根釧地方にふミける放牧草地の 草種構成と収量の関係

北海道草地研究会報 2
3
:27-29(
1
9
8
9
)
根釧地方にふミける放牧草地の
草種構成と収量の関係
昌雄・宝示戸雅之(根釧農試)
能代
早川嘉彦(現農環研)
1
.
緒
日
既に早川らが報告したように,根釧地方におげる放牧草地では,チモシー (TYと略) ,オーチヤード
グラス (OGと略) ,メドウフェスクなどの割合は造成後の年数を経るに従って低下する傾向を示す。し
.
.
.
.
.
.
.
5年で 50%以下に低下する場合と, 1
0年を経過しても 5
0
かし,これを詳細にみると,造成後間もなく 4
%以上を保っている場合がある。一方,地下茎型のケンタッキーブルーグラス (KBと略〉は経年的に優
0年以上経過しても優勢化しない
勢化がみられるが,この傾向も全ての草地について言えるのではなし 1
場合もみられる。これらのことは,根釧地方においても適正な管理を行うと,主要牧草を維持し, K Bの
優勢化を抑えることが可能であることを示唆している。
, T Y型の 2種類の草地について, K B混生割合の様々に異なる草地
このような背景のもとに, O G型
を準備し, K Bの優勢化に及ぼす利用回数と N施肥量の影響を検討した。
2
.試験方法
1)供試草地
O G型 : O G (キタミドリ) - LC (カリフォ Jレニア) - K B (ケンブルー〉混播草地, T Y型 :TY
(センポク) - W C (フィア) - K B (ケンプ、 lレー〉混播草地。 O Gおよび T YとK Bの播種割合を 4 :
0, 3:2, 2:4, 1:6と変えて 6
0年に造成し, 6
1年 KKB播種割合の多い区ほど多国刈りし, K B
割合の異なる草地を 4種類準備した。
2)利用回数の影響
利用回数は年 4, 6, 8回の 3段階もうけ, N:P205 :K
20 =8 :9 :26K9/10a を 4回に分施した。
3)窒素施肥量の影響
N施肥量は年 4, 8, 1
2K9/10aの 3段階もうけ,共通施肥の P205:
K20=10:22K:μOaと共に 4固に
分施した。利用回数は年 6回
。
なお,利用はスターモアによった。
3
.結 果
O G・LC.KB混播草地について,利用回数を 4, 6, 8回とした場合の K B割合の経時変化を図 l
に示した。 4回利用時の年間平均の K B割合が 10%程度の草地(左図〉と 30%程度の草地(右図〉の収量
を比較すると, K B割合の低い草地の方が多収であった。また,利用回数を増すと両草地ともほぼ同じ割
合で収量低下した。 K B割合の経時変化は, K B割合の低い草地では小さかったが, 8回利用ではやや増
0
9
ら程度の草地は, 4
.
.
.
.
.
.
.6回の利用では, K Bの優勢化がみられなかった
加傾向がみられた。 K B割合の 3
が
, 8回利用では明らかに優勢化した。
-27-
J
.Hokkaido Grassl
.S
c
i
. 2
3
:2
7
"
'
:
"
_2
9(
1
9
8
9
)
次に図 2には TY.WC.KBに
利用回数の影響
混播草地について, K B優勢化に及
ぼす利用回数の影響を示した。 4回
4
0
KB
3
0
1
ト OG lCKBニ 咽 43g
#1
利用時に 20%程度の K B割合を示し
た草地(左図〉と 5
0
r
o程 度 の 草 地 (
・
4 1
0日σ69)
*2
.
.
.b 7
6
08 6
1
%
20~
右図〉の収量を比較すると, O G型
61
OGL
CK
B=4
33
12
持
ト戸ぷう
。
草地と同様, K B割合の低い草地の
方が高収であり,利用回数を増すと
L
明らかに K Bが優勢化した。
g
B
4回利用では K B割合の経時的変化
6
.
.
.
.
.8回利用では'
4 1
日o
(
6
2
7
)
持2
9月
6
74
o8
5
1
A
1
0
いずれも収量低下した。両草地とも
が小さかったが,
・
・
9月
8
B
図1. 0 G型草地の K B優勢化に及ぼす利用回数の影響
長 1 4回利用の場合の年間平均草種構成割合(%)
長 2 年間合計乾物収量
Kg/I0a
このように, K Bの優勢化を抑制
利用回数の影響
する利用回数は O G型草地では 6回
,
80.
I T
YWC K
B=4
9J
31
9
叫
T Y型草地では 4回であった。
図 3には O G型草地について, K
K
B
B優勢化に及ぼす窒素施肥量の影響
を示した。 K B混生割合の低い草地
(左図〉では,
6
7
4
o8
57
企
4
0
児
LC割合が高かった
2
0ト 園 、
ので,窒素施肥量を増しでも増収し
日L
なかった。また K B割合の経時変化
も判然としなかった。 K B混生比が
30%
程度の草地(右図〉では,窒素
ーーー」
g月
B
圃
4 1
日0
(823)持 2
企
b
72
o8
58
g月
8
図2
. TY型草地の K B優勢化に及ぼす利用回数の影響
決 1
, 長 2 図 1と同じ
施肥量を増すと増収したが, N
12l
{
,
凶O
a
では K Bの優勢化をうながす傾向が
4
0
あった。
*1
OG L
CK
B=4
64
77
図 4には同様に T Y型草地につい
て
, K B優勢化に及ぼす窒素施肥量
の影響を示した。 K B混生割合のや
や低い草地(左図)では,窒素施肥
量と K B割合の関係が判然としなか
3
0
K
B
2
01
-
圃
4 1
日
日(
5
37)叫
企
8 1
日5
012 1
1
1
OG l
C KB=41 2
73
2叫
%10
•
aHW
s
図)では N施肥量を増すほど K Bの
優勢化が助長された。したがって,
O G型
, T Y型草地とも K Bの優勢
4
100(313ず2
.
. 8 1
2
8
o12 150
L
うた。 K B混生割合の高い草地(右
窒素施肥量の影響
8
9月
図3
. 0G型草地の K B優勢化に及ぼす窒素施肥量の影響
発 1 N4K
g/I0a施肥の場合の年間平均草種構成割合(%)
長 2 年間合計乾物収量 K
9/10a
化を抑制するためには,窒素施肥量
-28ー
23:2
7-2
9(
1
9
8
9)
北海道草地研究会報
窒素施月巴量の影響
を8
K
!
V
'
l
Oa程度とすべきであると思
8
0
われた。
4
型
, T Y型
以上のことから, O G
草地の草種構成と収量を維持し, K
6
0
KB
Bの優勢化を防ぐためには, O G型
4
0
草地では 6回
, T Y型草地では 4四
%2自
=
TY WC KB=30 44 26
持 1
・
8
1
0
6
012
1
1
6
A
TY WC KB 949.42*1
100 (613)
長2
圃
の刈り取り回数に相当する放牧回数
とすべきである。また,窒素は多量
B
8
g月
自
4
持?
1日
日 (
6
4
5
)
.
.8
1
1
0
012
104
s
g月
に施用すると K Bの優勢化が助長さ
れるので,せいぜい 8K
9
/
1
0a程度ま
でとすべきである。
図4
. TY型草地の K B優勢化に及ぼす窒素施肥量の影響
持 1
, 持 2 図 3と同じ
引用文献
1)早川嘉彦。小関純一 (
1
9
8
4
)根室地方(別海町大成地区〉の放牧草地における土壌無機成分および
草種構成の実態,北草研報
1
8,9
3-9
7
-29-