーのマーカーで表示している。
新たな項目
■ コストに関する検討事項と抗レトロウイルス療法
過去のガイドラインでは、抗レトロウイルス療法(ART)に関連する治療コストを正式には議論し
てこなかった。新たな項目では、服薬アドヒアランスに関連することとして、費用分担、事前の承認、
および後発医薬品の使用についての議論など治療コストの概要を説明する。ここでは、治療効果を損
なわずにコストを抑制する戦略の可能性についても詳しく述べる。
従来の項目に対する主要な変更
■ CD4 陽性 Tリンパ球数のモニタリング頻度に関する推奨の変更
「臨床検査:血漿中 HIV-1 RNA 量(ウイルス量)と CD4 陽性 T リンパ球数のモニタリング」の項(9
ページ)に変更点が多く見られる。
●成人および青少年に対する抗レトロウイルス薬に関するガイドライン専門委員会(以下、委員会)は、ウ
イルス量は ART の効果を判断する最も重要な評価基準であり、ウイルス抑制が維持されていることを確
認するためにも定期的に監視する必要があることを強調している。 CD4 陽性 T リンパ球数(CD4 数)の
測定は治療を開始するにあたり不可欠であり、ウイルス量と CD4 数によって ART 開始の緊急性と日和
見感染症(OI)予防の必要性が判断される。ART 開始後は、進行した HIV 感染患者の OI 予防や OI 治療
の中止時期を決めるうえで CD4 数のモニタリングは最も有用である。
● CD4 数の頻繁なモニタリングは、特に CD4 数が多く(>300 個 /mm3)ウイルス量の抑制が維持できてい
る場合は、患者を管理するうえで一般的には必要ではない。そのため、当委員会は、少なくとも 2 年以
上 ART を受けておりウイルス量の抑制が維持できている患者に対する CD4 数のモニタリング頻度を次
のように推奨している:
・CD4 数が 300 ~ 500 個 /mm3:CD4 数のモニタリングは 12 ヵ月ごと(BⅡ)
・CD4 数 >500 個 /mm3:CD4 数のモニタリングは任意(CⅢ)
●当委員会は、ウイルス量のリバウンドを経験した患者;新たな HIV 関連臨床症状が発現した患者;また
は CD4 数の減少につながるおそれのある症状が認められたか、そのようなおそれのある治療法を開始し
た患者、に対してはより頻繁な CD4 数のモニタリングを再開するよう推奨する(AⅢ)。
●当委員会は、CD4 陽性 T リンパ球以外のリンパ球サブセット(例えば、CD8、CD19)のモニタリングは
臨床的に有用ではないとして、高価であることから日常的に推奨されないことも強調している(BⅢ)。
●表 4 が新規に追加され、ウイルス量および CD4 数のモニタリング頻度に関する当委員会の推奨の概要を
説明している。また、表 3 は、これらの変更を反映して更新されている。
■ 初回の抗レトロウイルス療法の推奨区分が“優先処方”から“推奨処方”へと変更
「どの処方で開始すべきか:抗レトロウイルス療法未経験患者に対する初回併用処方」の項(54 ペー
ジ)に変更が加えられた。
●過去数年間に、米国食品医薬品局(FDA)は、ART 未経験患者に向けて数種類の新規抗レトロウイルス
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2014 年 5 月 1 日付改訂のポイント
薬と配合剤を承認した。長期観察研究からのデータおよび実臨床での経験に基づき、当委員会は初回治
療の選択肢が拡大していることを認識した。その結果、当委員会は、このたび、初回治療の選択肢を“優
先(Preferred)”処方ではなく“推奨(Recommended)”処方と表現することにした。
●推奨処方はさらに 2 つに細分化されている。
1.ベースライン時のウイルス量あるいは CD4 数にかかわりなく ART 未経験患者に投与できる処方:こ
れらの処方は、過去のガイドラインにおいて“優先”処方とされていた、テノホビル ジソプロキシルフ
マル酸塩 / エムトリシタビン(TDF/ FTC)にエファビレンツ(EFV)またはリトナビルでブーストした
アタザナビル(ATV/r)かダルナビル(DRV/r)またはラルテグラビル(RAL)のいずれかを併用した処
方を含む。また、新規に 3 処方が、推奨処方として追加された。
・ドルテグラビル(DTG)+ アバカビル / ラミブジン(ABC/3TC):HLA-B*5701 陰性の患者に限る
・DTG+TDF/FTC
・エルビテグラビル(EVG)/ コビシスタット(cobi)/TDF/FTC:ART 開始前のクレアチニンクリア
ランスが 70mL/ 分以上の患者に限る。
2.推奨処方ではあるが、ART 開始前の血漿中 HIV-1 RNA 量が 100,000 コピー /mL 未満の患者に限る処
方:これらの処方を以下に示す。
・EFV+ABC/3TC:HLA-B*5701 陰性の患者に限る
・リルピビリン(RPV)/TDF/FTC:CD4 数 >200 個 /mm3 の患者に限る
・ATV/r+ABC/3TC:HLA-B*5701 陰性の患者に限る
●当委員会は代替処方のリスト(表 6)を改訂した。代替処方として挙げたものは、有効性および忍容性は
高いが、推奨処方と比較した場合、欠点がある可能性があり、これらの薬剤の使用を支持するデータが
少ない。
●推 奨処方、代替処方が多数あるため、多くの抗レトロウイルス薬が、もはや初回治療に推奨されなく
なっている。ジドブジン(ZDV)
、ネビラピン(NVP)、ブーストなしの ATV、リトナビルでブーストし
たホスアンプレナビル(FPV/r)やサキナビル(SQV/r)、およびマラビロク(MVC)などが初回治療には
推奨されなくなっている。
● ABC や TDF が使用できない場合の初回治療について、抗レトロウイルス戦略に関する臨床試験データ
を要約した項目が新規に追加された。
■ウイルス量の抑制が維持されている状態において抗レトロウイルス薬を切り替える際の主要な原則を
強調
従来のガイドラインの「処方の単純化」が改訂され、新しい項目名「ウイルス学的抑制が得られてい
る状態での処方の切り替え」
(100 ページ)となった。主要な改訂点を以下に述べる。
●当委員会は、ウイルス量抑制下での処方の切り替えに関する重要な原則は、患者の将来の治療選択の幅
を狭めることなく、ウイルス量の抑制を維持することであると強調している。また、処方の切り替えを
検討する際には、患者の過去の治療記録、ART の効果、薬剤耐性、忍容性を考慮するべきであることも
強調している。
●新項目では、従来の処方から代替処方への切り替えについて調査した臨床試験のデータを検討している。
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■新規の表が追加され、副作用が原因で抗レトロウイルス薬を切り替える際の薬剤の選択に関する推奨
を紹介している
「抗レトロウイルス薬の副作用」の項(165 ページ)に追加された新規の表(表 15)は、副作用が原因
で抗レトロウイルス薬を切り替える際に、臨床医の指針となる。
●当委員会は、表 15 の説明で、副作用が原因で処方を切り替える際の重要な原則は、患者の将来の治療選
択の幅を狭めることなく、ウイルス量の抑制を維持することであると強調している。また、新規に抗レ
トロウイルス薬を選ぶ際には、患者の過去の治療記録、ART の効果、薬剤耐性、忍容性を考慮するべき
であることも強調している。
その他の改訂項目
以下に示す項目についても改訂されている。
●治療未経験患者に対する抗レトロウイルス療法の開始(31 ページ)
●ウイルス学的失敗と不十分な免疫反応(89 ページ)
●青少年および若年成人の HIV 感染者(119 ページ)
●抗レトロウイルス療法に対するアドヒアランス(158 ページ)
●薬物相互作用(表 17–19b)
(176 ページ)
●薬剤の特徴(付録 B)
(210 ページ)
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