ドレミの歌[2] 復習 ドレミの起源∼グイード・ダレッツォ

復習
ドレミは音楽で初めに学ぶ物である(とマリアは言う)。
ドレミは音楽の基本単位である。
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ドレミという名前は英語で意味をなさない(日本語でも)。
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1セットのドレミで1オクターブ全体を覆う。
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ドレミは1オクターブの中の主要な音程の名前である。
ドレミの歌[2]
ドレミはどこから来たのか
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ドレミの隣り合う音程の高低差には全音と半音がある。
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- 全音は2段階
•ド-レ
•レ-ミ
•ファ-ソ
•ソ-ラ
•ラ-シ
7
6
5
4
3
- 半音は1段階
•ミ-ファ
2
1
ド
レ
ミ
ファ
ソ
ラ
シ
ドレミの起源∼グイード・ダレッツォ
グイード・ダレッツォ
ドレミの起源­­­中世ヨーロッパの修道院
新しい旋律を学ぶのに、私たちは歌い手の声や楽器の音にいつも頼る必要はない。私たち
- 修道士たちは毎日たくさん聖歌を歌わなければならなかった。
- 全部を暗記するのは実質的に無理だった。
- 専門の聖歌指導者が修道士たちに歌を教えた。
- 歌指導者たちは効率的な教授法を求めていた。
グイード・ダレッツォ Guido d Arezzo(991/992年‒1050年)
- 北イタリアで活躍した有名な聖歌指導者。
- 当時の楽譜をよりわかりやすくしたと言われている。
- 指導法についていくつも著作を残した。
- ひょっとしたら「弘法大師の作ったため池」的な要素もあるか?
•Prologus in antiphonarium
•Micrologus
•Regulae rhythmicae
•Epistola de ignoto cantu
は個々の音の性質とその上がり下がりをよく学ばなくてならない。我々には簡単でしっかり
検証済みの方法がある。もし誰か指導者がいるなら、書物からばかり学ぶのではなく、我々
のやり方によれば、気楽な会話からも学べる。
この方法で少年たちを教えるようになって、ある者は新しい旋律を3日目までに歌えるよう
になった。他の方法では何週間もかかっても無理だろう。もしあなたが新しい旋律を憶えよ
うとするなら、あなたはとても馴染みのある旋律の初めに注意しなくてはいけない。
グイード・ダレッツォ
ヘクサコルド
Ut queant laxis
Resonare fibris
Mira gestorum
ut
Famuli tuorum
re
mi
fa
sol
la
Cで始まる基本のヘクサコルド(「自然な」hexachordum naturale)
Solve polluti
1オクターブは7音程あるのに、名前は6つしかない。不便ではないか?
Labii reatum
統一性や首尾一貫性からすると、不自然に思われるかもしれないが、歌の指導には便利
Sancte Ioannes
6つのフレーズが違う音で始まっているのに気付いたか?もしあなたがそれぞれの初めの音を
知れば、あなたはこれら6つの音を見るときにいつでも正しい性質で歌うことができる。
Ut, re, mi, fa, sol, la:ヘクサコルド(ラテン語 hexachordum)
半音関係が mi-fa だけなので、半音の歌い方を教えるのに「mi-faのように歌え」ですむ
それでも、1オクターブを網羅していないのは不便なので、高い音域へ拡せざるを得ない
[1]
ut
- ヘクサ……6
re
mi
fa
sol
la
[2]
ヘクサコルドでは隣り合う音程の関係には全音と半音とがある
- コルド……ハープの弦、すなわち違う音程
ヘクサコルドを拡張するなら、全音と半音と両方のパターンを吟味すべきだ
- ヘクサコルド……6つの違う音程が1セット
­ プラン[1]:Aから半音上がる
­ プラン[2]:Aから全音上がる
ヘクサコルドの拡張:半音はいつもmi-faになる
プラン[1]:Aから半音上がる
ut
re
mi
ムタツィオ:7つのヘクサコルドで広い音域をカバーする
fa
fa
sol
la
ut
re
mi
sol
la
Aとその拡張した音程(B♭)が当然ながら半音関係、すなわちmi-faになる
そこにmi-faをおくと、必然的にFにutがくる
Fから始まる新しいヘクサコルができた(「柔らかい」hexachordum molle)
プラン[2]:Aから全音上がる
ut
re
mi
fa
sol
la
ut
re
mi
fa
sol
la
Aから全音あがりBにゆくと、Bとその次のCとが半音関係になり、ここがmi-faになる
ここにmi-faをおくと、必然的にGにutがくる
Gから始まる新しいヘクサコルドができた(「堅い」hexachordum durum)
e
d
c
b
a
g
f
e
d
c
b
a
g
f
e
d
c
B
A
G
la
sol
fa
mi
re
ut
la
sol
fa
mi
re
ut
la
sol
fa
mi
re
ut
la
sol
fa
mi
re
ut
la
sol
fa
mi
re
ut
la
sol
fa
mi
re
ut
la
sol
fa
mi
re
ut
ヘクサコルドの特徴
ポリフォニーの興隆
そもそもグレゴリオ聖歌を教えるために考案された
中世のおもしろがり(?)が2つ以上の旋律を同時に歌うことを始めた
1セットに6つの音程がある(あるいは、6つしかない)
同時に鳴り響く音程の相互関係に気をつけないと、響きがグチャグチャになる
mi-faが半音の別名である
- ポリフォニー……2つ以上の旋律が同時に鳴り響く
•ポリ……多い・複数の
•フォニー……音・旋律
(例)Salve Regina(グレゴリオ聖歌)
- モノフォニー
•モノ(1つ)
•フォニー(メロディー)
(例)ヤコポ・ダ・ボローニャ Fenice fù(14世紀)
ポリフォニーの興隆
ポリフォニーの興隆と16世紀の精神
15∼16世紀になると4・5・6声部など、同時に歌う旋律の数がどんどん増える
ポリフォニーの興隆
メロディーの動きだけでなく、同時に鳴る音の組み合わせ(和音)重要視されるようになる
フレーズの終わりを半音で強調する「終止形(カデンツ)」が重要になってくる
(例)オルランドゥス・ラッスス Ave Regina caelorum(16世紀)
準備
終止形
- メロディーのおもしろさに加えて、和音の意識がますます大事になる
•気持ちよく響く協和音と気持ち悪く響く不協和音をうまく制御すること
•和音のつながり(今風にいうとコード進行みたいな感じ)
- 半音を含む終止形(カデンツ)がフレーズの終わりを強調する
•終止はいつも第1音なので、第7音から第1音へ動いて終止することになる
•音階の中の第7音が曲やフレーズを構築する上でとても重要になる
- ヘクサコルドはもともとグレゴリオ聖歌の訓練のために考案された
•和音のことは考慮に入っていない
•第7音が含まれていない(これはグレゴリオ聖歌ではまったく問題にならない)
16世紀の精神
- 伝統的な権威に疑いをもち、必要とあればそれを否定することをおそれなくなった
•天動説と地動説の対立……伝統的な権威より経験や観測を重視する
•合理的で使いやすいシステムを求める傾向
•「ヘクサコルド、もうやめちゃおうよ」→第7音を含む7音1セットの音階を導入
新しい7音システム
第7音を含み、7音で1セット
1オクターブを1セットで網羅する
1セットで1オクターブを網羅すると、次のセットとともに次のオクターブが始まる
That will bring us back to do!
これは7音システムだからこそ言えるのだ
現代人には当たり前かもしれないが、
ドレミの歴史を考えると、決して当たり前ではない