航空衛星通信における

UDC 621.396.933:621.396.946:621.391.812
鯰 論 文鼈
航 空衛星 通 信 にお け る
マ ル チパ ス フ ェ ー ジ ング 特 1生
永 正
│1 孝
り
安
塩
幸*
泰 **
唐
沢
好
男 **
ⅣIultipath Fading in Aeronautical Satellite COmmunicatiOns
By
R/1asayuki YASUNAGA:R&D ⅣIanagement D市 isiOn Engineering Department
Yoshio KARASAWA and Takayasu sHIoKAWA:
Applied Radio Systems Group R&D Laboratories
The effect of rnultipath fading due to sea and ground surface reflection is severe problem in aeronautical
satellite communication systems using a low G/T terminal operated at low‐
This paper presents the theoretical rl10del of sea reflected、
elevatiOn angle.
vaves, taking account of the spherical effect
of earth、 vhich becomes more significant M7ith increasing the altitude. Using this mOdel, characteristics of
sea reflected multipath fading are shown cOmparing、
vith results obtained by the field experirnents aboard
a helicopter. Measured results of the ground reflected multipa,h fading are also described for several
geographical features of reflected area. As a result, the theOretical estirnates have a good agreement with
the experirnental ones. The depth of grOund reflected multipath fading is alinost equal t0 0r less than that
of sea reflected multipath fading.
][。
ニ ュ ア ル :System DefinitiOn Manual)を 1987年
ま えが き
6月 に発 出 し,現 在 ほぼ システム導入 へ の最 後 の
衛星 を介 した航 空機 。地上 間通信 (航 空衛 星通
調整段 階 に入 った ところで あ る
.
)は 海事 衛 星通信 に続 く移動体 通信 として近年
寺に注 目され,そ のサー ビス イ ン も真近 な もの と
在 の ところ,電 話級 サー ビスに 対 して10∼ 15dBi
なって い る。 イ ンマルサ ッ ト(国 際海事衛 星機構
程 度 ,低 速 デー タ通信 で は O dBi程 度 の利得 を有
`言
)
ところで,航 空機 に搭載 され るア ン テナは,現
では,グ ロー バ ル な航 空衛 星通信 の実現 に向けて
す るア ンテナが検討 の対象 となって い る。 この よ
システム構 成 の検 討や ,航 空機搭載用通信機器 の
うな低 利得 ア ン テナ を用 い る場合 には,ア ンテナ
環準化 作業 を進 め ,そ のSDM(1)(シ ス テム定義 マ
の ビー ム幅が広 い ため,海 事衛 星通信 と同様 ,低
,
`ネ
.メ
ッ トワー ク開発本 部開発部 研究開発課
研究所 無線応用 グループ
仰角 運用 時 に海 面 か らの 反射波 と衛 星か らの 直接
波 の干渉に よるマ ル チパ スフェー ジング (以 下
,
45
990
KDD R&D Noア イイSeρ ォブ
海面反射 フェー ジ ン グ と呼ぶ )が 発生 し,そ の影
かに した。
上記 モ デ ルは海面 の平均 レベ ルが 無 限平面 であ
響 を受 け て 回線 品質 が低 下 す る とい う問 題 が あ
る②.航 空機 は船舶 に比 べ て そ の航行 速 度や 高度
る と仮定 して導 出 されて い る.航 空衛 星通信 の場
が非常 に大 きい ため,航 空衛星通信 におけ る海面
合 には,飛 行 高度 ,す なわ ち海面か らのア ンテナ
反射 フェー ジ ン グは海事衛 星通信 とは異 な った性
高度 が 高 い こ とか ら,地 球 の丸 み に よる影響 を考
質 を呈す るもの と考 え られ る。 さ らに,航 空機 は
海上 だけでな く,陸 上 も飛行 す るため ,大 地 で の
慮 す る必要が あ る。以下 ,地 球 の 丸 み を考慮 した
反射 に よるマ ルチ パ スフェー ジ ン グ (以 下 ,大 地
図 1は ここでの解析 に用 い る座標系 を示 して い
反射 フェー ジング と呼ぶ )も 発 生す る。 したが つ
る。図 にお い て,航 空機 は 高度 場 のP′ 点を飛行 し
て,航 空衛 星通信 システム の 回線設計 や フェー ジ
ン グ軽減方式 の検 討 を行 う際 には, これ らの マ ル
て い る とし,衛 星 ,航 空機 お よび地球 の 中心 は同
一 平面
チパ ス フェー ジ ン グの性 質 を定量的 に把握 す るこ
とす る。さらに,θ
とが重要 で あ る。
波の入射角 であ り,島 ,φ sは その点か ら航空機方向
へ の角度 である。
航 空衛 星通信 におけ る海面反射 フェー ジ ン グに
関 しては, これ までに も理 論や実験的 に検討 を行
った幾 つか の 報告 が あ るい)が ,シ ステム設 計 へ の
適用 を考慮 して,そ の性質 を論 じた もの はあ ま り
な い。 また,地 形や 反射係数 等 の取 扱 い が 難 しい
反射波 モデル を導 出す る。
(夕
‐
z平 面 )上 にあ る。 また,衛 星仰 角 をα
`は
海面上 の点Qに おける衛星電
海面反射 フェー ジングは衛星か らの直接波 と海
面か らの反射波 との干渉により発生す る。一般 に
,
海面か らの反射波は二つの成分 か ら構成 される。
ため ,大 地反射 フェー ジングにつ い ては,そ の性
すなわち,波 が少な く穏やかな海面状態で支配的
となるコヒー レン ト成分 と,荒 れた海面状態で卓
質 を検討 した報告 は皆無 とい える。
越す るイン コヒー レン ト成分 である
(3)。
本稿 は航 空衛 星通信 におけ る海面 反射 お よび大
分 は海面が鏡 の ように滑 らかになるほ ど反射波 に
地反射 フェー ジ ン グの性 質 につ い て ま とめ た もの
であ る。 まず,海 面反射 フェー ジングに関 して
,
ア ンテナ 高度 とともに大 き くな る地球 の丸 みの影
響 を考 慮 した理 論 モデル を導 出す る.次 に,ヘ リ
コプ ター を用 い て行 った フ ィー ル ド実 験 (aの 概 要
を示 し,本 実験 で得 られ た結果 と海面 反射 フェー
ジングの理 論 モ デ ルに よる特性 との比較 を行 う。
さらに,大 地 反射 フェー ジ ン グにつ い ては,反 射
点 の地 形 とフェー ジ ン グの大 きさ との 関係 ,海 面
反射 フェー ジング との 対 比 等 を,実 験結果 を基 に
考察 を行 う
.
:1 海 面 反 射 フ ェー ジ ン グの 理 論 モ デ ル
筆者 らは,先 に海事衛 星通信 を対象 とした海面
反射 フェー ジ ン グの諸特性 を推定す る理論 モデル
を提案 し0,幾 つ か の フ ィー ル ド実 験 0に よ り得
られ た結果 との 比較 を通 じて,本 モ デ ルが実際 の
フェー ジ ン グの4生 質 を良 く評価 で きる こ とを明 ら
46
前者 の成
図
1
座
標
系
航空衛星通信におけるマルチパ スフェージング特′
1生
占め る割合 が 大 き くな り,鏡 面反射 成分 とも呼ば
1
れ る。 一 方 ,後 者 の成分 は,海 面 の 色 々 な点 で反
射 され た電波 が合 成 され た もの であ り,そ の 強度
実験 の概要
特 に低仰 角運用時 での マ ル チパ スフェー ジン グ
の性質 を実験 的 に評 価 す るため ,ヘ リコプ ター を
は ラ ン ダムに変動 す る。
コ ヒー レン ト成分 の 強度 鳥 は 次 式 で 良 く近 似
で きる こ とが知 られて い る(①
.
島 =IDΓ Q exp(-22/2)ム (22/2)… …(1)
ここで,ム は 0次 の変形べ ヽ
ンセル関数,Qは 衛星
用 い たフ ィー ル ド実験 を実施 した(2).
フ ィニ ル ド実験 は1987年 3月 お よび1988年 3月
の二 度 にわた り実施 した。図 2は ,本 フ ィー ル ド
実 験 の実施場所 を示 して い る。 1回 目の実験 は
,
点方向の相対ア
方向の利得 を基準 とした鏡面反射′
衛 星仰 角 が 5∼
ンテナ利得 ,Dは 地球 の丸みによる反射波 の拡散
イ ン ド洋上 の イ ン テ ルサ ッ トV号 衛 星 (63° E)か ら
係数,「 は正旋 円偏波入力に対す る海面 の正旋 円
の Lバ ン ド電波
偏波成分 の反射係数である0.
た.2回 目は,千 葉 県似ζ
子沖海上 お よび関東平 野
ま また,α は海面の状態を表すパラメータ(rough―
■ess factor)で あ り,次 式 で与 え られ る(4).
%(θ
`,θ
=・
自由空間
波数 ,〃
高
.単 に波 高 と呼 ぶ )で あ る。波 高 が大 き くな っ
[′
が 2以 上 に な る と, コ ヒー レン ト成分 はほぼ
′
モ現 で きる。 Lバ ン ド (1.6/1.5GHz)電 波 にお い
2以 上 とな る荒れ た海面状 態 は,仰 角 5° で
lt高 〃 が 1.4m以 上 ,仰 角 10° では07m以 上 に相
1.′ ィ
が
jす
一方,イ ン コ ヒー レン ト成分 の平均電力 民 は,海
1
(1,537.5MHz)を 受信 して行 っ
上 空で実験 を行 い,仰 角 が 9∼ 10° とな るマ リサ ッ
仰角 が
2°
(1,541.5MHz),お よび
程 度 とな る上 記 イ ン テ ル サ ッ ト衛 星 か
らの 電波 を受信 した。本実験 では,シ ョー トバ ッ
クフ ァイアア ン テナ (SBF,利 得 70=15.5dBi,電
「
力半値 幅 :32° ), 9素 子 マ イ ク ロ ス トリップア レ
ー ア ン テナ③ (MSA,c=15dBi,32° )お よび円
ノチア ン テナ (CPA,c=7 dBi,90° )の 3
形パ ヽ
種類 の ア ン テナ を使 用 した。
写真 1は 実験 に使 用 したヘ リコプ ター の写真 で
る。
│ 1全 体
とな る紀伊 半 島海上 にお い て
ト衛星 (73° E)か らの 電波
s)=々 〃 (cosθ ′
十COS^)/4 ……………(2)
の
は
は有義波 *(以
ここで,た
6°
(面 積幻
か らの 反射 電 力 を総和 した もの
あ る。写真 に示 す よ うに,MSAお よびSBFは ヘ リ
コプ ター の進行 方 向に直交す る向 きを正 面 とし
,
それ ぞれがヘ リコプ ター の左右 の側 面 に設置 され
以下 の よ うに与 え られ る
.
Gf2激 ……
o
♪
ス
島島 ,に φ
1 3=奇 ∬
(ら
,
〓ぼ酸難難卜● ・
一
〓
■一
〓
・
窓越 しに衛星電波 を受信 して い る。 また,CPAは
ヘ リコプ ターの進行 方 向 (ほ ぼ北 あ るい は南 )に
Iこ で,沢 は海面上 の 反射 点 0と 受信 点 Pの 間
応 じて設置場所 を左右 に変 えて測定 した.ヘ リコ
は衛 星方 向 の ア ン テナ利得 で規格化 し
プ ター は衛星仰角 が一 定 とな る方 向に進路 を と り
、
点o方 向 の相 対利得 ,ま た,鈍 は単位 面積 当
言′
かつ そ の機 首方 向 を衛 星方 向 と直交す る方 向に常
平均 散 乱 断 面 積 で あ り,海 面 の傾 度 偏 差
に向けて飛行 した.機 首方 向は常 に ± 2° 以 内 の精
膏星仰角 等 に依 存 して変化 す る もの であ る。
度 で制御 され て い るこ と,お よびヘ リコプ ター の
│:毛 ,G」
「
iま 基本的 な波の上 に種 々の小 さな波が重畳 した合成 波
=ろ
`一 般 に,波 高は基本波 の隣 り合 う山 と谷の高 さの
1長 は山 と山 (あ るいは谷 と谷)の 長 さでそれぞれ定義
ろ`有 義波高は上記波高の上位 1/3を 取 って平均 した も
「 目視 によって観測 された波 高 とよ く合 うことが知 られ
稿 では有義波高を単に波高 と呼んで い る.一 方
=.本
〔1支 長の比 δは波形勾配 と呼ばれ,波 の険 しさを表すパ
,
ータである.式 (3)の 平均散舌L断 面積 の算出に用 い られ る
頂
度偏差ん と波形勾配δの間には近似的に島=π δ/y2
■二がある。
,
動揺 が 少 な い こ と
(ロ
ー リン グが ± 2° 以 内)か
ら,衛 星 追尾 や動揺補償 は行 わず,各 ア ン テナ と
もそ の メイ ン ビー ムは衛星方 向に 固定 した。 へ り
コプ ター の 飛行 高度 としては,100m,1,000m,
3,000mお よび5,000mを 選 定 し,各 高度 にお い て
,
種 々の 速度 (300km/h以 下 )で の 飛行 を行 った
.
実験 当 日の 海面状 態 は 1回 目お よび 2回 目で
,
それ ぞれ波 高 が 1∼
2m,お よび lm程 度 であ り
,
47
KDD R&D
Ⅳo7イ イ Seρ
`7990
)鼻
痰
、、
〓轟鸞
図
2
実験場所
4
4.1
海 面 反 射 フ ェー ジ ン グ の 性 質
フェージ ン グの 深 さ
海面反射 フェー ジング を受 け た全受信 強度 EIま
コ ヒー レン ト成分 ,お よび イ ン コ ヒー レン ト成分
に 直接波 を加 えた 3波 モデルで表 され,任 意 の時
間率 におけ るフェー ジングの深 さ を このモ デ ル を
用 い て算 出す るこ とが で きる。
図 3は 各飛行 高度 におけ る時間率 99%に おけ る
写真
1
実験 で使 用 したヘ リコプ タ ー
フ ェー ジ ン グの 深 さ (99%フ ェー ジ ン グイ
直)を
CPAお
よびMSAで 受信 した場合 につ い て示 した
Lバ ン ド電波にお いては,イ ンコヒー レン 卜成 分
もの であ る。 図にお い て Oは 実測値 であ る。衛星
が卓越す る状態 とみなす ことがで きる。
仰角 5.5° ,波 の傾 度偏差 鳥 =0.04∼ 0.07(荒 れ た海
面状 態 ではほぼ この 範 囲 にあ る)に おけ る99%ア
48
航空衛 星通信 におけ るマ ル チ パ スフェー ジン グ特 ′
1生
0
︲
6 0︶型ヽ ヽ ヽI Hヽ×8
5
ぐ 埋ヽ ヽへ I Hヽま8
貧 OX8︶
馬 =5′
000m
O:C=15 5dB
△ :ri。 =15dBi
× :c=7dBi
Zl:理 論 特性
アンテナ高度 (m)
ぐ 埋ヽ ハヘー Hヽま8
a O×8 ︶
(a)CPA
2
9
1o
仰 角 (度 )
図4
MSA(a=15dBi)
○ :実 測値
99%フ
ェージング値 の仰角特性
推定 され る。
Z互 :理 論特1生
(lfll角
10
=55° ′ん =004∼ 007)
1oo
l′ 000
4.2
設計や ビ ント誤 り分 布 の検 討 の 際 には フェー ジ ン
(b)MSA
3 99%フ
フェージ ン グの変動 周 期
デ ィ ジタル移 動衛 星通信 におけ る変 復 調装 置 の
10′ 000
アンテナ高度 (m)
図
5
グに よる信 号 レベ ルの変動周期 を把握 してお く必
ェ ー ジ ン グ値 の 高 度 特 性
要 が あ る。 そ の変動周期 は,衛 星仰 角 ,航 空機 の
ニー ジングイ
直の理論特性 を斜 線 で示 した。 同図 か
飛行 方 向や速度 , さ らには海面 の波 の 進 む速 さ等
ら明 らか な よ うに , 実測値 にはあ る不
呈度 ば らつ き
に依 存す る。 フェー ジングの 変動周期 は その 周波
が あ るものの,理 論 モデ ル で推定 した値 とよ く一
言
tし て い る。 ま た, フェー ジン グの深 さは 高度 と
数 スペ ク トルか ら推定 で き,以 下各種 飛行状 態 に
おけ る周波数 スペ ク トル につ い ての検 討結果 を示
七もに減少す る傾 向 が あ る。 高度 が 高 くな る と と
す
■に,地 球 の 丸 みの影響 が 大 き くな り,特 に,水
三線に近 い領域 で,海 面 で い ったん反射 した電波
■アンテナ に届 く前 に他 の 波 に よって遮蔽 され る
図 5は 水 平飛行 時 にお い て,飛 行 速度 陽 が 300
km/hお よび150km/hで あ る ときの フェー ジ ン グ
のスペ ク トルの理論値 と実験 値 を比較 して示 した
瑳率 が 高 くな る こ とが一 つの理 由であ る。 しか し
もの であ る。 この 図 か ら,理 論特性 と実験値 は周
■が ら,高 度 1万 m程 度 とな る航 空衛 星通信 にお
波数 の 高 い領域 を除 い ては よ く一 致 してお り,相
て も,海 事衛 星通信 におけ る99%フ ェー ジ ン グ
対電カ レベ ルが -10dBと な る周波 数 (以 下 ,-10
dB帯 域 幅 と呼ぶ。フェー ジングの変動周期 はほぼ
三 ア ンテナ利 得 15dBiに お い て 7∼
9dB)か らの
.
理 4は ,高 度 5,000mに おけ る仰 角対 99%フ ェー
この周波数以下 とみなせ る)は ‰ が300km/hの と
き約 7 Hz,150km/hで は約 4 Hzと なってお り,一
ン グ値 特 性 を各種 ア ン テナ利 得 cに つ い て示
10dB帯 域幅 は飛行速度 にほぼ比例す るこ とが分
■下量はたかだか 2 dB程 度 であ る こ とが分 か る。
tも ので あ る。同図か ら,仰 角
99%
5° におけ る
ニー ジ ング値 は,ア ンテナ利得 が 7 dBi,15dBi
11■ :し
て,そ れ ぞれ 7∼
9dBお よび5.5∼
7 dBと
か る。
図 6は ,ヘ リコプ ターが速度約200km/hで 高度
5,000mか ら下降 した ときのスペ ク トルであ り,実
49
.7990
KDD R&D No7イ イ Seρ 古
線 お よび点線 は それ ぞれ下 降す る角 度 ら を 7° お
6 0︶撻仰 択艘夜 翠
よび 6° と仮 定 した ときの理論特性 であ る。航 空桂
が あ る程 度大 きな角度 で上昇 あ るい は下 降す る嶋
合 には,特 定 の 周波数成分 が主体 とな るフ ェー シ
ン グが発生す る。 これ は,衛 星 か らの 直接 波 に対
す る ドップ ラシフ トに よる周波数偏差 と海面反射
波 に対す る周波数偏差 との差 が 大 き くな るため て
SBF
野理牌
L
05 1
あ り,そ の差 が ほぼ ピー クの 周波数 とな る
.
2 345
10
4.3 周波数相関特性
図 7は ,ア ン テナ高度 と相 関周波数 の 関係 を示
周波数 (Hz)
(a)‰ =300km/h
す理論特性 であ る。 ここで,相 関周波数 とは周 波
宙 0︶撻伸 代師鞍 黒
数 が 異 な る 2波 の信号 強 度 の相 関係 数 が 1/ι (=
037)と な る最低 周波数差 で定義 され る(".同 図 に
は, コ ヒー レン ト成分 の相 関周 波数特性 (実 線
お よび イ ン コ ヒー レン ト成分 の特性 (点 線 )を「「
角 5° お よび10° につ い て示 して い る。信 号 帯 域 幅
SBF
が相 関周波数 よ り大 きいか小 さいか に よ って,信
野鯰 L
0 5
1
号 に与 え るフェー ジングの影 響 が 異 な って くる
大 きい場合 には,信 号帯域 内で フェー ジングの性
.
2
3 4 5
10
20
周波数 (Hz,
(b)シ Ъ=150km/h
図 5
質 が 異 な る,い わゆ る周波数選択 1生 フェー ジ ンク
とな る。逆 に小 さい場合 には フ ラ ッ トフェー ジ ン
海 面 反 射 フ ェー ジ ン グ の ス ペ ク トラ ム
(水 平 飛 行 )
2
0 0
︲
貧工x︶轟湊 眠日早
フラッ トフェージング
α=10°
1
2
3 4 5
10
20
6
50
102
フェー ジングの スペ ク トラム
(下 降時)
`
1
周波数 (Hz)
図
}
アンテナ高度
図
7
103
:場
104
(m)
ア ン テナ 高 度 と相 関 周 波 数 の 関 係
航空衛星通信 におけ るマ ル チパ スフェー ジング特性
表
1
航空お よび海事衛星通信 の海面反 射 フェー ジングの比較
ア ンテナ高度 (例
ジング値 1)
ア ンテナ利得
99%フ ェー
(注
10,000m
15n■
5°
10°
5°
8 7dB
6 0dB
82∼ 11 2dB
7 0dB
10dBi
65∼ 8 3dB
5 2dB
79∼ 10 9dB
6 2dB
15dBi
54∼ 6 9dB
3 3dB
68∼ 9 7dB
4
6dBi
6.9∼
フェー ジングの変動周期 の
相関周波数
海事 衛星 通信
)
角
llp
航 空衛星 通信
15∼ 50Hz(水 平飛行)
25∼ 100Hz(θ .=5°
で上昇,下 降
2dB
03∼ 5 Hz
)
コ ヒ ー レ ン ト成 分
30kHz
16kHz
22ヽ /1Hz
1lMHz
インコ ヒー レン ト成分
27kHz
14kHz
18A/1Hz
9 2ゝ /1Hz
)1)荒 れた海面状態における値
2)仰 角 5・ ∼10°
グ とな る。 この 点 を考慮す る と,図 7か ら,フ ェ
il 大 地 反 射 フ ェー ジ ン グ特 性
ー ジングの 周波数特 性 に 関 して以下 の 点が明 らか
海事衛星通信 では,相 関周波数は数十MHz
海面 の状 態 は式 (2)で 表 され るパ ラメー タπを用
いて統一 的 に規定 で きるが ,大 地 の場合 には反射
程度である。通常,信 号帯域 は数 十kHz以 下
点 の地形や 反射係数 が 関係 す るため,そ の状 態 の
であるので, この場合 は フラッ トフェー ジン
取扱 い は複雑 とな る。 ここでは,ヘ リコプ ター を
用 い たフ ィー ル ド実験 で得 られ た結果か ら,大 地
とな る。
①
グとなる。一 方,送 信 と受信 の周波数 は100
MHz程 度離れてい るため,送 信波 と受信波が
受けるフェーージングにはほ とんど相 関がない
反射 フェー ジングの 大 きさにつ い て検討 を加 える。
図 8は ,ヘ リコプ ターが仰 角 10° とな る地点 の 陸
上 を飛行 した ときに,反 射 ′
点方 向 の地形 と対 応す
こととなる。
②
る受 信 レベ ル変動 を示 して い る。 なお, この地 形
高度が 1万 1nと なる航空衛星通信 では,相
関周波数 は10∼ 20kHz程 度 となる。 このこ と
図は見やす くす るため ,高 さ方 向 を距離 に対 して
は,航 空衛星通信で信号帯域 が20kHz程 度 の
10∼ 100倍 程 度拡大 してあ る。この 図か ら,反 射 点
方 向 の地形 が, ビル街 や 山岳地帯 の場合 にはあ ま
通信 を行 う場合 には,周 波数選択性 フェー ジ
ングとなる可能性があることを示 唆 してい る。 り大 きな フェー ジングは発生 しな いハ 反射 ′
点が
航空衛星通信および海事衛星通信 における海面
■射 フェー ジングの性質 を理論的に比較 した結果
平野部 の場合 には,上 記 の 地形 の場合 に比 べ て大
]表 1に 示す。
これは,前 者 の場合 ,反 射 波が ビルや 山で散乱 あ
きな フェー ジングが発生 して い るこ とが分 か る。
るい は遮蔽 されや す くな るため ,ア ン テナ で受信
され る反射波 強度 が小 さ くな るか らであ る
.
表 2は 各種地形 の上 空 を飛行 した ときの 大地反
表 2
地
形
度
フ ェー シ ング
の深 さ
1
!貫
1定 点周辺 の 地形 と99%フ ェー ジ ング値
(「 P角 10° ,禾 1得 15 5dBi)
市街地
平
野
山
岳
300m
1,000m
3,000m
5,000m
l.000rn
5,000rn
1 2dB
5 4dB
5 6dB
3 1dB
0 8dB
0 6dB
KDD R&D Noア イイSeρ 17990
0
0
3
0
0
2
0
0
1
0
3 初
0
壼錮燿
E︶撻 拒
︵
20
測定 時 間
餡)市
街
地
\
二
:6:ltth
薇
:ち
.
20
0
3 朝
お可6X碗
測定 時 間
(b)山
ffp=10′
000m
‰=215km/h
lo
20
0 秒
3
o
測定時 間
C)平
図
8
野
反射 点 方 向 の 地 形 と レベ ル 変 動
射 フェー ジ ン グの 時間率 99%に おけ る値 を比較 し
た もので あ る。 この 表 か ら,平 野部 の 上空 を飛行
した場合 ,最 も大 きな フェー ジ ン グが発生す る力ヽ
飛行 高度 が 高 くな る とそ の大 きさは減少 して い る
こ とが分 か る。 これは,高 度 が低 い場合 には主 た
る反射 点 が起伏 の少 な い平野部 にあ るが,高 度 が
高 くな る とともに,そ の 反射 点 が遠方 に移動 し
平野部 を飛行 して い る場合 で も遠 くの 山等 の起伏
,
の あ る地形 の影響 を受 け た もの と考 え られ る。 ま
直を示す 平野部 の飛行 に
た,最 大 の フェー ジ ン グイ
お い て も,そ の値 は 5dB程 度 であ り,こ れは,同
一 のア ン テナ利得 ,衛 星仰角 におけ る海面反射 フ
52
嵯鼈
(仰 角 10° ,C=15.5dBi)
ェー ジン グ とほぼ同等 の 大 きさであ る。 したが つ
て,海 上 お よび陸上 を含め た航 空衛 星通信 におけ
るマ ル チ パ スフェー ジ ン グの大 きさは,海 面反射
フェー ジ ン グの 大 きさで評価 しておけ ば実用上 十
分 であ る とい える。
6=あ
とが き
航空衛 星通信におけ る海面反射 フェー ジングの
性質 を評価す る理論 モデル を示 した。 さらに,ヘ
リコプ ター を用 いて行 ったフィール ド実験 で得 ら
れた結果 と理論モデルでの推定値 の比較検討 を行
航 空衛 星通信 におけ るマ ル チ パ スフェー ジング特性
②
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本稿 の検討 では,衛 星か らの 直接波や海面反射
波 が機体 に よ って遮蔽 され な い こ とを仮定 して い
る。実際 には,航 空機 へ の ア ン テナ搭載位 置 に よ
っては,機 体や翼 の影響 に よ り海面反 射 フェー ジ
ン グが小 さ くな る場合や ,逆 に機体 か らの 反射 に
よるマル チパ スが発生す る可育旨1生 もあ る(10).ァ ン
テナ の搭載位 置 を も含め た各種要 因に よ るマ ル チ
パ スフェー ジ ン グの総 合 的 な検討 が今 後 の重要 な
検討課題 と考 え られ る。
参
(1)
考
文
献
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