Page 1 Page 2 Page 3 Page 4 Page 5 曲線軌道における円筒タ ンク内

Mem Fac Sc1Eng Shmane Un1v
Series A
35,PP.113−120(2001)
曲線軌道における円筒タソク内液体の
制振搬送制御
浜口 雅史
島根大学総合理工学部電子制御システムエ学科
Transfer Contro1of L1qu1d m Cy1mdr1ca1Conta1ner Cons1dermg the Dampmg of
S1osh1ng a1ong a Curved Path
Masafumi HAMAGUcHI
1)即α■肋θ〃ぴ別εcかo〃cα〃0o〃炉o1町晩㎜∫肋9肋θθ〃㎎,〃α伽吻伽仰肋c〃卯oグ8cゴθ肌θα〃
肋9加θθγ肋&8〃柳伽θ吻ゴγθκ∫妙
Abstract
Th1s paper presents the mode1mg and contro1of transfer of cy11ndr1ca111qu1d contamer a1ong a curved
path S1oshmgof(1,1)一mode1nthecontamer1srepresentedbyamechamca1mode1usmg aspher1ca1pendu−
1um Atwo−degree−of−freedom contro1system1s app11edto contro1the s1osh1ng andthe contamer transfer
Thefeedrforwardcontro1mput1s denved fromthepreshapmgmethod,andthefeedbackpart1s constructed
from a LQ controner The LQ contro11er,s gams are d−etermmed through use of a Genet1c A1gor1thm The
usefu1ness ofthepresentworkhasbeendemonstratedthroughthecontro1s1mu1at1onand1aboratorycontro1
exper1ments
1.はじめに
鉄鋼 鋳造業におげる溶湯搬送や注湯後の鋳型の搬送,パイプレス化学プラソトにおげる
自走式混合漕なとに代表される液体タソク搬送の自動化は,高効率化 高品質化およぴ安全
性の観点から搬送時の液面振動(スロヅ1ノソク)を抑制し,かつ高速に液体タソクを搬送す
ることが望まれている1)∼(3).
本論文では,液体搬送に広く用いられている円筒タソクを対象とし,曲線軌道搬送時のス
ロヅノソク抑制を考慮した液体搬送制御:■ステムの構築を目的とした 円筒タソク内液体の
(1,1)モードスロッシソグを球面振子型モデルにより表現し,この線形近似モデノレを搬送制
御系設計に用いた 液体タソク搬送制御系を2自由制御系により構築し,フィートフォ
ワート部はPreshapmg理論4)を適用し,フィートハヅク部はLQ制御により構築した LQ
制御ゲイソは,スロヅ1■ソク振幅と搬送時間を考慮した工学的評価関数を最小とする意味で
最適となる制御ゲイソを遺伝的アノレコリスム5)により決定した 搬送制御系の有用性を制御
シミュレーショソならびに制御実験により明らかにした.
浜口 雅史
114
2.スロソシンクモデル
Fig.1に示す球面振子型スロッシソグモデルにより(1,1)モードスロッシソグを表現した.
(1,1)モートとは液面がほほ平面を保ったまま振動するモートである 急激な加減速のない
搬送中では,このモートが支配的となる F1g1において,球面振子をz−x平面に写像した
写像振子とz軸の成す角度をθ,写像振子と球面振子の成す角度をφとしている.この2変
数についてモデノレ式を導出L,式(1)を得た.
∂=
g Sinθ 元五 禿工2 ら
。c.sφ十2θφt・nφ十2φ瓦…θ十。戸・1・θ…θ一万θ…2θ
・簑1罰・1…1施・1・吻…1(t叢φ、よ、)
φ一
元五2
gSinφ ・元工
十2θφtanθs1n2φ一2θ一cosθcos2φ
cosφ (1)
!兄
1COSθ 凪
十・靖・i・1・i・1…1・(芸一炉)・i・1…1
」φc.s・φユsi、θc.s・φ一6.anθsi、φc.sφ
刎 凪
ここで,舳: タソク内液質量,!等価振子長,馬 搬送軌道曲率半径,6、,ら X,y方向のス
ロッシソグ等価粘性係数,
g 重力加速度,物 搬送軌道に沿った台車位置である 進行方
向則方壁上の液位変化量〃、と左側壁上の液位変化量勾はそれぞれ以下の式で表される
た
だし,円筒タソク内半径をRとした.
hy
Z
)
y
,.,1" 'd-
j--
'I,
l ll・ l,
Jb
,,
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t
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,-d""' '
'I'
,,
c
l
l
t 8
l 8
6
ep
l
l
f$ n7
t
l
1'c'pll・1-'1・1,
IIII・1・1
,,
,,
Fig.1 Spher1ca1pendu1um mode1
X
曲線軌道におげる円筒タソク内液体の制振搬送制御
115
〃北=1芒tanθ,々、=1モtanφ/cosθ (2)
台車位置に関するモデル式は,台車の駆動モータ特性を1次遅れ系で近似し,式(3)が得
られた.
工 凪、、
工= 十一〃
(3)
τ,,z、、
ただし,乃,、モータ時定数,K閉 モータゲイソ,〃 制御入力電圧である モテルパラ
メータは,円筒タソク内半径R=0.1[m],静止液位久=O.2[mコの条件で実験ならびに解析
的に同定した結果,!:O.0544[m],ρ、=ら=1.4[Ns/m],舳=6.28[kgコ,丁仰、=O.0149[s],凪,、=
o0992[m/(sV)]となった ただし,対象液体を水とした F1g2に搬送軌道を示すカ㍉直
線区間10m,半径12mの1/4円弧の曲線区問,そして直線区間15mから成る
球面振子型スロヅノソクモテルの妥当性を検証した結果がF1g3である 台形速度パ
ターソにより液体タソクを目標位置まで搬送したときの液位変化を示している 実験結果と
シミュレーショソ結果は良好に対応しており,本モデルの妥当性を確認することができる.
液位変化が徴少,すなわち,θ,φが徴少の時は,X,y方向それぞれの単振子の合成により
球面振子を表現することができる このことは,式(1)を線形近似することによっても容易
に分かる.以下に線形近似したスロッシソグモデノレ式を示す.ただし,分かりやすくするた
めに,θをθ、と表記した この線形近似スロッノソクモテルを搬送制御系設計に用いる
1.5m
X■O\
・_曳
’θ0θノ
y
、ミ
y ㌔一
私
バ砂
冒
ム・ S
5ね〃
■ \
Y,y 1 ・
ρ,9ノ
Fig.2 Transfer path
浜口
116
雅史
5.0
O.5
{
}昌
◎ 」一
4.0
0.4
}旦
o一
0.3
ト臼
iΦ
d.冒
■ Φ
◎ ■
0.2
君 宙
2s
彦昌
0.1
o
0
ω 一
◎ 自
{ ◎
o
0 2 4 6 8
1O
3.0
2.O
1.O
O.O
Time[s1
0 2 4 6 8
Tim・[・1
(a)Ve1ocity ofcontainer
(b)Pos1t1on of conta1ner
1O
O.10
自 Φ
Φ > F■
0,05
冒2 昌
8嗜]0.00
宙 箏 H
豆ヲ式
ω二昌
菖ち
−O.05
−0.1O
O.10
■ Φ
Φ > F■I
0,05
冒2旦
8雪 ㍉ 0.00
月づ ミ
象身
−0.05
菖ち
−O.1O
8 10
T1me[s] T1me[s]
(c)Exper1ment (d.)S1mu1at1on
F1g 3 ’Ver1丘cat1on of mode1m transfer state
⑧X方向のスロヅ=■ソクモテノレ
g 6, 1
氏一一一乱一一氏一一勉,庖”=五θ、 (4)
1 刎 1
⑧y方向のスロッシソグモデル
包一号ら一紬仏一助 (・)
ここで,θ、z−x平面での振子角度,ら y−z平面での振子角度である 式(3)∼(5)より,
振子角度θ、は可制御であり,振子角度らは不可制御であることが容易に分かる
曲線軌道におげる円筒タソク内液体の制振搬送制御
117
3.2自由度制御系による搬送制御系設計
搬送制御系設計には式(3),(4)のモテル式を用い,状態をπ=[θ、,θ、,工,工]τとした 可
観測 可制御の状態空問モテルによりフィートハヅク部のLQ制御系を構築するので,不可
制御である状態量θツに関する項は状態量に含めず,直接フィートハヅク制御を行わないこ
とにした.
3.1 7イードフォワード制御
スロヅシソクを抑制し,かつ,台車を目標位置まで搬送するフィートフォワート入力生成
にPreshap1ng理論(4)を適用した この理論の基本原理は,単イソパルス入力により励起さ
れた振動を∠1T後の大きさ尾のイソパルス入力で相殺するというものである.式(4)の伝達
関数は式(6)となり,∠τと尾は式(7)で与えられる4).
_五
ん、 1 Kω、、2
一= = (6)
た、・。玉、。五・2+2ζ卵十叫2
刎 !
∬一叫←・1一岬(着)
(7)
基本入力としての台形速度バターソに対してPreshap1ng理論を適用したPreshap1ng入
力を式(1)の非線形モデルに適用した結果をFig.4に示す.ただし,最大加減速度α=2.0
[m/s2コ,最大搬送速度〃=05[m/sコ,搬送距離∂、=4385[mコである モテノレ式は時間刻み
ユmsとした4次ノレソゲ・クッタ法により数値的に解いた.最初の直線区間では良好に液面
を制振しているが曲線区間に入るとスワーリソグ(旋回スロッシソグ)が発生して液位変化
量ゐ、,勾が共に振動している.その後の直線区間においても振動は持続し,タソク停止後も
振動が若干残っている しかし,無制御搬送であるF1g3と比較すれは,搬送時問が∠1T
だけ遅くなっているものの液面は十分に制振されている.
3.2 7イードバック制御
フィードバック部をLQ制御により構築する一LQ制御によりフィードバックゲイソ馬
を決定すれは,フィートハヅク制御部の安定性は保証されるので,重み行列π、,肌を求め
てLQ制御ゲイソ馬を決定する 工学的に意味を持つ式(8)の評価関数を最小とする最適重
み行列を遺伝的アノレゴリズム5)により求める.
1一射(・一一)/l(1ん1・1ん1)1l
(8)
ここで,なはタソク位置と液位が最終目標値の2%以内に整定した時問とし,αは設計者が
設定する重みである ここでは液位変化を重視してα=01とした 式(8)に勾の情報を含
浜口 雅史
118
5.O
}1亘4・O
Target position
o・ 3.O
ε彗
君’畠 2.O
ω 一
◎ 自
{8 1.O
O.0
0.02
[O.O1
一冒
Φ] O.OO
> H
- - - - - Sampling time: Sampling time
Ims
自
10ms
2ミ
ーO.O1
嗜
び 一〇.02
お
着 O・02
昌[O,01
Φ
Φ 1≡
蟹二〇.OO
Ims
−O.02
- - - - - Sampling time: Sampling time:
10ms
象∼
胃 一〇・01
5.O
E 40
亘 3.O
自
; 2・O
○
お 1.O
■
o O.O
O
0 2 4 6 8 10
Tme[s]
Fig.4 Smuユatlon resu1ts by the preshapmg mputs app11ed.m non11near肌od−e1
むことにより,間接的ではあるが勾を抑制するような搬送制御系を得ることができる 入
力に関する重み行列を肌、=1.Oと固定し,状態に関する重み行列を肌=diag[〃力1,ω、2,〃、3,
〃、4コとした.各重み叫1∼ω、4を17ビットの2進数で表現し,先頭から順に叫1∼〃丸4を直列
結合した総遺伝子長17×4=68ビットとなる遺伝子列を用いた.個体数を21個,上限世代を
100世代とし,選択にはエリート保存則とトーナメソト方式を用い,1点交叉と1ビット値
を反転させる突然変異を用い,それぞれの発生確率を80%,20%とした
3.32自由度制御系
Fig.5に今回構築した2自由度制御系のブロック線図を示す.実験装置の液体タソクに取
り付げたレベルセソサにより液位変化量尻、,仏を,台車駆動輸に取り付けたロータリーエソ
コーダにより台車位置犯を検出している.セソサ出力には観測ノイズが混入しているので
119
presha ping
m put
+ Ax
x ref
LQ
+ u
Controller +
y
Reference Model for Preshapmg Input
value
creatmg
Plant
alman filter
Fig, 5
Two-degree-of-freedom control system
5,0
o
4,0
:
Target position - - - - :Sensor output : Estimated value
30
o :i
::: as 2,0
(Q
oF:
l oo 1,0
0,0
0,02
_ 0,01
^
>o 0,00
-0,01
;
- - - - :Sensor output :Estimated value
l
,
-0,02
o
F1
0,02
a) 0,01
as 0,00
,cQ--0,01
O
-0,02
5,0
: 4,0
F:
'
o
up+ uf
f 3,0
2,0
u f
l
" 1,0
o
O 0,0
2
6 8 10
Time [s]
Fig. 6
Simulation results by two-degree-of-freedom control system applied in nonlinear model
浜口 雅史
120
カルマソフィノレタにより状態推定量£を求めた 制御サソプリソク時問1msで行ったフ
ィードフォワード制御のシミュレーショソ結果を10ms毎に抽出し,その状態をフィード
ハヅク部の目標値κ、φとし,そのPreshap1ng入力を物とした フィートハヅク制御入力は
竹=辱(κ、ゲーオ)=4κとなり,最終的な制御入力は〃=物十〃プとなる.
4.搬送制御結呆
遺伝的アルコリスムにより求めた最適LQ制御ゲイソを持つ2自由度制御剰こよる搬送制
御シミュレーショソ結果をFig.6に示す.制御サソプリソグ時間は10msであり,式(1)∼
(3)のプラソトモデノレを時間刻み1msの4次ルソゲ・クッタ法により解いた.タソク位置
に関しては目標位置に到達しており良好な結果となっている.液位変化量いこ関してはフ
ィードバヅク制御により良好に制振されているが,液位変化量”パこついては可制御ではな
いために一度発生した振動を制振させることができていない.遺伝的アノレゴリズムによって
決定した最適LQ制御ゲイソを式(9)に示しておく.実験においてもシミュレーショソ同様
に良好な結果となった.
辱=[一9.51,一0,900,1.05,一5.17] (9)
5. ま と め
曲線軌道上を搬送する円筒タソク内液体のスロヅンソクを制振させる搬送制御系を構築し
た 以下に得られた主た結論を示す.
(1)球面振子型モデルにより円筒タソク内液体の(1,1)モードスロッシソグを良好に表現
できることを示した.
(2)スロヅンソク振幅と搬送時間を考慮した工学的評価関数を最小とする最適LQ制御ゲ
イソを遺伝的アルゴリズムにより効率帥こ決定できることを示した.
(3)2自由度制御系によりスロッシソグを制振させ,かつ,目標位置まで液体タソクを搬
送できることを制御シミュレーショソならびに制御実験により確認した.
参 考 文 献
(1)寺嶋一彦・浜口雅史・兼重明宏,鋳物工場自動化のための制御設計技術と応用,鋳造工学,69−3
(1997),257−265.
(2)寺鳴一彦,鋳造業における自動注湯・溶湯搬送の現状,素形材,39−6(1998),1−8.
(3)山形浩実・金子成彦,移動する円筒タソク内液体のスロッシソグ抑制制御,機械学会論文集,64−
621,C(1998),1676−1684.
(4)NCSmgerandWPSeermgPreshapmgCommandInputstoReduceSystemV1brat1on,Trans
of the ASME,112,(1990),76−82.
(5)萩原将文,ニュー口・ファジィ・遺伝的アノレゴリズム,(1994),99,産業図書.